リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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KY登場はまだ先になりそうです・・・・・・。
では、お楽しみください!


第二十一話 対談の決着と動機

プレシアの顔色が変わる。

やっぱりか。

 

「・・・・・・何故そう思うのかしら?」

「いくつかあるが、まずその顔色。血色がかなり悪いし、口紅で隠れているけど、唇が血色不良を起こしているのが分かる。それに、口元から胸のあたりにかけて、薄いが血の匂いが残っている。おそらく吐血の痕だな。血は拭ったようだが、消せていないぞ。匂いからして、おそらく俺達が来る前一時間以内くらいか?」

「・・・・・・」

「おそらく、患部は肝臓か肺。活力にも影響がでているから肝臓だな」

「・・・・・・随分と鼻が利くようね」

 

遠回しな肯定。

 

「その病を治すのにジュエルシードを使うのか?」

「・・・・・・・・・・・・ええ、そうよ。娘と共に生きるために、あれがどうしても必要なの」

 

長い間が空いたが、プレシアは頷いた。

気になって、<ハヌ・マーン>で思考を覗くが、思考にあるのは娘のための研究の文字のみ。

ということは、フェイトも何らかの病を抱えているってことなのか?

 

「もういいかしら?」

「あ? ああ、十分だ。そっちの番だが、何が聞きたい?」

 

プレシアに呼ばれて思考から戻り、質問を促す。

プレシアは少し考え、

 

「”契約者”にジュエルシードのような力を持ったものはいるのかしら?」

「・・・・・・いる。だが、契約者は異能であって万能じゃない。魔法とさして変わらないぞ」

「構わないわ。”契約者”という別視点からのアプローチだって、使えるものは何でも使うまでよ」

 

釘を刺そうとするがあえなく失敗。

この人は徹頭徹尾フェイトのため、か。

 

「最後の質問ね。何という人かしら?」

「・・・・・・」

 

やっぱり聞くよな、それは。

正直聞かれたくない問題だったがどう答えるか。

虚偽は契約違反だから言えない。

かといって正直に言うのはNGだろう。

だが、こうやって思考に沈んで時間をかけるのも間違いだろう。

 

「・・・・・・”精杯の姫”」

 

具体的な名前を出さなかったのは精一杯の抵抗。

 

「そう覚えておくわ。もういいわ、消えなさい」

 

こちらに背を向けるプレシアを僅かに睨み、俺はフェイトの部屋を目指した。

ただ、俺はこの場で、プレシアとの会話の齟齬に気がつけなかった。

その間違いに気がついたのは事件も終わりに近づいたときだった。

 

sideプレシア

 

妙な子供だと思った。

何か考えているようで、その実何も考えていないような、そんな妙な印象を覚えた。

それよりも、彼の話はなかなか興味深い。

もちろん、全てが真実とは思っていない。

彼の言ったことにどれだけの嘘があったのか。

それを知る方法はないが、それを差し引いても面白い話だった。

 

(次善の策・・・・・・程度に考えておけばいいでしょうね)

 

契約者という者達の能力は果たしてどこまでの能力があるのか。

彼が隠そうとした能力者なら――――を・・・・・・。

 

(いえ、現実的じゃないわね)

 

楽観的な思考にストップをかける。

誰かも分からぬ能力者を探すことと、少ないとはいえ、既にいくつか手元にあるジュエルシードだったら、後者の方が遙かに期待できるのは言うまでもない。

 

「だとしたら、やっぱり彼が持っているジュエルシードも手に入れないと」

 

一つ壊したことも嘘じゃないだろう。

しかし、壊したジュエルシードとは別に無事なものも持っているはず。

だとすれば、確実に奪えるタイミングを見計らわなければならない。

病の進んでいるこの体では、強力な魔法は多用できないだろう。

 

「見ていてね、■ ■ ■ ■・・・・・・必ず、必ず貴女を・・・・・・」

 

 

sideout

 

念話でアルフに道を聞きながら合流し、海鳴に戻った時、ジュエルシードの魔力が広がった。

 

「フェイト、アルフ!!」

「うん、ジュエルシードが発動したね」

「そうだね・・・・・・フェイト、どうするんだい?」

 

アルフが、抱きかかえているフェイトに指示を仰ぐ。

 

「もちろん・・・・・・決まっている」

 

フェイトは、身じろぎしアルフの腕から抜け出すと、バルディッシュを起動させた。

 

「ジュエルシードは手に入れる」

「その傷でか?」

「雄一?」

 

前に立ちはだかった俺を、フェイトは揺れる目で見る。

 

「立っているのもやっとの状況だろ。俺としては、今回は見送って次を待て、と言いたいところだ」

「それでも、私は・・・・・・っ!?」

「フェイト!?」

 

一歩踏みだそうとして膝が崩れたフェイトをアルフが抱き止める。

それでも、フェイトは立ち上がろうとする。

そのフェイトに俺は気になっていたことを問うた。

 

「なあ、フェイト、お前はどうしてそこまでするんだ?」

「え?」

「プレシアさんの目はお前に向いていない。なのに、何でそこまでする?」

「・・・・・・」

 

フェイトは俯いて考え込む。

俺とアルフが見つめる中、フェイトは口を開いた。

 

「母さんは、不器用だけど優しい人なんだ。小さい時には花の冠を作ってくれたりして・・・・・・私はそれを知っているから・・・・・・だから、私は母さんの願いを叶えたい!」

「・・・・・・そうか」

 

フェイトの言葉に俺は一応納得を示す。

フェイトの語るプレシアは、俺が先ほど見たプレシアと重ならない。

何か、何か大きな齟齬がある気がしてならない。

その齟齬が何か大きな鍵なきがする。

だが、それはいったい?

 

「雄一?」

「ん、ああ。いや、何でもない。理由は分かった。それで、俺が言いたいことだが、現状の参戦はあまり奨めない」

「だ、だけど」

「話は最後まで聞け。要は現状から回復できればいい。治癒魔法とか、そういうのはないのか?」

「・・・・・・う、それは・・・・・・」

「・・・・・・あー・・・・・・」

 

解決策を示すと、二人の目が泳ぐ。

まさか・・・・・・。

 

「使え・・・・・・ないのか?」

「「・・・・・・うん」」

 

気まずい沈黙に、俺は頭を抱える。

 

「だ、だって、ずっと攻撃魔法関係しか勉強してこなかったんだよ! 攻撃も全部よければいい、っていわれて!」

「あたしも攻撃系だね・・・・・・防御系はもとより補助の類は何もないよ」

「・・・・・・ああ、そうかい」

 

二人の必死の弁明を半ばスルーしつつ、頭をひねる。

このままだと、フェイトはジュエルシードの元へ行くだろう。

ただし、怪我で動きが鈍る可能性がある以上、契約に照らしても、危険は少しでも減らしたい。

一応、手段はある。

<デル・ドーレ>の血を傷に垂らすだけでいい。

そうすれば、血に含まれる回復力が作用するだろう。

だが、契約書がどう作用するか分かっていないことが二の足を踏ませる。

これをフェイトに試すってことは人体実験じゃないのか?

その思考に囚われていると、カナメが問うた。

 

『<主殿、悩んでおるようじゃが>』

「<ん、ああ。<デル・ドーレ>を使うしかないのか、と思ってな。だけど、使うと、契約書が>」

『<? <沙波>を使えばよいではないか>』

「・・・・・・は?」

 

何事もなく言われた言葉に空転を続けていた思考が固まった。

おそるおそる尋ねる。

 

「<あの・・・・・・カナメさん? つかぬことを聞きますが、なぜに<沙波>の名前が出てくるのでしょうか?>」

「<何じゃ? <クフ・リーン>から聞いておらんのか? <沙波>は外傷の治癒にも使えるのじゃぞ?>」

――・・・・・・あ――

「・・・・・・おい」

 

足下で、ぱかっと口を開けた影を睨む。

影は、そっぽを向きながらこくこくと首を動かしている。

 

――あーあー、言われてみればそんなこともあったような?――

「<お前、もっと早く思い出せよ! <デル・ドーレ>しか選択肢がないみたいに言いやがって! 俺がどれだけ悩んだか!?>」

――自分だって考えつかなかったんじゃねえか!――

「・・・・・・あー、ちょっといいかい?」

 

おそるおそる割り込んだ声に振り返ると、所在なさげに手を伸ばすアルフの姿があった。

フェイトも呆然としながらこっちを見ている。

 

「なんだ、どうかしたか?」

「いや、なんだもどうしたもこっちの台詞だと思うんだけど・・・・・・」

「??」

「いや、いいけどさ、まずそれはなんなんだい?」

 

アルフが指さすのは俺の足下。

山犬の形を取った<クフ・リーン>を指していた。

 

「これは・・・・・・」

 

答えようとして、ふと思う。

ここでした説明は、フェイトからプレシアに伝わる可能性もあるんだよな。

どうしたものか。

・・・・・・メンドイ。

 

「犬の影だな。俺、実は人間の姿は擬態で、実は犬なんだ」

「ええ!?」

「いやいや! フェイト、何で驚いてるの!? どう考えても雄一の嘘だから!!」

「チッ」

 

冗談を真に受けて驚くフェイトにアルフがつっこむ。

アルフめ、余計なことを。

まぁ、今の内に本題に戻ろう。

 

「<それで、どうやればいいんだ?>」

――言うより見た方が分かりやすいだろ――

 

瞬間、またどこかの情景が脳裏を駆け巡る。

今度は一連のものらしい。

執事の青年と以前はメイド服だったはずの白い髪の少女。

青年の腕は何があったのか所々折れているらしく、青黒く変色している。

少女が、その腕を撫でると、皮膚が波打ったと思ったときには元の肌色を取り戻していた。

 

「<今のは・・・・・・>」

『<あれは、皮膚を液状化させて塞いでおるのじゃ。これなら、この娘の傷も癒せよう?>』

「<カナメ、グッジョブ!>フェイト!」

「え、はい!?」

「その怪我、治せるぞ!」

「「は!?」」

 

二人が驚き目を見開く。

一早く再起動したのはアルフだった。

 

「ま、待ちなよ? あんた、確か前はそんなのないって、言ってなかったかい?」

「ああ、今思いついたからな」

「それを聞いて一気に不安になったよ!? 大丈夫なんだろうね!?」

「・・・・・・たぶん?」

「たぶんってちょっと!?」

 

ええい、今回は随分と食い下がるね、アルフは!

だったら!

 

「わかったわかった! 今実演して見せてやるから!」

「だから・・・・・・って、実演?」

 

戸惑うアルフを置いておいて、取り出したナイフで腕を深く傷つける。

途端、血が勢いよく吹き出る。

 

「な、何してるんだい!?」

「雄一、血が!?」

 

慌てる二人を宥める。

深く切ったのはそうしないとすぐに<デル・ドーレ>が修復してしまうからだ。

二人の目の前で、<沙波>を起動しつつ、傷をなぞると皮膚が波打ち、傷が閉じる。

 

「な? 分かっただろ」

 

治った腕を二人に向けて振ってみせると、アルフも信用してくれたらしい、処置に移ってもよさそうだな。

 

「じゃあ・・・・・・」

 

背中を、と言おうとしてふと気がついた。

この場で治療するなら、フェイトは服を捲り上げるか脱ぐかするわけで・・・・・・。

 

「「?? あ・・・・・・」」

 

妙な反応に首を傾げていた二人も、俺の様子と視線から察したらしい。

 

「////!?」

「フンッ!!」

 

フェイトが顔を紅くするのと同時にアルフの拳が俺の顔を打ち抜いていた。

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