リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第十八話 再戦と胸騒ぎ

海鳴へ戻ると、すぐになのはと合流し巡回に出る。

道中、フェイトがジュエルシードの封印に出ることを伝えると、おどろおどろしい気配を出しながらも、こちらに矛先を向けずに済ませてくれた。

ほっ・・・・・・。

胸を撫で下ろしつつ、ユーノに気になった点を聞いてみる。

 

「なあ、ユーノ。ジュエルシードは発動が近くならないと所在が分からないんじゃないのか?」

「そのはずだけど? どうしたの?」

「だったらフェイトはどうやってジュエルシードを探しているんだろうって思ってね」

 

基本的に俺達は、発動したジュエルシードの放つ魔力を感知することで位置を特定している。

だが、ジュエルシードは願いを叶えるためか、周囲から十分な魔力を得て自己起動するまでほとんど魔力を放出しないはず。

なら、フェイトの様子はどういうことだろうか?

ユーノは難しい顔で考え込むが、やがて何かに思い至ったようだ。

 

「もしかしたら、近くに魔力を打ち込んで反応を確かめているのかも」

「ん? だけど、それじゃあジュエルシードが発動するんじゃ、ってそれは問題じゃないのか」

「そうだね。そうやって強制起動しても、あのフェイトっていう魔導師はジュエルシードさえ手に入ればいいだろうから、ジュエルシードが起動しても抑え込めばいいんだと思う」

 

フェイトの実力ならおかしくはないだろうし、な。

だとしたら、

 

「できればフェイトに先んじて、今回のジュエルシードを見つけたいところだな。何か手はないか?」

「うーん・・・・・・雄一の能力で探すことはできないかな?」

「ちょっと待ってろ。<<クフ・リーン>どうだ?>」

 

念話に切り替え、<クフ・リーン>に聞いてみるが答えはノー。

<バーラ・ルー>も夜では見えないし。

 

「駄目だな」

「そっか・・・・・・仕方ない、地道に足で」

 

探そうと、肩を落としながらも提案しようとするユーノだったが、ちょうど、ビル壁の液晶に表示されたCMの声に被せられた。

それを見上げていると、なのはがあっと口を押さえた。

 

「残念、タイムアップだ・・・・・・帰らなきゃ」

 

見れば、既に七時を過ぎている。

あまり遅くまでうろつかせると、後々の捜索にも影響がないとは限らないし。

フェイトと出会うかもしれないことを考えると、惜しいが仕方ないだろう。

 

「わかった。なのはは戻れ。後は俺が探しておくから」

「でも、」

「大丈夫だよ。僕も残って探すから」

 

渋るなのはを、彼女の肩から飛び降りたユーノが諭す。

 

「う~、わかった」

「それじゃ、なのは。また明日」

「晩ご飯、残しといてね。それじゃ、雄一。僕たちも二手に別れよう」

「その方が効率もいいか。それじゃ」

 

渋々ながら駆け足で戻るなのはの背に言葉を投げ、ユーノとも別れて探索に戻る。

 

――だが、いいのか?あの娘がいなきゃ、あっちの使い魔との契約も意味がないだろ?――

「そうだな」

 

契約は、ただなのはとフェイトの勝負のお膳立てをするだけ。

このままでは確かに旨味が無い。

かといって、そんなことは契約を破棄するに足る理由とはいえないし。

かえって、状況に自分で枷を付けてしまった気がするな。

 

「それより。ジュエルシード、後いくつだ?」

――俺達が一つ、なのはが三つ、フェイトが三つか。あと十三個だな―――

「多いな。なあ、狭い範囲にジュエルシードが纏まっている可能性はないか?」

『無いとはいえんじゃろ』

 

カナメが割り込む。

『あのイタチ曰く、海鳴にジュエルシードが来た理由は、輸送船の事故。海鳴も広いとはいえ、ランダムに落ちたのならそういうこともあるかもしれん』

 

じゃが、とカナメは続けた。

 

『それはそれで厄介じゃ』

「敵が二体になるから、ってわけじゃないよな?」

『無論。問題なのはジュエルシードが互いに干渉しないか、その保証はないことじゃ』

「干渉?」

『ジュエルシードが単体で強力な魔力を秘めていることは主殿も知っておるだろう。ならば、それを複数接続したらどうなる?』

 

カナメの懸念に思い至って顔を青くする。

 

「より強い魔力を・・・・・・発揮する?」

『そのとおり。さながら電池の直列のようなものじゃ』

「それは分かったが、だったら、フェイトの母親はそんな魔力を何に使うつもりなんだ?」

「それは」

 

カナメが何事か答えようとしたそのとき。

町中を強力な魔力が天に向かうのを感じた。

 

『!? 主殿!』

「分かってる! カナメ、何処だ!?」

『あっちじゃ! バリアジャケット、セットアップ!』

「間に合えよ・・・・・・<デル・ドーレ>!!」

 

途中、視界が色を失くしていくのに気がつき、フェイト達が張った結界に入ったことを悟った。

しっかりと約束を守ってくれていることを喜んでいると、こちらへ走ってくる足音が聞こえた。

振り返ると、こちらに走ってくるなのはの姿があった。

 

「雄一君!」

「なのは!? おまえ、帰ったんじゃ・・・・・・いや、むしろ戻ってこれたのは僥倖か」

 

なのはも異常を察知して戻ってきたらしい。

既にバリアジャケットを纏っている。

不幸中の幸いに一息つき、ビルの屋上に目をやる。

<デル・ドーレ>で強化した視界にはバルディッシュを構えるフェイトとアルフの姿があった。

そのビルの前、光の柱があり、その中に小さな宝石が見える。

 

「なのは! 発動したジュエルシードが見える!?」

「うん、すぐ近くだよ!」

「あの子達もすぐ近くにいるはず。彼女達より早く封印を!」

「うん!」

 

ユーノの言葉になのははレイジングハートを以前の事件のときにも見せた砲撃モードに変形させる。

ここから狙い撃つつもりか。

なら、

 

「急げ、なのは! もうフェイトは構えている!」

 

視界にはバルディッシュの先端に魔力を集めているフェイトの姿。

収束形は苦手なのか時間がかかっているようだが、間に合うか?

 

「なのは!」

「うん!レイジングハート!」

<Allright.Fire!>

 

レイジングハートから撃ち出された封印魔法がバルディッシュから撃ち込まれたものと同時にジュエルシードに叩きつけられる。

 

「リリカル・マジカル!」

「ジュエルシード、シリアルⅩⅨ!」

「「封! 印!」」

 

なのはとフェイトの言葉が重なり、ジュエルシードの光が収まった。

 

「やった!なのは、早く確保を」

「そうはさせるかい!!」

「しっ!!」

 

ユーノが封印を促そうとしたとき、アルフがなのはに飛び掛った。

すぐさま、ユーノが結界で受け止め俺が放った蹴りが弾き飛ばす。

 

「へえ? 今日は人型か?」

「あんた相手ならこっちの方が有利か、と思ってね。前のようにはいかない、よ!」

「そうかよ! なのは、そっちは任せたぞ!」

 

先手はアルフがとる。

強く地面を蹴ると、鋭い蹴りが真っ直ぐに突き込まれる。

正中線を貫かんばかりの蹴りを腕で払い、カウンターを叩き込もうとして、

ドゴッ!!

 

「ガ、!?」

 

衝撃と共に視界が激しく揺れた。

眩む視界の中、<ルー・グー>でアルフを吹き飛ばして間合いを取ると、何が起きたのか理解に努める。

 

――相棒! 生きてるか?――

「<おまえに答える程度にはな。何があった?>」

――カウンターを返そうとして、追撃に放たれた跳び回し蹴りが側頭部に綺麗に入った――

「うげ・・・・・・」

 

思ったより苛烈な攻撃にうめき声が出る。

よく、頭がザクロにならなかったものだ。

うめいていると、アルフが拳を撃ち込んでくる。

一歩下がって拳を避けた先、今度は見えた。

鋭い音を立てて空気を抉り抜く前蹴り。

下がったのは悪手だったか。

ドンッ!! という鈍い音と共に体が浮き、吹き飛ばされるが空中で体勢を整え足から降りる。

 

「っつー!? 流しきれなかったか」

 

避けきれない、と判断してすぐに右腕を間に挟み自ら後ろに跳んでダメージの軽減を図ったが、それでも蹴りは腕を痺れさせた。

けど、原因は掴んだ。

こっちは九歳児の体からすれば強靱な部類だが、成人の体、さらに使い魔として強化しているアルフの体と比べるべくもない。

<デル・ドーレ>なしでの近接戦はまだまだ、か。

だったら!

 

「今度はこっちからいくぞ! <ルー・グー>!」

 

拾い上げた小石を地面に撃ち込み、拳大から人の頭ほどのコンクリートを手元に引き寄せる。

引き寄せたコンクリート片の一つを上空に打ち上げた。

 

「また遠距離からの砲撃かい!? だったら、間合いを詰めれば」

「残念。ハズレだ!! 撃ち降ろせ、<ルー・グー>! そして、波うたせろ、<沙波>!!」

 

間合いを詰めようとするアルフに応えつつ、<ルー・グー>でコンクリート片の落下を加速させ、すぐに<沙波>を足下の地面に使う。

<沙波>で液状化した地面に勢いよくコンクリート片が突き刺さり、コンクリートの津波を吹き上げた。

 

「な、なぁああ!?」

 

慌てて足を止めようと踏ん張ろうとするアルフだったが、勢いがつきすぎた体は止まりきれず、津波に進んでしまう。

津波は能力の干渉が切れた端から元の土砂やコンクリートに戻り硬度を取り戻してアルフに牙を剥いた。

 

「まず」

アルフの言葉を遮り、津波がアルフを呑み込む。

砂埃が視界を覆い、

 

「随分と頑丈だな」

 

埃が晴れた先、障壁を張って直撃を避けたアルフに呆れ半分感心半分の視線を向ける。

アルフは姿を犬に変えて障壁を前面に集中して防いだらしい。

だが、相当の出力をつぎ込んだらしく息は荒く、それでもなお防ぎきれなかった破片が傷を付け、体は土砂に半分ほど埋まっている。

 

「たく、なんて、攻撃するんだい・・・・・・。結界だって、張ってなかったら大被害じゃないかい・・・・・・」

「こっちだってそうそう使えないっての。ここまで破壊力抜群とは思ってなかったからな。出れるか?」

 

荒い息をつきながら、文句を言うアルフに苦笑しつつ手を差し伸べて

 

ゾクゥッ!!

今までで最大の寒気が背筋を走った。

すぐに気を引き締めて、辺りに視線を走らせる。

すぐにそれに気がついた。

嫌な予感の元は封印状態で放置されていたジュエルシードだった。

ふと、以前カナメから聞かされた言葉が脳裏をよぎった。

 

『『ジュエルシードは魔力に反応する。たとえ封印していても、いや、封印したときこそ無用な刺激を与えてはならない。その魔力を吸収して封印を解き、封印以前よりなお強い力を振るいかねん。それこそ世界を揺るがし、穴を開けるほどの力をな』』

「不味い! 二人とも、離れろ!!」

 

なにが起ころうとしているのか悟った俺は二人に叫んだが、一歩遅かった。

ジュエルシードの確保に動いた二人が取り込もうと、同時にデバイスを突きだす。

レイジングハートとバルディッシュがジュエルシードを挟み込み、

両者に無数の罅を入れつつ、ジュエルシードから青い光が天を衝くように吹きあがった。




土砂津波はクロス原作では、アーロン(+マルク)+カナメの合体技でしたが、拙作ではそれが一人で可能!
うん、チートですね。
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