地味にシンドい・・・・・・。
まだ、本編に入らず、日常編・・・・・・です?
母さんに挨拶をして、ランドセルを背負い、家を出る。
向かう先は、聖祥行きのスクールバス乗り場。
今日は、いつもより遅れ気味なので若干小走りで行くことにする。
「しかし・・・・・・ホントなんだったんだろうな、あの夢?」
足を動かす速度を落とさぬまま、腕を組んで考え込む。
自分が何かに作り変えられるような感覚・・・・・・正直また味わいたいものではない。
何故あんな夢を見たのか?
「・・・・・・っと、考えている間に着いたか」
気づけばバス停まで来ていた。
丁度バスも着いたところなのか、まだ乗り込む人が短いながら列を作っている。
列の後ろにつき、順番を待って乗り込んだ。
バスのなかは程々に混んでいる。
さて、空いている席は
「あ! 雄一、こっちこっち!」
「雄一君、こっちだよ」
席を探す俺にかけられる声が二つ。
それと同時に、
ギロッ!!
周囲の男子から鋭い視線が向けられた。
「・・・・・・おはよ。アリサ、すずか」
視線に辟易しつつ、声をかけた二人に応える。
手を大きく振っている金髪の少女はアリサ・バニングス。
対照的に控えめに手を振っている紫の混じった黒髪の少女が月村すずか。
二人とも縁があったというべきか、友人と言える二人だ。
二人・・・・・・?
「アリサ、なのはは?」
「また寝坊じゃない? あの子、ぽけぽけしてるから」
「ぽけぽけ、て」
まぁ、否定しきれないけど。
なのはこと、高町なのは。
彼女は、アリサ達に加えた三人で行動することの多い娘で、駅前の喫茶店『翠屋』の娘さんの一人だ。
そんなことを考えていると、
「・・・・・・ってー」
「ん? 何か言った、アリサ?」
「何も言ってないわよ?」
「じゃあ、すずか?」
「うんん? 違うよ?」
「「「??」」」
三人揃って首を傾げる。
「待ってー!!」
今度ははっきりと聞こえた。
窓の外を見ると茶髪のツインテールの少女が必死に走ってくるのが見えた。
というか、なのはだった。
時計に視線を移すと、もうすぐ発車時間だ。
なのはの様子だとギリギリ間に合わないかな。
「・・・・・・仕方ない」
鞄を二人に任せると生徒達を掻き分け、運転席に近づく。
「すみません。もう一人来るんで、ちょっと待ってくれません?」
運転手さんに声をかけると、片手を上げて了承してくれたので席に戻る。
「ただいま」
「おかえり。運転手さんに頼んできたの?」
「気がつかずに発車したら、遅刻は確定だからな」
「雄一君、優しいね」
笑顔で言ってくるすずかに肩をすくめることで応える。
待つことしばし。
なのはがバスに乗ってきた。
「なのは、こっちだ」
「おはよーなの。雄一君、アリサちゃん、すずかちゃん!」
きょろきょろしているなのはに声をかけると、駆け寄ってきた。
なのはが来たら、座席を譲って三人の後ろの席に移動する。
「にゃ? どうしたの?」
「座席、三人掛けだろ? 三人で座るといい」
「けど、それじゃ雄一君が仲間外れみたいだよ?」
「んな事思ってねえから。三人から離れた席ってわけじゃないし」
「そうだけど・・・・・・」
「なのは、そう言ってくれてるんだから」
「ありがとう、雄一君」
渋るなのはを二人が宥め、なのはも矛先を納めて席に座った。
それを確認して、俺は窓枠に肘をつき頬杖をつき、聞くともなしに三人の会話に耳を傾ける。
耳を傾けていると、ふとした瞬間に違和感が強く胸を打った。
「雄一君? どうかしたの?」
「え? 雄一君、何かあったの?」
「何かあった?」
すずかが逸早く気がつき声をかけると、なのはとアリサが続いた。
それに俺は首を横に振ることで応えた。
「なんでもない。身体は健康だと思うけど、今朝から妙な違和感が続いているだけだ」
「違和感?」
「ああ。今朝もなんか妙な夢を見るし」
「どんな夢を見たのよ?」
「そうだな。まるで、自分が何か別のものに作り変えられるような、というかそんな感覚の後に、宙に放り出されるといった感じだった」
言うと、三人は複雑そうに顔をゆがめた。
「なんというか・・・・・・変わった夢、だね?」
「にゃははは・・・・・・」
「でも、ホント変わった夢ね。『作り変えられる』『宙に放り出される』ってことはどっちも現状からの変化を望んでるってことかしら?」
苦笑するすずかとなのはに対し、アリサは何処からの影響かそんな薀蓄を語っている。
その三人の様子に苦笑して言った。
「だから、気にすることじゃないよ。どうせただの夢だって」
「けど、あんた今でもその違和感って感じてるんじゃないの?」
「・・・・・・まあ、そうだけど」
誤魔化しきれず、心配そうな視線を向けるなのは達から視線を逸らしてしまう。
「・・・・・・まあいいけど。何かあったら言いなさいよ?すぐに病院に連れて行くから」
「ありがと」
アリサに礼を言ったところで、バスが止まった。
三人を促してバスを降りて校舎に向かう。
さて、此処で言っておくけど俺は友達が少ない。
零でないだけ救いとでも考えなきゃやってられない現状だが、その原因の一端はなのは達の存在だ。
彼女達はかなりの美少女といえる。
その三人と親しくしているからだろう、やっかみからか殺意の篭った視線が向けられるのだ。
今も、
「おはよーなの!」
「おはよ!」
「おはよう」
「はよー」
なのは、アリサ、すずか、俺の順に教室に入ると、すずかと俺の間で視線ががらりと変わった。
男子勢の視線が殺意に変わっている。
その殺意で何回俺は殺されるんだろ?
「おはよ、雄一」
席に鞄を置いたところで、後ろの席に座る男子が声をかけてくる。
「おはよう、真一」
こっちも挨拶を返す。
こいつは白塚真一。
こいつとは名前が似ていることで仲良くなった。
数少ない男子の友達で、なのは達と喋っていても殺意を向けることのない存在だ。
何故コイツがそうかというと、
「で? 今日は何を描いていたんだ?」
「今日は下の花壇だね」
真一の広げたスケッチブックを覗き込むと淡いタッチで描かれた花壇があった。
十分上手いと思うんだが、
「けど、やっぱりしっくり来なくて・・・・・・。何が駄目なんだろ?」
真一はどうやら不満らしい。
このように、真一は絵描き馬鹿とでもいう人間で、彼女達に熱狂するような人間ではないからだった。
「そういえば、どこか顔色が悪いけど大丈夫?」
「・・・・・・お前もか、真一」
真一からも指摘され、顔をしかめる。
訳を知らない真一は首を傾げたところで始業のチャイムが響いた。
「なるほどね、そんな夢を」
真一に訳を説明した休み時間。
彼は俺の話に神妙に頷くと、
「気のせいじゃない?」
ばっさりと斬った。
その様子に思わずこける俺。
「お、お前なあ・・・・・・」
「いや、だってさ。夢は記憶の整理として起こることだけど、だったら雄一はその感覚を体験してる、ってことでしょ?」
「そうなる・・・・・・な。けど、俺はどっかの組織に変な薬を呑まされたわけでも、不思議な下駄に子供にされたわけでもないぞ。九年普通に生きてきたつもりだ」
「でしょ? だったら気にしなくていいんじゃないかな?」
「それもそうだな。けど、お前に言われるとは・・・・・・」
「別におかしいことじゃないと思うけど・・・・・・ホラ、言うでしょ? 『下手の考え休むに似たり』って
「・・・・・・俺はお前の年がわからなくなりそうだよ。お前ホントに九歳児?」
雄一に言われたくないよ、と苦笑する真一に礼を言うとともに苦笑を返してやりながら。
いまだ肥大化を続ける違和感に僅かに顔をしかめるのだった。