リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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三ヶ月ぶりです。
やっと、やっと、帰ってこれました!
実習、死ねる……事前準備も死ねるけど、実習中の緊張感ハンパねぇ……。


閑話 驕りと騙り

「なんや、雄君が押されてる?」

 

すずかの攻めに、ぎごちなく回避に徹する雄一の姿に、はやては目を疑った。

なのはやフェイトに目を向ければ、彼女達はより深い驚きに声を失っている。

事情を知らずすずかの優位を喜ぶアリサを除いた三人の反応に、シグナムは然りと頷く。

 

「まあ、無理もないだろう」

「シグナム、どういうこと?」

「それは、」

「雄一君の弱点のことね」

 

はやてに問われ自分の推測を答えようとしたシグナムだったが、シャマルに割り込まれ口を閉ざした。

 

「シャマル? てっきりシグナム(バトルジャンキー)の解説やと思っとったのに」

「待ってください、主はやて!? いま何か妙な呼び方をしませんでしたか!?」

「はやてちゃん、ひどい!? 私だって守護騎士なのに! 守護騎士の参謀役なのに!」

「じょ、冗談やって二人とも・・・・・・それで、雄君の弱点てどういうことなん?」

 

詰め寄るシグナムとさめざめと泣くシャマルを宥めつつ、はやては話の先を促す。

 

「くすん。えっと、はやてちゃんは雄一君の能力の弱点、というか条件を覚えてる?」

「条件いうたら・・・・・・たしか、対価と制約やったっけ?」

「そうね。けど、雄一君は対価の影響を受けないそうだから、実質制約くらいね」

「それがどうしたん? それだけなら、雄君も攻め手を緩めるとは思えへんのやけど」

「それには、すずかちゃんの出した条件が影響するの。雄一君の能力はデバイスを通さないから非殺生設定が通用しない。血を流さないって条件がある以上、小さい傷でも警戒してしまって、迂闊に使えなくなっちゃってるの」

「んなアホな。雄君は能力を使わんでもガチンコで結構やれるやん?」

 

以前見た、雄一とザフィーラの組み手を思い出して反論するはやてだったが、シグナムが否定する。

 

「確かに雄一の体術もたいしたものです。ですが、今度は意識が問題になるんです」

「意識?」

「相手を躊躇なく殴れるか、ということですよ。我々は長年の経験がありますし、タカマチ達であれば非殺生設定があるから、ある程度躊躇いを無くせます。しかし、雄一のあれはそうはいきません」

「けど、それだけじゃ、説明が付かないんじゃ?」

「そうだよ! だって雄一君の能力は何も傷つけるだけじゃないよ!」

「テスタロッサの疑問は正しいし、タカマチの指摘も尤もだろう。雄一の能力には拘束に使えるものもあるそうだからな。だが、それはまた問題がある」

「どういうこと?」

 

尋ねるフェイトにシグナムは答えようとし、

 

「おい! ユウが動いたぞ!」

 

ヴィータの言葉に、再び意識が雄一達へと戻されるのだった。

 

 

 

 

(失敗だったなぁ・・・・・・)

 

すずかは内心ため息をついた。

先ほどの一合で、すずかは反射的に杖を振るっていた。

そのまま振るっていれば、雄一の足を捉えていただろう。

雄一が出した条件である手足への攻撃の無効。

もちろん雄一は、自身が防御行動をとっていなかった場合まで限定していなかっただろう。

だが、その条件がすずかへの枷となっていた。

すずかの体には吸血鬼の血が混じっている。

だからか、彼女の身体能力は高く、腕力も同年代の女子と比べて強い。

体育の授業で使うが、その力で人を傷つけることを恐れたのだ。

もちろん、デバイスが姿を変えたこの杖、アルテミスには非殺生設定が反映されているだろうが、すずかはその効果をいまいち信じ切れなかったのだ。

 

(もし、怪我をさせちゃって、嫌われたら・・・・・・)

「ああ、それで下がったのか」

「え!?」

 

すずかの思考に割り込んだ雄一の声に、すずかは顔を跳ね上げた。

見れば先ほどまで怪訝そうにしていた雄一が、得心がいったように笑みを浮かべている。

だが、その笑みに不穏なものを感じたすずかは一歩後ずさった。

 

「必要以上に傷つけたくない、か。優しいすずからしい、っていえばそうなんだけど、正直甘い」

「っ!?」

「模擬戦とはいえ戦いなんだ。傷つくのは当たり前。そもそも、俺はすずかが手を抜いて勝てるほど弱いつもりはないんだけど?」

「そ、それは!」

<落ち着いてください、お嬢様>

 

まるで思考を読んだかのような雄一の言葉と変わった雰囲気に警戒を強めるすずかだったが、アルテミスがその動揺に水を差した。

 

「っ、アルテミス?」

<落ち着いてください。おそらく、彼の言葉は事前になのは様やフェイト様からお聞きした契約による異能かと推察します>

 

アルテミスに言われ、すずかも雄一が何をしたのか思い至った。

雄一の持つ数々の異能。

旅行の間に、新たに魔法に触れたはやて達はなのは達から彼女達が知るかぎりの契約の異能を聞いていた。

まるですずかの内心を読み取ったような言葉は、<ハヌ・マーン>で思考を読んだのだろう。

 

「(だったら、この狙いはもうバレた!)なら!」

「遅い! <ダー・ナーン>!」

 

バレた作戦を捨て、すずかはバックステップで距離を取ろうとするすずかに先んじて雄一は地面に掌を叩きつけた。

それに応えるように、二人を遮るように太い蔓が天へ向けて生える。

 

「な、何!?」

<植物の幹・・・・・・花粉などに毒性は確認できません。目晦ましかと>

「だったら、っ!?」

 

左右に幹を避けて雄一へ迫ろうとしたすずかはすぐに足を止めて大きく飛び下がった。

すずかの眼前で、幹が突然色を緑から白っぽい灰色に変えた。

途端、灰に変わった幹を反対側から雄一の拳が打ち据えて崩す。

雄一の一撃にバランスを崩された灰は、形を崩しながらすずかへと倒れこんだ。

 

<お嬢様!>

「判ってる!」

 

すずかはすぐに飛行魔法を展開すると灰の雪崩を避けるため飛び上がる。

だが、一歩反応が遅れ、灰はすずかを呑み込んだ。

 

「「「すずか(ちゃん)っ!」」」

「っ!」

 

姿を消したすずかに、なのは達が悲鳴を上げるがすぐに灰の波を突き破ってすずかが飛び上がった。

灰の中で息を止めていたのだろう、深く息を吸おうと口を開き、

 

「残念」

「え?」

 

上空で待ち構えていた雄一がすずかの背後に現れ、首筋に手刀を落とした。

反応する前に、雄一によって意識を断たれたすずかは短く驚きの声を上げ、

 

 

その姿を解れさせた。

 

「・・・・・・は?」

「・・・・・・っ!」

 

思わず動きを止めてしまった雄一に、灰の中で息を潜めていたすずかが構えた杖から銀の魔力弾を放った。

撃ち出された魔力弾は放たれた瞬間色を失い透明に変わった。

 

「見えなければ当たるとでも思ったのか!」

 

迫る魔力弾に、我に返った雄一は小さく、しかし余裕を持って回避する。

そのまま、カウンターへと繋げようと足に力を込める雄一。

だが、次の瞬間、突然魔力弾が色を取り戻すと弾けて銀の魔力を溢れさせた。

その魔力は鎖となり、雄一の腕と足に絡みつき宙に縫い止めた。

急な制動に、身体に掛かった負荷に顔をしかめながら、雄一は身体を見下ろし、目を見開いた。

 

「こ、これは!? バインド、それも誘導型!?」

 

ほとんどの者が設置型を使うため忘れていたが、なのはのバインドは誘導型である。

だが、それは何もなのはの専売特許ではない。

すずかは巧くその穴を突く形になり、雄一の傍へ操作することで四肢を絡めとったのだ。

 

「っ、けほ! 上手くいったね」

「今のは、幻影か?」

 

灰を少し吸い込んだのか咳き込むすずかに、時間稼ぎか拘束されたまま質問する雄一。

 

「うん。私はなのはちゃん達と違って砲撃魔法は平凡だけど、幻影魔法(これ)なら負けないみたい」

「それに思いっきり嵌ったわけだ」

「そういうこと。だから」

 

苦笑しながらもバインドを解除しようとする雄一へと、すずかは油断せずに近寄らず、杖を雄一に向けた。

 

「砲撃で一気に決めるよ! バスターセット!」

<畏まりました>

 

すずかの指示にアルテミスの先端にスフィアが作られ、大きさを増す。

今まですずかがミッド式の基本である射撃ではなく、杖による直接攻撃を行っていたのか。

すずかもアリサも魔力量が多くないこともあるが、魔法にふれて一週間程度ということから、なのはやフェイトだけでなくユーノとリニスを教師陣として行った訓練で、「射撃は確実に倒せる時に使う」よう言い聞かされていたからだった。

その教えに従い、まさに全霊を込められていくスフィアに集まっていく魔力に雄一は顔をひきつらせた。

 

「おいおい・・・・・・そんなものまで、なのは達から教わったのか」

「みんなで雄一君に勝つために特訓したからね!」

 

砲撃を含む遠距離からの攻撃。

魔力弾程度の魔力しか一度に放出できない雄一を相手取るなら、それが有効だというのが旅行中に皆でたてた雄一対策だった。

もちろん、雄一には契約の異能を使った遠距離攻撃もあるため、後はそれをどう押さえるかだったが、すずかは自分を使って条件をクリアしていた。

 

「これは不味いか!?」

「これで決めるよ!」

 

着々と大きさを増すスフィアに、冷や汗をこぼし何とかバインドを解除しようとするが、<フェル・ディア>で解こうにもバインドは雄一の肘や膝の近くを固定しているため届かず、さらに念入りに準備されていたのかビクともしない。

 

 

「(なら、解除は一端置いておく!)だったら!」

 

雄一が足掻く間にも着々とすずかのチャージは進んでいく。

 

「ルナ――」

 

そして、チャージが完了する瞬間、

 

――ニャァアアアア――

 

「バスター!」

 

猫の鳴き声がすずかには聞こえた気がした。

 

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