リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

29 / 204
難産でした。
ジュエルシードの数が不安ですが・・・・・・。
お楽しみください!


第二十六話 真意と契約

 

「っ!?」

「お前、何を!」

「雄一君!?」

「雄一、何やってるんだ!」

 

 突然のことに騒然とする外野に構わず、リンディを睨みつける。

 

「やってくれたな、管理局。目的は戦力か」

「な、なにを」

 

ナイフを突きつけられて狼狽えているリンディはひとまずおいておき、デバイスを構えているクロノに視線を向ける。

 

「なあ執務官。さっきの言葉にあった『ロストロギアの回収は最優先の任務』っていうの。あれって真実か?」

「ああそうだ! それよりも母さんを」

「おかしいと思わないか? なんで、『一晩ゆっくり考える』必要がある?」

「何を言っている!」

「最優先の事項があるときに一晩という時間を無駄にする。なら、その意図はなんだ?」

「それは・・・・・・」

「そもそも、お前達なら強権を振りかざして強引に遠ざける方法もあるだろう。さっきやっていたみたいに。なのに、わざわざ考える時間をくれるという。やることが無茶苦茶だ。こういう場合なら、勢いに任せて相手に要求を呑ませるのが定石だろ。相手を冷静にさせちゃいけないんだから」

 

だから、といって一つ前置き。

 

「思考を読んだ。なのはは知っていると思うが、俺は心を読める」

「なんだって!?」

 

クロノが息を呑む横で、意図を悟ったらしいユーノがなのはを抑えているのが見えた。

どうやら、二人はこっちに任せてくれそうだ。

そして、意味を悟ったリンディは顔を青くする。

 

「驚いたぜ。まさか、ジュエルシードの回収のプランに紛れて俺達を、というかなのはを取り込むプランを巡らせていたんだから」

「わ、私!?」

 

場の視線が自分に向けられ、なのはが驚く。

頷き、説明を続ける。

 

「なのはの魔力は極端に高い。多分、そこの執務官よりもな。ここからは推測になるけど、おそらく、この船には執務官以上の戦力がいない」

「何でそう思うの?」

「一つは執務官という役職。もう一つはクロノが単独で来たからだ。前者は、ユーノ達の反応から結構な大物だと当たりをつけたけど、その不自然から。後者は状況証拠だけど、普通、万一を考えて二人組を用意するはずだ。なのに、一人なのは複数になると全力を発揮できない広範囲無差別の攻撃か、周りの戦力が低くて執務官の性能を発揮できなかったり危機的状況だと足枷になる場合。執務官は前者に当てはまらないだろうから後者だと思った」

「そんな・・・・・・」

「けど、それなら筋が通るかな。クロノ執務官は有名だけど、他の職員がいないわけじゃない。たとえば武装隊員が来てもいい。執務官は切るには大きいカードだと僕も思う」

 

ユーノの説明に含まれる情報に眉に刻まれたしわが深くなる。

 

「武装隊っていうのもあるのか? それに、事態は下手をすれば管理局全体で、かもしれない。最初のジュエルシードの発動は三週間近く前だ。そして、管理局が介入したのは今回が最初。その間に発動したジュエルシードは十個。それこそ、ユーノの行動がなければ、この世界を滅ぼしてあまりある次元震が襲っていただろう。昨日の次元震が管理局が重い腰を上げる原因だったとしたら、その頃にはこの世界は滅んでいたってことじゃないのか。最優先と言うには恐ろしく反応が遅い」

「そ、それじゃあ・・・・・・」

 

なのはの視線がリンディさんに向けられるが彼女は口を閉ざしたままだった。

 

「そして、その状況で現れた高魔力の魔導師。喉から手がでるほど欲しいだろ。だから、あえてジュエルシードの危険性を説明した。なのはの側から協力をさせるために。あと、俺を外したのは契約という未知の力を避けるため。違うか?」

「それは・・・・・・」

「かあさ、艦長! なぜ黙っているんですか!? 民間人を巻き込むつもりだったなんて、そんなはずは」

「すみませんでした」

「艦長!?」

 

反して謝罪を口にしたリンディに愕然とした目を向けるクロノ。

それでも、クロノは彼女に理由を問うた。

 

「け、けど何故?」

「それは、彼が言った通りよ」

「つまり・・・・・・」

「そう。管理局には強力な職員が少ない。Aクラス以上の魔導師は数えるほどしかいないの。その中で発見された高ランクの魔導師、特になのはさんはAAAクラス以上の魔力を秘めているの。けど、管理局の職員として、頭を下げることはできないとして、こんな形になってしまいました。けど」

 

居住まいを正したリンディさんは深く頭を下げた。

 

「その上で、お願いします。私達に力を貸してくれませんか?」

「ひとまず、顔上げてもらっていいでしょうか?」

 

頭を下げるリンディさんに頭を上げてもらい、眼を覗き込む。

覗き込み思考を読み取った後、なのは達に頷いてみせる。

 

「・・・・・・今度はウソじゃなさそうだな。なのは、どうする?」

「わ、私はいいと思う! だって、放っておいたら大変なことになっちゃうんだろうし、ジュエルシードを集めるって自分に誓ったから!」

「そうか」

 

張り切るなのはからユーノに視線を移すと、彼も否はないらしく首を縦に振る。

結果、場の視線がこちらに向いた。

ナイフを外し、リンディさん達に告げる。

 

「俺からはいくつか要求させてもらう。1、管理局の指揮下に入るんじゃなく協力者の立場にすること。2、海鳴への管理局員への派遣の原則的禁止。以上だ」

「2の派遣の原則的禁止についてはどうにかならないかしら? いざというときの即応性が損なわれると思うけど?」

「そうもいかない。俺の契約が切れたあと、好き勝手されちゃかなわない。その代わり、ルールの緩和の権限は俺だけじゃなく、なのはとリンディさんにも渡す。これでどうだ?」

「・・・・・・分かりました。その条件を呑みましょう」

「いいだろう。こちらも、『海鳴の守護』の契約に準じて管理局の提案に同意する」

 

sideリンディ

 

彼らをクロノに頼んで地上に送ってもらった私は、深いため息をついた。

たかが九歳児という意識はなかったとはいえない。

ただ、彼にはその傲慢を突かれて手痛い反撃をもらったけど。

今も彼らの動きはマークさせている。

彼はどこか油断ができない。

まるで、年齢にあっていないような思考力に精霊という未知の力。

この先どう付き合っていくのか、頭が痛くなってくるけど、敵に回らないのは僥倖といえるだろう。

ため息をもう一つついていると、

 

「か、艦長! 大変です!」

 

通信主任のエイミィ・リミエッタが部屋へ駆け込んできた。

彼女の慌て様にただ事ではないと判断して、気を引き締める。

 

「それで、一体何があったの?」

「彼、榊雄一を追跡していたんですけど、サーチャーが見失ったんです」

「?」

 

それの何処が以上なのかしら?

確かに追跡・監視がばれたというのは問題だが、そういう様子でもない。

 

「一体どうしたというの?監視がばれたってことかしら?」

「い、いえそれが・・・・・・サーチャーの視界から突然消えたんです」

「消えた? 転移の可能性は?」

「魔力はありませんでした。魔法陣の展開も確認されていません」

「だとしたら、どういうことなのかしら?」

「(まさか、家自体に不可視の結界が敷かれているのかしら?)それが貴女の慌てていた理由かしら?」

 

問うと、彼女は激しく首を振り、二枚の紙を取り出した。

それは戸籍謄本と一枚の記事。

 

「これは?」

「家の情報が見つけられなかったので、外側から情報を得ようとした際の情報なんですが、とにかく見てください!」

 

戸籍謄本は置いておいて記事に眼を通して、

 

「これは・・・・・・本当なの?」

 

息を呑んだ。

彼女に視線で問うと、エイミィは頷いた。

 

「この世界の記録を辿りました。間違いないかと」

「・・・・・・そう、なんてこと。エイミィ、クロノに伝えておいてくれるかしら?」

「え、はい! 何ですか?」

「明日、彼と模擬戦をしてもらえないかしら? その結果如何によっては彼には外れてもらう必要があるかもしれないから」

「・・・・・・分かりました。必ず伝えます」

 

敬礼して部屋を出て行くエイミィを見送って、もう一度書類に視線を落とす。

そこには短く、

 

『榊雄一・二年前に海鳴へ家族と共に転居。その後、不審火で家屋は全焼、父春臣・母彰子が死亡。その後一人暮らしとされている』

 

の一文があった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。