リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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難産でした・・・・・・。
会話が、説明が、描写がガガガ・・・・・・。
デハ、お楽しみください。


第四十話 事態の収束

side第三者

 

「何が言いたいのか、分からないわね。それより、何をしたのかしら?」

「そっちが答えないのに答えるわけないだろ?」

 

睨むプレシアを雄一が飄々と受け流すと、プレシアは射殺さんばかりの視線を向けた。

だが、雄一は構わず続ける。

 

「それより、質問を続けるけど、なんで本心を隠してフェイトを遠ざける?」

「その娘がただの人形だからよ。言ったはずよ、私はただアリシアを取り戻すためだけに」

「死ぬ前にフェイトの罪を全て被って、誰も手出ししないアルハザードへ行く、か」

 

突然の言葉に誰もが首を傾げる中、プレシアの表情が変わった。

 

「・・・・・・」

「顔色が変わったな?」

「・・・・・・戯れ言よ。そんなこと」

「あるさ。残りの時間をフェイトと過ごせないことが辛いが、フェイトを自分から解き放つ。それが残り少ない時間でできること・・・・・・その精神は買うけどな」

「・・・・・・妙な手品を使うのね」

 

プレシアによる遠まわしな肯定にその場にいる者の目が丸くなる。

その中、聞き逃せない単語に、フェイトは慌てて問いただしてきた。

 

「雄一、残り少ない時間ってどういう事? それじゃあまるで」

 

もうすぐ死ぬみたいだ、そう感じたフェイトは雄一に確認する。

 

「そういうことだ。つまり」

「っ、黙りなさい!!」

 

フェイトに答えようとした雄一を黙らせようと、プレシアは飛ばされていたデバイスを拾い上げ、雄一めがけてデバイスを振るい魔法を展開しようと、

 

「っ!? ゲホッ、ゴボッ!?」

 

突然こみ上げてきた血塊に身体を折った。

 

「母さん!?」

「っ!? 来ないで!」

 

吐血したプレシアの姿に顔色を変えたフェイトが駆け寄ろうとするが、再びプレシアに怒鳴られて足を止めてしまう。

プレシアは血で体を濡らしながら、その姿を痛ましげに見つめると、雄一に忌々しげな視線を寄越した後、クロノで視線を止めた。

 

「事此処に至ってはもう逃げ場はないわ。執務官、名前は何と?」

「クロノ・ハラオウンだ」

「そう・・・・・・なら、クロノ執務官。ジュエルシードを抑えているのは何者かしら?」

「おそらく艦長だろう。それが?」

「そう・・・・・・なら、その人に御礼を言っておいてくれるかしら? 最後に間違いを犯さずに済んだ、と」

 

目を閉じ再び杖を振り上げるプレシアに、不意を打たれたクロノ達は咄嗟に動けず、杖が床に叩きつけられた。

途端、床を魔方陣が広がり、崩落を始める。

 

「プレシア・テスタロッサ!? 何を!」

「ジュエルシードは既に手元になく、次元震はない。たとえ失敗に終わろうとも、私が消えた後あるはずだった、残されたジュエルシードによる被害がなくなったというのは朗報だったわ。これで、心置きなく、アルハザードを目指せる」

「無茶だ! アルハザードは、ジュエルシードの力を借りても姿が捉えられない伝説にしか存在しない場所だ! そのために集めていたジュエルシードもなくなったのに、単身目指すなんて不可能だ!!」

 

クロノの叫びにプレシアはむしろ穏やかに応えた。

 

「それでも、私は目指す。さっきの様子を見ての通り、私はもう長くない。だから、この命を使って娘達を守るにはこうするしかないの」

「だが・・・・・・プレシア!?」

「母さん!?」

 

クロノが叫んだ瞬間、プレシアとアリシアを収めたポッドの足元に罅が走り、フェイトは必死に手を伸ばして、

 

「捉えろ、<クフ・リーン>!!」

 

床を走った影がその一切を拘束した。

 

「!? これは・・・・・・」

「影の拘束・・・・・・雄一?」

 

以前この拘束を目にしたフェイトが正体に至り、振り返った先、

 

「あー、焦った。本当に焦った・・・・・・」

 

汗を拭い安堵する雄一の姿があった。

 

 

sideout

 

あ、危なかった。

咄嗟に<クフ・リーン>で拘束できてよかった。

 

「行かせてくれないかしら」

 

拘束したのが誰か、悟ったらしいプレシアが希望するが、プレシアの要望を却下する。

 

「駄目だ。悪いが、今の俺は『フェイトを護る』っていう契約でここにいるんだ。その契約を護るのには、プレシア、あんたとアリシア、その両方が必要なんだ。だから、あんた達を死なせるつもりはない」

「・・・・・・私に、生き恥を晒せというのかしら?」

「ああ。フェイトの罪を被ってアルハザードに逃げるのを贖罪だと思っているなら、其処を改めろ。あんたのフェイトへの償いは生きて傍にいることだ。それに」

 

フェイトを振り返る。

彼女は涙を流しながら、プレシアを見つめていた。

 

「フェイトはあんたに傍にいて欲しいからジュエルシードを集めた。母さんのために、って。その想いまで否定するなよ」

「・・・・・・そう」

「・・・・・・なぁ、プレシア。以前の話を覚えているか?」

 

唐突な話題の変換。

それに眉根を寄せつつ、プレシアは応える。

 

「どの話か分からないのだけど?」

「奇跡を起こせる契約者の話だ。どうだ?」

「ああ。確か、貴方が言っていた“精杯の姫”というやつかしら?」

「そうだ。そいつがいたら、あんたは何を願う?」

「・・・・・・そうね。そんな都合がいいものが本当にいるなら、幸せな未来を望むわ」

「そうか・・・・・・。もう一つ、聞かせてくれ。フェイトはお前にとってなんだ?」

 

重要な問いだ。

これで、まだプレシアがフェイトを人形扱いするなら・・・・・・。

プレシアの眼をじっと見つめ、答えを待つ。

やがて、プレシアの唇が動き。

 

「アリシアの妹で、私の・・・・・・プレシア・テスタロッサの娘よ」

「よし!」

 

望んだ答えに喜ぶ。

もちろん、それが本心である保障は何処にもない。

<ハヌ・マーン>の能力を使えば、『契約書』で使っても『心を読む』ことはできる。

だが、使うには、どちらにしても<クフ・リーン>の拘束を弱めなければならない。

それは、今はできない。

だから、プレシアの言葉を調べる手段はないのだが、その言葉は不思議と信じるに足る、、と思っていた。

 

「だったら、<エイミィさん聞こえますか?>」

 

アースラに念話を繋ぐ。

すぐさま、エイミィさんが応えた。

 

『<こちらアースラ。どうしたの、雄一君>』

「<こちらは収束したから、アースラに皆を収容して欲しいんです>」

『<はいはい。それじゃ、早速>』

「<あ、待ってください。できれば、俺を最後に収容して欲しいんです>」

『<それは別に構わないけど?>』

「<じゃあ、お願いします>」

 

首を傾げるエイミィさんには応えず、念話を切り、皆にアースラへの帰還を伝える。

その中、エイミィへの注文を聞いたクロノは、同じく首を傾げた。

 

「何で君が最後まで残るんだ?全員で一度に戻ればいいんじゃないのか?」

「あー、それがな、一応の保険というか」

「保険?」

 

訳が分からず首を傾げるクロノ。

周りも概ね同じ表情の中、意を決して理由を伝える。

 

「実は・・・・・・今、この時の庭園の崩落を俺が抑えてるんだよ」

『は?』

 

ポカンとするクロノ達は、そのとき、庭園の崩落が止まっていることに気がついた。

床どころか、壁まで覆っている影は俺の足元につながっている。

 

「まさか・・・・・・雄一はこのときの庭園全てを拘束しているの?」

 

影の拘束を見知っていたフェイトが正体に気がつき、確認すると頷いて答える。

 

「そういうこと。だから、俺は最後だ。それとクロノ、向こうに行くとき、二人も頼む」

そう言って、プレシアとアリシアを視線で示す。

「それは構わないんだが・・・・・・転送にこの拘束は影響しないのか?」

あ・・・・・・。

「それは考えてなかったな。・・・・・・しょうがない。転送の瞬間拘束を解く。それで、転送が済んだら再拘束ってことで」

「それで・・・・・・大丈夫なのか?」

アバウトな意見にクロノも渋い顔をみせるが、

「じゃあ、他に提案が?」

「う・・・・・・分かった。その方向で行こう、<エイミィ、タイミングを計ってくれ>」

『<了解!それじゃ、早速いくよ!3、2、1!>』

0、の瞬間に<クフ・リーン>を解き、すぐに影を走らせる。

僅かに鈍い軋みを全体が震わせたが、すぐに治まったこと胸を撫で下ろした。

『主殿』

 

胸を撫で下ろしていると、ふと、カナメが言葉を発した。

 

「なんだ?」

『いよいよなわけじゃが、もう一度だけ問うておく事と言うておく事がある。まず、前者じゃ。本当にいいのじゃな?』

「ああ。覚悟はできている」

 

カナメの問いは、この後のこと。

<アルス・マグナ>を使うことに対してだろう。

なら、言っておく事とは、

 

「使えるのは一度だけ、ということか?」

『左様。もし、それを破れば、御主は揺り籠に囚われる。肝に銘じておくがよい』

「・・・・・・」

 

カナメに答えぬまま、エイミィさんが転送を告げるのを待ち、アースラに戻るのだった。




次回か次々回でいよいよ無印編の終わりになるはずです。
ではまた次回。
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