二次会で、四人で九時間耐久完徹カラオケ。
結果、翌日身体がガタガタに……orz
同時に空へ飛び上がったなのは達だったが、先手を奪ったのははやてだった。
素早く体勢を整えると、剣十字を振るった。
「行くで、なのはちゃん!」
振るった剣十字の軌跡上に、複数のベルカ式の魔方陣が展開され、展開とほぼ同時に魔力弾を放って消滅する。
ブリューナク。
今回はやてが準備してきた、威力は低いが発動のプロセスを削れるだけ削った魔法だ。
更に、剣十字を振るい、新たにブリューナクを発動させるはやて。
一方、なのはは体勢を整えようとした矢先に迫る魔力弾に、整えようとした身体を前へ逃がし、重力も利用して一気に高度を下げる。
ブリューナクは僅かだが追尾性を有しており、高度を下げたなのはを追って軌道を下に向ける。
だが、なのはは下げた高度を一気に跳ね上げた。
結果、急な方向転換に耐えられなかった魔力弾が地面に着弾していく。
だが、
「まだまだ!」
「くっ、レイジングハート、お願い!」
<Protection>
はやてを振り向いたなのはが見たのは、数を増して迫る魔力弾の一群。
開幕早々に切った空中機動に、上がった呼吸を整える暇もない攻勢に、なのはは足を止めて障壁を張った。
なのはの張った桃色の防御壁に、次々と魔力弾がぶつかっていく。
先ほども言ったとおり、ブリューナクは威力を犠牲に発動スピードを重視している魔法だ。
そのため、数を重ねてもなのはの障壁を破る威力は望めない、
はずだった。
なのはは、障壁越しに感じる衝撃に眉をしかめながら唇を噛んだ。
(出力の制限が、防御にも影響するなんて!?)
攻撃の事だけだと考えていたなのはにとって、想定していた以上の衝撃は肉体ではなく精神に負荷を掛けていく。
それがはやての、そしてシグナムの策だった。
出力制限は、なのはの一撃の威力を提げて生存率を上げる、という思惑もあったが、他にも防御の弱体化とそれに伴う動揺も視野に入れていたのだ。
特に、具体性の薄い「七割」という出力を計りかねる序盤が最も効果が高いだろう、とも予想していたのだ。
シグナムは、ヴォルケンリッターの内で唯一、将と呼ばれるだけあって作戦立案能力も遜色なかった。
だが、この作戦は弱点として、時間を掛けるほどに効果が薄れていってしまう。
なのはが出力の違和感になれてしまえば完全に効力を失ってしまうのだ。
だからこそ、
(短期決戦で仕留めなあかん!)
はやては、剣十字を振るう一方で、それに紛れる形で別の魔法を組み始めた。
「<始めは驚いたけど、はやてちゃんのやり方にしては随分軽いような・・・・・・>」
<It's as your telling.I guess that you make it shaken.>(貴女の言うとおりかと。おそらく、動揺を誘うつもりと推測します)
レイジングハートの推測に、なのはは警戒を強めることを選び、違和感を打ち消す。
その間も、迫る魔力弾を空中機動で掻い潜り、最小限の障壁で防ぐ他は回避に徹する。
(注意を魔力弾とその回避に向けるなら、本命が在るはず! それは何処?)
<Master!>
レイジングハートの声に、視線を向けると、消え行く魔法陣の向こうにもう一つ魔方陣が展開されているのが見えた。
「(防御・・・・・・ううん、間に合わない! だったら、)レイジングハート!」
<ッ、It is an unreasonable order! But・・・・・・set・・・・・・set・・・・・・complete!>(無茶なことを言いますね! ですが・・・・・・処理中・・・・・・処理中・・・・・・完了!)
レイジングハートの声と同時に、なのはを魔方陣から放たれた砲撃が呑み込んだ。
「決まった!?」
「なのはちゃん!?」
一方、地上。
はやての一撃がなのはを捉えたことに、チームであるアリサとすずかは顔を青くする。
その様子に、雄一が目を細めていると、フェイトに肩を叩かれた。
「フェイト?」
「雄一、ちょっと質問なんだけど、これってどうやって決着をつけるの?」
フェイトの疑問に、ハラハラと上空の様子を心配していた二人も振り返った。
先ほどの雄一の説明に、決着の条件はなかった。
ならば、何を持って決着させるつもりなのか?
「それなんだが・・・・・・あーエイミィさん、聞こえます?」
『はいはーい! 聞こえてるよ!』
「エイミィ?」
フェイトは突然の闖入者に驚いた。
その間に、エイミィが映像通信に切り替えると、雄一が手にしたカナメからホロウインドウが展開された。
『こっちの方が判りやすいと思って。さて、フェイトちゃんの質問だけど、私から答えちゃっていいのかな?』
「ええ。お願いします」
『オッケー。まず、模擬戦の勝利条件は一撃決着。撃墜判定でも良かったんだけど、先に一撃入れれば勝ちにしたよ』
「でも、撃墜判定なら、勝ち負けもハッキリすると思うんだけど」
「そうもいかない事情がある」
エイミィの確認に雄一が頷くと、エイミィはあっさりと喋った。
その内容に首を傾げるフェイト達に、雄一が補足を入れる。
「撃墜にすると、それだけ一戦が長引くし、怪我の確率が上がっていく。抵抗もあるし、無防備じゃないんだから一撃で沈められるわけじゃないしな。当然、怪我の度合いだって様々だ。非殺生といっても、死にはしない、ってだけだ。その攻撃で発生した現象にまで及ぶわけじゃないし」
「ちょ、それって本当なの!?」
「ああ」
「本当だよ。だから、雄一が二人に魔法を教える、って言い出したときはびっくりしたんだよ」
そう言い、フェイトが責めるように雄一を見ると、雄一は目を逸らすことなく言い切った。
「危険は危険だけど、リターンも大きいからな。正直、二人の境遇を考えると使える武器はあって困ることはないだろうと思っての判断だ」
「そうかもしれないけど」
「そ、それよりも、なのはちゃんは!? あれで決着したんだよね!?」
尚も不満そうなフェイトを押しのけるように、すずかが雄一へと詰め寄った。
心配のあまりか、目には涙が溜まっている。
その様子に、雄一は思わず口籠もったが、両手で押し留めるようにする。
「落ち着け。多分、まだ決着はついていない」
「え? な、なんで!? だって今!」
「さっき説明し損ねたけど、エイミィさん達には観測を頼んでいるんだ。判定は、あっちが機械を通してするから、誤審はないはずだ。だから、決着が告げられないってことは、」
顔を青くするすずかから、再び上空に目を向ける雄一。
はやての砲撃が走り抜けた空域。
そこを覆う煙が風で薄まるにつれて、のぞきはじめた桃色の光に雄一は口角を上げた。
「さっきのは不発だった、ってところだな」
煙が晴れた先で、レイジングハートで煙の残滓を振り払うなのはの姿があった。
「えーと、なのはちゃん? よう無事やったね?」
「ギリギリプロテクションが間に合ったからね。でも危ないところだったよ? はやてちゃんの攻撃があとちょっと強かったら防ぎきれなかったんじゃないかな?」
「誉められて嬉しいねんけど、どうやって防いだん? というか、どうやって出力を安定させたん?」
「私じゃなくて、レイジングハートのおかげだよ。私はいつもどおり、込められるだけの魔力を込めただけ。そこからレイジングハートが三割分の魔力を抜けば、七割の出力のスフィアの出来上がり。プロテクションも同じ理屈だよ。本当は、もう少し掛かるはずだったんだけど、危なくなっちゃったから、レイジングハートには無理をさせちゃったかな?」
<No problem.It's my duty.>(問題ありません。私の役目です)
ありがと、と朗らかに笑うなのはに、はやては隠しきれず表情を引き攣らせた。
なのははスフィアに込める魔力に限界があるように言うが、そんなはずはない。
込めようと思えば何処までも込めることはできるだろう。
ただ、個々人の制御しやすい量に落ち着くだけだ。
もし、なのはが制御を手放すだけの魔力が込められた一撃を出されたとしたら。
(レイジングハートが七割に調整したとしても、洒落にならんやろうなぁ・・・・・・けど、予想以上になのはちゃんの立ち直りが早いんは、ちょっとした痛手やな)
はやて達の予想としては、なのはは立ち直るだろうとは思っていたが、それは先ほどの砲撃による動揺も加えてもっと後のことと思っていた。
だが、その実、なのは達は先ほどの一撃の迫る中で対策を組み上げてしまった。
(せやけど、まさか砲撃が迫ってる、って時にデバイスの処理能力を全部注ぎこむ、なんて考えるとは思わへんやろ!?)
なのはの恐ろしいところは、魔力量や収束スキルなどではなく、その胆力なのかもしれない。
そう考え、はやては苦笑を浮かべる。
だが、はやてとて意地はある。
ただで負けを認めるつもりはないし、シグナムだけでなく、
「しゃーない! 一気に予定を前倒しや! 決着つけるで、なのはちゃん!」
苦笑を強い笑みに変え、はやては強く翼を打った。