リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第三十八話 乱戦と復活

「気を取り直して・・・・・・それで、目の前には傀儡兵。そしてその奥には階段があるわけだが・・・・・・上と下、どっちに行く?」

「此処で二手に分かれよう。君達は最上階へ向かってくれ。そして駆動路を停止させてほしい」

 

クロノが迷わず提案する。

 

「その心は?」

「駆動路を停止させれば、時の庭園の機能を停止させられる。ジュエルシードへの魔力の供給も収まるはずだ」

「・・・・・・なるほど。お前は?」

「僕はプレシアのところへ行く! それが僕の仕事だからね。今道を創るから、行け!」

 

S2Uを傀儡兵に向けるクロノの案に乗り、なのは達に促す。

 

「なのは、ユーノ。クロノが道を創ったら一気に突破するぞ!」

「分かった!」

「うん! ユーノ君!」

 

なのはがユーノを抱えて飛行魔法を展開したそのとき、

 

<Braze Cannon>

 

S2Uが火を噴いた。

先端先に収束させた魔力を一気に傀儡兵に向けて撃ち放つ。

傀儡兵は耐えようと盾を構えたが拮抗することなく圧力に負けて吹き飛ばされる。

その開いた道を一気に通り抜ける。

 

「クロノ君!! 頑張って!!」

 

背後でなのはがクロノを応援するのを聞きながら先行して階段を駆け上がる。

階段を抜けた先は、

 

「おいおい・・・・・・」

 

ホールのようなところに出た。

見上げれば天井は高く暗がりになっており、そこへ螺旋階段が伸びている。

 

「ふわぁ、高いねー・・・・・・」

「どんだけ高いんだよ・・・・・・」

 

ポカン、と見上げるなのはと共に見上げながら、厄介さにため息をつく。

その上、

 

「なのは! 雄一!」

 

ユーノが危険を知らせると同時、傀儡兵が次々と姿を現した。

空中用か羽を持つものが多く見受けられる。

 

「雄一君、どうするの?」

「まず数を減らそう。駆動炉に構っている時に後ろから攻撃されたらまずい。なのはは先行して上から撃ってくれ。ユーノはでかいのをバインドで拘束。俺はこっちから潰していく」

「わかったの! 雄一君も気をつけてね!」

「なのはもな!」

 

早速なのはの後を追おうとする傀儡兵の影を<クフ・リーン>で括って止めながら応え、

必死で動こうともがく傀儡兵を見据え、相棒達を起動させる。

 

「それじゃ・・・・・・行くぞカナメ、<クフ・リーン>!!」

『うむ! <Round Shield>』

――応!!――

 

<クフ・リーン>が傀儡兵に影を噛み砕くと同時に、本体がゴキリ、と致命的な音を立ててひしゃげ、爆発を起こしたが、カナメの張ったシールドが受け止めていた。

 

「よし! その調子で」

「グルルルァアア!!」

 

次に影を括ろうとした傀儡兵が、横から乱入した影に飛び掛かられ、首を噛み砕かれて機能を停止した。

乱入した影はオレンジと赤の体毛の大きな獣・・・・・・って!

 

「アルフ!? どうして此処にいるんだ!? フェイトは!?」

「そ、そんなに一度に聞くんじゃないよ! まず、此処にいるのは何か手伝いがしたかったのさ。あの娘に自由な時間を取り戻すためにね。それで、フェイトだけど・・・・・・」

 

顔を曇らせるアルフの様子に、フェイトの様子を悟った俺はそうか、とだけ呟き次の傀儡兵を<デル・ドーレ>で強化した腕力で投げ飛ばした。

 

「・・・・・・雄一、フェイトは大丈夫だよね?」

「・・・・・・アルフ、こっちはいいから、なのはを援護してやってくれ」

「・・・・・・。分かったよ・・・・・・」

 

否定して欲しかったのだろう、沈んだ様子でなのはの下へ向かおうとするアルフの背に、気がつけば応えていた。

 

「当然。お前が信じなくてどうするんだ?」

「!? ・・・・・・そう、だね!」

 

はっと、一度振り返ったアルフは打って変わって力強く、空を飛びまわって襲い掛かる傀儡兵に牙を突きたてて地面に引きずり落としていく。

なのはも螺旋階段の中ほどから、傀儡兵を撃ち抜いていく。

 

「(負けていられないな)いくぞ、<クフ・リーン>!」

 

周囲の傀儡兵の影を括る。

それで第一段階。

 

「駆けろ、<クフ・リーン>!」

 

山犬の形を取った影が、スルスルと伸びていき、動きを止めた傀儡兵の影にたどり着くと、次々と噛み砕き切り裂いていく。

そして、本体が影につられるように次々とひしゃげさせていく。

<魔槍>を思わせるが、こちらは速度を犠牲にして自由な軌道を描かせるようにアレンジしたものだ。

<クフ・リーン>。

その操る影に実質的な終わりはない。

だが、操る影は距離を伸ばせば伸ばすだけ、先の感覚は薄れていく。

広範囲に広げて一斉に括るとすれば遠くの敵は攻撃を外してしまう可能性も無くはないだろう。

その懸念を埋める方策がこれだ。

影の一部を<クフ・リーン>に操作させて自由な攻撃をさせる。

<クフ・リーン>は、ある程度とはいえ自動性を持った精霊だ。

ならばこれを使わない手はない。

 

『<Round Shield>』

「おっと!?」

 

カナメが障壁を張った瞬間、周囲の傀儡兵が一斉に爆発する。

 

『油断するでないぞ、主殿!!』

「カナメ、すまない!」

 

思考に沈んでいたことを反省しながら、カナメのサポートに感謝しつつ、煙に紛れて飛び込んできた小型の傀儡兵に<デル・ドーレ>で強化した蹴りを叩きこみ吹き飛ばす。

四人で多数の傀儡兵を相手取る。

大善戦だが、傀儡兵のキリのなさにこちらは次第に焦れ始めた。

だが、無常にも戦況は膠着していた。

早くしなければ、ジュエルシードが発動してしまう。

その焦りが不味かった。

 

「!? しまった!?」

 

鋭い音と共に響いたユーノの焦る声に振り返ると、彼が張っていたバインドの鎖が一部砕かれ、大型の傀儡兵が自由を取り戻していた。

傀儡兵はバインドの鎖を抜け出すと、己の武器である斧を振り上げた。

狙っているのは・・・・・・なのは!?

 

「くっ!? 駆け抜けろ、<クフ・リ」

 

ナイフを抜き、投げ撃とうとするが、それより早く傀儡兵はなのはめがけて手に持つ斧を振り下ろしていた。

 

「「なのはっ!?」」

「っ!?」

 

俺達の悲鳴に自分の危機を悟ったなのはが強く眼を瞑って身を硬くし、

 

<Thunder Rage>

 

天から降り注いだ金色に光る轟雷が傀儡兵を縫い止めた。

 

「ぁっ!?」

「今のは!?」

 

助けられたなのはと、その魔力光に見覚えのあった俺は螺旋階段の先、そこに浮いている人影を見上げた。

そこには、修復を果たしたバルディッシュを構えるフェイトの姿があった。

 

 

side第三者

 

 

<Get Set>

 

バルディッシュが再装填を告げる。

フェイトは愛機の報告に僅かに頷き、

 

「サンダー・・・・・・レイジ!!」

 

さらに威力を増した砲撃が傀儡兵を撃ち抜いた。

撃ち抜かれた傀儡兵が爆風を撒き散らす中、フェイトは自分の身をなのはの高さまで下ろしていく。

 

「・・・・・・っ」

「・・・・・・」

 

なのははフェイトの復活を眼を潤ませながら喜び、フェイトはこれまで敵対していたなのはから僅かに目を逸らしている。

そのとき、二人の横の壁を砕き大型の傀儡兵が姿を現した。

それが背に負っている二門の砲台がなのは達へ向けられる。

 

「!? 大型だ、バリアが強い!」

「うん! それにあの背中の!」

 

油断なくバルディッシュを構えるフェイトの言葉になのはも同意する。

砲台は徐々に魔力を蓄えていき、その魔力の強さになのはが顔を強張らせる。

だが、

 

「二人の邪魔だ!! 駆け抜けろ、<クフ・リーン>!!」

 

傀儡兵の下、ホールの中央に立っていた雄一が傀儡兵めがけてナイフを放つ。

そのナイフを傀儡兵は脅威と思わず見逃し、ナイフは傀儡兵の装甲に僅かに突き立った。

その程度、傀儡兵にとって僅かな痛痒にも感じないはずだった。

僅かな重さのナイフが数トンはありそうな機械相手にダメージを与えるはずがない。

機械らしい意見のはずだった。

それが致命的だった。

ナイフを追って伸びる影。

その影に沿って山犬の影が駆ける。

山犬の影は触れる影を次々に粉砕し、張られていたバリアごと傀儡兵を食い破った。

大きなダメージに、傀儡兵の膝が折れ、砲門が二人から外れる。

 

「今だ!」

「!? 一緒にやろう!!」

「!? うん!!」

 

雄一の援護に、フェイトがなのはに協力を望み、なのはが笑顔で応えた。

 

「いくよ、バルディッシュ!!」

<Get Set>

「こっちもだよ、レイジングハート!!」

<Standby Ready>

 

主達の望みに全力を尽くすデバイス二機が最大威力の魔法を紡ぎ出す。

 

「サンダー・・・・・・」

「ディバイン・・・・・・」

「「バスター!!」」

 

二人の砲撃がバリアを失った傀儡兵に突き刺さる。

だが、傀儡兵も大きさに比例して高い耐久力を持つのか必死に耐え、

 

「「せーのっ!!」」

 

増した威力に耐え切れず、砲撃に呑み込まれた。

傀儡兵が集束させていた魔力が制御を離れ爆轟を響かせ、時の庭園を激しく揺さぶった。

 

sideout

 

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