リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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閑話 反則?と読み合い

「って、銃!? もしかしてガン・カタ!? 雄一の奴、なんであんなの使えるのよ!?」

「あ、アリサ? ガン・カタって何?」

 

雄一の防御法に興奮するアリサの勢いに身を僅かに引きつつ尋ねるフェイト。

尋ねられたアリサは、咳払いをして落ち着きを僅かに取り戻すと、説明した。

 

「ガン・カタってのは見たとおり、銃の戦い方の一つよ。昔、とある映画で一気に有名になったんだけど、実際に使うのはバカかフィクションだと思ってたわ。至近距離で戦うから、相手は銃を避けにくいし、人間って意外と正面以外の視界が狭いから、銃と拳が視界の外から飛んでくることになるの」

「く、詳しいんだね、アリサは」

「アリサちゃん、映画の影響を受けやすいから」

「そうなの? なの」

「なのは、うっさい!」

 

思った以上の情報量に、目を白黒させながらも呑み込んだフェイトの一言に、去年に西部劇の映画を見たときの反応を思い出して苦笑するなのは。

丁度フェイトが勾留されている間の出来事であり、どういうことかと尋ねようとしたが、それより先にアリサがなのはを止めた。

聞きそびれたが、フェイトも深くは尋ねることはしまい、と話題を変えることにした。

 

「でも、話を聞いている限り悪い方法じゃないようだけど?」

「銃のメリットがないでしょ。銃は遠距離武器なのよ? 近づいて撃ってどうするの」

「あ」

 

アリサの指摘に思わず頷くフェイト。

その様子に苦笑しつつ、ふとアリサは首を傾げた。

 

「そもそも、なんであいつはあんな曲芸みたいな真似が出来るのよ? ガン・カタなんてちょっとやそっとじゃできないはずだけど」

「あ、それなら私、前に聞いたことがあるよ」

 

アリサの疑問に、手を上げてアピールしたのはなのは。

 

「<クフ・リーン>さんが教えてくれたけど、雄一君は前に<クフ・リーン>さん達と契約していた人達の戦い方を真似しているんだって。だから」

「ああなるほど。その中にああいう戦い方をする人がいたってことね」

 

なのはの説明にすぐに理解を示すアリサ。

その友人の聡明さに、出鼻を挫かれたなのはは肩を落とした。

ただ、この場に雄一がいれば、アリサ達の推測に苦笑し、カナメ達は否定するだろう。

もともと、ヴァレンシュタイン家の使用人の中で銃を使う者は少ない。

中にはガトリングガンを使う者もいたが、そのような例外を除けば実質三人であり、その内の一人は契約者ではない。

だが、最も銃の扱いに秀で、雄一が動きを参考にしているのがその人物のものだ。

では、何故、雄一が彼の動きをトレースできるのか。

それには二つ理由がある。

一つは、<クフ・リーン>の存在。

彼の銃技を<クフ・リーン>は契約主と同じく驚嘆しながら見ていたのだから。

その記憶は、雄一にも渡っている。

もっとも、記憶を再生されたのは最初の時のみで、あの現象はそれ以来起きていないのだが。

とはいえ、所詮は記憶。

その記憶と現実の誤差を生めたのが、もう一つの理由である去年のクリスマスの暴走体戦だった。

あのときに現れたドミニクの動きは、手本として余りあるものだった。

それまでは、雄一は主武装を刀と投げナイフにしており、銃による攻撃は重視していなかったが、それを機会と見直しだしたのだ。

それをこの場で切ったのだろう。

 

「けど、なんで雄一君、銃なんて使ってるの? あれって反則じゃないの?」

 

すずかの振り下ろした杖と鍔迫り合う銃を目にして、なのはは憤慨する。

だが、それにヴィータは反対した。

 

「別にあれは反則じゃねえよ」

「え? なんで?」

「考えてみたら判るだろうが。ユウのやつは『刀もナイフも使わない』って言っただけだ。別に銃を使わないとは言ってないんだよ」

「あー・・・・・・って、そんなんありなん!?」

「当然です」

 

なのはへ説明するヴィータに、思わず納得しかけるが驚くはやて。

だが、あっさりとシグナムに頷かれてしまった。

説明を求める視線がはやてだけでなくフェイト達からも向けられる中、シグナムは語る。

 

「戦いはいかに相手の裏をかくか、意表を突くかです。卑怯というのはよほど道を外した相手でなければ、むしろ誉め言葉といえるでしょう。そして、あいつはそういうのが上手いのです」

「そらまぁ、雄君の強さは私らもよく知ってるけど」

「ああ、いえ、主が思うほど雄一は強くはないでしょう」

「・・・・・・。は?」

 

シグナムの思わぬ言葉に、目を丸くするはやて。

なのはやフェイト、同じヴォルケンリッターであってもそう思っていなかったヴィータも目を丸くするが、シャマルやザフィーラも否定する様子はない。

 

「ど、どういうことなん? 雄君が強ないって」

「もちろん、弱いとは言いません。ただ、いくら雄一とて全てが秀でているというわけではないということです」

 

そう言い、シグナムは雄一達の戦いに目を向けた。

 

 

 

 

 

「それで、どうやったのかな?」

「何がだ?」

 

鍔迫りから繋がった前蹴りを素早く飛び下がることで回避したすずかの問いに雄一は聞き返した。

 

「さっきの不意打ち。防がれるだろうな、とは思ってたけど、それでも聞いておきたかったの。どうして、飛行魔法じゃなくて別の魔法だと判ったの?」

 

すずかの先ほどの加速。

それは、開始と同時にすずかが展開した身体能力強化によるものだ。

すずかの行動もルールには抵触しない。

ルールでは、『魔法の発動は試合が始まってから』とされており、開始前に展開準備をしておくことは止めていない。

その穴を残したのは、雄一も仕掛けるつもりだったからだ、とすずかは読んだ。

だから、カウンターを入れるつもりで行動を起こした。

そうすれば、強化された身体能力と、素手と杖というリーチの差で先取できるはずだった。

第一戦でなのはとはやてが開幕早々に飛行魔法を使っていたことも、空からの攻撃を第一に考えていることを印象付けられると踏んでいた。

だが、蓋を開けてみれば雄一が取った行動は防御。

その理由を聞くすずかだったが、

 

「さあね。ただの勘だったり?」

 

雄一は煙に巻くように答えをはぐらかした。

その反応に、流石のすずかも少々むっとしたようだったが、雄一も内心では

 

(あ、危なかった!? ちょっとでも遅かったら、あれで終わってた!)

 

落ち着くのに必死だった。

雄一がすずかの奇襲を避けられたのは、あらかじめ<クーリ・ブリウ>に干渉し知っていたからだ。

ルールで禁止されたのは、魔法の発動のみ。

そのため、すずかの初動を予測するつもりだった。

だが、予測したとおりに攻撃を誘導しなければ、すぐに切り返されてしまうだろう。

そのため、雄一は回避行動に入るのをギリギリまで待つ必要があったのだ。

 

「考え事なんて、余裕だねっ!」

「っと!」

 

再度踏み込むと共に振るわれる杖を回避すると、それを予想していたように石突が雄一めがけて迫った。

 

「これ、で!」

「吹っ飛ばせ、<ルー・グー>!」

 

迫る一撃に、すずかへ斥力を掛けようとし、

 

すずかの浮かべた笑みに気がついた瞬間、掌を地面に向けて自身を弾き飛ばした。

無理な体勢で負荷を掛けたために身体に走る痛みを堪えつつ足から地面に降りる雄一にすずかはしたり顔で聞いた。

 

「あれ? どうかしたの?」

「・・・・・・いや」

 

その笑みに、すずかの企みを悟った雄一は苦い思いを隠しきれずにそれだけを返した。

 

すずかの求めたハンデは出血させないことだったから、雄一は破壊力の高い<クフ・リーン>や<ダー・グッザ>さえ使わなければいいだろうと考えていた。

だが、それが甘い考えだった。

おそらく、ルール的にはどれほど少量でも出血をさせてしまえば雄一は敗北となる。

ならば、すずかは自身への攻撃を僅かでも掠らせてしまえばいいのだ。

先ほどの<ルー・グー>も、すずかを吹き飛ばしていたら、おそらく無抵抗で吹き飛び、受身も取らずに落ちるだろう。

無論、彼女にもかなりの痛みはあるだろうが、それよりも勝ちをとりにいったのなら、その執念には正直に言って恐ろしいものがあった。

 

(けど、状況が不味いことには変わりはないな)

 

さらに不味い可能性に気がついてしまった雄一は、舌打ちしそうになった。

すずかに出血させうるのは何も雄一からの攻撃だけとは限らない。

すずかの攻撃を防いだときに傷つける恐れもあるのだ。

 

「だから、考え事をしている余裕はないよ!」

「っ!」

 

こめかみを狙って迫る杖頭をスウェーで辛うじてかわし、カウンターの蹴りを打つ雄一。

だが、すずかも蹴りを慌てず横にずれることで避け、伸びきった足めがけて杖を振り下ろし、

 

「っ!?」

 

何かに慌てるように杖を引き戻して跳び下がった。

そのすずかの挙動に不審を抱きつつ雄一も跳び下がると、いつの間に止めていたのか深く息を吐いて流れてきた汗を拭った。

 

(これは・・・・・・思った以上に不味いかも)

 

 

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