リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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デバイス登場です。
名前は単純に好きなキャラです。


第三話 説明とデバイスと警告

夜だったが、<クフ・リーン>に従って槙原動物病院へ来てみた。

だが、

 

「なんだよ、これ・・・・・・おかしいだろ。静か過ぎる」

 

病院の壁には大穴が空けられていた。

瓦礫が外側に飛び散っているから中から大きな力で壊されたことが分かる。

だが、

 

「問題は此処をぶち破った奴がどこへ行ったか・・・・・・?」

 

瓦礫を検分しようとして、道の先から聞こえてきた轟音と広がってきた桃色の光に気がついた。

 

―――この先だ!―――

 

<クフ・リーン>に言われるまでも無い。

念のためにと鋭く尖った瓦礫を掴み取ると、そちらへと駆け出した。

 

 

駆け出した先で俺が見たものは、真っ黒な中で爛々と光る紅い眼をした何かと退治する如何にも『魔法少女』然とした杖を持った茶髪のツインテールの少女・・・・・・なのはじゃん!?

 

(何してんの、あの娘!?)

 

思わぬ事態に呆然と足が止まってしまう。

瞬間、何か、黒毛玉でいいや、が触手のような物をなのはに撃ち出した。

 

「あぶな」

<Protection>

 

咄嗟に危機を告げようとした声に割り込み、第三者の声で展開した障壁がなのはを守った。

あれ、もしかして俺いらない子じゃね?と思い、帰ろうと、

 

―――待て待て待て! 何を帰ろうとしてる! 戦えよ、此処まで来たんだからさ!―――

 

するが、<クフ・リーン>の言葉に足を止めた。

 

「え? 何、俺って戦えるの?」

―――当然だ。この俺だけでなく<沙波><バーラ・ルー><ハヌ・マーン><ルー・グー><デル・ドーレ><憑黄泉>そして<アルス・マグナ>。コレだけの精霊を宿しているんだ。負けるわけが無え―――

「俺の身体どうなってるの!? 何その呉越同舟!? というかどうやって使えばいいんだよ!」

―――あ? わかんねえのか? なら初回サービスだ、コレを見て後は練習しな―――

「なにを」

 

言っている、と告げようとして。

瞬間様々な情景が脳裏を駆け抜けた。

銀ナイフらしきものを片手に戦う眼鏡の青年。

メイドの格好をした徒手空拳の少女と刀を振るう白髪の少女。

梟の仮面をつけた巨漢と、浮かせた石を爆撃のように降らせる赤髪の女性。

道化のようなメイクと仮面に黒服で棺桶を振り回す少女とその傍らに寄り添う影の薄い青年。

そして、人形を思わせる表情の金髪の女性の姿。

痛む頭を押さえながら、見せられた光景を理解し咀嚼し吸収し血肉にしていく。

瞬時に、返そうとしていたきびすをもう半回転。

取り出したのは先ほど拾った鋭い瓦礫。

瓦礫に影が絡みつく。

イメージするのは眼鏡の青年が放った一撃。

何物をも切り裂く魔犬の爪牙。

膂力に関係ない最大威力の技を撃ち込んだ。

 

「駆け抜けろ、<クフ・リーン>!!」

 

投げ撃った瓦礫はイメージした軌道をなぞるように飛び、黒毛玉に襲い掛かる。

撃ち放った瓦礫の後を追って、山犬の影が駆け抜け、

キィイイン!

なのはに追撃を放とうとしていた思念体を魔槍が貫き、影が粉砕した。

 

 

sideなのは

 

「駆け抜けろ、<クフ・リーン>」

 

その言葉が届いたときには、どこかから飛んできた何かが思念体を貫いていた。

 

「な、何!? 何が起こったの!?」

「なのはさん、あそこです!」

 

フェレットさんが何かが飛んできた方を示す。

 

「!」

 

すぐにそっちにレイジングハートというらしい杖を構える。

 

「レイジングハート、どう?」

<I’m sorry.The target is lost.>

 

フェレットさんが追跡できないか聞いてみたけど、だめだったみたい。

 

「って、そんな場合じゃない! なのはさん、ジュエルシードを! 封印し・・・・・・て?」

「フェレットさん?」

 

フェレットさんが見ている先、さっきまで思念体がいた場所には、粉々に砕けた青い宝石があった。

 

sideout

 

 

<沙波>の使い方に壁抜けがあることを知った俺は、壁を通り抜けながらあるであろう追跡を撒いて家に帰った。

家に着いた時には思わず安堵してしまっていた。

思わず迎えた初陣だったわけだが。

 

「あ~。緊張した~」

 

こっちに悪意が向けられたわけでもないのに、今更汗が背中をぬらしていく。

 

―――カカカ。よくやったじゃねえか、相棒。初陣にしちゃ上等だ―――

「そりゃどうも。というか、お前以外に出てこないのか? 他にも色々いたと思ったけど」

―――他の奴らは俺のように喋ろうとする奴がいねえのさ。さて色々説明してやるとするが、まずコレを聞かせろ。相棒、お前は前世を覚えているか?―――

「は? 前世?」

 

いきなりの切り出しに胡乱な眼を影に向ける。

 

―――・・・・・・。その様子じゃ覚えてなさそうだな。イイゼ、説明してやる―――

 

その後<クフ・リーン>から受けた説明は正直に言って胡散臭いものだった。

前世の俺は事故で死んだが、神の手違いということで異世界に送られる。

その時に戦闘用の能力として彼ら契約精霊の能力と精霊と契約していた『契約者』の能力を望んだ。

だが、送る際に魂のリセットをかける機工が生きていることに気がつかず、記憶をリセットしてしまった。

ただ、僅かながらに覚えていたのか、違和感という形で現れ、偶然にも<クフ・リーン>と契約が繋がり、他の精霊も連鎖的に繋がったのだとか。

 

「色々言いたいことはあるが、まずその『契約者』について教えてくれ」

―――『契約者』ってのは俺達精霊と契約して異能を使う、世が世なら魔術師とでも呼ばれてた連中のことだ。この契約は強力な力を与えるが、反面対価っていうリスクがある。俺だったら影を操れるようになる代わりに

日の光を浴びると火傷を負うようになる、って具合だ―――

 

聞いた例にうへぇ、と声が漏れる。

 

「なんだそりゃ。俺は少なくとも九年日光を浴びてるけど、火傷になんかなってないぞ」

―――そりゃ、あの神の仕業だ。お前に対価なんざ望んだ日には一日目で即死か動けなくなるか、だからな。さっきの対価も俺のはまだ軽い。中には末梢神経や痛覚、呼吸、果ては寿命や命以外の全てなんてのもいたからな―――

「おいおい、物騒すぎるな」

―――安心しろよ。お前には対価を払う必要はない。ある意味前世の人生全部が対価のようなものだからな。ただ制約は残っているから気をつけろよ―――

「制約?」

―――そんなに警戒する必要はねえよ。能力を使うときの注意みたいなもんだ。俺の力を使うときは“足を動かしちゃいけない”、足の位置を固定しておかなきゃいけないんだ―――

「それだけでいいのか?」

―――おいおい、甘く見るなよ。相手を拘束してる時に予想外の攻撃とか来て躊躇する理由になりそうだ―――

 

前言撤回。

やっぱり厄介だった。

 

―――ただ、俺達の力を使っても上手くいかないこともある。まず、さっきのようなものに対する有効手段がない―――

「え? さっきはあっさり倒してたじゃないか」

 

だが、影は首を横に振った。

 

―――正確には出来なくもないがリスクが大きいってところだな。あれの核になっているのはジュエルシードっていう青い宝石なんだが、コイツは重要なアイテムでな。あまり壊すわけに行かない。封印するのが一番いいんだ―――

「けど、その封印ってのがどうやるかなんて知らないし・・・・・・。いっそ、なのはに任せちまえば」

―――そうもいかないのが現実の妙だな。近い内にあの娘の敵も出てくる。そのときの交渉材料としていくつか確保して第三勢力として参戦したいところだな―――

「第三勢力・・・・・・ね。だったらその封印の手段を何とかしないと」

―――問題ねえよ。あの神がデバイスを送るって言ってたから近い内に来るだろ―――

「デバイス? 何の」

 

ことだ、と言おうとして。

<クフ・リーン>が耳をそばだてたとき。

ピンポーン、とインターホンが来客を告げた。

 

「誰だ、こんな時間に?」

 

訝しく思いながら、インターホンに出る。

 

「はい」

『夜分遅くに失礼します。〇〇運送ですが、こちらに榊雄一さんっていらっしゃいますか?』

「(宅配便?)はい、今開けます」

 

念のため、武器となることが分かった食器ナイフをポケットに二・三本入れてドアを開ける。

何事もなく、受取証にサインして荷物を受け取った。

荷物は8cm×20cm×4cmほどの箱だった。

鍵を閉めなおした後、部屋に戻って荷物を開封する。

入っていたのは懐中時計だった。

 

「これは?」

『ふむ。おぬしが私の主、榊雄一でよいのかの?』

 

手に取った懐中時計を眺めようとしたら、懐中時計から声が出てきた。

「な、な?」

『騒ぐな。もう一度確認するが、おぬしが榊雄一でよいのじゃな?』

「あ、ああ、そうだ。そういうあんたはなんだ? <クフ・リーン>の言うような精霊って奴か?」

『違う。私の名はカナメ。おぬしのサポートのために組まれたインテリジェントデバイスじゃ』

「インテリジェントデバイス?」

『ふむ、そこから説明がいるか。デバイスと言うのはこの世界の魔導師が魔導を使う際に用いる機械のことじゃ。<クフ・リーン>からはどの程度を聞いておる?』

「俺が前世に色々あって、この世界に色んな精霊と契約して来た、ってこととこれからどうするか、くらい」

『・・・・・・そうか』

 

俺の答えに何を思ったのか、考え込むように沈黙するカナメ。

やがて、考えがまとまったのか再度口を開いた。

 

『そこまで分かっておるなら、私から話しておく事は多くはない。まず、封印を含めてこの世界の魔導は私が

いれば問題なく使える。それは安心してくれてよい」

「そうなのか? なら問題解決で」

『とはいかんのじゃ。おんしの抱えておる精霊、その一つ<アルス・マギナ>こやつには注意せよ』

「どういうこと?」

 

意味が分からず問う俺にカナメは険しい声で説明する。

 

『<アルス・マグナ>は唯一対価を消すことができなかった精霊じゃ。その対価は“寿命以外の全て”。この対価を払うことになったものは例外を抜いてほとんど、『眠り姫』という状態になっておった』

「じゅ、寿命以外の全てってマジですか?」

『残念ながらマジじゃ。もちろんその対価に比例して効果は絶大じゃ。文字通りなんでもできるのじゃから。壊れようと修復される屋敷や季節を問わず咲き誇る花を生み出したり、の』

「そ、それは・・・・・・」

 

確かに厄介な代物だが、ここぞというときの切り札になるのでは。

そう思ったのがばれたのか、カナメは釘をさすように言った。

 

『もちろん、使ったからといっていきなり『眠りに落ちる』とは限らぬ。じゃが、万が一、ということもある。できることなら使わないでくれればありがたいの』

「・・・・・・善処するよ」

 

カナメにそういうので精一杯だった。

今日一日で多くの不思議体験に鉢合わせることになった俺の精神は限界だったらしい。

その返事を最後に俺の意識は暗転したのだった。




一度エルミナで書いてみたけど、カナメの方が楽だったんです。
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