リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第三十話 襲撃と新たな鍵

「はぁ・・・・・・ああ、疲れた」

『お疲れさまじゃな。今回はだいぶ無茶じゃったからな』

「そうだな。魔槍四発ほとんどタイムラグなしで発動か。<クフ・リーン>にも無理をさせたな」

--カハハ、構わねえよ--

『それもあるが、私が言いたいのは<沙波>の打ち消しについてじゃ』

「? どういうこと?」

 

疲れたように舌を垂らす影を見下ろしてながら、カナメの言葉の意図を問う。

 

『あれにもリスクはある。細々としたものならよいが、多大な魔力を持っておる物を短い間に複数消すとこちらも体力や気力といった物をごっそり持っていかれるのじゃ』

「だから、お前も<クフ・リーン>もそういう大事な話はもっと早くしろと・・・・・・」

 

道理で今回はいつもより疲れているわけだ。

単純に魔力を使ったせいだと思っていたんだけど。

 

『すまんな。それより、魔槍を逆からぶつけてなのはの砲撃の余剰を防ぐなど、よく考えついたの』

 

足場に座り込み息を吐き出す俺にカナメが語りかける。

 

「そうでもしなきゃ、魔槍でジュエルシードは砕けるし、砲撃だけだったらなのはは手加減なしで魔力を込めるから余剰でこの辺吹き飛ばすぞ」

『・・・・・・想像に難くないの』

 

カナメの認識に苦笑して二人を見る。

すると、弛んだ気の隙間に入り込むように寒気が襲った。

 

「!?」

 

寒気の先を振り仰ぐ。

寒気を発している何かが雲の向こう、いやもっと向こうにいる。

狙いは・・・・・・なのは達か!

 

「二人とも、逃げろ!」

「「え・・・・・・?」」

 

手を握ろうとしていた二人は突然の叫びに反応できず固まってしまった。

 

「なのは、すまない! <ルー・グー>!」

 

なのはに掌を向け、邪魔をしないようにと離れていたユーノ達に向けて、斥力で弾き飛ばす。

 

「きゃっ!?」

「なのは!?」

 

吹き飛んだなのはをユーノが受け止めるのを耳で捉えながら、シールドを張ろうとして新たに気がついた。

雲を這う雷は紫色をしている。

その正体に得心がいった俺はシールドの処理を中断させて代わりに飛行魔法を展開し、フェイトめがけて飛び出す。

 

「母さん!?」

「フェイト!」

 

同じく魔力の正体に気がつき愕然と呟くフェイトをアルフまで飛ばそうとする。

だが、刹那の差で雷が牙を剥いた。

 

「ちっ! カナメ!!」

『分かっておる!』

 

この場から遠ざかろうとする体を押さえ込みながらカナメに命令すると、飛行魔法を維持したまま障壁が広がる。

障壁に雷の槍が突き刺さり衝撃と閃光をまき散らしながら障壁を削っていく。

 

「ぐっ・・・・・・!?(さすがに重い! けど、これなら)」

 

耐えきれると思った。

だが、次の瞬間新たに現れたもう一条の雷が障壁を喰い破った。

誤算は二つ。

ジュエルシード戦の無茶で魔力が消耗していたことで障壁の密度が下がっていたこと。

それでも、フェイト一人を狙ったものなら防ぎきっていただろう。

だが、雷は二条。

フェイトだけでなく、俺にも向けられていた。

 

「呑み込め、<沙な、ガアアアアァアア!!?」

 

とっさに<沙波>で打ち消そうとするが、間に合わず雷が体を貫いた。

痛みを通り越した熱と衝撃に体が勝手に跳ね上がる。

体が焼け付くのを感じ、神経が自己崩壊を防ぐために、意識を切り取りだした。

 

「---!! --!」

 

意識が途切れる直前、隙を突いてだろうアルフがジュエルシードに、なのはがこちらにそれぞれ手を伸ばした姿が最後の光景だった。

 

 

「ふむ、どうやら、私の愛犬に導かれてきたようだね

「しかし、あのときに破壊したはずの<アルス・マグナ>が何故?

「まあいい。まずは起きるとよい。話しはそれからだろう

 

訥々と声が聞こえる。

 

「何処から話したものか・・・・・・そうだね、私は父が嫌いだったわけではない」

 

気がついたときには、俺はどことも知れない場所を揺蕩っていた。

なのに、なぜか脚は地面に接しているらしい。

目の前には黒いドレスを着た金髪の女性がいる。

彼女と俺は向かい合って立っているらしい。

はて? 以前にもこんなことがあったような?

 

(どんな父親だったんだ?)

「そうだね。彼は母を真剣に愛していた。彼には避けえない未来が見えていたが、その未来を母は共に歩むことに決め、その後運命に捕らわれた。母を助けようと必死だったんだろうね。けど、目覚めぬ母にそのうち彼は狂いだした。その果てが、未来で見た髪の長い娘が運命に捕らわれることを利用して、母に似た方を生かすため、一方を人形として扱った」

 

だが、と彼女は翠玉の眼を昏く揺らしながら続ける。

 

「その運命は彼を逃がさなかった。娘は無邪気に髪を伸ばそうとして父に拒絶された。そして、思いついた。自分そっくりの姉と共謀して父を騙そうと。娘の無邪気な悪戯は浸透していき、人形となった方もその娘として振舞う間は人として扱ってもらえた。だが、娘には父の想いは狂気として映ってしまった。娘の一人を生かすため、もう一方を悪魔の如き存在に捧げようとする父親、それも生け贄は自分なのだと。彼女はそんなふうに思ってしまった。そして、凶行に奔った」

 

女性の言葉に応じて、その時のものだろう光景を映していく。

子供の部屋か、二人の女の子の姿があった。

活発な娘と、ベッドに横になり本を読む娘。

次第に活発な娘の髪は長く、もう一方は髪を短く切っていた。

使用人達も巻き込んだちょっとした悪戯のはずだった。

だが、異物を挟んだ歯車が壊れる時が来る。

父を燭台で殴る娘。

その頭部から出血するのを見て怖くなったのか娘が逃げるうしろで、燭台から零れた蝋燭の火があたりを火に包んでいく。

火の中、もう一方の少女の手を引き屋敷を飛び出す。

だが、手を引かれていた少女は彼女を拒絶した。

拒絶に怯んだ少女の後ろ、火に包まれた屋敷から頭部を押さえた父が現れた。

彼は娘の悪戯を知り絶望した。

そして、もう一方の少女に言った。

 

『お前は人形だ。お前が代わりになればよかったのだ!』

 

「結果、娘はその裏に隠された意図、つまり、生かそうとしたのは自分だったということを知り絶望するんだが・・・・・・どう思うかね?」

(どう思うも何も・・・・・・何が言いたい?)

 

答えると、彼女は不満そうにため息をついた。

 

「・・・・・・つまりこう言いたいのだ。彼女達、テスタロッサ親子のようではないか、と」

(フェイト達と?)

 

どういうことだろうか?

プレシアが誰かを救おうとしている?

ということは二人の娘に代わるのはフェイトだが人数が合わない。

フェイトには他に姉妹がいるということか?

 

「今は分からずともいい・・・・・・だが、時が来たなら」

 

女性の言葉を聴いていると、次第に意識が遠のくのを感じた。

 

(待ってくれ、まだ話を聞かなきゃ!)

 

女性に必死で手を伸ばすが届かずに腕が落ちる。

最中、

 

「どうか、彼女に父と、フェイトとあの娘にも私達と同じ思いをさせないで欲しい」

 

そんな言葉が耳に残った。

 

 

「待ってくれ!」

 

大声と共に跳ね起きる。

荒い息をつきながら、片方の視界が暗いままあたりを見渡す。

簡易なベッドにツン、と鼻に来る消毒液の匂いで病院の類と考え、アースラに収容されたと結論づける。

すぐさまベッドを降りようとして、

 

「ッ、イッデエエエエ!!!」

 

左腕を駆け抜けた痛みに大声で悶えてしまった。

大声を聞きつけてか、誰かが駆けつける音がして、

 

「雄一君!? 気がついたの!?」

 

扉が開くのももどかしいとばかりになのはが部屋に駆け込み、床を蹴った、っておい!?

 

「雄一君、気がついて良かったよー!!」

「あだだだだ!? 痛い痛い、マジ痛い!! つか、また意識が遠のくから!!」

「うわぁあああん!」

「泣き!? ちょ、マジで誰か来てー!!」

 

遅れてきたクロノが止めるまで、この騒ぎは続くのであった。

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