リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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お久しぶりです。
この話から、通信を<>で表現しています。
以前のものも順次変更していこうかと。
では本編どうぞ。


第百六十九話 回復と誤解

「う・・・・・・?」

 

意識が戻ると、霞む頭を振って覚ましながら身を起こして辺りを見回した。

どこかのビルの屋上に落ちたようだが、その割には体に痛みは少ないように思える。

 

「いったい何があったんだ?」

『む、主も気がついたようじゃな』

『そのようだね』

 

雄一の意識が戻ったからか、待機状態だった二機が点滅しながら起動する。

 

「カナメにエルミナ・・・・・・いったい何が起こったんだ?」

『すまぬ。私は先ほどの衝撃でシステムがダウンしておったのじゃ。エルミナはどうじゃ』

『私も同様だ。転移直後で無防備だったとはいえ』

「それを想定するのは無理があると思うがな。それで、どれくらい意識を失ってた?」

『およそ三十分ほどかの』

 

思わず、空を仰ぐ。

四月が近いとはいえまだ夜は冷える。

 

「後になって、風邪をひきそうだな。潜伏期間ってどれくらいだったっけ」

『そういう問題ではなかろうに・・・・・・それより、先ほどのあれは』

『砲撃魔法、だったね。しかも、あの魔力光は』

 

脳天期な雄一に呆れていたカナメは、先ほどの一撃を思い出し、言葉を濁した。

同じくエルミナも同じ人物を思い浮かべる。

 

「いやいや、それはないだろう」

 

雄一も同じ人物を連想はしたが、すぐにその予想を打ち消した。

少なくとも理不尽な攻撃をする子じゃないことは、アリサやすずかより短いとはいえ、雄一の付き合いでもわかることだ。

 

『私とて本気で思うわけではないわ・・・・・・む? 今気がついたのじゃが、イタチの小僧からひっきりなしに通信がきとるの』

「ユーノから? すぐに繋いでくれ」

<雄一!? 良かった、無事だったんだ!>

 

カナメに促すと、すぐにユーノが出た。

映像通信の向こうで、ユーノは雄一の姿を確認すると胸をなで下ろした。

しかし、雄一はユーノの「無事」という言葉に、また何かが起きていることを悟った。

 

「無事、とは言いにくいな。さっき攻撃を受けてしばらく気絶してたんだ」

<攻撃!? 雄一が墜とされるなんて>

「海鳴に戻った瞬間、目の前に着弾寸前の砲撃魔法とかどうやって避けろと」

<えっと、首を・・・・・・>

「首を?」

<引っ込める?>

「妖怪か! というか、全身飲み込まれる規模だったから、首だけ引っ込めても意味ないだろ」

<そ、そうだね>

 

動揺の抜けない様子のユーノ。

彼をいったん落ち着けるべく、話題の修正を図ることにした。

 

「それよりユーノ。無事を訊ねるってことはそっちで何かあったのか?」

<あ、そ、そうなんだよ! 変なお姉さんだったんだけど、いきなり回復魔導師かAC93系の抗ウイルス剤を要求されたんだ。けど、いきなり襲ってきたと思ったら今度はいきなり落ちて>

「いきなり落ちた? 要求からみて何らかのダメージを負っていた、ってことか」

<たぶん。ただ、その後海鳴から妙な反応があるってシャマル先生が>

「妙な反応?」

<うん。だから、雄一達に警戒して欲しくて通信をかけ続けてたんだけど>

「一向に繋がらなかった、と。判った。何かが起きる前提で動いた方が良さそうだな。こっちははやてと合流しておく。それより、二人はこっちに戻ってきてるのか?」

<うん。ただまだ少しかかるから、そっちも気をつけて>

「そっちもな。切るぞ」

 

そういって通信が切る。

 

「それで、はやてが何処にいるかだが、<バーラ・ルー>」

 

雄一ははやての居場所を探すため、<バーラ・ルー>に干渉する。

はやての視界から居場所を割り出そうと考えたのだ。

 

「んー・・・・・・ん? これは?」

 

やがて繋がったはやての視界に、眉をひそめる。

はやての視界に映ったのは桃色の髪をした見知らぬ女性だった。

彼女ははやてめがけてデバイスだろう双剣を振るっていく。

戦闘が起こっていることに、事態に出遅れたことを悟った雄一は、はやての傍にリインフォースの姿を探すが、彼女の姿は見受けられなかった。

 

「リインフォースがいないなんて間が悪い。この場所は、臨海公園か!」

 

光景から大まかな位置を割り出すと、雄一はすぐさま臨海公園へ転移した。

 

 

 

 

 

臨海公園へ着くと、すぐに雄一ははやての姿を探した。

すると、はやては双剣の一撃で杖を跳ね上げられ、まさに隙を晒してしまったところだった。

すぐさまカナメを刀に変えてはやてを庇うようにして飛び出した。

 

「はやて!」

「雄君!? なんでここにおるん!?」

「話は後、だ!」

 

思わぬ増援に驚くはやてに事情を説明したいところだが、場を仕切り直すため、女性の双剣を弾いた。

女性も雄一の登場に驚いていたが、双剣を弾かれると、勢いに逆らわず下がった。

 

「もう誰? 邪魔をするのは、ってさっきお姉ちゃんの攻撃から守ってくれた子じゃない」

「何?」

「雄君? このお姉さん、知り合いなん?」

 

女性の言葉に、思い当たる節のない雄一は首を捻るが、同じ言葉を聞いたはやてが雄一の腕を笑顔で抓りあげた。

 

「痛い痛い。はやて、いきなり何をする?」

「べっつに~? ただ、雄君は相変わらず引っかけてきたんかな、って思っただけや」

「何だそれ? それで、そっちの人。えっと」

「エルトリアのギアーズ、キリエ・フローリアンよ。キリエでいいわ」

「それで、キリエさんが言った『お姉さんの攻撃から守った』ってどういうことだ?」

「あら? 気がついてなかったの? お姉ちゃんの撃った砲撃魔法をあなたが肩代わりして防いでくれた、ってこと♪」

「何だと?」

 

砲撃魔法と言われ、先ほどの一撃が思い当たる。

どうやら、あれがキリエの姉のものだったらしい。

 

「君に当てちゃって動揺したお姉ちゃんは隙だらけだったから、ウイルスバレットを当てるのが楽だったわ」

「ウイルスバレット?」

「そ。私を止めようと余りにしつこいかったんだもの。だから、動けなくしたの」

 

キリエの説明を咀嚼していく。

そして、ウイルスと聞き、先ほどのユーノが通信で告げた抗ウイルス剤と繋がった。

止めようとした、という言い回しと合わせ、どうやらキリエは騒動を起こす側で彼女の姉はこちらとはキリエを止める点で協力できるだろう相手らしい。

ならば、

 

「あんたを止めれば騒動を未然に防げる、ってことだと思うんだがそれで合ってるか?」

 

そういい、カナメの切っ先をキリエへと向ける。

向けられた切っ先に、

 

「合ってるわよ。でも、私はうしろの子から譲って欲しいシステムがあるだけなの」

 

しかしキリエは浮かべた笑みを崩さず双剣を構えた。

 

「システム、ね。断ったら?」

 

システムと言われ思い当たるのは、夜天の書のプログラムだろう。

ロストロギアに分類される夜天の書のシステム、おそらく蓄積されている魔法の類と当たりをつける。

 

「そのときは、ちょぉっと痛い目をみてもらおうかしら」

 

そういうと、キリエは双剣の刃をちらつかせた。

一触即発の雰囲気が張りつめていき、

 

「とりあえず、大人しくしてもらおうか」

「わざわざ痛い目を見たいなんて変わってるわね。でも、誰であろうと切り捨てて貴方の後ろにいるその子、黒天に座す闇統べる王ちゃんからシステムを貰うわ♪」

「・・・・・・ん?」

 

一気に緩んだ。

キリエの言葉に違和感を覚えた雄一が切っ先をブレさせると、訝しまれるという思わぬ反応にキリエも肩透かしを食らった様子で目を瞬かせた。

 

「何? どうかしたの?」

「今なんて言った?」

「そこの闇統べる王ちゃんから、私の望むシステムを貰うって言ったんだけど」

「・・・・・・は?」

「あ~・・・・・・あんな、雄君。誤解なんよ」

 

思いもしなかった名に一瞬意識が途切れるような感じを覚えた雄一の袖をはやてが僅かに引いた。

その訴えに、雄一はすぐさま振り向いてはやてを問いただす。

 

「どういうことだ?」

「それなんやけど、説明するより早いやろから、読んでくれへん?」

 

そういい、はやては自身の頭を指すと雄一の目を見つめた。

はやての意図を察して、雄一は<ハヌ・マーン>ではやての思考を読みとり、

 

「・・・・・・あー、そういうことか」

 

納得と同時に深くため息をついた。

 

「な、何よ。いったいどうしたのよ?」

「あー、あのな?」

 

はやてだけでなく、突然敵意を下げた雄一に戸惑うキリエに雄一は呆れ混じりに教えた。

 

「一応聞かせて貰うけど、貴女はその闇統べる王って人を捜してるんですよね。その人ってもしかして、白というか銀髪でやたら偉そう?」

「そ、そうよ? だから、ちょっと色が違うけどその子に用が」

「あのー、それ人違いです」

「はい? ヒトチガイ?」

 

はやての言葉に固まるキリエ。

理解が追いつかない様子のキリエに、はやては苦笑しながら言う。

 

「その人に私が似ている理由も心当たりがありますけど、別人なんです」

「え? でも適合率は・・・・・・ううん、それより、なら今はどこにいるの!? 知ってる!?」

「えっと、三ヶ月くらい前に一騒動ありまして」

「う、うん」

「そのときに、みんなで退治してしまいまして」

「え?」

「残念ながら、もうこの世には」

 

そうはやては締めた。

キリエは顔をひきつらせると、強ばった笑みを雄一に向けた。

否定して欲しいとはっきり書かれた笑みを向けられ、答えにくいがはっきりと頷く。

雄一にまで頷かれ、キリエの顔に絶望が広がっていく。

 

「・・・・・・うそん」

「ホンマです」

「マジんこで?」

「マジんこです」

「マジだな」

 

一縷の望みをかけたかったのか、再度訊ねるキリエに、無情だがはやてとともに肯定すると、キリエは固まると頭を抱えた。

 

「うそーん!? なんてこと、なんてこと! のっけから私の計画がムチャクチャに!?」

「なあ、雄君。なんや、めっちゃ気の毒なんやけど」

「だからって、どうしろと」

 

手を貸せないか、と訴えるはやてに、雄一は手詰まりを理由に頬を掻く。

実際、システムを持つという闇統べる王がいないのでは話にならない。

いっそのこと<アルス・マグナ>で闇統べる王を呼び出せるか試してみるか、と埒もないことを雄一は考えていた。

緩んだ空気が流れるが、次のキリエの言葉で一気に緊張を取り戻した。

 

「システムU-Dの当てが外れちゃうなら、<精杯>を探さなきゃいけないの!? 宛すらないのにどうやって探せっていうのよ!?」

「<精杯>だと? おい、それを何処でっ!?」

 

知った、とキリエを問い詰めようとした雄一は、勢いよく振り仰いだ。

瞬間、結界内を強い揺れが襲った。

 

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