リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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今回、小文字にしているところが読みづらいかもしれませんが、どうかご容赦ください。
では本編どうぞー。


閑話 電話と悩み

『――それで、はやてが逆上せちゃって』

「そうか、楽しそうでなによりだよ」

『楽しそう、でいいのかな?』

 

いいんじゃないか、と雄一は携帯の向こうにいるフェイトに言った。

雄一の総括に、フェイトは眉を「ハ」の字にしながら首を傾げる。

いま、なのは達は海鳴にいない。

予定されていた温泉旅行に行っているのだ。

そのメンバーは、そうそうたる顔ぶれで、高町家・テスタロッサ家・八神家・ハラオウン家・アリサ・すずか・ユーノと総勢二十人の大所帯だ。

 

(というか、こんな時期(年明け)にそんな団体を受け入れる旅館がよく見つかったな)

 

なのは達の幸運に関心半分呆れ半分に思いつつ、ベッドに腰掛けると携帯を耳に当て直す。

 

『雄一? どうかしたの?』

「っと、なんでもない」

『そう? もしかして、怪我が痛むとか?』

「大丈夫だよ。もう自宅療養に入ってるから(・・・・・・・・・・・・・)、二三日もあれば全快する」

『そ、そうなの?』

「ああ」

 

骨折が一週間程度で治るはずはないのだが、回復魔法でも使ったのだろう、と自分を納得させるフェイトにしれっと頷く雄一。

ちなみに、魔法を知っているなのはやはやて達だけでなく、最近魔法に触れたアリサ達も回復魔法について知っているため、この旅行に間に合うよう雄一に掛けようとしたのだが、過度の使用は身体への負担が大きい、と諭されており、雄一はこの電話に併せて包帯を巻いた姿を撮り、写真を負傷の証拠として送っている。

 

「まあ、こっちについては心配は要らないさ。それより、アリサ達に『こっちを心配する余裕があるなら、旅行明けの模擬戦を楽しみにしておくぞ?』って伝えてくれないか?」

『うん、判った。・・・・・・    (アリサ、)     (すずかー!)

 

フェイトに伝言を頼むと、受話器からフェイトの声が遠ざかった。

どうやら二人とも少し電話から離れているらしい。

フェイトに応じるアリサ達の声が洩れ聞こえると共に、電話口の向こうが賑やかさを増す。

 

           (どうかしたの、フェイト?)

                    (雄一が、『こっちの心配をするくらいなら、)         (模擬戦に備えろ』って)

           (へー? 上等じゃない! )          (雄一こそ首を洗って)           (なさい、って伝えなさい!)          (目に物見せてやるわ!)

              (ア、アリサちゃん・・・・・・)

 

アリサが激発しているのか、それを宥めるすずかの声に雄一は苦笑すると、

 

「まぁ、伝わった様で何より。フェイト、聞こえるか?」

『え? な、何、雄一? 今はアリサを抑えないと』

「いや、聞くことは聞いたし、言うことは言ったし。もう切ろうかと思ってな」

『え!? ・・・・・・うん、判った・・・・・・けど、また電話しても、いいかな?』

 

雄一が回線の切断を申し出ると、途端フェイトの声のトーンが落ちたが、おずおずとした様子で切り出した。

雄一はその提案に、何を当たり前のことを、と思いつつ答えた。

 

「当たり前だろ? 流石に夜中や朝早くは遠慮してほしいけど」

『っ、う、うん! ありがとう、雄一!』

 

雄一の答えに、受話器越しでも判るほど喜びを示すフェイトに、首の傾きを深くしながら、雄一は携帯を閉じてベッドへと寝転んだ。

 

「・・・・・・はあ」

『それにしても、良かったのか?』

「カナメ? 何がだ?」

『御主が理由にしておった怪我、もう治っておるじゃろ?』

「・・・・・・まあな」

 

カナメの指摘を雄一は否定せず、ベッドから身を起こすと巻いていた包帯をスルスルと解いた。

その下から現れた肌には、骨折による腫れどころか打ち身などの痣すらもない、健康的な色だった。

カナメの言うとおり、雄一の怪我は寛快しているのだ。

 

『ならば、旅行にも行けばよかったのではないか? わざわざこんな真似をせずともよかろう?』

「怪我はな。ただ、こっちの方が問題でな。エルミナ」

『ああ』

 

雄一の指示に、もう一機のデバイスのエルミナがホロウインドウを展開する。

カナメがその内容を確認し、なるほど、と呟いた。

 

『例の「闇の書の解析データ」じゃな』

「ああ。あれから、確認してみたんだが、やっぱり『砕け得ぬ闇』なんてプログラムは影も形もない。それに、盟約の守護者が最後に口にした言葉」

『「ユリ」「ユーリ」「ユリー」「ユーリー」など、差異も含めて検索を実行したが、そちらも空振りだった』

『じゃが、おぬしの持っているデータは、「改変された闇の書」のデータじゃろ? ならば無理もないのではないか?』

 

カナメのもっともな疑問。

だが、雄一は首を横に振った。

 

「俺ももちろんその線を疑った。だから、クロノに頼んで闇の書の改変前のデータを手に入れた上で、そっちも調べた。だけど結果は変わらなかった」

『・・・・・・そうじゃったか。じゃが、どうするのじゃ?』

「とりあえず、はやて達に聞いてみるしかないだろうな。リインフォースは管制プログラムだったんだから、もしかしたらって事もあるかもしれない」

『そう。なら、それまではどうする? 予定では、彼女達が戻るのは明後日だろう?』

「それまでは・・・・・・大人しく特訓でもしているよ」

 

そう。

先日の闇の欠片事件以来、雄一は一つの課題を抱えていた。

それは、能力の使い分けなど、使い方の習熟だ。

事件で浮き彫りになった、雄一が能力に振り回されている、という問題。

それを意識してからは、非殺生設定が使えるなのは達が羨ましく思えてきていた。

しかし、雄一は相変わらず魔法の出力は絶望的なのであった。

 

「けど、誰か契約者で教えを請える人がいるわけでもないし」

『まあの。私達に体があれば話は別じゃが、今の私達では口頭でしか説明のしようがなく、口頭なんぞで伝わるものではないしの』

「ああ」

 

考えてみれば、なのはにはユーノが、フェイトにはプレシアやリニスが、そしてはやてにはリインフォースやヴォルケンリッターなど、魔法の師が存在しているのだ。

そのまま腕を組み、雄一が頭を悩ませていると、足元の影が揺らめき、<クフ・リーン>がポツリと呟いた。

 

――なら、武器の扱いを学んでみたらどうだ?――

「武器? けど、俺も色々使っているけど?」

 

現状、雄一の武装はカナメの刀とエルミナの杖・銃・鋼糸、そして持ち前の身体能力や強化を使った格闘となる。

 

――そうじゃねえよ。新しい武器を使ってみたらどうか、ってことだよ――

「新しい武器、なあ」

 

<クフ・リーン>の提案に雄一は、あまり乗り気でない様子で唸った。

現状の武器でさえ扱いが問題になっているのに、新しく引き出しを増やすのはどうなのだろうか?

悩む雄一に、<クフ・リーン>はしばらくしてから付け足した。

 

――もちろん、無理にとは言わねえよ。ただ、現状に思うところがあるのならいっそ変えてみるのも一つの手段だと思うぜ――

「・・・・・・覚えておくよ」

 

<クフ・リーン>の言葉に何とか返し、雄一はベッドに寝転ぶと腕で目を覆った。

デバイス二機もそれ以上は何も言わず、<クフ・リーン>も茶化すことなく大人しく元の雄一の影の形に戻った。

そのまま雄一はうとうとしてきた事もあり、少し仮眠でもとるか、と意識を意識的に落そうとし、

 

『ん? マスター、通信が入っている』

「通信? 誰から?」

 

寝入り端を起こされ若干不機嫌になりながら、雄一は身を起こすと通信を告げたエルミナを振り向いた。

しかし、エルミナが告げた相手の名に雄一は目を見開いた。

 

『ギル・グレアム殿だ』

「グレアムさん? どうしたっていうんだ? とりあえず、回線を開いてくれ」

『了解した』

 

驚きつつ、エルミナに指示をする雄一。

雄一の指示に、エルミナは了承を返すと沈黙する。

やがて、渋い男性の声が届いた。

 

『<雄一君かね? 今、時間はいいかね?>』

「<ええ、大丈夫ですよ。それより、どうかしましたか? そちらからコンタクトを取ってくるとは珍しいですし>」

『<ああ。今はやて君達は旅行中なのだろう? そこで、君が海鳴に残っていると聞いて会わせたい人がいるんだ>』

「会わせたい人?」

 

グレアムの話に、心当たりのない雄一は怪訝に思いながら耳を傾ける。

だが、グレアムの次の言葉に、雄一は絶句することになった。

 

『<君の御両親と同僚だった者達だよ>』

「えっ!?」

 

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