リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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今日からゼミの旅行で九州に。
楽しみだけど、ゼミメンバーとあまり交流がないから辛い…。
では、本編どうぞー。


閑話 違和感と決着

「バスター!」

<Lunatic・Buster>

 

猫の鳴き声が聞こえた気がしたが、すずかは気の所為かとすぐに頭を切り替え、チャージが完了するやすぐに雄一に放った。

瞬間、すずかの想定以上の銀色の奔流が奔った。

 

「んぅっ!?」

 

思いがけない反動にすずかは呻くが、すずかの想定以上の魔力が込められた砲撃が雄一へと伸びる。

なのはのディバインバスターに迫る威力を持ったすずかの銀の砲撃は捕らわれたままの雄一へと迫り、

 

「残念でした」

 

いつの間にか、一歩分ほど立ち位置を横にずらしていた雄一に紙一重で避けられた。

 

「っ、いつの間に!?」

<彼の立ち位置に誤差・・・・・・転移の魔力はなし!? ならば高速移動・・・・・・ですがそのような異能はなかったはず!?>

 

必殺の一撃を回避されたショックに驚くすずかとアルテミス。

 

「別に驚くことじゃないだろ? さっきの会話から俺が考えを読んでいることを理解して、接近戦がむしろ危険だってことを理解した。だから、遠距離からの攻撃に切り替えた。バインドで回避を封じているし、破壊しようにも手首じゃなくて肘や膝で固定していたから抜け出すのは困難。さらに、条件で契約による攻撃が使えず、俺の乏しい魔力相手なら、すずか達の魔力でも競り勝てる」

 

だけど、と続ける雄一。

 

「一歩詰めが甘い。遠距離からの攻撃は着弾までの時間が掛かるし、狙うのは一点だ。避けるならそこから体をずらせばいいだけだ」

「け、けど、どうやって私が狙ったところが判ったの?」

「俺の能力について知ってることを共有しているだろうが、教えておこうか。こういった一対一の場で相手の狙いを知ろうとしたら、まず視線を探る。これが、達人級なら別の場所に視線を誘導するフェイントもあるけど、すずか達はまだそんな技を使えるはずもないから除外。だから、視線の先に狙いがあることが判る。けど、それだけじゃない。視線を探るってことは、目が合うってことだ」

「あ・・・・・・」

 

何を思い出したのか苦い顔で言う雄一だったが、その台詞に驚くすずか。

目を合わせる。

そう言われて思い出されるのは、<ハヌ・マーン>の制約だ。

目を合わせれば狙う地点を読まれてしまう。

ならば、距離を空ければいいかといえば、多少広い公園とはいえ、距離を空けようとすれば雄一だって追ってくる。ならば、一度身を隠すところだが、雄一はそれを許さないだろう。

幻術を使って隙をつくことも考えたが、一度見せた以上雄一も警戒しているはずだった。

十分な距離を空けられないすずかでは、遠距離の利点は潰されることになる。

 

「なら、もう一度距離を詰めれば!」

「させるかよ」

 

懐に入ろうとして地を蹴ろうとしたすずかの身体がガクンと止まった。

驚くすずかの足下、彼女の影に蜘蛛の巣のように解れた影が絡みついていた。

 

 

「すずかの動きが止まったっ?」

「ん・・・・・・たぶん、<クフ・リーン>さんだと思うの」

 

アリサの驚きに、二人の足下に目を凝らしたなのはが正体を悟った。

 

「<クフ・リーン>って、たしか影を操る精霊で、影に触れられたら本体も操られる、だっけ? でも、あれって影で触られてもダメなの!?」

「う、うん。たしか」

「何でそれを忘れてたのよ!」

「ご、ごめんなさい~! け、けど、それならフェイトちゃん達だって!」

 

重要な情報をど忘れしていたなのはは、アリサの剣幕に矛先を散らそうとする。

実際、見知っているなのはより、一度経験しているフェイトの方が詳しいのは確かだろう。

矛先を向けられたフェイトは苦笑しながら、アリサを宥めた。

 

「アリサ、なのはの言うとおり、私達も忘れちゃってたから、なのはを放してあげてくれないかな?」

「う・・・・・・ああもう!判ったわよ!」

「まぁまぁ、落ち着かなあかんよアリサちゃん。せやけど、なんで今まで使わなかったんや?」

 

なのは達魔導師組みは互いの戦法はもちろん契約の異能、特に、威力の大きい<クフ・リーン>や<ダー・グッザ>、そして、汎用性の高い<沙波>などには注意していた。

契約の異能は、魔法とはメカニズムが違い、応用の幅が広いなどの利点があるが、一方で能力の正体や制約が明らかになると、こうやって対策が立てやすい一面がある。

だから、<クフ・リーン>など強力な精霊を温存していた、といえるかもしれないが、はやてはどこか釈然とせず首を捻っていた。

 

「それは雄一が、「私達が対策を立てる」前提で動いたからだと思うよ」

「対策を立てる前提? フェイトちゃん、どういうことなん?」

「はやて、私やなのはは闇の書事件の時に雄一と戦うためにカナメ達から契約の能力について聞いてるんだよ。だから、どういった能力なのかもどう対応すればいいのかも判ってる」

「それは、せやろな。そやないと、あんなスラスラと作戦は立てられへんやろし」

 

合宿の合間に、魔法新規組に行われた説明会の様子を思い出して納得するはやて。

はやての理解を待ってフェイトは話を進める。

 

「これはカナメから教わったことだけど、契約者の戦いは先手必勝が基本らしいんだ。自分の能力を明かされる前に相手を倒さないといけないからね。だけど、雄一はその能力を私達に知られているでしょ? 能力を使うにしてもタイミングを見計らっていたんだよ」

「あ! せやから、対策を立てとる前提なんやね! せやけど、それならもっと前に使えばよかったんやないん? 最初の殴り合いの時に影で括ってもうたらもっと楽やったやろ?」

「それは・・・・・・」

「おそらく、タイムラグが問題だったのでしょう」

 

はやてのふとした疑問に答えたのはザフィーラだった。

ザフィーラへと一同の視線が集まる。

 

「契約の能力は強力なものほど発動にタイムラグがあるように思えます」

「タイムラグ?」

「これはまだ確信には至っておりませんが、おそらく強力な精霊は能力を発動するまでにタイムラグがあるのでしょう」

 

ザフィーラの指摘に、驚く一同。

事実、ザフィーラの推測は正しい。

<クフ・リーン>を例にすれば、応用の幅が広いメリットはあるが、どの対象の影にどのように干渉するかを設定する必要がある。

逆に、発動速度の速い<ルー・グー>などは、能力の幅が狭い代わりに、どの対象を吹き飛ばすか引き寄せるか、程度の設定で済む。

 

「今まで使わなかったのは彼女(すずか)が接近戦を選んだのが原因かと。あの距離では能力を使うより殴った方が早いでしょうから。もちろん、そこまで極端に差があるわけではなく、瞬き程度の間でしょう。ですが、我々のような近接戦闘を行う者にとっては一瞬の差が大きく影響するのです」

「うーん・・・・・・判ったような、判らんような。せやけど、雄君の勝ち、ゆうことでええんか?」

「ううん。はやて、まだ勝負はついてないよ」

 

ザフィーラに確認しようとするはやてに否を挙げたのはフェイト。

 

「どういうことなん?」

「たしかに、雄一はすずかを抑えてる。けど、あの能力は雄一も動けなくなるの」

「はぁ・・・・・・ん? ちょい待って? 動けやんって、それでどうやって一撃入れる気やねん!」

 

フェイトが言おうとしていることを理解して、はやては叫んだ。

聞けば、あの能力は並行使用しようとすると、「触れた相手を止める」程度まで下がるらしい。

そうなると、雄一は足を止めたまま、一撃を入れなければならないが、雄一の魔力弾ではすずかの防御は抜くことはできないだろう。

はやての疑問に、フェイトは苦笑を浮かべる。

 

「うん、はやての疑問ももっともかな。固められて動けないすずかと違って雄一は足以外は動かせるんだけど・・・・・・<ルー・グー>を使って、拘束が解けてすずかが回避に入る前に何かをぶつける、って感じかな」

 

契約の並行使用をすると、影の拘束は外れる。

なら、そこから発動速度の速い<ルー・グー>に繋げる、と予想するフェイト。

もちろん、一撃を入れれば決着、とはいっても模擬戦である以上ある程度の威力はいる。

なら、加速させた物体――たとえばゴム弾あたりか――をバリアジャケット越しに打ち込むことで、血を出さずに一撃とする、といったところか。

 

(この方法でも、確実に血が出ないとは限らないけど)

 

それが判らない雄一じゃない、と思うフェイトだったが、それくらいしか雄一の勝利方法が浮かばず、戦況に目を戻そうとし

 

「すずかちゃん! 避けて!」

「え!?」

 

なのはの叫びに目を丸くした瞬間、

フェイトの目に、

雄一が手刀に構えていた右腕を振り抜き、

すずかの首から血が吹き出す光景が映った。

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