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もう幾度目の起動だろうか。
闇の書の起動に合わせて我々守護騎士プログラムの起動を確認する。
実体化すると共に、正面にいらっしゃるであろう新たな主に頭を垂れて口上を述べる。
「闇の書の起動を確認しました」
「我ら闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士でございます」
「夜天の下に集いし雲」
「ヴォルケンリッター、なんなりとご命令を」
口上を終え、主の御言葉を待つ。
だが、主は放心なさっているのか、口を閉ざされているようだ。
「「「「・・・・・・」」」」
主の許し無しに頭を上げることはできない。
ただ、頭を垂れて待ち続けていく。
そのとき、隣から、誰かが動く気配が伝わってきた。
「<ねえ、ちょっとちょっと>」
念話で犯人が判明した。
咎める前に、シャマルが窘めた。
「<ヴィータちゃん、しっ!!>」
「<でもさ・・・・・・>」
「<黙っていろ。主の前で無礼は許されん>」
それでも控えないヴィータを、低く咎める。
だが、その思いも続けてヴィータから送られてきた念話に吹き飛んでしまった。
「<無礼、つうかさ・・・・・・こいつ、気絶してるように見えんだけど?>」
はぁ!?
慌てて顔を上げると、ヴィータが中腰で見下ろす先、目を回してらっしゃる主の姿が。
「もしや、何かの病を!? シャマル、治療を!」
「分かってるわ、クラールヴィント」
主の身に何が起こったのか分からないが、シャマルならすぐに原因を突き止めて、
『<Reboote(再起動)>』
「「「「っ!?」」」」
再び起動を始めた闇の書を振り返った。
宙に浮いている闇の書が新たに魔方陣を展開している。
「シャマル! 何が起こっている!?」
サポートに特化したシャマルなら、と振り返るが、彼女も首を横に振った。
「分からない! まだ、闇の書も起動したばかりで『あの娘』が起動できるはずがないのに!!」
その内に、何者かの姿が結像し、
ドサッ・・・・・・。
床に落ちると共に、闇の書の動作が止まった。
「・・・・・・」
「<シグナム! しっかりして!>」
呆然としてしまったところをシャマルに一喝されて我に返った。
用心しながら近づき、そいつの人相を検める。
見たところ、十代後半くらいか?
所々に傷がある顔を暗殺者のように顎から目元までを覆面で覆っているためはっきりとは分からない。
体躯も長いコート越しだが引き締まっており、かなり鍛えられているのが分かる。
それになにより、
「<こいつ、随分強い魔力をもってやがる・・・・・・もしかして、闇の書を狙った賊、か?)
同じく人相を検めに近づいたヴィータが断言しきれず、言葉を濁す。
だが、それも無理はない。
闇の書が展開した魔方陣から出てくる姿を見ている以上、明確な敵とは言い難いのだが、我々の同類とは違う気がする。
「<一応聞いておくけど、誰かこの人に見覚えある?>」
「<無い>」
「<ねえよ>」
「<・・・・・・>」
シャマルの問いに次々と否定が入れられる。
そうしていると、
「<あー、まだるっこしい!! とにかく、こいつを起こして話を聞きゃいいじゃねえか!!>」
ヴィータがそいつの腹に蹴りを入れた。
印象どおり鍛えられているのか、ダメージは少なそうだが。
「<待て、ヴィータ! 念のため、デバイスを構えておけ。もしものときは戦闘になる>」
騎士甲冑を主に用意していただく前、というのは痛いが、デバイスを構えておけばせめて一太刀だけでも入れることはできるだろう。
「<・・・・・・わぁったよ>アイゼン!」
<Jawohl!>
ヴィータがグラーフアイゼンを構えるのを確認し、私もレヴァンティンを展開しておく。
振り返ると、シャマルはクラールヴィントを、ザフィーラも拳を構えている。
視線を戻し、ヴィータに頷いて示す。
ヴィータは一つ頷くと、
「おい! 起きろ! 起きろってんだろ!!」
一際強く体を蹴り上げた。
すると、
「・・・・・・ぅ」
小さく呻き、そいつは意識を取り戻したようだ。
ゆっくり、と目を開け、あたりを確認し、
「っ、はやて!?」
ベッドの上、主に気がついて驚いた後、我らに鋭い視線を向けた。
sideout
「っ、はやて!?」
訳が分からぬまま、せめて現状だけでも理解しようと周りに向けた視線にはやてが倒れているのを見つけ、驚きながらも、現状もっとも有力な容疑者を睨む。
「はやてに何をした・・・・・・」
「・・・・・・危害を加えたわけではない。こちらも聞きたいが、貴様は何者だ? 賊か、それとも闇の書が構築した新たな守護騎士プログラムか?」
「守護騎士プログラム? 闇の書?」
リーダー格なのだろう、桃色の髪をポニーテールにした女性が油断なく剣先をこちらに向けながら問うてくるが、知らぬ単語に眉根を寄せる。
その反応である程度悟ったのか、女性は質問を変えた。
「ならば、貴様は何者だ? 何故、主のことを知っている?」
「主? はやてのことか? だとしたら、一度図書館であっただけの知り合いだ」
「その知り合いが何故ここにいる?」
「それは分からない。俺自身この状況の説明が欲しいくらいなんだ」
アースラから揺り籠を経て、おそらくここははやての家。
どういう経緯で此処にいるのか、聞けるものなら是非聞きたい。
それは偽らざる本心だったのだが、
「ふざけんな!」
ハンマーを突きつけている赤い髪のちびっ子には通じなかったらしい。
「なあ、シグナム! こいつが言ってることが本当とは限らねえ! やっちまおう!」
「ちょ!?」
物騒なことを言い出すちびっ子。
だが、シグナムと呼ばれた女性は少し考え首を横に振った。
「落ち着け、ヴィータ。確かに怪しいが、こいつが主の知り合いである可能性は否定できない。主の知人を斬るわけにもいかんし、主の意思を仰ぐ必要がある」
「・・・・・・ちっ、わぁったよ」
冷静に言うシグナムさんに勢いを削がれ、ヴィータと呼ばれたちびっ子はハンマーを収めるが、その目は油断なくこちらの動きを睨んでいる。
さすがに敵意に晒され続けているのは精神的によろしくないので、両手を広げて敵意の無いことを示しつつ、会話を振ってみる。
「それで、俺は榊雄一というんだが、あんたたちの名前は?」
「・・・・・・シグナムだ」
「シャマルです」
「・・・・・・ザフィーラだ」
「・・・・・・」
「ヴィータちゃん」
「ふんっ」
シグナムさんが答えると後衛としてこちらを監視していた二人が名乗った。
短い金髪の女性がシャマルさんで、こっちの筋肉質の男性がザフィーラさん・・・・・・って、ザフィーラさん、その耳は本物ですか?
唯一口を閉ざしていたちびっ子は、シャマルさんに窘められてそっぽを向いたが。
その反応に苦笑しながら、質問を続ける。
「それで、聞きたいんだけど、闇の書と守護騎士、って何なんだ? それにはやてのことを主って呼んだけど、あれは?」
「・・・・・・すまないが、主の知り合いという話を信じきったわけではない。そこまで教えることはできん」
すげなく断られ、おとなしく引き下がる。
そのとき、
「ん・・・・・・」
はやてが気がついたらしく、眼を擦りながら身を起こした。
そして、ベッドの傍に控えている守護騎士たち、そして俺に目を向け、
「・・・・・・? って、夢やなかったんか!? というか一人増えとる!? ど、どういうことやの!?」
「落ち着いてください、主。我らは守護騎士、ヴォルケン・リッター。あなたを守る者です」
そう言い、シグナムさん達ははやての前に跪き、はやてに自分たちの事の説明を始めた。
はやても、とりあえず害意が無いことを悟ったらしく、落ち着きを取り戻しシグナムの説明に耳を傾ける。
シグナム曰く、闇の書は魔導師の魔力をページとして蒐集することで力を増す蒐集蓄積型の巨大ストレージであり、守護騎士は闇の書を守り、闇の書の主の従者となり、蒐集を行う者らしい。
はやては、いきなり触れることになった魔法というものに驚きながら、話を理解していく。
やがて、
「事情は分かったけど、先に済ませなあかん事がある。私は八神はやてや。自分らの名前、聞いてええか?」
「これは失礼いたしました。私の名はシグナム。こちらから、ヴィータ、シャマル、ザフィーラと申します」
「そっか、そっか・・・・・・?」
一人一人確認していたはやての目が俺で止まる。
守護騎士達と違って、俺ははやてに跪いていないしな。
「あれ? そんなら、自分は?」
「主はやて。この者は守護騎士ではありません。こちらは榊雄一、主の知り合いだという話ですが」
「へえ、そうなん? 雄君と同じ名前やね」
・・・・・・ん?
「はやて、俺がその『雄君』だ」
「へ? そんなわけないやん。雄君は私と同じくらいの年の、ちょっと肌の黒い癖っ毛の子や。自分どう見ても二十歳くらいやろ?」
・・・・・・・。
ん!?
「はやて、今なんて?」
「せやから、自分二十歳くらいやろって」
はやての言葉に、先ほどからなんとなく目を背けていた事実が這い寄ってくるのを感じた。
実は、先ほどからどうにも視界が慣れないのだ。
やけに視界が高いというか・・・・・・。
「すまないが、はやて。鏡は無いか? できれば全身が見れるとなおいいんだけど」
「えっと・・・・・・これでええ?」
手渡されたのははやてがテーブルから出した手鏡。
確認できればいいので、ありがたく借り受け、すぐに鏡を覗き込み、
「・・・・・・」
映ったものに、呆然とした。
そこには九年見慣れた顔ではなく、所々に傷跡が走る見慣れぬ顔が映っていた。
ハイ、二期目に入ってやっと主人公の容姿に言及しました。
主人公の人相は、クロス元で好きだったキャラを使っていますww
構想段階から、このネタをやろうと決めていましたから、今まで容姿に触れなかったのです