リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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前話のタイトル、忘れてたー!
慌てて、つけました。
今回はちょっと難産でした。
では、お楽しみください。


第十七話 見えぬ支えと新たな契約

「いいかげんにしなさいよ!!」

 

昼休みの教室にアリサの怒声が響いた。

何事か、と振り返ると肩を怒らせたアリサが椅子に座っているなのはを見下ろしている。

アリサはさらに、二三言葉を叩きつけると、教室を出ていってしまった。

すずかはおろおろと両者の間で視線を動かしていたが、なのはが何か言ったか、アリサの後を追った。

 

「しかし、いったい何があったんだ?」

「ボーッとしている高町さんにバニングズさんの堪忍袋が切れた、って様子だったよ」

「そうなのか、真一?」

 

問うと真一は、聞こえた限りは、と言って頷いた。

どうやら、なのはにはあの旅行の時のフェイトとの会話はショックが大きかったようだ。

あれからどことなく上の空が続いているとは、思っていたが、こうして問題として吹き出すとは思っていなかった。

 

「なのは」

 

席で俯いているなのはに歩み寄り声をかける。

 

「雄一、君・・・・・・何の用かな?」

「ちょっと来てくれ」

「・・・・・・後じゃダメかな」

「・・・・・・わかった。放課後、話がしたい」

「・・・・・・」

 

返事はなかったが、今は大人しく下がる。

これ以上無理を通そうとすれば、大きな亀裂になるだろう。

教室を出て、アリサ達を追うことにする。

廊下には姿が見えなかったが、

 

「聞き分けろ、<デル・ドーレ>」

 

聴力を強化して周囲の雑音をより分けていく。

そこから二人の声を感知し、その声がより強くなる方に歩いていく。

着いた先は屋上。

フェンスの傍に二人の姿があった。

その背に声をかけると、二人は驚き振り返った。

 

「雄一!? あんたいつから!?」

「ついさっきだ。なあ、アリサ。なのはから相談されなかったのがそんなに許せないか?」

 

聞いた話と普段のアリサの様子から俺なりに考えた理由を問うが、アリサは首を横に振った。

 

「違うわよ! あんなに無理しているって分かる顔しているのに、何も相談されずに一緒に悩んであげることもできないことが悔しいのよ!」

「そうか」

 

少なくとも、なのはを嫌いになったのではないらしく、胸を撫で下ろす。

安堵しつつ、笑みを浮かべる。

 

「やっぱり、アリサは優しいな」

「なっ!?」

「なのはの力になりたくて、少なくとも心配事を減らしてあげようとしたんだろ? アリサはなのはの事が好きだからな」

「・・・・・・当たり前じゃない」

 

不貞腐れたように言うアリサ。

その様子に首を傾げていると、すずかが笑みを浮かべていることに気が付いた。

 

「どうしたんだ、すずか?」

「ううん。実は、さっき私もアリサちゃんに同じことを言ったから」

「そうなのか?」

「う~! そうよ! あーもう、あんた実は聞いてたんじゃないの!?」

 

アリサに問うと、顔を赤くしながらそっぽを向いたので、すずかと顔を見合わせ噴き出した。

 

笑われたことにさらに顔を紅くするアリサだったが、吐き出してすっきりしたのか、晴れ晴れとした顔をしていた。

 

「決めた! 待つことしかできないなら、私はずっと怒りながら待ってる! 気持ちを分け合えない寂しさと親友の力になれない自分に!!」

「「・・・・・・意地っ張り」」

「ふんっ!」

 

すずかとハモリながら突っ込むと、アリサは再び頬を染める。

その様子を身ながら思う。

二人は大丈夫だろう。

あとは、なのはの方か。

笑いながら、一瞬表情を歪めた俺に二人は気がつかなかった。

 

 

放課後。

アリサとすずかは習い事があるからと先に帰ってしまったので、なのはと二人で家路をたどる。

道中ぽつりぽつり、となのはは言葉をこぼした。

この前の旅行でフェイトに言われたこと。

 

「言葉じゃ何も伝わらないし変わらない・・・・・・か」

 

フェイトが言ったという言葉を反芻する。

その間も、なのはの独白は続いた。

 

「私・・・・・・何も言い返せなくて、けれど何かが違うと思うの」

「何が?」

「分からない・・・・・・」

 

肩を落とすなのは。

けど、なのは忘れてないか?

それが昼間の騒動に繋がったのなら、俺はそれを払ってやるよ。

 

「それで、なのはは今はどう考えているんだ?」

「・・・・・・雄一君は、どう思う? フェイトちゃんみたいに、話し合うことに意味はないと思う?」

「まずは、なのはが答えてくれ。そうでなきゃ、俺の答えは教えられないから。なのはは、どうしたい?」

「・・・・・・私、フェイトちゃんと、ちゃんと話したい。言葉で伝わることもあると思うから。雄一君は?」

 

なのはの問いに、俺は同意を示す。

 

「そうだな。少なくとも、俺はどんな形であれ、人間は言葉を介さなきゃ何も伝えられないものだと思っている。口頭言語であれ、肉体言語であれ、念話であれ、な」

 

それに、と言葉を続けながら考えるのはフェイトに寄り添うアルフの姿。

あの二人の関係は、術者と使い魔というだけのものではないはず。

 

「フェイトとアルフはしっかりと伝わりあっている。二人の関係は言葉を通して、そして心を伝えあった結果のはずだ。だから無駄じゃない、という証になる」

「あ・・・・・・!」

 

なのはの顔が明るくなる。

その顔に先ほどまでの陰がないことに安堵しつつ、提案する。

 

「なのは、強くなりたい?」

 

 

 

なのはを家まで送った後、隣街に行き、途中のスーパーで食材を買ってフェイトが潜んでいるマンションへ向かう。

マンションの一室の扉に手をかけて開け

“なんとなく”、隙間から打ち込まれた拳を首を傾げることで避ける。

 

「ちっ!」

 

追撃で扉が中から押されこちらに勢いよく迫るが、迫る扉を蹴りで迎撃、まだ伸ばされている腕を逃げられないように掴むと腕を挟み込むような形にする。

ガァンッ!!

 

「ぐぅっ!?」

「いきなり随分な挨拶だな、アルフ」

「うるさい! たくっ、どっちが随分だよ! 何しに来たんだい!? 仲間になりに来たようには」

 

腕を挟み込まれながら、こちらを睨むアルフにひょい、と食材を詰めた袋を見せる。

アルフの目が点になった。

 

「は?」

「夕飯を作りに来ただけだ」

「ふ、ふざけてるのかい!?」

 

怒鳴られるが失礼な。

大真面目だっての。

 

「あんたはこっちの敵になったはずだろ!」

「そんなこと言った覚えはないんだが。ジュエルシードの起こす事件はともかく、その所有争いには肩入れしないと言ったことなら覚えはあるけど」

「な、ならなんであたしと戦ったんだよ!?」

「二対一じゃ、なのはに不利だろ?」

「そんな理由だったのかい!?」

 

脱力した様子のアルフに、もう危険はないと判断して、腕を放す。

おとなしく中に戻るアルフについていき、フェイトの姿を探す。

途中、ソファの傍にあるテーブルの上の物に気が付いた。

 

「アルフ・・・・・・いくらなんでも、ドッグフードはどうかと思うぞ?」

「いいんだよ、美味いんだから!」

 

しげしげと眺めていると、バッと取り返された。

 

「それで、フェイトは?」

「こっちだよ」

 

箱を手にアルフは別の部屋へいく。

その後ろについていくと、着いた先は寝室のようだった。

 

「フェイト?」

「え、雄一!?」

 

寝そべっていたフェイトは俺に気がつくと慌てて身を起こした。

さすがに、しどけない姿を見せるのは羞恥が働いたらしい。

 

「あー! また食べてない・・・・・・」

 

フェイトの様子に苦笑していると、アルフの悲鳴が聞こえた。

視線を辿った先、ベッドの傍のサイドテーブルには手付かずの料理が残されていた。

 

「駄目だよ、食べなきゃ。雄一が前に言ってたじゃん。食べないと傷の治りも遅くなるって」

 

フェイトの傍に座り、フェイトの髪を撫でながら諭すアルフ。

だが、

 

「少しだけど、食べたから大丈夫」

 

身をよじると、こちらに背を向けてしまった。

その際、背中に走る傷が眼に入り、アルフに鋭い視線を向ける。

アルフは傷を悲しげに見ていたが、

 

「雄一、今日はもう帰ってくれないかな?」

 

こちらに背を向けたままフェイトが切り出した言葉に

 

「ど、どうしたんだい、フェイト!?」

 

俺以上にアルフが動揺した。

もちろん俺も眉をひそめながらその意図を問うた。

 

「どういうことだ?」

「あ、違うよ? 変な意味じゃなくて、これからジュエルシードを封印しに行くからってことで」

「あ、ああ、そういうことかい?」

 

フェイトが慌てたように付け足した理由に、アルフが胸を撫で下ろしているが、こっちとしてはそうもいかない。

 

「そうは言うが、そのジュエルシードは発動しようとしているのか? もしそうじゃないなら、傷を少しでも癒したほうがいいと思うんだけど」

「ううん、雄一の気持ちは嬉しいけど、そうもいかない」

「理由は?」

「それは・・・・・・」

 

フェイトは口を閉ざしてしまう。

踏み込みすぎた、か。

 

「分かった。今日はもう帰るよ」

 

両手を上げ、降参を示しつつ立ち上がる。

立ち上がった俺に、僅かにへこんだ様子を見せつつフェイトはアルフに見送りを指示して、バリアジャケットの展開を始めた。

 

 

「雄一、頼みがあるんだ」

 

玄関へ向かう途中、真剣な様子でアルフが口火を切った。

振り返って視線で続きを促す。

 

「あんたが、フェイトとあの白いのを二人っきりにしたいなら、あたしもあの娘に牙を向けないと誓う。だから、フェイトを守ってあげて欲しいんだ」

「なんだと?」

 

思わぬ内容に驚きの声を上げる。

旅行のときのアルフの口上で、フェイトを守ることに並みならぬ意思を感じさせたのに、どういうことだ?

 

「なんでそこまでする?」

「明日、フェイトは報告のために母親に会いに行くんだ。けど、それだけじゃすまない気がするんだ。だから」

「分かった」

 

アルフの言葉に割り込み、了承を示す。

フェイトに傷を与えていた人物が何もしない保障はない。

アルフの心配ももっともだし、対価は十分だ。

 

「契約は成立だ。契約者『榊雄一』はその契約を遵守することを誓うよ」

「・・・・・・ありがとう」

 

俺はアルフと強く握手をすると、マンションをあとにした。




プレシアさんとは一度会わせておこうかと。
その前にジュエルシード戦ですが。
また次回お会いしましょう!
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