リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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戦闘表現、難しいわ!
では、本編どうぞ!


閑話 思わぬ提案と強者

「は?」

 

メガーヌからの思わぬ提案に口を開けて固まる雄一。

ゼストも同様のようで、考え事を中断しメガーヌを振り返った。

 

「アルピーノ、どういうことだ?」

「言葉通りです。私は先ほどの彼の発言には大きな矛盾はないと思いました」

「お前もか・・・・・・だが、それは」

「ええ。それに、管理局にそのような暴挙ができるだけの影響力があるのも事実です。もし、彼の予想通りであり、彰子ちゃん達の死について調べる内に、管理局が彼を危険因子とみなし、最悪局から討伐に人員を寄越す可能性もあります」

「・・・・・・続けろ」

「彼の力は、話の通りなら確かに強力でしょうが、それでも彼はまだ成長途中で咄嗟の判断に甘い。違いますか?」

 

最後の部分は雄一に向けられた確認。

メガーヌが向けた確認に雄一は忸怩たる思いを抱きつつ頷く。

メガーヌの指摘は的を射ており、闇の欠片事件で浮き彫りになった問題だった。

だが、それと同時に、雄一はこの短時間で見抜いたメガーヌの観察力に舌を巻いた。

雄一とて気がついたのはついこの間だというのに。

雄一の肯定に、メガーヌは話を続ける。

 

「管理局は確かに人員不足ですが、彼以上の能力を持つ局員がいないわけでもありません。それなら、彼が自身を守れるように私達で経験を積ませる手伝いをしてはどうか、と思ったんです」

「ふむ・・・・・・」

 

メガーヌの提案に、ゼストは再び腕を組むと黙考しだす。

その会話を聞きながら、雄一は念話でカナメ達と相談をする。

 

「<どう思う?>」

『<私はよい提案じゃと思うぞ。先ほど話に出た首都防衛隊。少々調べてみたが、どうやら中々の精鋭のようじゃ>』

『<私も異存はない。彼らは現場で叩き上げられた類だろう。才能だけで上がってきた人間とは違う目をしている>』

――特に、真ん中のおっさんだな。後ろの二人もできるだろうが、おっさんだけは別格だろうぜ――

 

相棒達の意見は概ね好意的なものだ。

それらを一頻り咀嚼し、雄一は改めて三人を注視した。

<クフ・リーン>の言うとおり最も強いのはゼストだろう。

ゼストには一歩譲るが、クイントやメガーヌも強いことは雄一にも判る。

だが、彼女達は見たところ二十歳前後。

見たところ四十前後のゼストと比べるのは間違いだろうが、やはり頼りなさはある。

すると、その視線に気がついたクイントが不満気な表情を浮かべた。

 

「む? 何かな、その目は?」

「へ? いえ、何もないですけど」

「もしかして、私達を侮っているのかな? こう見えても、私達だって結構やるんだよ! 私とメガーヌはDSAA出場者だし、隊長は魔力ランクS級なんだから!」

「それは凄いですけど・・・・・・あの、DSAAって何」

「宜しい! 隊長、私からも彼の教練の許可を願います!」

「話、聞いてくれません?」

 

なにやら悪意的に勘違いしたまま、進む話に雄一が控えめに訴えるが聞き届けられることはなく。

ゼストは盛り上がるクイントを呆れたように見ていたが、やがてため息と共に立ち上がるとグレアムを振り返った。

 

「提督、訓練場を使っても?」

 

あんたもか、という言葉を雄一は辛うじて呑み込むのだった。

 

 

 

管理局訓練場は武装局員だけでなく、教導にも用いられるため日頃から賑わう場所である。

そこは、大勢が利用するため、広大な訓練場を結界で区切ることで利用されている。

その一角で、雄一はクイントと向き合っていた。

 

「さあ、行くよ!」

「はぁ。判りました」

 

両腕に装着したリボルバーナックルを打ち鳴らすクイントに、雄一は両袖から手にナイフを滑らせる。

クイントが相手なのは、彼女が用いるストライクアーツが格闘技であることを説明され、自身の技術の向上に繋がると判断したからだった。

メガーヌでは魔法の運用が前提になるため、雄一には不向きであることも理由である。

 

「はっ!」

 

まずは様子見で、雄一がナイフの一本を擲つ。

聞けば、彼女は陸戦魔導師であるため、飛行適性がないのだとか。

なら、クイントが飛来するナイフに左右に避けると判断して、雄一は追撃の二本目を投げる構えを取る。

クイントはナイフに対して、素早く半身になり右半身を雄一に向ける。

それを右への回避と見て、雄一は体が流れているクイントめがけて本命の二本目を投げる。

だが、その瞬間クイントの体が加速した。

 

「はぁっ!」

「っ、くっ!?」

 

瞬間、半身になり引き絞られたクイントの拳が振り抜かれた瞬間、背筋を走った予感に従って雄一は全力で横に飛び退いた。

雄一が飛び退いた次の瞬間、銀線が奔り、訓練場を区切る結界に突き立った。

 

「・・・・・・おいおい」

 

雄一は、振り返ってその銀線の正体を知るや、表情を引き攣らせた。

結界に突き立ったのは先ほど雄一が投げたナイフ。

クイントは一本目のナイフを殴って、二本目のナイフを打ち落とすばかりか雄一めがけて打ち返して見せたのだ。

その技量と判断に舌を巻く雄一に、クイントは挑発するように人差し指を数度クイクイと動かした。

 

「そんなものじゃないでしょ? 契約、だっけ? 出し惜しみしていると、」

 

潰しちゃうよ? という言葉と共に、クイントは魔力を集めると魔法を展開させた。

途端、クイントを基点とし結界を縦横に走る魔力の帯が広がった。

 

「これは?」

 

雄一は、魔法の効果が判らず周囲を警戒する。

帯の幅は一メートルほど。

それが複雑に絡み合いつつ雄一の周囲を取り囲んでいる。

 

(考えられるとしたら、これが一斉に縮んで相手だけを縛り取るとか、全方位から砲撃といったところか?)

「戦闘中に考え事なんて余裕だね!」

 

魔法を警戒する雄一に、一足で懐へ飛び込んだクイントが囁いた。

その加速に目を丸くした雄一だったが、詰められた間合いを利用して回し蹴りを放った。

通常なら、間合いを詰められれば回し蹴りは悪手だ。

遠心力を含め一番威力が出るのは爪先であり、間合いが近ければ相手に当たるのは精々が膝である。

それならば膝蹴りへ持ち込めばいいのだが、雄一は回し蹴りで薙ぐことを選んだのだ。

 

「しっ!」

「おっと!?」

 

雄一の反撃に、クイントは深追いせず蹴りの勢いを殺さずに跳び下がると、

 

背後に広がっていた魔力の帯の一つに着地し、一気に加速した。

 

「は?」

 

今度こそ呆然とする雄一は目の前で起きたことを必死で処理していく。

 

(あの帯みたいな魔法って乗れるのか? よく見ればクイントさんの足元のあれってローラーになってたんだな。さっきの加速はそういうことで、というかあれはデバイスなのか?)

「考え事が多いのが悪い癖みたいだ、ね!」

「うわ!?」

 

背後に回っていたクイントの拳を辛うじて避ける雄一。

カウンターに雄一の拳を打つが、クイントはそれをかわすと再び魔力の帯に跳び乗った。

どうやら、クイントの方針がヒットアンドアウェイだと推測した雄一も、方針を変えることを選んだ。

 

「だったら、先にこっちを潰すまで!」

「っ、まさか!?」

 

雄一の狙いを悟り、表情を変えるクイント。

彼女に構わず、雄一はエルミナを杖に変えると

 

「<フェル・ディア>!」

 

魔力の帯に叩きつけた。

途端、異能が発動して魔力の帯が砕け散った。

しかし、クイントは笑みを浮かべ、雄一の表情は強張った。

 

「なんてね?」

「なっ!?」

 

砕け散った魔力の帯はごく一部であり、ほぼ健在。

よく見れば、帯は連続しているのではなく、途中途中で途切れているようだ。

予想していなかった状況に固まった雄一めがけてクイントは蹴りを打った。

 

「こ、のっ!」

 

胴めがけて迫るクイントの蹴りを雄一は、瞬時に強化を掛けることで飛び越えて避ける。

だが、回避にホッと一息つくのも束の間。

掛かった、と笑みを深くしたクイントの表情に背筋が冷たくなった瞬間、

 

「え?」

 

グルン、と雄一の視界が縦に回った。

疑問に思う間もなく、雄一は背中を強く打ちつけてしまい、一瞬動きが止まり、

 

「はい、終わり」

 

身を跳ね起こそうとした雄一の眼前に拳が止められた。

見れば、クイントが寸止めさせた拳だった。

雄一は、何とか覆せないかと考えたが、

 

「・・・・・・参りました」

 

油断なく見下ろすクイントに、隙がないことを察し、抵抗することなく敗北を受け入れた。

 

 

 

 

「終わったか」

「ええ。番狂わせは起きませんでしたけど、というか起きたら私やクイントの立つ瀬がないんですけど」

 

メガーヌの苦笑交じりの言葉に、ゼストは内心、違いない、と頷いた。

メガーヌやクイントが出場したDSAA。

これに出場する事がどういうことか、雄一が知っていれば、この試合の結果も変わったかもしれない。

DSAAは次元世界で最強の十代を決める試合だ。

たかが十代の喧嘩と侮ってはいけない。

出場者の上位陣は、管理局の下級局員など足元にも及ばないだろう才覚を有している。

その中でも、ミッドチルダで行われるものは激戦であるとされ、その中で優勝こそ逃したとはいえ上位に残ったクイント達が弱いはずがないのだ。

 

「あそこなら、雄一君は回避ではなく防御するべきでしたね。そうすれば、クイントを捕まえられましたから」

「ああ。それに、クイントが言ったように戦闘中に考え込むのは悪い癖だ。何とかして矯正しなければ、危ういだろうな」

「ええ。ですけど、クイント相手にあそこまで食いつけたんですから合格だと思いますけど」

「・・・・・・そうだな」

 

実は、この試合に際して、クイントは魔力の帯こと「ウイングロード」を使うつもりはなかった。

ウイングロードを使った縦横自在の移動と奇襲こそ、クイントの本領であるため事前にその使用を戒めていたのだが。

 

「・・・・・・あとで詳しく聞くとしよう」

「あらあら・・・・・・それで、隊長としてはどうですか?」

「む・・・・・・」

 

メガーヌの返しに、ゼストは言葉に詰まると言葉を選ぶようにゆっくりと口にした。

 

「戦闘能力なら、充分だろう。だが、やはり咄嗟の判断に難があるのもまた事実だ」

「さっきも言いましたよね、それ。それで、最終判断としては?」

「・・・・・・」

 

たおやかな笑みのまま誤魔化しを許さないメガーヌの追求にゼストは顔を逸らすと、

 

「・・・・・・合格だ」

 

それだけ呟くと訓練場の出口へ足を向けるのだった。

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