リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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模擬戦回です。
バトルの展開が不安になってきました・・・・・・。
で、ではお楽しみください!


第二十七話 模擬戦と推察

「模擬戦、ですか?」

 

翌日、アースラを訪れた俺達にリンディさんが告げたことを復唱した。

リンディさんは頷いて説明してくれる。

 

「実はなのはさんやあの黒衣の魔導師の戦闘力は資料があるんだけど、あなたの契約や精霊と言ったものは私達にとって未知なものです。ですから、一度その能力を見せて欲しいんです」

「はぁ、それはいいですけど・・・・・・」

 

頷きつつ、この提案の意図を考える。

穿った見方をすれば、俺が反旗を翻したときの対策資料、とみれるがそこまで考えるのも失礼か。

となれば、どの程度使えるのか見ておきたい、っていったところか?

 

「それはいいんですが、相手は誰が?」

「お相手はクロノ執務官が務めます。クロノ執務官、案内を」

「了解しました、艦長。こっちへ来てくれ」

 

クロノに案内されてついた訓練場は体育館程度の広さの部屋、って、どんだけ広いんだよこの艦。

 

「勝負の判定は相手の降参か戦闘不能とするが、君の精霊に非殺生設定はあるのか?」

「前確かめたんだが、それはないんだと。それが使えたらこっちだってどんだけ楽になるか・・・・・・いや、いい。とにかく殺さないように気をつけよう」

「・・・・・・本当に頼むぞ」

 

若干不安そうになったクロノはさておいて、周囲に目を向ける。

片づけられたのか、訓練場には邪魔になりそうな物は撤去されているようで、魔弾に使えそうな物はなし。

念のため床を蹴ってみたが、感触からして衝撃への抵抗はとても高いようで、強化した蹴りでも砕けそうにない。

ただ、厚さはあるようだ。

手持ちは引き続いてナイフが六本。

ただし、<クフ・リーン>は制約で使用不可能、さらには殺さないように威力に気をつけなきゃいけない、と。

 

「もう確認はいいか?」

「ああ。それじゃやるか」

 

お互いに八メートルほどを挟んで向かい合い、デバイスを構える。

クロノの手に握られているのは杖。

レイジングハートやバルディッシュと同様のものかとも思うが、随分静かだな。

 

『<主殿、あれはインテリジェントデバイスではなくストレージデバイスじゃ>』

「<ストレージ? デバイスにも種類があるのか?>」

『うむ。我らのような人工知能で主に適切なサポートをするデバイスがインテリジェント。そして、一部の機能を特化させることで主の戦闘のサポートをするのがストレージじゃ。デバイス自体に思考能力がないから自動で魔法を起動することはないが、その分使用にかかる処理能力が低くても問題がないのが売りじゃな>』

「<? つまり、執務官は処理能力が低いのか?>」

 

だが、俺の問いはカナメが両断した。

 

『<戯け。執務官の職につくものが処理に劣るわけがなかろう。低く見積もってもAAクラスはある。使い続けた得物だから、と見たほうがよかろう>』

 

なるほど、そっちの方が納得がいくか。

 

「!」

<Stinger Ray>

『<主殿!>』

「おわっ!?」

 

クロノの杖から放たれた魔力弾を首を傾けることでかわす。

 

「チッ、隙だらけだから当たるかと思ったんだが」

「執務官が不意打ちか」

「ボーっとしている方が悪いだろ」

 

御尤もなことで。

それじゃ、

 

「反撃といきますか、<バーラ・ルー>!」

 

世界を灰に変える魔眼を開放し、クロノを視界に捉える。

クロノも危機感を感じたのか、視界から逃れようとするがこちらは視線を動かすだけだから逃げ切れずにいた。

その間も、訓練場の所々が灰に変わっている。

 

「くっ、なら!」

 

クロノが再び魔力弾を放つ。

放つ魔力弾をかわすが、魔力弾は灰の山へ突っ込み灰を巻き上げた。

 

「ちっ」

「やっぱりか。その能力は相手を見ることが必要なんだな」

 

魔眼を封じられて舌打ちを洩らすと、クロノの分析が耳についた。

再度舌打ち。

 

「今度はこっちから行くぞ」

<Stinger Snipe>

 

クロノが再び魔力弾を放つ。

随分と代わり映えしないな。

違和感を抱きつつ、最小限の動きで避けようとし、

嫌な予感に“なんとなく”大きく距離をとった。

瞬間、

 

「スティンガー!」

<Snipe Shot>

 

新たな詠唱によって魔力弾の軌道がこちらへ変化し迫ってくる。

 

「ちっ!? だったら、<デル・ドーレ>!」

 

強化した脚力で床を蹴り、壁に拳を叩き込む。

叩き込んだ拳をアンカーにして壁を蹴り、魔力弾を掠めるようにして天井へ蹴り上がる。

寸前で標的を見失った魔力弾はその勢いで壁へ衝突するかと思ったが、すぐさま向きを変えて追ってきた。

その上、

 

「スティンガー!」

<Stinger Ray>

 

すぐさま天井を離れると、天井に光速の魔力弾が突き刺さった。

 

「驚いたな。まさか今のも避けられるとは思わなかった。その身体能力も契約によるものなのか?」

「そうだ、な! こっちも、驚い、ている! 誘導弾に光速弾と、随分、芸、達者じゃないか!」

 

再び壁と天井を経由して誘導弾を避けながら光速弾を回避する。

その中で暢気な質問をするクロノに答えながら打開策を考え続ける。

 

(誘導弾が厄介だな。無視してクロノに突っ込むのも一つの手だけど、当然それは向こうもわかっていることだろう。何か、あと一手欲しい所だな)

 

再度天井から床に降り立つ。

だが、

 

「おっと!?」

 

その際、灰で足を滑らせてしまい、地面に手をついてしまう。

 

その隙を見逃す相手ではなかった。

 

「これで終わりだ! スティンガー!」

<Stinger Ray>

 

クロノの魔力弾が迫り、ついで、誘導弾が灰を巻き上げて炸裂した。

 

 

sideクロノ

 

(とった!)

 

今のスティンガー・レイは決まったはず。

相手は体勢を崩していたしシールドが展開されていた様子もなかった。

巻き上げてしまった灰で様子が見えないが、おそらく気絶しているだろう彼のほうへ歩いていき、

 

「あれ?」

 

彼の姿は見つからなかった。

すぐに周囲を警戒する。

信じられないことだが、あの体勢で防いでいたらしい。

今は潜んでいるようだが、

 

(何処から来る?)

 

灰の動きに注視する。

人一人分の体積が動けばそれだけ空気が攪拌される。

不自然な動きがあればそこにすぐに叩き込む。

そう気を張っていると、

ジャボッ! と妙な音が天井から聞こえた。

 

「スティンガー!」

<Stinger Ray>

 

真上にスティンガー・レイを撃ち込んだ。

見上げた視界。

スティンガー・レイが切り抜いた隙間から確かに彼の姿が見えた。

今度こそとったと思った瞬間、

 

「呑み込め、<沙波>!」

 

彼が振るった刀がスティンガー・レイを打ち消す。

 

「なっ!? がっ!?」

 

驚きに固まった一瞬で、上から降ってきた彼に地面に叩きつけられた。

慌てて身を起こそうとするが、

 

「コレで詰み、でいいよな?」

 

僕の目の前に刀を突きつける彼の姿があった。

 

 

sideout

 

危なかった。

咄嗟についた手を起点にして<沙波>を使って液状化させた地面に潜り込んだ。

その後、天井側に回りこみ、上空からの奇襲を敢行。

反撃は<沙波>で消去して無事に奇襲は成功した。

 

「コレで詰み、でいいよな?」

「ああ。降参だ」

 

両手を軽く上げるクロノの言葉に緊張感を解く。

リンディさんを振り返ると、彼女は複雑そうな表情を浮かべていた。

何かあったのか?

 

「これでいいですよね?」

「・・・・・・ええ、協力感謝します。今日はもういいので、一度戻った方がいいでしょう。家族にも説明しないといけないでしょうから」

 

それはこれからしばらく此処に留まれということですか?

 

「ウチはその件はもう話してあるんで大丈夫ですよ。なのはは?」

「私は一度戻らなきゃいけないかな」

 

なのはを振り返ると、彼女はまだ言っていなかったようだ。

まぁ、士郎さん達の説得には骨が折れそうだしな。

なのはの苦労を察しつつ、彼女の頭を撫でる。

 

「拗れそうなら呼べ。その時は一緒に説明してやるから」

「ふぇ!? う、うん! 是非お願いするの!」

 

何故か凄い勢いで頷かれたけどどうしたんだ、なのはは?

 

sideリンディ

 

模擬戦を終えたその夜。

私はクロノとエイミィに来てもらい話し合った。

議題は彼、榊雄一について。

 

「それでクロノ。実際に戦ってみてどうだったかしら?」

「そうですね・・・・・・事前の記録から見ても魔力は多いんです。映像から読み取れるだけでSに届くはずです。けど」

「何か気になるの?」

 

問うと本人も理解し切れていないのか首を捻りつつ言葉にしていく。

 

「攻撃になると、そこまでの魔力を感じなくなるんです。あの周囲を灰に変える能力も魔力でレジストできるようですし」

 

確かに周囲が灰に変わる中、クロノは比較的損傷は少なかった。

 

「記録を見ていてもそうだと思うよ」

 

エイミィも同様の意見のようだ。

続きを促すと、彼女はコンソールを操作して映像をスクリーンに表示する。

表示されたのは昨日のジュエルシード戦、その1シーン。

彼が瓦礫片を樹に撃つ瞬間。

 

「このときに込められた魔力ですけど、精々Bくらいの魔力なんです。あの破壊力はほとんど撃ち込むときの斥力と瓦礫の硬度の問題ですね。恐ろしく燃費がいいのか、彼の使い方がいいのか」

「それに随分と多様な戦法を使います。確認できたのは、周囲を灰に変える、物体を高速で撃ち出せる、心を読める、身体強化の以上四点。ただ、最後の移動や魔力弾をかき消した事から、他にも隠していると見たほうがいいかと」

 

クロノの推論に同意する。

彼は頭が回る。

その彼が私達相手に全力を見せるとは考えにくい。

隠し玉の存在は覚えておいて損はないだろう。

 

「それなら、もう一つ二人に聞くわ。彼は信用できそう?」

 

問うと、驚いたことにクロノはすぐに頷いた。

 

「彼は契約を重視するみたいです。だからこそ、彼が言っていたように海鳴の守護の一点は破らないはずです。同様に、我々と結んだ契約も破ることはないと思っていいと思います」

「なるほど。男の子はいいね。殴り合いの末、深まる理解か♪」

「別にそんなつもりはない。それより、エイミィはどう思うんだ?」

「うーん。私も別に問題ないと思うよ?戦闘力も期待できるし、敵にまわらないためにもこっちでキープしておくべきだと思います」

 

二人の意見に頷き、私自身の考えを纏める。

 

「わかりました。それでは明日から、榊雄一さん、高町なのはさん、ユーノ・スクライアさんを加え、ジュエルシードの捜索を行います。本日は以上です」

「「了解しました、艦長!」」




次回から、本編を進めていこうかと。
なお、家族のくだりは間違いではありません。
後々効かせる予定です。
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