リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第十六話 憑いて回る問題と使い魔の誓い

夕食を済ませ、なのは達が寝静まる頃。

フェイト達がジュエルシードが発見・発動させたのか、魔力が突き抜けるのを感じた。

 

<主殿>

<ああ、分かっている>

 

念話で応じていると、同じく魔力を感じたのか、なのはが身を起こして静かに部屋を出ていった。

こちらに注意を払う様子はない。

足音が離れたところで、寝たまま<憑黄泉>を使って姿と音を消して身を起こした。

 

 

旅館を出るところでバリアジャケットを纏い、ジュエルシードの魔力を目指す。

ジュエルシードが発動したのは、山際を流れる川だった。

なのはに一歩遅れて登場した俺に四つの視線が集まる。

 

「よお、三人ともいい夜だな」

「雄一君!? 寝てたんじゃ」

「狸寝入りだよ。まさか置いていくとは思わなかったな」

「い、いや、それは・・・・・・」

 

ジロッと視線を向けるとなのはとユーノは視線を逸らした。

次に、こちらにデバイスを構えるフェイトとアルフの姿。

フェイトの手にはジュエルシードが握られている。

 

「今回はフェイトが取ったか」

「・・・・・・雄一、どういうこと?」

 

バルディッシュにジュエルシードを取り込み、こちらをジッと睨むフェイト。

そのフェイトを庇うように、アルフが牙を剥きながら立つ。

 

「雄一、聞きたいことがあるんだけどいいかい?」

「なんだ?」

「あんたは誰の味方なんだい?」

 

アルフの顔に笑みはない。

心なしか、フェイトもなのはも強い視線を向けてくる。

少し真面目に返そうか。

 

「俺はジュエルシードの起こす事件の鎮静化については協力はするけど、基本的にはどっちの味方でもないよ。どっちがジュエルシードを手に入れようと問題じゃないからな」

「・・・・・・味方じゃない、か。だったら、こう聞いたらどうだい? あんたは、フェイトの敵かい?」

「場合によっては、かな。さっきも言ったけど、ジュエルシードの起こす事件は協力するけど、ジュエルシードの保有権は封印した人が持てばいい、と思っている。欲しければ奪えばいい。俺が現状敵になるとすれば、海鳴の街で騒ぎを起こしたときだろう」

 

そう答えると、アルフは目をつぶり、何事かを考え、

 

「そうかい。けど、フェイトの敵になる可能性がわずかにでもあるっていうなら・・・・・・あんたもガブッていこうかね!!」

 

途端、アルフの髪が伸び、皮膚を破りながら腕が人のものから強靱な爪を持つ獣のものに変わり、別の姿へ変えていった。

現れたのは、

 

「へえ? 犬っぽいな、とは思っていたけど、本当に犬だったか」

――ウォオオオオオン!!――

 

軽口に、遠吠えで応える魔犬と化したアルフ。

 

「やっぱり・・・・・・あいつ、あの娘の使い魔だ!」

「使い魔?」

「そうさ。あたしはこの娘の作った魔法生物。制作者の魔力で生きる代わりに、命と力の全てを使って守ってあげるんだ」

 

そういうことか。

アルフのフェイトへの過保護はそう言う理由か。

 

「先に帰ってて。すぐに追いつくから」

 

納得していると、アルフはフェイトを振り返って言う。

 

「うん。無茶しないで」

「オー、ケー!!」

 

フェイトの心配に答え、アルフが飛びかかってくる。

向かうのは、なのはか!

 

「せいやっ!」

「グゥウ!?」

 

なのはに向かうアルフを蹴りで迎え打つ。

障壁で蹴りを受け止めるが吹き飛ばされたアルフは俺に牙を剥き唸り声をあげた。

答えるようにニヤリと笑って、ついでに差し出した右手を掌が上になるようにし、親指を除く四指を数度曲げた。

 

「つれないな、アルフ。ガブッといくんじゃなかったか?」

「ちっ、いいよ! まずはあんたからいってやる!!」

 

挑発に激昂しながら再度とびかかってくるアルフをかわしざまに肘を入れるが今度は障壁で防がれ距離をあけられる。

 

「雄一君!」

「なのははあっちを頼む。こっちは抑えておいてやるから」

「うん!」

 

決意を込めた表情で向かうなのはを見送り、アルフに向き直る。

アルフは体勢を整えこちらの隙をうかがっていた。

 

「どうした、来ないのか?」

「ふんっ、そっちから来たらどうだい?」

 

挑発は返されたが、何も同じ土俵で戦う必要はない。

 

 

sideなのは

 

 

雄一君が昼間のお姉さんことアルフさんと戦っている間に、あの黒い魔導師の娘に会う。

 

「で、どうするの?」

 

橋の中ほどに立っているあの娘は、そう言った。

 

「話し合いで何とかできるってこと、ない?」

 

私の提案は首を横に振ることで答えられた。

 

「私の目的はジュエルシードを集めること。貴女も同じ目的なら、私達はジュエルシードを賭けて戦う敵同士ってことになる」

「だから! そういうことを簡単に決め付けないために、話し合いが必要なんだと思う!」

「・・・・・・話し合うだけじゃ、」

「え?」

「言葉だけじゃきっと何も変わらない・・・・・・伝わらない!」

 

彼女の気迫が変わる。

それに驚いた一瞬に、彼女は私の目の前から姿を消した。

後ろ!

かろうじて聞き取れた音に振り返るが、彼女は既にデバイスを振りかぶっている。

 

「くっ!?」

 

しゃがんでデバイスをかわすけど、追撃でもう一度杖が振るわれる。

 

<Flier Fin>

 

レイジングハートが発動した飛行魔法で空に飛んだ私の足元をデバイスが抜ける。

彼女はすぐに体勢を整えると、同じく飛行魔法を展開して追ってくる。

 

「でも、だからって!?」

「賭けて。それぞれのジュエルシードを一つずつ」

<Photon Rancer>

 

勢いを増して私の上に出た彼女のデバイスが魔法を撃ち放った。

 

 

side change 第三者

 

「集え、<ルー・グー>」

手頃な大きさの石をいくつか手元に引き寄せる雄一。

 

「何を」

 

意図の分からぬ行動に警戒を高めるアルフだったが、

 

「ぶっ飛ばせ、<ルー・グー>!」

 

雄一は石の一つをアルフめがけて撃ち放つ。

 

「ちっ、飛び道具かい!?けど、無駄だよ!」

 

すぐさま障壁を展開し、魔弾を受け止めるアルフ。

魔弾は障壁に衝突し、火花を散らしながら障壁を揺るがせたが、勢いをなくして地に落ちた。

 

「ちっ、ずいぶんと堅いな」

「こっちの台詞だよ。なんだい、今のは。まるで大砲じゃないか!?」

 

雄一は障壁の強靱さに、アルフは障壁を軋ませた魔弾の威力にそれぞれ舌を打ち、お互いの脅威度を改めた。

雄一の目算で魔槍ならば障壁を打ち抜けるはずだ。

だが、それはアルフを命の危険に晒す。

考えごとをしながらも、迫る爪牙を体捌きでかわす。

 

(たくっ、思ったより厄介な縛りプレイだな、これは)

 

故に、雄一は体術と魔弾で相手をする。

一方のアルフは雄一の身体能力に舌を巻いていた。

元が獣であるアルフは身体能力も高い。

人の姿ではなく本来の姿である今ならなおさらだ。

なのに、

 

(捉えられない・・・・・・たくっ、どうなってんだい?)

 

その自分より、雄一の動きは早かった。

それに、

突然、アルフの体が遠くに吹き飛ばされ、アルフは舌打ちする。

 

(っ、またかっ!?)

 

間合いを詰める度に、不可視の力に吹き飛ばされ間合いを開けられる。

<ルー・グー>で生み出した斥力だった。

間合いを開ける度に、魔弾が牙を剥き障壁に弾かれる。

二人の戦いが千日手になろうとしたとき、

カッ!!!

 

「「!?」」

 

空で弾けた桃色と金色の二色の魔力光に空を見上げた。

見ればなのはとフェイトの放ったものだろう砲撃がぶつかっている。

その一方、桃色の砲撃が勢いを増し金色の砲撃を打ち破って、フェイトに迫った。

 

だが、

 

「でも、甘いね」

「ああ、終わったな」

 

アルフの呟きに、苦い声で応じる。

 

<Scythe Slash>

「なのは!?」

 

ユーノが悲鳴を上げるが、遅い。

次の瞬間、フェイトはなのはの首にバルディッシュの鎌を突きつけていた。

レイジングハートがジュエルシードを委譲する。

どうやら、ジュエルシードを賭けていたらしい。

受け取ったフェイトは一度地上に降りると、

 

「帰ろう、アルフ」

「さっすがあたしのご主人様♪ どうだい、雄一? 今からでも、こっちにつかないかい?」

「俺はどちらにもつかないよ。なのはにも、フェイトにもね」

「そっか・・・・・・だってさ、フェイト?」

「・・・・・・そう」

 

フェイトはこちらを振り返らず歩き出し、

 

「待って!」

 

なのはの声に足を止めた。

 

「できるなら、私達の前にもう現れないで」

 

振り返らずなのはに告げられる最後通牒。

 

「もし次があったら、今度は止められないかもしれない」

「名前・・・・・・あなたの名前は!?」

 

最後通牒を伝え、歩みを再開するフェイトに、なのはの声が届いた。

問われたフェイトはわずかに振り返ると、

 

「・・・・・・フェイト・テスタロッサ」

「わ、私は」

 

だが、フェイトはなのはの名を聞かずに、夜闇に姿を消してしまった。

 

「じゃーね、おチビちゃん。雄一、あたしは諦めないよ?」

「そうかよ」

 

飛行魔法で飛び去るアルフに返事をしつつ、先ほどの二人の戦いを脳裏で批評していく。

一撃の出力は先ほどの撃ち合いで、なのはに軍配が挙がるだろう。

だが、スピードや判断はまだまだフェイトに分がある。

この差を如何に無くすか、が今後の課題だな。

落ち込んでいるのか、俯いているなのはに眼をやりながら、どうするかを考えていくのだった。

 

 

 

翌日。

今日までの宿泊だという、真一を見送りに来たんだが・・・・・・。

 

「聞いて欲しいんだ、雄一! 昨日、僕は確かに見たんだ! 大きな犬と戦う執事の姿を! あの姿を見て僕は確かに掴んだんだ!! 動物のしなやかな筋肉とそれに支えられる強靱な体! 執事の方も、戦うためと言わんばかりの強靱さを見せつけてくれた!! そう、僕が描くべきは、静物じゃなくて動物だったんだよ! よぉし、どんどん描くぞー!!」

「・・・・・・そうか・・・・・・真一、お前疲れてるんだよ・・・・・・」

 

他にどう言えと。

だから、なのはにユーノ。

そんな目でこっちを見るな。




終わりの一幕は、真一を出した時からやりたかったのですが、さて何処に入れるか、と考えたとき、唯一考えられたのが此処でした。
なのはのシリアスをぶち壊してしまっていますが勘弁してください・・・・・・。
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