リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第四十五話 朝食と情報共有

はやてを手伝い、作った朝食を並べていく。

ヴォルケンリッターに配慮して、洋食で仕上げたそれをテーブルに運ぶ。

 

「そういえばはやて。ザフィーラさんはともかく他の人達はどうした?」

「ヴィータゆうたかな、その娘とは一緒に寝たけど、あとの二人は壁に凭れたりとかであまり落ちつかへんかったよ。っと、これで完成や」

 

言葉通り、最後の分を皿に盛るはやて。

それを受け取って同じくテーブルにもっていく。

テーブルに置いて、ふとテーブルを見下ろして食器の不統一に苦笑する。

これだけ一気に人数が増えることを想定しろ、というのも酷だから言わないけど。

 

「にやけてるけど、どないしたん?」

 

キッチンから手を拭きながら出てきたはやてになんでもない、と答えたとき、

 

「おはようございます、主はやて」

「おはようございます」

「はよ~」

「・・・・・・」

 

扉が開いて、シャキッと立つシグナムさん、眼を擦っているシャマルさん、まだ半分夢の中にいるらしいヴィータ、青い毛並みの犬がリビングに入ってきた。

 

「・・・・・・って犬!?」

「うわー・・・・・・おっきな犬やね! うち、犬飼うのが夢やったから嬉しいわ!」

「それだけ!? こんな額に宝石がついた犬が・・・・・・って額に宝石?」

 

見れば蒼い宝石が額に埋まっている。

それを見て思い出すのは、あの過保護の妹ラバーことアルフの姿。

 

「使い魔・・・・・・もしかして、ザフィーラさん?」

 

恐る恐る聞くと、あっさりと犬は頷いた。

 

「そのとおりだが、二つ言っておくことがある。ベルカでは使い魔とは言わず、守護獣と呼ぶ。もう一つは・・・・・・我は狼だ」

「・・・・・・色々言いたいことはあるんですけど、そのベルカってなんです?」

 

問うとザフィーラさんはシグナムさんに視線を向ける。

シグナムさんはその視線に小さく頷くと、こちらに鋭い視線を向ける。

 

「それは主と一緒に説明しよう。こちらも色々と聞きたいことがある」

 

俺を睨むとそのまますたすたとテーブルに向かうシグナムさんを見送りながら思う。

今更ですけど、俺なんかしましたか?

 

 

 

ザフィーラさん以外のヴォルケンリッターに警戒されながらの朝食を済ませ、一番の議題にかかる。

まず、先ほどの質問について。

シグナムさん曰くベルカとは、向こうの地名らしい。

ミッド式と並ぶ魔術の一派であり、ミッド式と異なる術式と武器による直接攻撃、そして魔力の一時的なブーストを行うカートリッジシステムが大きな特徴らしい。

守護騎士達は、古代ベルカに闇の書が成立した影響でベルカ式の魔導師として現界するらしい。

とりあえずの疑問は晴れたが、新しい単語に、デバイスに確認を取った。

 

「(カートリッジシステム、か)<エルミナ、そのシステムって導入できる?>」

『<カートリッジシステムは既に導入されている>』

「<え?>」

「どうかしたか?」

「いえ、大丈夫です」

 

予想外のことに目を丸くしていると、シグナムさん達に訝しまれたから、すぐに誤魔化す。

シグナムさん達は疑わしそうにしていたが、やがて流すと、こちらに鋭い視線を向けた。

 

「今度はこちらから聞かせてもらうが、貴様は何者だ?」

 

昨日説明し損ねた、契約者と精霊について皆に説明する。

その際、証拠として背中の契約書を見せたら、はやてが顔を赤くしていたけど、さすがに男の体を見せるのはまずかったか?

説明が終わると、皆一様に顔を曇らせた。

 

「それで、この前・・・・・・もっと言えば四月からちょっとした事件に絡んでいた俺は、その解決の際に対価の影響に巻き込まれて、気がつけば此処にいた」

「そうやったんか・・・・・・」

 

ジュエルシード事件の顛末をだいぶボカしたが、これはフェイトの事情が絡むから割愛した方がいいだろう。

対価の非情さに己の動かない足を重ねたか、沈んだ様子のはやてが納得したように頷くその隣、

 

「・・・・・・榊、二点ほど尋ねたい」

 

腕を組み、静かに話を聞いていたシグナムさんが眼を開け見つめながら問うてくるのを頷いて答える。

 

「ならば。一つ目は、お前は魔導師でもあるようだが、管理局のことは?」

「魔導師でもありますけど、管理局には属していないフリーです。管理局のことは知っていますけど、面倒事になりそうだったんで」

「なら、管理局に我らの事を知らせることは?」

「ないです。そもそも、今は俺も管理局から身を隠す必要があるんで」

「なに?」

 

事情が分からず眉を寄せたシグナムさんに、自分の立場を説明する。

 

「今の俺が榊雄一だと証明する手段がないんです。管理局が余計なことをしたせいで、何をしても榊雄一の真似をしている、と思われかねないですし俺の体は多分まだ管理局の手の内でしょうから」

「・・・・・・なるほど、何があったのかは聞かずにおこう」

「そうして下さい。聞きたいことは終わりですか?」

「いや、こっちが本題だ。榊、お前は昨日どうやって此処に現れたか、その記憶はあるか?」

 

唐突な質問に今度はこちらの眉が寄った。

問われた以上は、と昨夜の出来事を辿る。

 

「はい? えっと、揺り籠、ああ対価の影響から出られた、と思ったらヴィータさんに蹴り起こされるまで意識を失ってましたけど」

「そうか・・・・・・榊、落ち着いて聞いて欲しいんだが、お前と闇の書の間に繋がりが出来ている」

「・・・・・・はい?」

 

思わぬ流れに呆然とするのも束の間、すぐに我に帰り問い詰めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください? なんです、その繋がりって?」

「昨日お前は我らが現界した後、再起動した闇の書が描いた魔方陣から現れた。そのせいか、我ら守

護騎士は闇の所の一部という形で繋がっているわけだが、その繋がりに似た何かが、闇の書とお前の間にも感じられるのだ。何か心当たりはないか?」

 

問われるがそんなものはない。

激しく首を横に振った。

だが、それで納得しないものもいた。

 

「シグナム! それじゃあ、こいつが闇の書に何かしでかす可能性があるってことじゃないのか!?」

 

机を叩いて立ち上がったヴィータ。

だが、シグナムさんは首を横に振った。

 

「それについては分からぬが、主以外は干渉できない闇の書に、我らと似た繋がり程度で干渉できるとも思えん。安心していいだろう」

「けどよ!? こいつが得体の知れない奴だってのも事実じゃねえか!!」

「それについてはある程度嫌疑は晴れているだろう。主の友人というのも虚偽ではなかったのだから、信じてもいいはずだ」

「~~~!! ああもう、分かったよ!」

 

不貞腐れながらヴィータが席に着き、張り詰めた糸が緩んだ。

 

「すまなかったな、榊」

「いえ、大丈夫です。それより、聞きたいことはもういいですか?」

 

頭を下げるシグナムさんに、気にしなくていいとアピールしながら、続きを促すがシグナムさんは首を横に振った。

 

「大まかなとところはな。それで、こっちは頼みなんだが、あとで構わないから私と戦って欲しい」

「・・・・・・は?」

 

思わぬ提案にしばし固まり、ようやく再起動した頭で噛み砕きながら再度尋ねる。

 

「えっと、なんですって?」

「だから、模擬戦だ。騎士として、剣を交えれば相手のことも理解できるだろう」

 

冷静そうだったシグナムさんから飛び出したまさかの暴論に、一瞬意識が遠くなったが気力で繋ぎとめて、誰かに援護してもらおうと僅かに視線を巡らせて、

分の悪さに絶望した。

まず、はやて。楽しそうな表情で止める気ゼロみたいです。

ヴィータ。むしろ混ざりそうですね。

シャマルさん。また始まったといわんばかりの表情ですが、だったら止めてください。

ザフィーラさん。諦めろといわんばかりに首を横に振らんでください・・・・・・。

 

「えっと・・・・・・それなら、まずは騎士甲冑とやらを用意してください。俺も能力を確かめてみたいんで」

「ん? 何故騎士甲冑のことを知っている?」

「あ、それは今朝ザフィーラさんと組み手をしたからです」

 

後で分かったことだが、これが失言だった。

途端シグナムさんの目が変わった。

 

「ほう? ならば、模擬戦自体は問題ないようだ」

「あ、あれ? シグナムさん?」

 

少しでも決行を遅らせるために、と意図して言ったはずが闘志を燃やす結果になりうろたえていると、

 

「既にザフィーラがやっているなら、私の申し出を断るわけもあるまい?」

「あー、えー、ハイ、分かりました・・・・・・」

 

他にどう言えと!?

だが、それでも終わらず、そこで問題はさらに飛び火した。

 

「あ、じゃあシグナム。私も参加していいだろ?」

「なっ!?」

 

ヴィータまでもが参戦しやがった!?

間違いなく、あれはどさくさに紛れてやる気だ・・・・・・!

 

「だが、断」

「いいだろう。ならば、ヴィータも主に騎士甲冑を頼まねばな」

 

拒否する前にシグナムさんに許可されてしまった。

 

「おう、そうだな!」

 

どんどん進んでいく話を前にして、

 

(もう・・・・・・どうにでもなりやがれ・・・・・・)

 

考えることを放棄するのだった。

 

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