リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第四十三話 説明と新デバイス1

気がつけば自分の体が別物に変わっていました。

こういうとき、一体どうすればいいでしょう?

A.そんな事態が起こるはずありません。

俺だってそう信じていたよ!

魔法なんてファンタジーの塊があっても、さすがにそこまでは・・・・・・変身魔法があったか。

とにかく、今優先すべきは、

 

「「「「・・・・・・」」」」

「オーケー、とりあえずその構えている武器を下ろしてくれ」

 

はやての「あんた誰?」を聞いてすっかり敵性認定したらしい、ヴォルケンリッターの誤解を解くことですね。

 

「まず、はやて。俺が榊雄一だって証拠を提示してやるよ」

「お? おもろそうやな! よし、なんでもええから言うてみい!」

 

にやりと笑うはやてに向け、

 

「お前と会った図書館で俺が読んでいた本。『図解いろいろな影絵』『体術指南』『大砲の歴史』『吸血鬼ドラキュラ』『鋼の〇金術師』」

「・・・・・・あかん。何が来ても打ち返せると思ってたら、その回答は予想してなかった・・・・・・確かにその一切法則が読み取れへん、むしろ適当に選んどんのとちゃうか、っちゅうチョイスは確かに雄君や」

 

ガクリと、くず折れるはやて。

しかし、すぐに立ち直ると、いぶかしむ様な視線で身体をじろじろと眺め回された。

 

「けど、どうなってるん? 肌や髪の色から人相、それどころか年も変わってるやろ、自分? 一人タイムスリップでもしたん?」

「さすがにそれは無いと思いたいが・・・・・・正直俺も状況が分からないんだ」

『なら、私から説明しよう』

 

はやてとの会話に割り込んだ第三者の姿を探す。

はやては除外するとして、先ほどの涼やかな女性の声はこの部屋にはいなかったはずだ。

一応ヴォルケンリッターを振り返ると、一様にこっちを見ていた。

 

『此処だよ、マスター』

 

言われて見下ろした先には、

 

「手袋? というかグローブか?」

 

両手に嵌っているグローブ、その右手の甲に銀に輝く宝石がついている、ってこれって

 

『改めて。初めまして、マスター。私の名はエルミナという。君の補佐をすることになっているがよろしく頼む』

「えっと・・・・・・デバイス、なのか?」

『そのとおりだ。私はカナメと同じインテリジェントデバイス。マスターである君のサポートがおもな仕事だ。それと、君の現状についての説明役でもあるようだ』

「現状か・・・・・・じゃあ聞くけど、<アルス・マグナ>に取り込まれてから一体どうなったんだ?」

『そうだね・・・・・・まず言っておくが、今日は六月四日、君が揺り籠に囚われてからそれほど日は経っていない。そして、本題の君の変化だが、これは君が<アルス・マグナ>に囚われた結果、発生した君のもう半分だ』

「意味が分からないんだが?」

 

いきなり自分の半分と言われて理解出来る人がいたら見てみたい。

 

『だろうな。説明を続けるが、以前の君が持っていた契約書は不完全なものだったんだ』

「あれだけ強力なのにか?」

『確かに宿った精霊も能力も強力だが、あれで半分ほど。今君の身体には残りの半分が宿っている』

 

エルミナというデバイスの言葉に、ふと思い至った件を確認する。

その結果はすぐに知れた。

 

「物が動かせない?」

 

<ルー・グー>を本に作用させようとしたが、ピクリとも動かない。

やはり、と思いながら、エルミナに確認を取った。

 

「つまり、残りの半分。<クフ・リーン>はなのはに憑いてるから省いて他のは全部、あっちの体に残っていると?」

『そのとおりだ。そして、以前<クフ・リーン>が見せたやり方で、今君の中にある精霊、<クーア・ルンゲ><キー・アーン><ダー・グッザ><ダー・ナーン><ニーア・ヴー><フェル・ディア><フィン・ターン>、そして<ブーリ・クリウ>。彼らの使い方を学びたまえ』

 

言葉と同時に、脳裏を情景が駆け抜けた。

泣き顔で地面に手をつき大地を揺らす神父。

小鳥型の炎を操る僧服の少年。

目元まで覆面で覆った軍人のような男と、彼に寄り添う露出度の高い女性。

身の丈以上の大鎌を振るう少女。

そして、高位の神官だろう青年と彼を守るように立つ、スーツ姿の少女と禿頭の男性。

 

彼らの闘い方や身のこなしが自分のものとなっていく中、ふと気になった映像について、エルミナに問うた。

 

「あの・・・・・・エルミナさん、ちょっといいです?」

『なんだね、マスター?』

「この人ら・・・・・・一人に全滅してるんですけど」

 

その映像の中、幾人か姿が見えぬが圧倒的多数のはずの彼らがたった一人に蹂躙されている。

能力を使っても、何をされたのか分からぬうちに次々と打ち倒されていく彼らの視界にふと見慣れた印が留まった。

それは、彼の背中と手袋に描かれた紋様。

よく見れば彼の衣服も執事服だった。

バリアジャケットを思い出して首を捻っていると、エルミナが解説してくれる。

 

『彼はドミニク・ハーケンス。信じられないかもしれないが人間だ』

「・・・・・・ウソ」

 

契約者として能力を使ってきた身として彼らが決して弱いわけじゃないことは分かる。

それなのに、たった一人、それも契約者ではなく普通の人間が涼しい顔で殲滅するなど悪い冗談だ。

 

『さて、一通り見てもらったが、いくつか言っておく事がある』

「ああ、俺も聞きたいことがある」

『ふむ。ならばマスターから聞くといい』

「じゃあ、聞くぞ。銃とか何処で手に入れろってんだよ!?」

 

映像の中、銃を使うものもあったのだが、この法治国家で何処から手に入れろというのか。

だが、エルミナはあっさりと答えた。

 

『それについては、』

 

一度形態を解いたデバイスが再度別の形に変形し手に収まった。

そこには、鈍く光る大型の拳銃の姿があった。

 

「ちょっ!?」

『このように、私はいくつかの形態を取る。基本形は杖、そしてこの銃と先ほどの手袋だ』

 

銃は分かるけど、何故に杖と手袋?

その問いに、エルミナは身を縮こまらせた。

 

『それだが、以前の身体なら精霊の制御は<クフ・リーン>が行っていたはずだが、今の身体は違う。制御も自分の意思でする必要がある。そのために、マスターには制御に集中してもらうため、魔法のサポートの機能を増やしたのが私だ。杖形態で、魔法を使用、銃と手袋で能力使用のサポートと細分化することで、サポートできる範囲と振るえる力の大きさを調整していることを覚えておくといい』

「そうだな・・・・・・」

 

エルミナの言葉にため息をつきながら、今優先することに思いを馳せる。

それ即ち、この体の使い心地。

元の体とはリーチから視界から何もかもが違うこの身体に一刻も早く慣れなければならない。

そうしていると、ふと厄介なことに気がついた。

打開策を考えようとし、

思いつかず、素直にはやてを頼ることに。

 

「なあ、はやて・・・・・・」

「? どないしたん? そんな深刻な顔して」

「実は・・・・・・鍵も財布も無いんでしばらく居候させてください!」

 

がば、っと頭を下げる。

はやてはしばらくぽかんとしていたが、事情の説明を求めた。

 

「ちょ、ちょい待ちぃ! 自分も確かこの街に住んどるんちゃうんかい!?」

「そうだけど、この身体じゃ帰るに帰れないだろ!? そもそも、此処にくる直前の件が原因で鍵から財布から貴重品は全部あっちの体が持っているからどうしようもないんだよ!?」

「さ、さよか・・・・・・。そういうことなら・・・・・・ウチに、来る?」

 

<アルス・マグナ>の影響で帰れないことを説明すると、はやてはわずかに躊躇うと、顔を紅くしながらそう提案してくれた。

申し訳なく思いながら、もう一度頭を下げる。

 

「是非、お願いします!」

「そ、そか・・・・・・うん、私からもよろしくな、雄君!」

 

笑顔になったはやてが手を差し出す。

握手、と思い手を伸ばし、

 

「そういや、思い出したことがあったんやった」

 

唐突なはやての言葉に手が止まった。

はやては、笑顔を深くすると、面白そうに目を細めながらこちらを見上げた。

ちなみに、ベッドに腰掛けるはやてをこちらは見下ろす形になっている。

 

「私、前に雄君に会った時にしてやろ、思ったことがあるんよ。それ、いまやってええかな?」

「別に構わないが?」

 

楽しそうにのたまうはやてに、特に危険なこともあるまい、と頷くと、

ピシっ!っと額で軽い衝撃が弾けた。

見ると、手をデコピンの形にして笑うはやて。

 

「あん時、めちゃくちゃ恥ずかしかったんやからな。これで勘弁したる」

 

あの時、というのがどれのことか分からなかったが、楽しそうなはやての様子に、深くは言わずただ、ありがとう、とだけ言っておくのだった。

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