リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

193 / 204
閑話 癖と第一戦決着

はやての攻撃を、プログラムを組み上げ制限を攻略して凌いだなのはが攻撃に転ずる。

 

「アクセルシューター! からの、ディバインバスター!」

「わきゃぁあああ!?」

 

誘導弾から砲撃の一連の攻撃を、辛うじて避けるはやて。

至近を抜けていく桃色の光に悲鳴を上げるはやての姿に、一見なのはが優勢と思える。

だが、なのはからすれば、まだ情況が好転したとは言い難いのだった。

なのはの勢いを削ぐ要因。

それは、

 

「っ、駄目っ!」

 

つい、癖で繋ごうとしたバインドの魔法を破棄し、代わりにシューターを撃ちはやてを牽制する。

シューターを避け、下がるはやてになのはも気取られぬ程度に、安堵を洩らした。

はやてが求めた二つ目のハンデ、バインドの禁止がなのはの挙動を狂わせているのだった。

バインドを含む拘束系の魔法は、砲撃系の魔法と並ぶなのはの才の一つだった。

雄一は知らないが、ジュエルシード捜索の最中、プールに現れた思念体相手に拘束系の上級魔法に属する『レストリクトロック』を発動して見せている。

なのは自身もそれを自覚しているため、砲撃魔法の練習と並んで、バインドの腕も磨いていたのだ。

だから、なのははシューターで誘導しバインドで拘束、砲撃でとどめを刺すという流れを得意としている。

その一角を抑えられても、つい発動させそうになっては打ち消すということを繰り返しているのだった。

 

(正直、やり難いかな? でも、このくらいならすぐに慣れる・・・・・・はず)

 

最後が締まらなかったが、それはさておき。

なのはは一計を案じると再度アクセルシューターを放った。

十二発の誘導弾が上下左右からはやてを狙う。

 

「こんなもん!」

 

だが、全周に逃げ場がある空中では、はやてを捕らえられない。

誘導弾の隙間に飛び込むように翼をはためかせ、はやては魔力弾を抜けようとし、

 

「弾けて!」

<Crush>

 

寸前なのはの鋭い指示に、忠実に従ったレイジングハートの処理が反映され、魔力弾を小さい魔力弾に分裂した。

一発を複数に分裂させたことで威力は減じたが、もとより一撃を入れた方の勝利。

散弾のように広がった弾幕が形作られた。

 

「いっけー!」

「ちょ、そんなん、あり!?」

 

迫ってくる密度を増した弾幕にはやてが悲鳴を上げた次の瞬間、魔力弾群ははやてへ殺到し爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「今度こそ決まったわよね!?」

「・・・・・・んー」

 

肩を掴み揺さぶるアリサをそのままにしながら、雄一は爆発の奥へ目を凝らした。

煮え切らない返事を返す雄一に、フェイトは首を傾げると、雄一に聞く。

 

「何か気になるの?」

「いや、な? さっきの爆発なんだけど、はやてにぶつかるより早かったように見えたんだよ」

「・・・・・・それって、はやてちゃんは・・・・・・」

「じゃないかな?」

 

思い至ったらしいフェイト達に答えていた雄一は、目を細めた。

晴れる煙の奥、薄らと影が見え始めたことに気がついたからだった。

 

 

 

 

「・・・・・・えーと、はやてちゃん? 思いっきり喰らったように見えたけど、なんで無事なの?」

「それに答えてもええけど、答える前に一つ言わせてな? なのはちゃん、随分えげつないこと考えるんやな。さっきの、非殺生設定ついてなかったら、今頃私は消し飛んどるで?」

「流石に、そんな攻撃を非殺生設定無しに叩き込めるほど振り切れているつもりはないって」

「ホンマかい」

 

湿った目を向けるはやてに、なんとなく否定しきれず目を逸らすなのは。

しばらくなのはに湿った目線を向けていたはやてだったが、これ以上は薮蛇と判断し、説明を始める。

 

「私が無事やったのは、ただ防いだだけや。これでな」

 

はやてが杖を振るって見せると、はやてを覆う皮膜のように魔力が広がった。

それを見たフェイトが驚きの声を上げた。

 

「あれって、シグナムの防御魔法?」

「うむ。テスタロッサには見せたな」

 

フェイトの確認に、シグナムが頷く。

知っての通り、夜天の書には蒐集された相手の魔法が使える機能がある。

それどころか、本来夜天の書の一部である守護騎士達の魔法とてはやてには使えるのだった。

 

「とはいえ、アイゼンやレヴァンティンみたいな武器が使えるわけやないから、それらを使わなあかん魔法は使えへんけどな」

「それでも、十分反則的だと思うの」

「否定でけへんなー。せやけど、使えるものは全部使わせてもらうつもりやねん。せやから・・・・・・穿て、ブラッディダガー!」

 

なのはの指摘に苦笑する傍ら、こっそりと発動させていた魔法を素早く撃ち放つはやて。

突き出された掌の先、魔方陣から紅い魔力刃が撃ち出され、なのはへと奔った。

 

「これ!?」

<Worning! Please avoid! Those explode as you get to know!>(危険です! 回避して下さい! マスターも知るようにあれらは爆発します!)

 

レイジングハートが言わずとも、なのはとてこの魔法の脅威を忘れたわけではない。

すぐさま距離を取ると、迫る刃を撃ち落とすことなく隙間を縫うように避けることに集中する。

プロテクションで受け止めても着弾の衝撃で爆発してしまうし、撃ち落とそうものならば、魔力を膨張させやはり爆発してしまう。

だからこそ、回避に徹するのだが、距離を取ってしまったのは痛手だった。

距離が開いたことで、はやてが新たな魔法を用意することを許してしまったのだ。

 

(多分、次に使う魔法の時間稼ぎ・・・・・・けど、発動前に潰しちゃえば!)

 

警戒を強め、はやての挙動を注視しつつ牽制にシューターを放つなのは。

だが、シューターに先んじてはやての前方に白い魔方陣が広がった。

魔方陣から闇が圧縮されたような、なのはの両腕で抱えられるほどの大きさのスフィアが現れた。

 

「ハウリング・スフィア!」

「させないっ!」

 

はやての魔法を、砲撃魔法の前準備と判断したなのははシューターを最前のように細分化させ散弾のように撃ち込んだ。

だが、

 

「えっ!?」

 

シューターとはやてのスフィアがぶつかった瞬間、スフィアが膨張しシューターを呑みこんで爆発した。

思わぬことに驚いたなのはだったが、すぐに先ほどのことを解釈する。

 

(多分、防御の魔法、かな? 相手の攻撃と一緒に消える、みたいな)

「ハウリングスフィア!」

「っ、だったら、こう!」

 

再度形成されたスフィアに、なのはは側面へ回り込むようにシューターを操作する。

その操作に、スフィアの後ろにいたはやては渋面を浮かべると、シューターの軌道から逃れた。

その回避に、なのはは光明を見出した。

 

「はやてちゃん、その防御魔法、その場所から動かせないんでしょ?」

「・・・・・・あちゃあ、もう気がつかれてもうたか」

 

なのはの指摘に、はやては渋面を深くする。

その変化に、なのはは推測が正しく、はやての切り札を破ったのだと思い、

 

 

「けど、その推測は半分間違いや」

「――――え?」

 

渋面から笑みに表情を変えたはやてに、なのはは反射的に聞き返し、

 

「ナイトメア!」

「っ、プロテクション!」

 

瞬間、なのはのプロテクションに二発(・・)の砲撃が衝突した。

 

「んん!?」

 

予想していなかった衝撃になのはは呻くが、障壁は急場凌ぎであったにも拘らず、はやての砲撃を耐え切ってみせた。

その結果に、はやては不満を洩らす。

 

「まさか、いまので仕留め損ねるなんてなー・・・・・・リインフォースに顔向けできひんわ」

「いまの、リインフォースさんの?」

 

はやての台詞を聞き咎めたなのはの確認に、はやてはあっさり頷いた。

 

「せや。さっきの、なのはちゃんへの制限を利用するのはシグナムの作戦や。けど、この砲撃を中心としてんのはリインフォースの作戦なんや。ナイトメア!」

「っ、ディバインバスター!」

 

またも言葉に紛れて放たれた砲撃に、なのはは合わせて砲撃を撃って迎え撃つ。

しかし、二発の砲撃はなのはに近い点で衝突した。

初動が遅れたとはいえ、衝突位置がなのはに近いということは、弾速で勝るということだ。

だが、同時に感じた違和感になのはは眉をひそめた。

 

(さっきよりも軽い?)

 

砲撃越しの衝撃だが、それを差し引いても手に伝わる衝撃が軽い。

 

(考えられるのは、さっきのはプロテクションが咄嗟に張った分脆かった、ってこと? 来ると判ってたら、これくらいってことなの?)

 

それか、先ほどのははやての起死回生の一撃だったのか。

 

「(なら、一気に攻めきる!)レイジングハート! 新技いくよ!」

<Alright.Load Cartridge.>

 

方針を決めるや、なのははレイジングハートにカートリッジを装填させる。

レイジングハートは、主の意志を汲み、必要な分カートリッジを排出し魔力を満たす。

 

「ちょ、なのはちゃん!? 自分、何する気やねん!?」

「こう、する、の! 新技、ハイペリオーン・・・・・・」

 

その魔力量に目を剥くはやてに、なのははレイジングハートを頭上で数度回転させると先端をはやてへと向け、レイジングハートに奔る振動を強く握ることで抑えこみ、

 

「スマッシャー!!」

 

ディバインバスターを上回る奔流が迸った。

スターライトブレイカーには一歩譲るが、破壊力はディバインバスターの比ではないだろう。

もちろん、なのはとて非殺生設定無しに撃てるものではない。

 

「きゃぁああああ!?」

 

それほどの一撃に、はやては防御することなど考えず身を投げ出した。

だが、その判断が功を奏し、はやてを掠める形で砲撃は抜けていった。

それでも、被害は零ではなかったようで、はやては余波に吹き飛ばされ悲鳴を上げることになった。

 

「これで、終わりなの!」

 

衝撃に振り回されるはやての姿に、隙を逃すまい、とハイペリオンスマッシャーの反動に軋む体を堪えつつ、再度ディバインバスターを撃とうと構え、

 

「私の勝ちや!」

「!?」

 

吹き飛ばされながらも笑みを浮かべているはやてに気がつき、目を見開くなのは。

彼女めがけて、はやては正確に剣十字の先端を向けると砲撃を撃ってみせた。

 

「ナイトメア!」

「っ、プロテクション!」

 

ディバインバスターが間に合わないと判断したなのはは、集めた魔力を障壁に注ぎこんだ。

これで、先ほどのように破られる心配はなくなったと安心し、

 

 

背後から撃ちこまれた砲撃に、なのはは吹き飛ばされた。

 

「っきゃあああ!?」

<Master!?>

 

プロテクションを抜けた一撃を背に受け、なのはの意識は遠のいていく。

 

(な、何が起きたの?)

 

その霞み行く視界で辛うじて背後を振り返ったなのはの目に、背後に浮かび上がる白い魔方陣と消えゆく黒いスフィアが映った。

 

(あれは・・・・・・さっき・・・・・・の)

『勝者、はやてちゃん!』

 

意識が消える直前、その宣告がなのはの聞くことができた最後の言葉だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。