二つ、三つに区切る予定ですけど、今日中に書き切れると……いいなぁ(遠い目)
では本編!
二月十三日。
翌日に在るイベントを控え、男女を問わずそわそわとするそんなある日。
ここ海鳴市でも同様の空気が街を覆っていた。
その一角、聖祥大付属小学校でもそうだった。
「それでは、今日はここまで」
「起立、礼」
『ありがとうございましたー』
日直の挨拶と共に、教室にざわざわと喧騒が広がる。
その中、雄一は授業中に凝った背筋を、大きく伸びをすることで解す。
「ん、んー!」
「雄一、さっきの授業も退屈そうだったね」
「ん・・・・・・ああ、真一か」
背後からかけられた声に振り返ると、苦笑している真一が。
雄一は身体を捻ると、真一と話すことにした。
「それより、俺はいつの間に復学したことになっているんだろうか?」
「それは言わないお約束だと思うよ?」
それが番外編クオリティ。
「「雄一君!」」
「「「雄一!」」」
「雄君!」
「「ん?」」
メタなことを言っていると、なのは達が大挙して押し寄せた。
なにやらただならぬ様子で詰め寄る六人(なのは・フェイト・はやて・アリサ・すずか・アリシア)に、若干気圧されながらも、とりあえず要件を促すことにする雄一。
「そ、それでどうかしたのか?」
「雄一、あんた明日時間あるかしら?」
六人を代表してか、アリサが用件を話しだす。
アリサの確認に、雄一は予定を確認し、首を縦に振った。
「ああ。特に用事はないけど」
「そ、そう・・・・・・それなら、明日、翠屋に来なさい!」
「翠屋? 何かあるのか、なのは?」
「ふえ!? え、えっと・・・・・・」
雄一が水を向けた途端取り乱すなのは。
しばし、ワタワタと手を動かしていたが何かを思いついたのか、両手を打ち鳴らした。
「そ、そう! 明日はちょっとした理由でお店が忙しくなるから、手伝ってもらおうって話になって!」
「『ちょっとした理由』? それって?」
「そ、それは・・・・・・うにゃぁ」
「・・・・・・ああ、そういうこと」
核心がぼかされている為、再度問う雄一に、より顔を紅くさせるなのは。
その反応と、『明日』という言葉で、真一にはピンと来たのか、納得したように数度頷いた。
「なんだ、真一には判ったのか?」
「判ったけど、コレは僕が言わずに、雄一が自分で気がつくべきだよ」
「よく判らんが・・・・・・」
「あー、雄一。私達もこの間知ったばかりなのに、なんでこの世界出身の雄一が判らないのかな?」
首を傾げる雄一に、どこか呆れた様子のアリシア。
車椅子に座りながらも、腰に手をあてて雄一を見下ろすようにしている。
「どういうことだ?」
「もう・・・・・・だから、明日は――」
「ね、姉さん! それは言っちゃ駄目!」
焦れた様子で、答えを口にしようとしたアリシアを、慌ててフェイトが押し留めた。
答えを寸止めされた雄一は、フェイトに咎めるような目を向けた。
「フェイト、知っているなら教えてくれてもいいじゃないか」
「だ、駄目だよ! だ、だけど、後で良かったら、私が、その、教えて」
「フェイトちゃんフェイトちゃん? 途中から何かおかしくなってない?」
途中から勢いを失い、口中でごにょごにょと呟きだしたフェイトを、すずかが肩を掴んで揺らした。
揺らされ、我に返ったフェイトは、失言だったのか顔を逸らした。
「???」
「あははは、雄君鈍すぎるで。もしかして、わざとやってるんちゃうか、と思ってしまうくらいに」
明日に起こる出来事どころか、目の前のなのは達の様子にも、理解が及ばず首を傾げる雄一に、イイ笑顔で言うはやて。
ただし、はやての目が笑っていないことに、流石の雄一も気がつき、顔を引き攣らせた。
「は、はやてさん? 俺は何かしましたか?」
「心配せんでも、雄君は何もしてへんよ?
「・・・・・・え、えーと」
小声で何事かを呟かれ、さらに顔を引き攣らせる雄一。
雄一でも気がつける空気に、周りの者が気がつかないはずもない。
アリサが咳払いと共に割り入り、場の収集を図る。
「コホン、と、ともかく! 明日は絶対に来なさいよ! いいわね!」
「あ、アリサちゃん、待って!」
「アリサちゃんも素直じゃないなー」
「ほな、また明日なー、雄君!」
「雄一、明日楽しみにしててね」
「フェイト、お姉ちゃんもっとアピールしてもいいと思うよ」
わいわいと姦しく騒ぎながら教室を後にする六人。
六人を見送り、雄一は真一を振り返ると、
「それで、明日って何かあったっけ?」
「まだ気がついていなかったの!?」
真顔で尋ねる雄一に、真一は仰天した様子で、卓上を両手で強く叩いた。
周囲の、まだ教室に残っていた男子もいっそ換われと言わんばかりに、雄一を睨みつけている。
「あれ? もしかして気がついていないのって俺だけ?」
『当たり前だ!!』
「・・・・・・何故に?」
男子どころか、教室に残っていた女子まで加わり一喝され、雄一は益々首を傾げる。
その、理解していない様子に、痛む頭を押さえながら真一は、せめてこれだけは、と説明しようとする。
「あのさ・・・・・・雄一、明日が何日か判っている?」
「明日・・・・・・二月十四日?」
「そう! それで、二月十四日といえば、有名だよね!」
「ああ、そういうことか」
やっと理解したようで、頷く雄一に、真一は胸を撫で下ろし、男子は嫉妬と殺意の篭った目を、女子はなのは達の気苦労を察して苦笑しながら安堵し、
「煮干の日か」
『違う!!』
一致団結した否定が、校舎を震わせるのだった。
翌日。
「こんにちわー・・・・・・?」
「あら、いらっしゃい♪」
指定されたとおり、翠屋を訪れた雄一は、なのは達の姿がないことに目を瞬かせた。
戸惑い、入り口で固まっていると、桃子が案内に来た。
「こんにちわ。あの、なのは達は?」
「あの子達なら、ちゃんといるわよ。それより、こっちこっち♪」
なのは達の居場所を問うも、何故か煙に巻かれてしまう。
それどころか、いつも浮かべている笑みを深くし、奥の席へと案内されてしまった。
「ちょっと待っててね? 皆に君が来たことを知らせてくるから」
「あ、はい。それと、冷蔵庫をお借りしていいですか?」
桃子を呼び止めると、雄一は鞄から箱を取り出した。
「いいわよ? けど、何を・・・・・・ああ」
桃子は、雄一から箱を受け取ると、中身を察して苦笑した。
「雄一君!」
桃子が厨房に消えてから少しして、なのはが雄一の席に駆け寄った。
「や、なのは・・・・・・皆は?」
「えっと、皆キッチンにいるよ。でも、今は私だけ」
「今は?」
「うん。最初は皆で渡そうかと思ったけど、どうせなら一人ずつにしようってことで、くじ引きとか色々した結果、私が一番最初!」
「そういうことか」
ここで、何を渡すつもりか、などと雄一は問わない。
昨日、真一達に今日がどういう日か熱弁され、鈍い雄一も今日が何の日か理解したからだ。
「判った」
「う、うん・・・・・・それじゃ、これ」
雄一が居住いを正すと、なのはも緊張した様子で、手にしていたお盆からチョコレートを載せていたのだろう皿を雄一の前に置いた。
「へぇ。よくできてるね」
なのはのチョコレートは、チョコレートトリュフ。
二種類作られているようで、一つはオーソドックスなココアパウダーだが、もう一つはパウダーシュガーを使ったのか白い。
フォークで差して口に運ぶと、スッと溶けていく。
笑顔で頷いてみせると、なのはは安堵したようだった。
「よかったぁ。美味しくできたか不安だったから、本当によかったよ!」
「本当によくできてるぞ。なのは、ありがとう」
「う、うん・・・・・・そ、それじゃ、フェイトちゃんを呼んでくるね!」
再度礼を言うと、なのはは顔を赤らめ、厨房へ走っていった。
その様子に、雄一は首を傾げると、緊張に耐え切れなかったのだろう、と結論付けるのだった。