それではお楽しみください!
ジュエルシードから吹き出た光は二人を弾き飛ばし、天を衝くほど強くなると次第に収縮していった。
だが、ジュエルシードの輝きはどんどん強くなっている。
全くいい予感がしねえ。
「フェイト!?」
「なのは!? 大丈夫!?」
なのは達に、ユーノ達それぞれのパートナーが駆け寄った。
「う、うん・・・・・・」
「けど、レイジングハートが・・・・・・」
なのはの手にあるレイジングハートは、穂先から広く罅が広がり宝石部分が明滅している。
バルディッシュを振り返るが、こちらも同様のようだ。
実質戦力になるのは俺だけ。
相手は魔力を開放したジュエルシード。
だが、
「さて、こんな状況になっちまったらもう、破壊させてもらうぞ」
今なら、魔槍で破壊できるはず。
ナイフを抜き放ち、影を乗せようとして、
痺れる右手はナイフを取り落とした。
「くっ・・・・・・」
「ゆ、雄一君、どうしたの!?」
なのはの声に応えず、震えて力の入らない右腕を抑えた。
気がつかなかったが、アルフの蹴りを受け止めた痺れがまだ抜けていなかったらしい。
魔槍は撃てない。
魔眼は使えない。
魔弾では火力が足りない。
それ以上の手段は・・・・・・あった!
「<カナメ、封印魔法は必ずしもデバイスがないと使えないのか?>」
『<? そんなことはない。極論すれば封印魔法を叩き込めるなら何ら問題は無いじゃろ>』
よし、これで不安材料の一つが消えた。
だったら!
「なのは、フェイト! 今から俺があれを押さえ込む! その間俺は封印はできないから、二人のどちらでもいい、封印しろ!」
二人の返事を待たずに、深く息を吸い込み、
「――届いていますか、私の歌は――」
世界を変える歌を口にした。
sideフェイト
「なに、この歌は?」
雄一の指示に、すぐにジュエルシードへ駆け寄ろうとしていた私は、その歌に足を止めてしまっていた。
「――小鳥は聞き手を求めて囀り、花は運び手を求めて香る――」
暖かく綺麗な歌。
思わず聞き入って
<フェイト! なにしてるんだい!? 雄一が抑えている間にジュエルシードを!>
「!? う、うん!」
アルフの念話で我に返った。
うぅ・・・・・・思わず聞き入っちゃってた。
幸運にも、ジュエルシードの活動は収まっている。
私は、ジュエルシードを両手で包むと封印魔法を起動する。
抵抗や反発はない。
さっきの莫大な魔力反応が嘘のように収まっている。
(雄一・・・・・・いったいなにをしたの?)
考えながら、封印を並行して進めていく。
このままいけば無事に終わる。
そう思ったとき、それは起こった。
ギチッ!!
「がっ!?」
「雄一君!!」
「雄一!」
何かが軋むような音と共に響いた雄一の苦悶と白い娘達の声。
振り返ろうとしたとき、突然ジュエルシードが力を取り戻した。
「!? くっ・・・・・・」
「フェイト!?」
慌てながらも、魔力の抑制と封印の進行の維持に全力を注ぐ。
異常を察したアルフの声に、大丈夫と応える余裕もない。
(止まれ、止まれ、止まれ! 止まれ! 止まれ!)
願いながら、暴れるジュエルシードを押さえ込む。
状況はあまりよくない、いやむしろ悪いか。
こちらはすでに全力だが、ジュエルシードの魔力にはまだ上があるはず。
ならばこちらも、魔力抑制に割いている魔力を封印処理に回せばいいかもしれないが、いま抑制の鎖が切れたら濁流のように魔力が吹き出るはず。
いったい、どうしたら。
「そのまま抑えてろ! ――――!」
再び響いた雄一の歌でジュエルシードの抵抗が収まっていくが、先ほどより出力が弱いのか、魔力を抑え切れていない。
その分を私の魔力が抑えていく。
ジュエルシードに触れている右手が、僅かに切れたところで抵抗を抑制が上回った。
それに乗じて一気に封印をかける。
「ジュエルシード、シリアルⅩⅨ、封・・・・・・印・・・・・・?」
「フェイト!?」
アルフに応える間もなくスゥ、っと意識が途切れる中、背中を押さえるようにしながら顔を歪める雄一の姿が見えた。
雄一、どうしたの?
side change アルフ
「フェイト!?」
フラッと倒れ込むフェイトを駆け寄って受け止める。
見たところ、魔力の急な消費で体力も持っていかれたみたいだね。
今回は、ホントに背筋が寒くなったよ・・・・・・。
「容態は?」
背中を押さえながらやってくる雄一に、契約の繋がりで読みとれる状態を教える。
「魔力の消費による疲労・・・・・・かな。だいぶ無茶をしたからね」
「そうか・・・・・・」
「けど、雄一のおかげで助かったよ」
「そうでもなさそうだけどな」
今回の功労者だろう、雄一に礼を言うと、首を横に振って、何かを見ている。
視線を辿ると、フェイトの右手から血が垂れていた。
「怪我をさせてしまったからな」
雄一はそう言うが、あたしは首を横に振る。
「あんたが抑えてくれなきゃ、これくらいじゃ済まなかっただろうし、あんたは十分に契約を果たしてくれたよ」
「そうかい・・・・・・」
一息つこうとした雄一は
ギシッ!
「ぐ・・・・・・!?」
再び響いた音に重なる形で僅かに苦鳴をこぼした。
「雄一?」
「・・・・・・なんでもない」
「けど」
「いいから!」
いったいどうしたのか、雄一は鋭い声であたしの声を遮った。
「それよりアルフ、明日はいつそっちに行けばいいんだ!?」
「え? ああ、いろいろ準備もするだろうから昼頃来てほしい、かな?」
「昼頃だな!? それじゃ明日! なのは! 明日は俺、学校休むから!! それじゃ!」
「え!? ゆ、雄一君!?」
言いたいことを言うと、ダッとすぐに姿を眩ませてしまった。
いったいどうしたんだい、あいつは?
「あ、あの!」
雄一の消えた方を見ていると、なのはと呼ばれていた白い魔導師がまだいた。
「・・・・・・」
雄一にはどうであれ、あたしにはフェイトの邪魔をする敵でしかない。
けど、雄一との契約があるから睨むだけに留めておく。
「・・・・・・」
「ひっ・・・・・・」
「・・・・・・ふんっ」
怯えるそいつに構っている場合じゃないか。
背を向けて、隠れ家に向けて地を蹴った。
早く、フェイトを休ませてやらないと・・・・・・!!
sideout
脇目もふらず家に戻った俺は、部屋に飛び込むと、
「・・・・・・ぐ、がぁ、あああ!!」
今まで堪えていた痛みに呻いた。
そのまま、ドアに背を預け、ズルズルと崩れ落ちる。
そんな俺にカナメが声をかけた。
『主殿・・・・・・主殿が今受けている痛みは、<アルス・マグナ>を使った弊害じゃ』
「? どういうこと、だ? <アルス・マグナ>の対価は”寿命”以外の全て・・・・・・あれ? なら、何で俺は眠りに落ちていないんだ?」
『苦しんでいても冷静のようじゃな。なら説明するが、先に原因を言うと、原因は「空白の契約書」じゃ』
「この背中の?」
位置故に直接は見えないが、そこにあるという刺青。
それが何だというのか?
『順番に説明しようかの。まず、<アルス・マグナ>は肥大化した精霊じゃ。その力は、契約者である<眠り姫>を護る為のみに使われておった。その中、ある代で双子の娘が生まれた。そやつらの父親は思ったそうじゃ。一方を器にすることで、一方を生かすことができるのでは? と』
カナメが語る言葉に正気を疑う。
娘を生け贄とすることを計画する父親。
いったいどういう精神をしているのか。
呆然とする間もカナメの説明は続く。
『結論を言えば、そやつらも色々あったが、一方が眠りに落ち、一方が能力を得ることとなった。じゃが、もちろんそれで良しとするはずもなかった。残された方は、<アルス・マグナ>から半身を取り戻すことを考えた。その手段が』
「『空白の契約書』、ってことか? だけど、いったいどうやって」
『説明するからしばし待たんか。「空白の契約書」はいわば<アルス・マグナ>の鏡なのじゃ』
「鏡?」
『うむ。鏡に映るものは向きが逆になれど、同一のものじゃ。ならば、<アルス・マグナ>に同一の力をぶつけることで半身を取り戻すことができる。そやつはそう考えたのじゃ。分かりやすくいえば・・・・・・おお、そやつはコインの裏表でも例えておったの。つまり、起きている方が表、眠っておる方が裏じゃ。そやつは両方表のコインを用意して<アルス・マグナ>を騙そうとしたのじゃ』
「なるほど・・・・・・来歴は分かった。それで、この痛みにどう繋がるんだ?」
『それは、おそらく「空白の契約書」が<アルス・マグナ>の干渉に反発しておる証拠じゃ』
「干渉?」
『左様。本来眠りに落ちるはずのお主を止めておるのじゃろう。今は、「空白の契約書」が<アルス・マグナ>を抑えこんでおるのじゃ。じゃが、短期間に<アルス・マグナ>を使ってしまったことで干渉が強まって痛みとなったのじゃろ』
「マジか・・・・・・どれくらいで治まる?」
『痛みそのものはすぐに治まるじゃろ。じゃが、干渉は消えぬ。せめて半年、いや一年は様子見としたいところじゃな』
「い、」
カナメの提示した期間に引きつった声を上げてしまう。
それでは、今回のような事態になったとき、有効な手段を失ってしまうということじゃないか。
カナメも、この局面での重要さは分かっているのだろうが、諭すように言った。
『分かったら、これ以上<アルス・マグナ>を使うな。そうせねば、お主の身に何が起こるか分からん』
「・・・・・・わかった」
『よいな。絶対じゃぞ。お主に『裏』となる人間がおるのか、それとも、眠り続けるのか?それさえ分かっておらんのじゃからな』
「分かってるって」
繰り返し言うカナメに応じつつ、俺は<アルス・マグナ>を使う事態は遠からず来ると考えていた。
おそらく、明日会うことになるだろうフェイトの母親とは戦うことになるはず。
そのとき、フェイトが集めたジュエルシードが一斉に発動したら?
そのときに使えるカード、ならば切れるときに切る必要も出てくるだろう。
俺はそのときにどうやってカナメを説得するか思案しながら眠りに落ちていった。