リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第二十三話 時空管理局と前哨戦

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 詳しい話を聞かせてもらおう!」

「なるほど、時空管理局ね・・・・・・」

 

口上を聞き流しながら思い出すのは以前のフェイトとの会話。

フェイト達はこの世界を「第97管理外世界」と呼んでいた。

その時に考えた、管理組織のご登場ということか。

ずいぶんと大上段な物言いだが、

 

「従う理由はないな」

 

<憑黄泉>で姿を消し彼の後ろへ回る。

三人ともこっちの不在に気がついた様子はない。

 

「このまま戦闘行為を続けるなら」

「どうするっていうんだ?」

「っなぁ!?」

 

言葉を被せながら背中に蹴りを放つ。

 

「き、貴様! 管理局に逆らうつもりか!」

「むしろ従わなきゃいけない理由を聞きたいくらいだよ、侵入者? こっちは管理局なんて組織は初耳なんだ。そんなものに場をひっかき回されるつもりはない」

 

背中を押さえながら振り返って叫ぶクロノという執務官に言い放つ。

 

「なんだと? お前も魔導師だろう!? それなのに管理局を知らないはずがないだろ!!」

 

カナメを指さして言う。

はずがないだろう、と言われても・・・・・・。

 

「あいにく、そのまさかだな。俺は正真正銘この地の生まれだ。もちろん両親もそうだ。デバイスについては故あってのことさ。わざわざその理由を説明してやるつもりはない」

「ふざけているのか! デバイスをもっていながら管理局を知らないなんてことあるわけないだろ!」

「・・・・・・(管理局ってのはこういう頭が凝り固まった奴ばかりなのか?)」

 

クロノの口上に閉口しつつ、

 

「<フェイト>」

「!?」

 

後ろで執務官の隙をついてジュエルシードに向かおうとしているフェイトに念話で呼びかける。

 

「<アルフに隙を作らせて、ジュエルシードを取って離れろ。援護はする>」

「<・・・・・・わかった。雄一はどうするの?>」

「<管理局とちょっとお話かな。一応釘を刺しておくつもり>」

「<大丈夫なの?>」

「<ヘマは打たないように気をつけるよ>」

「<・・・・・・わかった。雄一も気をつけて>」

「聞いているのか、お前は!」

 

おっと、念話に集中するあまり、クロノの演説を聞き流していたらしい。

 

「いや、すまないが聞き逃していた。もう一度言ってくれないか、始めから」

「お前! っ!?」

 

クロノが激発しそうになった瞬間、上空から魔力弾が彼めがけて降り注いだ。

アルフの援護射撃か。

 

「くっ!?」

 

クロノが障壁を展開し、魔力弾を受け流すために足を止めた。

その隙にフェイトがジュエルシードへ手を伸ばす。

 

「させるか!?」

「おまえにもな!」

 

フェイトめがけて杖を構えるクロノを<ルー・グー>で吹き飛ばす。

だが、クロノもただではやられず、吹き飛ばされながらもフェイトめがけて魔力弾を撃っていた。

 

「あっ!?」」

「「フェイト!」」

 

魔力弾が掠めたフェイトは体勢を崩した。

アルフがフェイトを受け止め、ジュエルシードに後ろ髪を引かれながらも逃げを打つ。

 

「逃がすか!」

「ぶっ飛ばせ、<ルー・グー>!」

 

追撃を放とうとするクロノの杖を弾き飛ばす。

先ほどと同じ愚は犯さない、クロノより彼のデバイスだろう杖を吹き飛ばすことで、狙いを外させる。

その隙に距離を稼いだフェイト達からこちらへクロノの視線が向けられた。

その目には多分の敵意が浮いている。

 

「貴様、どういうつもりだ! 管理局員への傷害行為で逮捕するぞ!」

「何度も言わせるなよ。こっちはお前達の理屈に従う理由は持たないんだよ、管理局。この世界がお前達の管理『外』だってことは調べがついているんだ」

「なっ・・・・・・!?」

「カナメ」

『うむ。Sealing』

「なっ!? なにをしているんだ、お前は!」

 

クロノが驚きに身を固めた隙をつくように、カナメにジュエルシードを取り込ませる。

クロノがこちらに杖先を向けるが、再び<ルー・グー>で弾く。

 

「くっ!?」

「何をするも何も、封印状態で放置する愚を犯さないためにデバイスに取り込んだだけだ。それよりも、こっちからいわせもらうが、お前達の強権がここで、なんで通ると思っているんだ?」

「ロストロギアは放置していては危険すぎる! 魔法文化のない世界ならなおさらだ! だから管理局が管理する、といっているんだ!」

「だったら、お前達に任せることはできないな。まずこっちにとって、お前達は無関係の土地で強権を振りかざし、危険な品を強奪していこうとしている侵入者に過ぎない。その上で、こちらに干渉しようというのならそれは立派な内政干渉といえるだろう。いや、むしろ介入という名前の侵略だな」

 

俺の物言いにクロノがキッと睨む。

言い方が悪意的であれ、間違っているとは思えないけど?

 

「だが、この世界に魔法文化はないはずだろ! なら、ノウハウを持っている管理局の介入は必要だ!」

「あいにく、それは表向きの情報でね。この世界における魔法のスタンスは『隠れて生きよ』なんだよ。さて、執務官。俺の使っていた魔法は貴様らのノウハウの内にあるのかな?」

「ぐっ!? だが、それが管理局を必要としない理由にはならないはずだ!」

「不要だよ。さっきもいったが管理局という組織は初耳なんだ。だから、こっちにはお前達が管理局の人間かどうか、調べる手段はないってことだ。これじゃあ、迂闊に渡すわけにはいかない。それに、おそらく管理局は、ジュエルシードのようなもの、ロストロギアっていったか? それの管理を謳っているようだけど、その管理を必要としない状態、例えば破壊することができるなら管理局は必要ないだろ?」

「それこそありえないことだ! ロストロギアは破壊できないはずだ!」

「なら、管理局でも封印以上の処置は取れないんだろう? なら、なおさらこちらの戦力で十分だ。実際にこちらは破壊に成功している」

「な、ジュエルシードを破壊しただと!?」

「事実だ。それに、もう一つ協力を拒否する理由がある」

 

俺としてはこちらの理由のほうが重要だ。

 

「お前達は、俺が守ると契約した相手に武器を向けた。契約者は契約を違えない。だから、

 

手元に瓦礫片を引き寄せるとともに、カナメの切っ先をクロノに向ける。

 

「お前はフェイトを傷つけた。戦う理由はそれで十分だ」

 

瓦礫の一つをクロノめがけて撃ちだ

 

『待ってください!』

 

す寸前、映像を映したモニターのようなものが広がった。

映っているのは緑髪の女性。

 

「誰ですか?」

『私は、時空管理局巡行艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。そちらのクロノ執務官の上官に当たります』

「そうですか。それで、何の御用ですか?」

 

油断なくクロノに瓦礫を向けながら問う。

不審な動きがあれば、何といわれようと撃ち抜くつもりだ。

 

『話し合いを、と言いたいところですが、その前に、その瓦礫を置いてくれないでしょうか。それを先ほどの速さで放たれてはお互いに問題になるでしょうから』

「こちらとしては問題にはなりませんよ。先ほども言ったようにこちらは貴方達の干渉にうんざりしているんですよ。彼にも言いましたがね、管理『外』世界のことは管理外世界に任せるのが筋でしょう?」

『仰ることは尤もでしょう。ですが、こちらも理由があるのです。よろしければ、我々の艦で説明させていただきたいのですが、ご足労いただけないでしょうか?』

 

リンディ女史の提案を斟酌する。

相手の陣地に乗り込むというデメリット以上のメリットがあればいいんだが。

 

『<主殿、此処は話に乗れ>』

 

考えていると、カナメが賛成票を掲げた。

 

「<どういうことだ?>」

『<管理局も一組織。組織に個人で敵対するのはあまり得策ではあるまい。かといって過度におもねる必要もない。ならば、協力者などの対等の立場におぬしの立場を持っていく必要がある。それなら、直接話す方が対応もしやすかろ?>』

「<なるほど>」

 

カナメの意見は確かに理想的だ。

問題はそこに近づけられるかどうか。

これに関しては案ずるより生むが安し、でいくしかないか。

 

『いかがでしょうか?』

「分かった。その招待を受けますよ」

『ありがとうございます。では、そちらの方達も』

「ふぇ!?」

「ぼ、僕達も、ですか!?」

 

様子を窺っていたなのは達にも白羽の矢が刺さった。

 

『貴方達もこの件に深く関わっているようですからね。お話を聞かせてください。では、クロノ執務官、彼らをアースラまで転送してください』

「了解です、艦長!」

 

クロノが頷くとモニターが消えた。

クロノがそのまま魔方陣を描くと、俺達の視界は公園のものからやたらとSF的な部屋へと切り替わっていた。

 

「ここが、時空管理局次元空間航行艦船『アースラ』だ」

 

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