リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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だいぶ前に張っていた伏線の一つを回収します。
ではお楽しみください。


第三十三話 決戦の日と特訓模様

翌早朝。

合流した俺達は戦いの場所を海鳴臨海公園に定めた。

 

「ここなら大丈夫・・・・・・出てきて、フェイトちゃん」

 

なのはが目を瞑り僅かな音も逃さないようにしながら呼びかける横で、周囲に目を向けているアルフに声をかける。

 

「アルフ、フェイトの位置は分からないのか?」

「来ている・・・・・・はずなんだけどねえ」

 

頼りない返事に呆れつつ、あたりに眼と意識を向ける。

そのなか、

 

「・・・・・・来た」

「「「え?」」」

<Scythe Form>

 

機械音声と共に発生した魔力に振り返ると、街灯の上からこちらを見下ろすフェイトの姿があった。

 

「フェイト・・・・・・」

 

アルフが呼びかける。

 

「もう止めよう? あんな女の言うこと、もう聞いちゃ駄目だよ・・・・・・フェイト、このままじゃ不幸になるばかりじゃないか・・・・・・だから、フェイト!」

 

アルフの必死の声に、フェイトは僅かに表情を曇らせると、黙って首を横に振った。

 

「フェイト!?」

「・・・・・・それでも・・・・・・私は、あの人の娘だから」

「ただ捨てればいいってわけじゃないよね・・・・・・逃げればいいってわけじゃもっとない」

 

フェイトの声になのはの独白が静かに響く。

視線がなのはに集まる。

 

「切欠はきっとジュエルシード。だから賭けよう? お互いの持っている全部のジュエルシードを!」

<Putout>

 

なのはの宣言に合わせて、レイジングハートから封印されたジュエルシード十一個が排出される。

なのはの封印したものだけでなく、俺とクロノが封印していたものも渡してある。

 

<Putout>

 

応じるようにバルディッシュがジュエルシード九個を排出する。

お互いのデバイスを静かに構える。

 

「それからだよ。全部それから。私達の全てはまだ始まってもいない。だから・・・・・・本当の自分を始めるために。始めよう最初で最後の本気の勝負!!」

 

なのはの言葉に二人の間の緊張感がピンと張り詰める。

お互いに最初の一撃のタイミングを計りあう。

その前に、

 

「ユーノ、結界を張ってくれ」

「分かった。広域結界、展開!」

 

ユーノに結界を展開させる。

アルフに張らせるのはフェイトの魔力に影響がない保証はないため却下。

自分で張るのは、後の展開を予想すると少しでも消費は抑えたい。

 

「けど、大丈夫なのかい? あの白い娘も確かに強いけど、今までフェイトが勝ち続けているんだよ?」

 

確かにアルフの言うとおり、なのはの戦績は負け越しだ。

だが、

 

「今のなのはなら十分やれるだろ」

 

そのために鍛えたんだから。

 

 

サーカーチームの少年が発動させ、大木状に変化したジュエルシードが海鳴を襲ったその日。

なのはの鍛錬を約束した俺は、一つの問題を抱えていた。

自分とて、魔導師に師事したわけではないのだから、なのはをどのように鍛えるかのビジョンが固まっていなかったことだ。

しかし、フェイトの出現が方向性を与えてくれた。

以来次第に形を固めていき、完成したのは温泉の帰り。

そして、温泉から戻って翌日。

俺は公園になのはを呼び出していた。

 

「それじゃ、なのは。早速やってみようか」

「突然すぎるよ!? まず何をするのか説明して!?」

「ちっ・・・・・・分かった。まず、なのはに聞くけど、フェイトと二戦して何が問題か分かる?」

「えっと・・・・・・スピード、かな」

 

なのはがおそるおそる答えるが、俺は苦笑し首を横に振る。

 

「間違いじゃないけど、不正解。正しくは一撃の出力と魔法の展開速度以外の全てがフェイトには劣る」

「あぅ・・・・・・」

 

苦笑と共にばっさり切ると、なのはが僅かに凹んだ。

ただ、コレでも甘い採点の上でだ。

温泉での撃ち合いでみたとおり、一撃の重さ、込める魔力の量はなのはが僅かに上を取れる。

しかし、展開速度はお互いに遜色がない、というのが実情だ。

ちなみに耐久力もなのはが上回るだろうが、フェイトとの戦いではどちらも相手を痛めつけるような戦いをしないから省く。

 

「その状態でどうやって勝率を上げるか。俺なりに考えたみたけど講義よりも実戦形式でいくつもりだ。そうやってなのはに経験を少しでも積ませる。今のなのはにはまず経験を積ませて判断力をつけようと思う。だからこういうものを用意した」

 

用意したのは先端を潰した釘。

 

「えっと、それをどうするの?」

「これをなのは目掛けて飛ばすから必死で避けろ。瞬時に判断を下すのが目的だから、もちろんシールドで防ぐのもありだ。ただし、脚を止めることだけはしないでくれ」

「わかったの!」

「それじゃ、始めるぞ!撃ち抜け、<ルー・グー>!」

 

 

「ちょ・・・・・・ちょっと、タイム」

 

息も絶え絶えで出されたタイムに、俺は釘を手元に引き寄せる。

途端、大の字で倒れたなのはをおいて、自動販売機でスポーツドリンクを購入する。

そして、公園に引き返し、なのはに差し出した。

 

「ほら」

「あ、ありがと」

 

蓋を開けて差し出すと、なのはは勢いよく飲み始めた。

特訓中、四方八方から飛来する釘を感知し続けるのはなかなかに消耗させたようだ。

何度かシールドを抜けたことがあったことも消耗に拍車をかけただろう。

ちなみに、シールドを抜けた時は、すぐに別方向で斥力をぶつけて方向を変えさせていたからなのはに怪我はない。

やがて、人心地ついたのか喋れるようになったなのはは、特訓の意図を問うてきた。

 

「理由?」

「そうだよ、どうして飛んでくる釘を避け続けることがフェイトちゃんへの対策になるの?」

「一番に、さっきも言った瞬時の判断力。次に、高速で移動するものを眼で捉えられる動体視力。最後に、見失ったとしてもすぐに発見できるリカバリー。この三つを鍛えるためだね」

「どういうこと?」

 

首を傾げるなのはに、どう説明したものかと考える。

 

「んー・・・・・・なのははゲームってやる?」

「うん。アリサちゃんの家で遊ぶときによくするよ?」

「ゲームの中には、レベルアップするときにスキルポイントがもらえるのがあるよね。あの種類のゲームはポイントをステータスやスキルに振り分けて成長させる。この喩えでいくと、フェイトのスタイルは防御を捨てて素早さと攻撃に振った形なんだよ。その代わり、装甲が薄いから一撃入れられれば大きく戦況は動くはず」

「だから、フェイトちゃんを見失わない目がいるってこと?」

 

なのはに頷く。

その上でなのはに告げることがある。

 

「そして、その方法はなのはが考えること」

「ふぇ?」

「いや、ふぇ、じゃなくて。フェイトと直接戦うのはなのはだから、なのはが考えないと。俺が全部考えるのはフェアじゃないし」

「・・・・・・理由に納得がいかないけど、分かったの!」

「頑張れ。あー、そうだ。一応ヒントくらいは出せるぞ。今回の場合、手段は二つ。相手より早く動くか、避けられない状況に追い込むか。フェイトにスピード勝負を挑むのは現実的じゃないから、後者の戦法を考えてみたらどうだ?」

「避けられない状況に追い込む・・・・・・」

 

呟き、考え込むなのは。

その様子に苦笑しつつ、釘を取り出し、

 

「おーい、なのは。そろそろ再開するぞー」

「・・・・・・え? あ、待って待って!?」

「待たない。ぶっ飛ばせ、<ルー・グー>!」

「お、鬼ぃぃいいいい!!」

 

 

そんな具合に、ひたすら叩き込んだからいい勝負にはなるだろう。

ただ気になるのは、なのはが考えたフェイトへの対策の内容を聞いていないことなんだが・・・・・・大丈夫、だよな?

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