では、本編どうぞ
「雄一、どういうこと?」
「はやてのスペックをフルに使おうとしたら、夜天の書と杖と管制人格の三つが必要になるのは知ってるだろ。この場合、魔法の貯蔵を夜天の書が、発動体の役割を杖が、それらの連結と効率化を管制人格が担っているわけだ。けど、リインフォースが融合騎としての機能を失っている以上、三つ目は機能しないことになる・そうすると、陶然魔法の発動にも時間が掛かるはずなんだけど、」
「でも、そんなことはなかった、よね?」
雄一の指摘を継ぐフェイトの確認に、雄一は頷く。
雄一の推論の証左は二人の砲撃の撃ち合いの場面にあった。
本来であれば、同時に魔法を使えばデバイスのあるなのはが先んじる。
しかし、現実にははやての方が先んじて見せた。
では、はやてがデバイス以上の処理能力を有しているか、と言われればそれはないだろう。
「それに、最後も砲撃に加えて、あのスフィアをなのはの背後に遠隔展開してたけど、あれだって処理にデバイスが必要になるはずだ。だから、何かその前提を覆すものがあるはずなんだけど、手の内は明かしてもらえるのか?」
「ふふん、知りたいやろ? それはな――」
雄一の質問に、はやては胸を張って自慢するように手にもつ杖を見せ、
突然、杖から火花が散った。
「これ、って、うわっちゃあ!?」
「主はやて! 大丈夫ですか!?」
慌てて杖を投げ捨てるはやてに駆け寄るリインフォース。
はやては、赤くなった掌を冷ますように数度息を吹きかけると、平静を取り戻した。
「あー、驚いたぁ・・・・・・ごめんなぁ、リインフォース。心配掛けて」
「それは構いませんから、手を見せてください! 火傷などしていたら!」
「大丈夫やったから落ち着きって。シャマル、お願いな」
「はいはい。お願い、クラールヴィント」
取り乱すリインフォースを車椅子上から手を伸ばして落ち着かせるとシャマルを呼び寄せると、掌に治癒魔法を掛けてもらう。
魔法の効果が現れ、白さを取り戻していくはやての掌に、安堵を洩らすリインフォース。
はやて達の騒ぎが落ち着くのを確認すると、雄一ははやてが投げ捨てていた剣十字に視線を向けた。
地面に転がる剣十字はいつの間にか待機状態に戻っており、十字架と管理局の仕様のストレージデバイスが転がっていた。
「これは?」
ストレージデバイスはひとまず置いておき、雄一は十字架を手に取る。
四端は槍の穂のような形をしているそれに、雄一の記憶が既視感を伝える。
(けど、何処で見た?)
少なくとも、半年以内のどこか、と範囲を狭めるがそれでも違和感は雄一の手をすり抜けていく。
やがて、雄一は匙を投げ、答えを知るはやて達に答えを求めた。
「なあ、はやてにリインフォース。これは何だ?」
「ん? ああ、それは私から切り離した夜天の書の端末だ」
雄一の声に振り返ったリインフォースは、雄一の手にある十字に気づくと、説明した。
その言葉に、雄一の違和感がスルリと溶けるのを感じた。
「ああ。何処で見たのか、と思ったら夜天の書の表紙にあったものと同じだな。けど・・・・・・」
端的なその説明に、雄一は首を傾げる。
「端末?」
「事件の後、私を守護騎士プログラムにコンバートしただろう? その際に、融合騎としての機能がパージされ、この形になったのだ。ならば、これを基に主には私の名を継ぐ新たな風を造ってもらいたいんだ」
「・・・・・・つまり、これはユニゾンデバイスの核のようなものってことか?」
「あながち間違いではないな。ただ、これはまだプログラムなどが整っていないため、それらも用意せねばならないが」
「まあ、そこらへんはリインフォースやユーノ君、技術部のマリーさんにも協力してもらってるんよ」
「協力、というと?」
「うーん、実は私にあうシステムが組めてへんのよ。今回のそれな」
雄一の問いに、はやては苦い顔を浮かべると、転がっていたストレージデバイスを指差す。
「それがとりあえず試作一号なんやけど、基本プログラムをベルカ式で組んだんよ」
「まあ、シグナム達がいるし、はやての魔方陣も基本ベルカ式だからおかしくはないな」
「せやけど、そうするとミッド式の術式を処理しきれへんみたいでな。今度は処理能力と管理能力に特化させてインテリジェントで組んでみるつもりなんよ」
「へー。けど、ユニゾンデバイスを用意するならリインフォースがいるんだからデータをコピーすれば」
「それが駄目なんだ」
雄一の言葉を遮り、首を横に振るリインフォース。
「どういうことだ?」
「基本フレームなら問題はないが、私の融合騎としてのプログラムは夜天の書にはバグと認識されてしまう。だから、私のデータを基にして新たに組まれたプログラムが必要なのだ」
確かに、融合騎の機能も夜天の書に後付けされたプログラムだ。
全てではないとはいえ、プログラムの歪みを正したのなら、歪んだ状態で付けられたプログラムに齟齬が生じるのも道理だろう。
「ま、これについてはじっくりとやるしかあらへんから、雄君も気にせんでええよ」
「いや、一応気に掛けるくらいはしておくけど」
「ほんまに、ええって。それより、私らの勝負の反省はこれくらいにして、次に移ろか?」
はやてが言い切り、それ以上話を蒸し返すのも筋違いか、と割り切り雄一もその提案に乗った。
「そう、だな。次は、っと」
「雄君達やね」
第二戦:榊雄一VS月村すずか
「すずか! 頑張って、雄一に目に物見せてやりなさい!」
「うん。頑張るよ」
「なあ、なのは。俺ってアリサに何かしたっけ?」
「えっと、そんなことはないと思うよ? アリサちゃんは自分が戦いたかっただけだと思うよ」
「なるほど・・・・・・自分の手で叩き潰したかったんだな」
「そうそう、って、え!? 違うよ!」
何故か、選手以上に盛り上がるアリサの応援を気負うことなく受け止めるすずか。
そのアリサの勢いに、雄一はなのはに問うが、なのはは旅行中のアリサのやる気から推測したことに、誤解を深めて落ち込んだ。
落ち込む雄一に、なのはは慌てて否定するが、雄一の耳には届かず、雄一は気落ちしつつもすずかと向かい合うように移動する。
「雄一君? どうかしたの?」
「いや、なんでもない。ただ、知らないうちに誰かに嫌われてるかもしれないってのは、思ったより堪えるな、と」
「え?」
「・・・・・・忘れてくれ。それより、ハンデはどうする?」
ため息一つで、気持ちを切り替える雄一。
雄一の確認に、すずかは予め考えていたのだろう、すぐに返す。
「雄一君のハンデは、
契約の能力は使ってもいいけど、私に血を流させないこと」
「・・・・・・そうくるか」
すずかの要求に、雄一は考え込むと、拳を握りこみ構える。
「他にないのか? ないなら、刀やナイフは使わずにこれで相手をしよう」
「ふぅん? 余裕みたいだね」
「別に。ただ、なのは達が面白い戦い方をしていたからな。俺もいくつか新しい技を使ってみたくなっただけだ」
「・・・・・・(反対しないんだ。土壇場で新しい技を使うくらいじゃ自分の勝ちは揺らがないって思ってるのかな?)」
あくまで余裕を崩さない雄一に、すずかは内心顔をしかめると、はやてとともに技術部に作ってもらったデバイスを取り出し、
「(だったら見返してみせる!)いこう、アルテミス!」
<Barrier Jacket,Setup>
バリアジャケットを展開した。
私服から、魔法使いのような三角帽にローブの姿に変わり、彼女のデバイスアルテミスが変化した杖を握った。
「バリアジャケットはそうしたのか。まるで魔女だな」
すずかの変身した姿に、雄一は同じくバリアジャケットを展開しながら、苦笑を浮かべつつ素早くその姿を観察する。
事前に確かめられた、すずか達の適正はミッド式。
それ故か、すずかはミッド式の特徴である射撃、特になのはのような中・長距離からの攻撃を意識しているのか、すずかのバリアジャケットは動き回るには不向きであろう、裾の長いローブ。
(だとしたら、順当なのは一気に距離を詰めて、反撃の隙を与えずに倒すことだな)
「始める前に、一ついいかな?」
観察から得た情報で策を纏めた雄一に、すずかがふと言葉を投げた。
「ん、なんだ?」
「雄一君が素手で戦うなら、ルールはどうするの?」
先ほどの勝負は、一撃先取だったが、素手で防御するのは有効なのか。
それとも、別の形式で戦うのか、と確認をするすずかに、雄一は首を横に振った。
「ルールは変わらない。ただ、そうだな。それなら、すずかの攻撃が有効になるのは頭と胴体ってことにしないか?」
「そういうことなら、いいよ」
「そうか。それなら、始まってから、魔法を発動するようにしよう」
『あー、決まったかな? それじゃ、そろそろ始めようか!』
雄一の提案に、すずかも特に反対することなく同意したことで、キリの良さを見て取ったエイミィが割り込んだ。
エイミィに言われ、二人は向かい合い、それぞれ構える。
『今回は雄一君も戦うからね! 私が開始の合図をさせてもらうよ! それじゃ・・・・・・開始!』
エイミィが高らかに宣言した瞬間、
雄一へと一気に迫ったすずかが振り下ろした杖を雄一が割り込ませるように振り上げた銃で受け止める甲高い音が響き渡った。