リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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長くなりましたけど、キリのいい所まで行きたかった。
悔いは無し!
ではお楽しみください!


第四十一話 蘇生と別れ

「「「「雄一(君)!!」」」」

 

アースラに戻った俺をなのは達が出迎えた。

それに簡単に答えつつ、モニターに目をやると、モニターには徐々に崩れていく時の庭園の姿があった。

目を戻し、なのは達をみると、フェイト達の姿がない。

 

「クロノ、フェイト達は?」

「本当なら護送室に入ってもらうところだが、プレシアの体調から医務室に入ってもらっている。こっちだ」

 

クロノに案内されて着いた医務室。

そこには、リンディさんとテスタロッサ家の一同がそろっていた。

プレシアはベッドに横になっており、フェイトはベッドの側に椅子を持ってきて座っていた。

アルフは二人の様子を複雑そうに眺めている。

入ってきた俺達に気がつくと、

 

「来たわね」

 

プレシアが体を起こそうとし、フェイトがその背を支えて手伝った。

体を起こしたプレシアに、<ハヌ・マーン>を使いつつ再度問う。

 

「プレシア、もう一度聞くけど、フェイトはお前の娘であることに嘘偽りはないな?」

「もちろんよ」

「なんでそう思った?」

 

即答するプレシアの目を見ながら、問いを重ねる。

すると、プレシアは穏やかに笑い、フェイトの髪をゆっくりと梳った。

 

「フェイトを生み出した理由、それを思い出したからよ」

「・・・・・・そうか」

 

頷き、<ハヌ・マーン>で読みとった本心にも嘘がないことを確認した。

 

「それじゃ、質問に答えてもらった分、対価を払わなきゃならないな。リンディさん、子供用の服ってあります? あれば、なのはに渡してください。なのは、アリシアに服を着せてやってくれ」

「ちょっと待っててくれるかしら?」

「分かったの!」

「じゃ、俺達は一度外に出てるから、終わったら呼んでくれ」

「あ、おい!?」

「ちょ、どういうことか説明してよ!」

「おいおい、クロノ、淫獣二号の称号が欲しいのか? 淫獣一号は黙ってついて来やがれ」

「「誰が淫獣だ!!」」

 

なのは達に断って、騒ぐクロノとユーノを引きずって部屋を出る。

部屋を出たところで解放すると、二人はすぐに問いただしてきた。

 

「雄一、いったい何をする気なんだ?」

「アリシアを蘇生させる」

「会話の流れから察してはいたけど・・・・・・一応聞いておくけど本当にできるの?」

「・・・・・・そこなんだよな」

「おい!?」

 

ユーノの問いに苦い顔を浮かべる。

現状、手段は<アルス・マグナ>しかない。

しかし、それは一回限り。

だが、アリシアを蘇らせるだけでは足りない。

プレシアの病も治す必要がある。

 

「なあ、クロノ。プレシアの病気のことだけど」

 

一縷の望みをかけてクロノに聞くが、意図を察したクロノは首を横に振った。

 

「治せないものじゃないけど、彼女の場合症状が進みすぎている。残念だが・・・・・・」

「そうか」

 

やっぱり使わざるを得ないか。

そのためには、カナメを説得しなければならないが、

 

(無理、だな)

 

チラリ、と視線を向けてため息をつく。

まずカナメは納得しないだろう。

・・・・・・念のため手は打っておくか。

 

「<クロノ、ちょっといいか?>」

「<念話なんて使ってどうかしたのか?>」

 

突然の念話に怪訝な顔をするクロノ。

 

「<アリシアの処置が終わったら何が起こっていても、なのは達を近づけないでほしい>」

「<・・・・・・どういうことか、詳しく話せ>」

「<その方法には代償がいるんだよ。それに、ちょっと賭けの要素があってね。どっちに転んでもいいことにはならないから>」

「<・・・・・・お前って奴は・・・・・・僕が本来それを止める立場だと分かってるのか?>」

「<そこを曲げて頼む>」

「<・・・・・・分かった。だが、危険だと判断したら踏み込むからな>」

「<それでいいよ>」

 

クロノの妥協案に頷き、今度はカナメに念話を向ける。

 

「<カナメ、<アルス・マグナ>以外にアリシアを蘇生させる方法はないのか? そうすれば、アリシアもプレシアも両方救えて>」

『<無理じゃ>』

 

だが、答えは無情な一言だった。

カナメは説明をする。

 

『<確かに方法自体はある。ヴァルチャスの番が揃っておればその羽ばたきで死者の魂を戻すこともできたであろう>』

「<ヴァルチャス?>」

『<死者の魂を運ぶとされる霊鳥じゃ。<バーラ・ルー>ともう一体<ヌー・アッド>という精霊がおるのじゃが、こやつらは番なのじゃ。<ヌー・アッド>にはその力があるとされておったが片翼では飛べぬ>』

「<だったら、<ヌー・アッド>の分を<アルス・マグナ>で補えば>」

『<それでは、<アルス・マグナ>を使わず、という目的から外れておるだろ>』

「<・・・・・・>」

 

返せず黙った俺を諭すようにカナメは優しく言った。

 

『<主殿、確かにどちらかの手しかお主は掴むことはできぬ。しかし、一方の手を取ることはできるのじゃ。それが今のお主に掴める一番の未来じゃ>』

 

その後、なのは達が呼ぶまで、俺は何も言うことはできなかった。

 

 

 

呼ばれて部屋に入ると、アリシアは淡い水色のワンピースを着せられていた。

 

「それで、どうやって、アリシアを蘇生させるんだ?」

「その前に。フェイト、これを持っていてくれ」

 

クロノに答えず、フェイトにある物を預けた。

それを見下ろして、フェイトは首を傾げる。

 

「これ、時計? ・・・・・・ううん、もしかしてデバイス?」

『主殿、どういうつもりじゃ?』

 

渡された懐中時計の正体にフェイトが気がつくのと同じくして、フェイトに手渡されたカナメが低い声で問いただす。

二人に用意しておいた答えで応じる。

 

「フェイト、そいつは察しの通り、俺のデバイスでカナメだ。それとカナメは一回目の施術の時、何かあったら強制終了されそうだからな。それ対策だよ」

『せぬわっ!? まったく・・・・・・一度は見逃してやるわ』

 

渋々引き下がったカナメに苦笑し、置いておいたクロノの問いに答えることにする。

 

「それで、どうやって蘇生させるかだけど、まず因果律、というものを知っているか?」

「結果には全て原因がある、という思想だったか?」

 

胡乱気に答えるクロノに苦笑しながらも頷く。

 

「まあ、俺もハッキリ理解しているわけじゃないけど、概ねそんな感じだ。そして、今からするのは、因果律への干渉。世界の記憶への干渉だ。やりようによっては“人が死んだ”という記憶も抹消できる」

「ちょっと待ちなさい!! そんなことが人の身でできるというの!?」

 

異常性に逸早く気がついたプレシアの驚きには答えず、大きく息を吸い込み、

 

「――届いていますか、私の謳は――」

 

<アルス・マグナ>を揺り起こした。

 

「――小鳥は聴き手を求め囀り、花達は運び手求めて香る――」

 

歌が進むに連れて、背中の痛みが増していく。

それを噛み殺しながら、歌詞を紡いでいく。

 

「――西風が吹いたよ、ほら顔を上げて――」

 

アリシアの死の原因、事故の際に負った致命傷を『負う因果』を消し去る。

 

「ぐぅっ!」

 

歌が終わると同時に、手応えに油断してしまい、痛みに膝を突いてしまった。

そのまま背中の激痛をやり過ごす。

 

 

side第三者

 

 

「雄一! どうしたの!?」

「っ! 来るな!」

 

膝を折った雄一にフェイトが駆け寄ろうとするが、雄一の強い静止に足を止めた。

雄一はフェイトを止めた剣幕を数回深呼吸して散らし、今度は落ち着いて言う。

 

「俺は大丈夫だ・・・・・・それより、アリシアは」

 

言われ、皆の視線が静かに横たわるアリシアに向けられた。

皆が固唾を呑み見守る中、アリシアの瞼がゆっくりと開き、

 

「・・・・・・・母・・・・・・様?」

「っ!! アリシア!!」

 

傍らのプレシアに目を留めてゆっくりと呟いた。

それを聞いたプレシアが顔をくしゃくしゃに歪めて涙をこぼす。

皆がその光景に喜ぶ中、

 

「――届いていますか、私の謳は-―」

 

再び、歌が響きわたった。

全員の目が膝をついていたはずの雄一に向けられるなか、雄一はいつの間にか立ち上がって朗々と声を張り上げていく。

 

『主殿!? どういうつもりじゃ!?』

 

唯一、事情を知るカナメがフェイトの手の中必死に問いただす先、雄一は歌を止めず念話をよこした。

 

「<カナメ、悪いが俺は二人とも救う。そういうことだ>」

『それが無茶だと何故分からぬ!! フェイト、あやつを止めよ!』

「え、え?」

『早くせよ!!』

 

事情の分からぬフェイトが戸惑うが、カナメのただならぬ様子に取り押さえようと動くが、雄一が一手先んじた。

視線を動かし、クロノの眼を見つめる。

 

「<<ハヌ・マーン>が命ずる! フェイトを取り押さえろ!>」

「っ、なっ!?」

「っクロノ!? 何を!?」

 

背後から羽交い絞めにされたフェイトが振り返ると、己の行動が理解できず目を白黒させるクロノの姿があった。

タネを理解したカナメが呻く。

 

『念話で<ハヌ・マーン>を発動させたじゃと!? そんなことができるとは・・・・・・!?』

「<もう遅い>――西風が吹いたよ。ほら謳を歌おう――」

 

歌の最後の一節を雄一は歌いきった。

 

 

sideout

 

 

謳い終わって、プレシアの顔を見ると、先ほどまであった憔悴した様子が消えている。

それに安堵すると共に、先ほどまであった背中の激痛がなくなっていることに気がついた。

 

(これで治まった・・・・・・というのは楽観的過ぎる、か)

 

グラッ・・・・・・。

 

「くっ!?」

 

予想を裏付けるように襲ってきた強い倦怠感と眠気に、倒れる身体を慌てて支える。

 

「雄一!?」

「雄一君!?」

 

今度こそ駆け寄ろうとする二人。

だが、今度は追い返すこともできず、ブツブツと意識が途切れていくと共に、体が徐々に力を失っていくのを感じていた。

 

「カナメ・・・・・・」

 

フェイトの手の中に握られたデバイスに声をかけると、カナメは予想を肯定した。

 

『主殿・・・・・・この馬鹿者・・・・・・こうなることは散々言うたじゃろ』

「ああ・・・・・・そうだったな・・・・・・」

『それを、無駄にしおって・・・・・・この馬鹿者が』

 

途切れ途切れのカナメの言葉に内心申し訳なく思いながら、途切れていく意識をかき集めて、付き合ってくれていた相棒達に頼みを告げる。

 

「<クフ・リーン>はなのはを、カナメはフェイトを、それぞれ守ってくれ。頼んだ」

 

静かに頭を下げると、足元の影から山犬の形をした影がなのはの影に入り込んだ。

 

「うわ!? な、何、今の何!?」

「俺の相棒だった、影の精霊<クフ・リーン>。喰えない奴だけど、悪い奴じゃないから、なのは。そいつを頼む」

「・・・・・・うん! 分かったの!! よろしく、<クフ・リーン>さん!」

 

驚くなのはに<クフ・リーン>を頼むと、なのははしっかりと頷いてくれ、彼女の足元で影が遠吠えする山犬の姿を象った。

安心しながら、もう一組を振り返る。

 

「雄一・・・・・・」

「フェイト、カナメを頼む」

「うん・・・・・・しっかり預かっておくから」

 

フェイトの言い様に苦笑する。

フェイトは俺との再会を信じている。

そうなったら、いいんだが。

 

「カナメ・・・・・・」

『・・・・・・』

 

答えないカナメに、聞いていると信じて語り掛ける。

 

「カナメ・・・・・・フェイトを守ってやってくれ。なのはもフェイトも二人とも、どこかまだ危なっかしい。なのはには<クフ・リーン>が、フェイトにはお前がついてくれたら、俺も安心できる」

『・・・・・・それは、契約か?』

「いや、違う。これはお願いだよ」

『・・・・・・聞いておいてやる』

 

了承と捉えて、安心しておく。

そこで、ふと思い出したことがあった。

これは言っておかなきゃいけない事だった。

残り僅かな意識を必死で繋ぎ止め、揺れる視界の中必死に口を動かす。

 

「今まで、俺が結んだ契約を・・・・・・此処に、満了として・・・・・・破棄する・・・・・・」

 

僅かに空気を揺らす程度の声量だったが、それでも、宣言がなされたことに安心し、

榊雄一の意識はぷつりと切れた。

 

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