リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

180 / 204
バレンタイン編です。
二つ、三つに区切る予定ですけど、今日中に書き切れると……いいなぁ(遠い目)
では本編!


番外編 バレンタイン特別編 その一

二月十三日。

翌日に在るイベントを控え、男女を問わずそわそわとするそんなある日。

ここ海鳴市でも同様の空気が街を覆っていた。

その一角、聖祥大付属小学校でもそうだった。

 

 

 

「それでは、今日はここまで」

「起立、礼」

『ありがとうございましたー』

 

日直の挨拶と共に、教室にざわざわと喧騒が広がる。

その中、雄一は授業中に凝った背筋を、大きく伸びをすることで解す。

 

「ん、んー!」

「雄一、さっきの授業も退屈そうだったね」

「ん・・・・・・ああ、真一か」

 

背後からかけられた声に振り返ると、苦笑している真一が。

雄一は身体を捻ると、真一と話すことにした。

 

「それより、俺はいつの間に復学したことになっているんだろうか?」

「それは言わないお約束だと思うよ?」

 

それが番外編クオリティ。

 

「「雄一君!」」

「「「雄一!」」」

「雄君!」

「「ん?」」

 

メタなことを言っていると、なのは達が大挙して押し寄せた。

なにやらただならぬ様子で詰め寄る六人(なのは・フェイト・はやて・アリサ・すずか・アリシア)に、若干気圧されながらも、とりあえず要件を促すことにする雄一。

 

「そ、それでどうかしたのか?」

「雄一、あんた明日時間あるかしら?」

 

六人を代表してか、アリサが用件を話しだす。

アリサの確認に、雄一は予定を確認し、首を縦に振った。

 

「ああ。特に用事はないけど」

「そ、そう・・・・・・それなら、明日、翠屋に来なさい!」

「翠屋? 何かあるのか、なのは?」

「ふえ!? え、えっと・・・・・・」

 

雄一が水を向けた途端取り乱すなのは。

しばし、ワタワタと手を動かしていたが何かを思いついたのか、両手を打ち鳴らした。

 

「そ、そう! 明日はちょっとした理由でお店が忙しくなるから、手伝ってもらおうって話になって!」

「『ちょっとした理由』? それって?」

「そ、それは・・・・・・うにゃぁ」

「・・・・・・ああ、そういうこと」

 

核心がぼかされている為、再度問う雄一に、より顔を紅くさせるなのは。

その反応と、『明日』という言葉で、真一にはピンと来たのか、納得したように数度頷いた。

 

「なんだ、真一には判ったのか?」

「判ったけど、コレは僕が言わずに、雄一が自分で気がつくべきだよ」

「よく判らんが・・・・・・」

「あー、雄一。私達もこの間知ったばかりなのに、なんでこの世界出身の雄一が判らないのかな?」

 

首を傾げる雄一に、どこか呆れた様子のアリシア。

車椅子に座りながらも、腰に手をあてて雄一を見下ろすようにしている。

 

「どういうことだ?」

「もう・・・・・・だから、明日は――」

「ね、姉さん! それは言っちゃ駄目!」

 

焦れた様子で、答えを口にしようとしたアリシアを、慌ててフェイトが押し留めた。

答えを寸止めされた雄一は、フェイトに咎めるような目を向けた。

 

「フェイト、知っているなら教えてくれてもいいじゃないか」

「だ、駄目だよ! だ、だけど、後で良かったら、私が、その、教えて」

「フェイトちゃんフェイトちゃん? 途中から何かおかしくなってない?」

 

途中から勢いを失い、口中でごにょごにょと呟きだしたフェイトを、すずかが肩を掴んで揺らした。

揺らされ、我に返ったフェイトは、失言だったのか顔を逸らした。

 

「???」

「あははは、雄君鈍すぎるで。もしかして、わざとやってるんちゃうか、と思ってしまうくらいに」

 

明日に起こる出来事どころか、目の前のなのは達の様子にも、理解が及ばず首を傾げる雄一に、イイ笑顔で言うはやて。

ただし、はやての目が笑っていないことに、流石の雄一も気がつき、顔を引き攣らせた。

 

「は、はやてさん? 俺は何かしましたか?」

「心配せんでも、雄君は何もしてへんよ?           (それが問題でもあるけど)

「・・・・・・え、えーと」

 

小声で何事かを呟かれ、さらに顔を引き攣らせる雄一。

雄一でも気がつける空気に、周りの者が気がつかないはずもない。

アリサが咳払いと共に割り入り、場の収集を図る。

 

「コホン、と、ともかく! 明日は絶対に来なさいよ! いいわね!」

「あ、アリサちゃん、待って!」

「アリサちゃんも素直じゃないなー」

「ほな、また明日なー、雄君!」

「雄一、明日楽しみにしててね」

「フェイト、お姉ちゃんもっとアピールしてもいいと思うよ」

 

わいわいと姦しく騒ぎながら教室を後にする六人。

六人を見送り、雄一は真一を振り返ると、

 

「それで、明日って何かあったっけ?」

「まだ気がついていなかったの!?」

 

真顔で尋ねる雄一に、真一は仰天した様子で、卓上を両手で強く叩いた。

周囲の、まだ教室に残っていた男子もいっそ換われと言わんばかりに、雄一を睨みつけている。

 

「あれ? もしかして気がついていないのって俺だけ?」

『当たり前だ!!』

「・・・・・・何故に?」

 

男子どころか、教室に残っていた女子まで加わり一喝され、雄一は益々首を傾げる。

その、理解していない様子に、痛む頭を押さえながら真一は、せめてこれだけは、と説明しようとする。

 

「あのさ・・・・・・雄一、明日が何日か判っている?」

「明日・・・・・・二月十四日?」

「そう! それで、二月十四日といえば、有名だよね!」

「ああ、そういうことか」

 

やっと理解したようで、頷く雄一に、真一は胸を撫で下ろし、男子は嫉妬と殺意の篭った目を、女子はなのは達の気苦労を察して苦笑しながら安堵し、

 

 

「煮干の日か」

『違う!!』

 

一致団結した否定が、校舎を震わせるのだった。

 

 

 

 

 

翌日。

 

「こんにちわー・・・・・・?」

「あら、いらっしゃい♪」

 

指定されたとおり、翠屋を訪れた雄一は、なのは達の姿がないことに目を瞬かせた。

戸惑い、入り口で固まっていると、桃子が案内に来た。

 

「こんにちわ。あの、なのは達は?」

「あの子達なら、ちゃんといるわよ。それより、こっちこっち♪」

 

なのは達の居場所を問うも、何故か煙に巻かれてしまう。

それどころか、いつも浮かべている笑みを深くし、奥の席へと案内されてしまった。

 

「ちょっと待っててね? 皆に君が来たことを知らせてくるから」

「あ、はい。それと、冷蔵庫をお借りしていいですか?」

 

桃子を呼び止めると、雄一は鞄から箱を取り出した。

 

「いいわよ? けど、何を・・・・・・ああ」

 

桃子は、雄一から箱を受け取ると、中身を察して苦笑した。

 

 

 

「雄一君!」

 

桃子が厨房に消えてから少しして、なのはが雄一の席に駆け寄った。

 

「や、なのは・・・・・・皆は?」

「えっと、皆キッチンにいるよ。でも、今は私だけ」

「今は?」

「うん。最初は皆で渡そうかと思ったけど、どうせなら一人ずつにしようってことで、くじ引きとか色々した結果、私が一番最初!」

「そういうことか」

 

ここで、何を渡すつもりか、などと雄一は問わない。

昨日、真一達に今日がどういう日か熱弁され、鈍い雄一も今日が何の日か理解したからだ。

 

「判った」

「う、うん・・・・・・それじゃ、これ」

 

雄一が居住いを正すと、なのはも緊張した様子で、手にしていたお盆からチョコレートを載せていたのだろう皿を雄一の前に置いた。

 

「へぇ。よくできてるね」

 

なのはのチョコレートは、チョコレートトリュフ。

二種類作られているようで、一つはオーソドックスなココアパウダーだが、もう一つはパウダーシュガーを使ったのか白い。

フォークで差して口に運ぶと、スッと溶けていく。

笑顔で頷いてみせると、なのはは安堵したようだった。

 

「よかったぁ。美味しくできたか不安だったから、本当によかったよ!」

「本当によくできてるぞ。なのは、ありがとう」

「う、うん・・・・・・そ、それじゃ、フェイトちゃんを呼んでくるね!」

 

再度礼を言うと、なのはは顔を赤らめ、厨房へ走っていった。

その様子に、雄一は首を傾げると、緊張に耐え切れなかったのだろう、と結論付けるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。