リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第三十二話 聴取と決戦前夜

なのはの伝言は「アリサがアルフを保護した」という驚きのものだった。

行ったことがなかったので、カナメにナビをさせつつ、すぐにバニングズ家ヘ向かう。

時間は・・・・・・ちょうど放課後くらいか。

アリサ達はもう戻っているはず。

鉢合わせると、怪我のことを説明しないわけにはいかないので、念のためなのはに念話を繋いで状況の把握を図る。

 

「<なのは、聞こえる?>」

「<ふぇ? 雄一君!? どこから念話を!?>」

「<カナメにナビさせてアリサの家の前>」

「<動いてて大丈夫なの!?>」

「<問題ねえよ。それより、アルフが保護されたって聞いたけど本当なのか?>」

「<うん。今ユーノ君が話を聞いてくれてて>」

 

なんだ、ユーノが話を聞いているなら急ぐことはなかったんだけど。

 

「<雄一、来てるんだって?>」

「<ユーノ?>」

 

ユーノが念話に割り込んでくる。

 

「<よかったら君も来て欲しい。僕達の中で彼女達が一番心を開いているのは君だろうし>」

「<分かった。場所は?>」

 

ユーノから詳しい場所を聞き、其処へ向かうことになった。

ただし、バニングズ家に気がつかれない様に、という注意つき。

 

「(まあ、問題ないけど)惑わせ、<憑黄泉>」

 

何気に久々な気がしつつも、<憑黄泉>で姿を消す。

本当はこの上に<デル・ドーレ>の強化も足したいけどカメラを誤魔化せるか不安なのでパス。

ただ、闇雲に塀を登るのは、塀の上部にセンサーが仕込まれている危険があるため却下。

だから、

 

「カナメ、頼んだ」

『承知した。<Flier Fin>』

カナメが飛行魔法を展開するのにあわせ、軽く地を蹴って塀を飛び越える。

 

「<潜入成功、と>」

『<不法侵入の間違いじゃろ>』

「<言うな。二人にこの怪我のことを説明するわけにはいかないんだから>」

 

だから、アリサ達に見つかるようなことになると後々まずい気がする。

 

「<それで、二人は>」

 

あたりを探そうとして、

 

『<主殿、向こうから僅かに魔力が漂っておる。おそらく念話の余波じゃな>』

 

カナメのセンサーが先に捉えた。

カナメの指す方に歩いていき、角を曲がったところで、

 

「<だけど、約束して!フェイトを助けるって!あの娘は何も悪くないんだよ!>」

 

アルフの念話を捉えた。

見れば、檻に入ったアルフ(犬)と話しているユーノ(フェレット)の姿があった。

おそらくクロノ達にも中継がいっていることだろうし。

 

「ユーノ、来たぞ」

「!? 雄一かい!? 姿が見えないけど、どうしたの!?」

「タネは明かしてやるから落ち着け。声が高い」

「・・・・・・。ごめん。それで一体どういうこと?」

「こういうことだ」

 

周囲に人目がないことを確認して<憑黄泉>を解いて姿を現す。

突然現れた俺に目を丸くする二人だったが逸早く回復したのはアルフだった。

 

「って、雄一!? あんた、その怪我、大丈夫なのかい!?」

「アルフも声でかいから。俺、此処の人に見つかると厄介だから声落としてくれ」

「あ、ああ、すまないね。それで、大丈夫なのかい?あの鬼婆の一撃を喰らったんだろ?」

「ああ、問題なかったよ」

「雄一、あの怪我はあまり大丈夫って言葉で括っちゃいけない類だから」

 

問題ないように振舞おうとしたら、ユーノがあっさり暴露した。

アルフがユーノに問う。

 

「そうなのかい?」

「正直、あまり大丈夫って言う状態じゃなかったよ。広範囲の火傷、特に左腕が酷かったし、左目も雷の熱で白濁してたから」

「それは十分大怪我じゃないか!?」

「アルフ、静かに。それより、何があった? いや、プレシアはフェイトに何をした?」

「それが・・・・・・」

 

アルフはぽつぽつと語りだした。

撤退したあと、時の庭園に向かった二人だったが、一人報告に向かったフェイトをプレシアが打ち据えたらしい。

今回のフェイトを巻き込む奇襲に加えての仕打ちに堪忍袋の緒が切れたアルフはプレシアを問いただしたらしい。

ところが、

 

「あの鬼婆、まったく表情を変えなかった。それどころか、胸倉を掴んでいたあたしさえその眼に映ってなかった」

「それでどうなった?」

「動揺した隙を突かれて脇腹を撃ち抜かれたよ。止めをさされそうになったけど、何とか逃げ出して、気がついたら此処の娘に保護されていたんだ」

「そうか」

 

アルフの話を聞き、整理していく。

 

(プレシア・・・・・・一体何を考えている? 以前読んだ思考は『娘のため』で埋め尽くされていた。その点に嘘はないはず。その一方でフェイトへのこの仕打ち・・・・・・やっぱりあの夢が意味するのはもう一人誰かがいるってことか?)

 

聞いてみるべきか揺れるが、おそらくアルフは知らないはず。

やはり、クロノ達の調査待ちと判断をつける。

 

「<雄一、聞こえるか?>」

 

新たに入った念話に、タイミングのよさに驚きつつ応える。

 

「<聞こえているよ。丁度こっちも聞きたいことがあったんだが、そっちからどうぞ、クロノ>」

「<なら言葉に甘えるけど、僕達はなのはの話と現場の状況、そして彼女の使い魔アルフの証言と現状から今の話に嘘や矛盾はないと考えた。その上で、プレシアテスタロッサを捕縛するつもりだ。アースラを攻撃しただけでも逮捕の理由にはお釣りが来る。だから、僕達は艦長の命があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更することになる。それで、君はどうする?>」

「<こっちもプレシアを問い詰める理由がある。否やは無い>」

「<理由?>」

「<フェイトを護る、と俺は契約している。その契約をプレシアは犯した。理由はそれで十分だ>」

「<そうか。それで、君が頼みたいことって言うのは?>」

「<それは後で話そう。それより、もう一人の当事者のなのはは何て?>」

「<ちょっと待ってくれ・・・・・・彼女も参加するそうだ。そこで、僕達はフェイト・テスタロッサについて君達に任せるつもりだ。それでいいか?>」

 

最後に、アルフに向けられた問いにアルフは頷いた。

 

「<なのは・・・・・・っていったっけ、雄一も頼めた義理じゃないけど、だけどお願い・・・・・・フェイトを、助けて・・・・・・今、あの娘、ホントに一人ぼっちなんだよ・・・・・・>」

 

アルフの必死の思いが込められた念話に

「当然だ」

「<うん・・・・・・大丈夫だよ、任せて>」

俺達は力強く応えるのだった。

 

 

その夜、フェイトにアルフを通じて決闘を提案した。

決着は明日の朝。

おそらく其処から、決着まで一気に進むという予感があった。

 

『主殿、一つ言っておくことがある』

 

その緊張感の中、カナメが険しい声で話しかけた。

 

「<アルス・マグナ>のことか?」

『そうじゃ。以前言ったように既に天秤は壊れそうになっておる。おそらく「契約書」が耐えられるのはあと一度。二度使えば確実に壊れるじゃろう』

「そう、か」

『もちろん、これはかなり楽観的に見て、と付くぞ? 正直、一回使うことさえ分が悪い賭けだといわざるをえん』

「・・・・・・」

 

思った以上に瀬戸際だった状況に口を閉ざす。

 

『主殿の予想と同じく、私も明日が山場だと思っておる。そのとき、大きく状況が動くだろうとも、な。だが、その動きの中、他の者の手に余ることが起きたとき、主殿は<アルス・マグナ>を切らずにいられるか?』

「・・・・・・たぶん問題ないだろ」

『・・・・・・頼むぞ。私達は主を失いたくはないのだから』

 

その言葉を最後にカナメは沈黙する。

カナメの言葉に頭を悩ませつつ、俺は天井に目を移す。

 

(カナメには悪いけど、おそらく使わざるをえないだろうな。夢に出てきた女の言っていた『プレシアとフェイト+α』と『契約者姉妹と父親』の類似。状況が似通っているんなら、フェイトに姉か妹がいるはずだけど、フェイトからそんな様子は無かった。これが鍵な気がするんだが、ここから何がどう繋がるのかが見えてこない。少なくとも、フェイトの願いによってはプレシアは救わなきゃいけないから、病気を払うのに一回使う必要があるな)

 

あの病気は管理局では手におえないだろう。

治療できるなら、プレシアがとっくの昔に根治させているはずだ。

おそらく、ミッドチルダの医療をして匙を投げたもののはず。

それを治療するためには、

 

(奇跡に頼る、しかないか)

 

明日の経過次第で跳ね上がる難易度を予想し、カナメに気取られぬよう細くしかし深くため息をつくのだった。

 

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