リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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これを入れておかないと後々響くんで。
このタイミングで入れておきます。
ではお楽しみください。


閑話 束の間の平和と出会い

なのはに遅れること二日後には俺も海鳴ヘ戻っていた。

ただし、<デル・ドーレ>の影響があっても足から胸部の火傷や神経の麻痺は回復したが、一番怪我の度合いが深い腕と目の完治はまだである(それでも、アースラの医療スタッフをどん引きさせたが)。

それはともかく、今回の戻ってきた目的は学校への連絡や家屋への顔見せではなく、戦法戦略の拡充だ。

 

「さすがに、使い方がマンネリになってきているし、何かないとあっさり対策を立てられそうだ」

『それは分かったのじゃが、どうする? 契約者に能力の使い方を説ける者がおらんし、独力でやるにしても有用性が分からぬぞ?』

「大丈夫。そこら辺は一応考えてある」

 

カナメの問いの答えであり、今日の目的地、図書館を目指して足を進めていった。

 

 

 

『<なるほど、本の内容から能力に似たものを選んで参考にしようと言うわけか>』

「<そういうこと。特に伝説や神話、御伽話や小説とか・・・・・・コレも入れとこう>」

 

カナメに答えつつ、斜め読みした本を床に積み上げた本の塔に積み上げていく。

本を床の上に置くのは誉められた行為ではないが、腕一本が動かせないため片手での作業なので多めに見てもらうとしよう。

次に移ろうと、積み上げた本の塔を影で拘束して落ちないように注意しつつ片手を底に差し込んで持ち上げる。

 

――待て待て、相棒――

 

持ち上げようとしたところで入った制止に本を床に戻す。

 

「<どうした?>」

――お前、自分の姿に気がついてるか? 怪我人、それも片手片目がやられてるやつが、そんな曲芸じみた真似をしてるんじゃねえ――

 

言われてみれば確かに。

今はそうでもないがいずれ人目を引くか。

 

「<そうだな。今のうちにこれらをテーブルに運んじまうか>」

――そうしとけ――

 

<クフ・リーン>の忠告に従い、再度持ち上げた本の塔を最寄りのテーブルまで持っていく。

そして、再度散策に向かおうとして、

 

「・・・・・・んん、届かへん、もうちょい・・・・・・」

 

本棚の上の段の本に手を伸ばす車椅子の少女を見つけた。

周りの利用者は少女に気がついた様子はない。

 

(気がついた以上、見てみぬ振りはしちゃまずいか)

 

散策はやめて、本棚まで近づくと、少女が手を伸ばしていた本を取ってやる。

 

「え?」

「これでいいのか?」

「え、は、はい?」

 

しどろもどろになりながらも頷いたので、本を手渡して、テーブルに戻って本に眼を通し始める。

 

(これは・・・・・・使えそうだな。一応覚えておいて)

 

ガタッ。

 

「ん?」

 

対面の席に誰かが座ったらしく、ちらりと視線を向けると、

 

「見つけたで」

 

さっきの車椅子の少女がいた。

どうやらさっきの音は椅子をどかしていた音らしい。

 

「お礼言う前に行ってしもたから探したんやで。さっきは本取ってくれてありがとうな」

「どういたしまして。ただ、ああいう場合は素直に司書に声をかけた方がいいと思うぞ」

「う・・・・・・耳が痛いなぁ。そ、それより、名前は何ていうん? 私は八神はやていいます」

「・・・・・・榊雄一だ」

「榊、雄一君な。それなら雄君って呼んでええ?」

「・・・・・・別にいいけど」

「おおきに! それなら私のことも、はやてでええよ」

 

はやてと名乗った少女に応えつつ、その行動力に戸惑う。

 

「なぁ、雄君は何読んでるん?」

 

はやてに聞かれて、今読んでる本は立てて、残りの本は向きを変えてはやての方に背表紙を向けてやる。

 

「えっと何々? 『図解いろいろな影絵』『体術指南』『大砲の歴史』『吸血鬼ドラキュラ』『鋼の〇金術師』・・・・・・」

 

タイトルを読むにつれて、どんどんはやての顔が複雑そうに歪んでいく。

やがて出した感想は、

 

「えっと、乱読家なんやね?」

 

といったものだった。

そこまで無理して出さなくていいから。

 

「八神さんは何の「はやて」。・・・・・・八神さん「はやて」、分かった、はやては何の本をとろうとしていたんだ?」

「これや」

 

はやてが見せてくれた本はファンタジー小説だった。

 

「面白いのか?」

「前の巻はなかなかやったな。よかったら読んでみる?」

「こっちを片付けたらな」

 

再び本に視線を落とそうとして、

 

「なあ、雄君」

「・・・・・・?」

 

先ほどとは違う真剣な声に、顔をはやてに向ける。

はやては幾度か言葉を飲み込んでいたが、

 

「その、聞いてええことか分からんけど、その怪我はどないしたん?」

「これか?」

 

左腕と左目を示すとはやてはコクリと頷いた。

別に隠すことじゃないし、いいか。

 

「ちょっと前に雷に打たれて」

「雷!? 大変やないか!? 大丈夫なん!?」

「そのあと海に落ちて」

「え、海!? 一気に場面飛んだな!? というか、何処で雷に打たれたん!?」

「空の上」

「嘘だ!」

 

事実は小説よりも奇なりっていうけど、まさにって状況だわな。

ぜえぜえと、息をついているはやてを宥めて、

 

「本当はちょっと前に雷に打たれて」

「え、そこは本当のことなん!?」

「そのあと海に落ちて」

「って言った端からさっきと同じ流れになってるで! これはあれか! 天丼ってことやな!!」

「その後秘密結社の実験台になったんだ」

「はい、ストーップ!! なんかおかしな話になってきてるけど、これだけは言わせてや! 嘘だ!!」

「いやいや、本当だって」

 

管理局を秘密結社とは言ったが。

 

「それよりも、ほら。大声を出すから、周りの人が睨んでいるぞ」

「う・・・・・・」

 

はやてはばつの悪そうな顔をして、周りに頭を下げた。

俺も一応頭を下げておく。

周囲の目が離れたところで、ぼかしながらもある程度は教えてやる。

 

「実際は、雷にうたれた火傷だよ。左手に鉄パイプを持っていて、其処に通電したから左腕とか左半身側にダメージがいったんだ」

「そうやったんや・・・・・・」

 

眼を伏せるはやて。

そんな反応をされるとこっちも困る。

だって、この怪我にしても二・三日あれば治ってしまうわけで、

 

「(はやての脚に比べると、あまり心配されると却って申し訳なくなるな)こっちも聞かせてもらっていいか?はやての脚は、その・・・・・・」

「うん。動かへんねん。けど、昔からやしそういうもんやて割り切ってるよ」

「そうか・・・・・・」

 

しんみりとした空気が漂う。

その空気に耐えられず、俺は席を立つとはやての傍に回り込み、はやての頭に手をのせた。

 

「ゆ、雄君? どないした?」

「はやて。ちょっとした気休めというか約束のようなものだが、俺と一つ契約を結ばないか?」

「契約? 新聞とかなら間に合ってるよ?」

 

冗談と思ってか、はやてが笑いながら言うが、俺は首を横に振る。

 

「そういうものじゃないよ。まあ、単なるおまじないとでも考えておけばいい。はやて、お前が助けを求めるなら、俺はお前を救うために全力を振るってやる。お前が何かに脅かされるなら俺がそれを排除してやる。お前を守るために俺の全力を振るうことを約束しよう」

「雄君?」

 

理解が及ばずにいるはやての頭を、俺は誤魔化すように撫でる。

はやては強いが、どこか脆さを感じてしまってこんなことになった。

 

(どうしてこう、なのはといいフェイトといいはやてといい、どこか危なっかしいやつらと出会うんだか・・・・・・?)

 

ため息をつき、はやての頭を撫でることに集中する。

そうしていると、

 

『<主殿、お楽しみのところ悪いがアースラを経由してなのはから連絡が届いたぞ>』

「<なんだって?>」

 

カナメが念話で知らせた内容に俺は目を細める。

事態が動いたらしい。

俺は時計に眼をやって

 

「おっと、すまないがそろそろ行かなきゃならないな」

 

時計を見ながら呟いた。

それを聞いたはやてが我を取り戻して顔を紅くする。

 

「そ、そうか!? ほんならまた会おな!」

「そうだな。またな、はやて」

 

頭から手をどけて外へ向かおうとし、

 

「な、なあ雄君!」

 

はやての声に足を止めて振り返る。

 

「へ、返事はそのときでええかな!?」

「(?ああ、契約のことか?)ああ、分かった。待っている」

 

返事をして、今度こそ図書館をあとにした。

 

sideはやて

 

 

不思議な子やった。

榊雄一君、私と同じように学校に行っとらなあかん日に図書館に来てたから気になって、本を取ってくれたお礼という建前で声をかけた。

言葉数も少なくてぶっきらぼうな子やと思ったけど、喋っていくうちにお互いに慣れてきたのか言葉も増えていった。

まさか、脚の事も話してしまうとは思ってなかったけど。

けど、後悔はない。

それに、頭を撫でてくれて。

さっきのことを思い出して、顔を紅くしていると、周囲の様子にやっと眼が行った。

なんや生暖かい眼が私の方を向いとる。

理由を思い起こして、思い至ったのは、さっき雄君を呼び止めたときのシーン。

去る男を必死に呼び止めて返事云々と言う女。

周りから見たらさぞ面白かったことだろう。

 

(いま思ったらまるで告白のシーンやないか!? そ、そんなつもりはなかったんや、ほんまや、って私は誰に言うてんねん!)

 

内心悶えながら、先ほど彼が言ったこと、契約を思い出してさらに紅くなる。

 

(ああもう! こんな恥ずかしい思いをしたのも、こんなぐちゃぐちゃになってんのも、雄君のせいや! 今度会ったらシバく!)

 

内心で悔しがりつつ、

 

「雄君、か・・・・・・」

 

ふと、彼が撫でてくれた頭に手を置きながらポツリ、と呟くのであった。

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