リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第三十七話 前哨戦と信用

フェイトを抱きかかえ医務室に向かうアルフと別れて、転送ポートでクロノと合流して時の庭園に向かう突入チーム。

その俺達を時の庭園で出迎えたのは、

 

「なんだ、この鎧の大群は?」

「傀儡兵だ。魔力を動力とする人形だよ。それに、大群なんて言うのはまだ早い。ここはまだ入り口だ。中にはもっといるよ」

「一種のゴーレムってことか。人形ってことは中身はないのか?

「ただの機械だね。それも、近くの敵を攻撃するって言う単純な命令の」

「そっか、なら安心なの!」

 

意気込みデバイスを構えるなのは。

だが、クロノが手でなのはを遮った。

 

「クロノ君?」

「この程度の相手に無駄弾は必要ないよ。ハアッ!!」

 

怪訝そうに問うなのはの前に出て、突撃してくる傀儡兵に杖を振るう。

 

<Stinger Snipe>

 

クロノのデバイス、S2Uが放った魔力弾が一気に二体貫き、一度天に上る。

 

「速い!?」

「いや、まだだ!」

「スナイプショット!!」

 

なのはの驚きを否定したとき、クロノの追加の詠唱で魔力弾が加速を伴って急降下した。

魔力弾は一気に四体の傀儡兵を貫通し爆発させる。

そのとき、ようやく傀儡兵が攻勢に出た。

鈍重そうな体型の一体がクロノに向けて手に握った斧を振るう。

だが、

 

「ふっ!」

 

クロノは大振りな一撃を軽く避けると、傀儡兵に跳び乗って杖を突きつけた。

 

「はあっ!」

<Break Impalus>

 

S2Uが魔法を発動させた瞬間、傀儡兵が一度大きく震えた。

すぐさまクロノが跳び下りたとき、杖を突きつけた場所から連鎖して爆発が広がった。

感心しながら、着地したクロノに声をかける。

 

「やるじゃん。今の魔法は?」

「ありがとう。あの傀儡兵を破壊する周波数の振動を叩き込んだんだ」

「はー、面白いこと考えるな。それで、戦った感想よろしく」

「正直大した相手じゃないな。いくつか硬いのもいるけど、倒せない相手じゃない。それよりも」

 

誉めたのにジトッと湿った視線を向けてくるクロノ。

どうした?

 

「君も働いてくれ。無駄弾は必要ないといっても制圧に必要な分は使うんだからな!」

「要はさっさと働け、と?」

 

頷くクロノに肩をすくめ、今度は俺が前に出る。

クロノが数を減らしたが、まだまだ数は多い。

まぁ、的が多いと考えればいいや。

というわけで。

 

「まずは小手調べ、と」

 

クロノが吹き飛ばした傀儡兵の頭部を引き寄せて、

 

「まずは第一段階。ぶっ飛べ、<ルー・グー>!」

 

あらぬ方向に打ち出した。

 

「「・・・・・・」」

「・・・・・・って、何をしてるんだお前は!?」

 

ポカン、とするなのはとユーノに対して、再起動して噛み付いてくるクロノ。

どっちも結論を、

 

「急ぎすぎなんだよ、っと伏せろ!!」

 

十分な距離を離れた瓦礫に引力をかける。

くいっ、と手を引き寄せると同時に、背後に注意を促しながら地面に身を投げ出した。

瞬間、紅い線を引きながら光速で戻ってきた頭部が熱で変形しながら轟音と共に、門前に屯していた傀儡兵を根こそぎ薙ぎ払った。

伏せていた頭を起こすと、地面は大きく抉れ、傀儡兵は軒並みスクラップと化していた。

 

「・・・・・・よし」

「「「『よし』じゃない!!」」」

「へぶっ!?」

 

スパン、と頭を叩かれ、再び地面とキスをする羽目に。

 

「何しやがる!?」

 

身を起こし、下手人三人を睨みつけると、三人も怒り心頭といった様子で返してきた。

 

「ユーノ君が引き倒してくれたからよかったけど、凄く怖かったんだよ!!」

「というか、あんなの喰らったらひとたまりもないから!!」

「あんな危険なもの使うならせめて一声掛けてからやれ!!」

 

言ってる暇なかったじゃん。

やれやれと思いながら立ち上がると、頭を冷ましたらしいクロノが問うてきた。

 

「それよりも、一体何をしたんだ? 正直に言って、さっきなのはが撃った砲撃並みに凄い威力だったが?」

「簡単に言えば、吹き飛ばした瓦礫を吹き飛ばした以上の速さで引き寄せて叩き込んだ」

「それだけ・・・・・・なのか?」

「他にも要素はあるぞ? この異能は対象が小さい物なら十全の力を発揮するんだ。今のを例えばコインとかでやったらどうなると思う?」

「・・・・・・」

 

考えて恐ろしい考えに至ったのか、顔を青くするクロノ。

そこで、ふと何かに気がついたらしい。

 

「って、ちょっと待て。確か、お前の能力に非殺生設定はないんだよな?」

「ああ」

「そして、この威力じゃバリアジャケットはおろか、シールドも貫通するよな?」

「・・・・・・さて、道も開いたし急ぐぞ!!」

「誤魔化すな!!」

 

あーあー、聞こえない聞こえない聞こえない!!

背後から聞こえる声を聞き流しながら、門をくぐった。

 

sideユーノ

 

 

騒ぎながら屋敷に入っていった二人を、なのはと一緒に追いかける。

追いかけながら、雄一がやってみせたものを思い出して血の気が下がった。

非殺生設定もなく、バリアジャケットもシールドも意味を成さない不可避の一撃。

あれは魔導師にとって相性が最悪だといっても過言じゃない。

どうしても、シールドの展開はタイムラグがあるし、バリアジャケットの防御もシールドに比べれば劣る。

それを振るう雄一を僕は信じ切れなかった。

彼は契約は絶対だと言う。

そして、落ち込むなのはに、支えることを契約している。

だったら、その契約でなのはに牙を向けることはないのか?

その思いが占めている。

もしそうなったら、なのはを守るために僕は何ができるのだろう?

そんなことを考えていたのがまずかった。

突然足元の感覚がなくなり、体が前に投げ出され、

 

「ユーノ!!」

「うわっ!?」

 

グイッと横に引っ張られて床に倒れこんだ。

見れば、さっき足を踏み出した先には大きな穴が広がっていた。

しかも、その穴には様々な色を浮かべる空間が果てしなく広がっていた。

 

「・・・・・・虚数空間」

「ああ。その虚数空間って入ったらまずいんだろ? なのに、躊躇なく踏み出しやがって・・・・・・」

「ご、ごめん」

 

肩で大きく息を吐く雄一に謝る。

 

「二人とも、無事か!?」

「雄一君、ユーノ君!!」

 

クロノとなのはが引き返してきた。

 

「おう、俺もユーノも無事だ」

「そうか・・・・・・今、なのはにも虚数空間の危険を説明するところだが」

「ちょうどいいな。さっきの説明、まだ途中だったよな」

 

さっさと立ち上がり、クロノの方へ歩いていく雄一を見ながら、僕も立ち上がった。

三人に続いて駆けながら、思う。

雄一が悪い人間じゃないのはこの二ヶ月くらいで分かっていることだ。

なのはも彼のことは信頼している。

だったら、僕はなのはの信じる彼を信じよう。

だから雄一・・・・・・なのはを裏切るようなことはしないでよ?

 

 

sideout

 

「その穴は虚数空間というんだけど、その黒い場所には絶対近づかないこと」

 

所々大きく欠けた通路をクロノを先頭に駆け抜けながら、なのはと共に虚数空間の説明に聞き入る。

 

「もし落ちたら?」

「虚数空間はあらゆる魔法が一切発動しなくなる空間なんだ」

「そんなところに落ちかけたのか?」

「うぐっ!?」

 

後ろからユーノの解説が入ったが、先ほどの姿について触れると、胸に何か突き刺さったのか胸を押さえていた。

 

「飛行魔法もデリートされる。もし落ちたら重力の底まで落下して二度と上がって来れないからな!」

 

ユーノをスルーしながら、説明を続けるクロノ。

虚数空間の厄介さに神妙な顔で頷くなのは。

一方、俺も安堵に胸を撫で下ろしていた。

 

(危なかった。よかった、<沙波>でショートカットとか考えなくて・・・・・・)

 

俺一人だけなら、プレシアのもとまで行くのは大した手間ではない。

それこそ、床を<沙波>で潜っていくこともできる、そう思っていた。

だが、もし床を抜けた先が虚数空間だったら・・・・・・。

 

「? どうしたの、雄一君?」

 

ブルリ、と身体を震わせた俺をなのはが訝しげに見た。

なんでもない、とだけ答え、視力を強化して通路の先に眼を向ける。

通路の先には新たな扉があった。

 

「どうかしたのか?」

「いや。それよりも、どうやら次のようだ」

 

体調を問うクロノに答えて、先の扉に注意を向けさせ、

先ほどの想像を振り払うように、<ルー・グー>で瓦礫を叩き込んでいた。

 

ゴォンッ!!

蝶番ごと吹き飛んだ扉に紛れて、傀儡兵のものだろう機械パーツが吹き飛んだ。

思わぬ先制攻撃になったらしい。

 

「「「!?・・・・・・っ」」」

「やらねえから安心しろ、というかもうちょっと信用してくれませんかねえ!?」

 

ただ雑魚を掃討するだけのはずが、味方にものすごく警戒されながら始まった戦闘に、ほろりと涙がこぼれ、思わず叫ぶのであった。

 

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