リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第四十六話 採寸と買い物

「騎士甲冑?」

 

首を傾げるはやてにシグナムさん達は跪きながら頷いた。

 

「はい。我らは武器は持っていますが、甲冑は主に賜らなくてはなりません」

「自分の魔力で作りますから形状をイメージしてくれれば」

「そやけど、私は皆には戦ってほしくないよ?」

 

シグナムさんとシャマルさんの説明にはやてはあまり乗り気ではないようだ。

 

「しかし、我らは守護騎士、主と闇の書を守るものです。それに、騎士甲冑がなければ闇の書のページの蒐集にも差し支えますが」

「私は別にかまわへんのやけど」

「ちょっといいか? その闇の書の蒐集って結局どういうものなんだ?」

 

はやての言い様に何故か呆けているシグナムさん達に、気になった点を聞いておく。

闇の書の説明を聞いたときも言ってたな、蒐集って。

 

「説明していなかったか。闇の書は説明したように蒐集蓄積型の巨大ストレージだが、その方法は魔導師のリンカーコアから魔力を吸収するんだ」

「リンカーコア?」

 

耳慣れぬ単語に眉をひそめる。

 

「リンカーコアは魔導師の魔力の源だ。魔導師を弱らせたところで、リンカーコアを摘出し魔力をいただく。そうすることで、多様な力を発揮することが」

「そ、そんなんあかん!!」

 

シグナムが説明した蒐集方法に、はやては血相を変えた。

 

「そんなことしたらあかん! そんなことせんでええ!!」

 

はやての剣幕にヴォルケンリッターの面々は戸惑いを隠せなかった。

ふと、気がついてはやてを宥めてシグナムさんに問うてみる。

 

「シグナムさん、もしかして、今までの闇の書の主って、はやてのようなのは珍しいんですか」

「初めて、といっても過言ではないだろう。今までの主はその・・・・・・」

 

シグナムさんははやてに視線を向けて言いよどんだ。

はやてには言い難い、か。

おそらく、真っ当な扱いじゃなかったんだろう。

 

「なあはやて。騎士甲冑、作ってもいいと俺は思うよ?」

「雄君?」

 

意外なところからシグナムさん達に差し出された助け舟に、はやては首を傾げる。

シグナムさん達も探るような目を向けている。

 

「何も鎧に限らなくてもいいと思うんだよ。たぶんですけど、シグナムさん達の言う騎士甲冑ってミッドのバリアジャケットのことじゃないですか?」

「そのとおりだ」

「バリアジャケット?」

「昨日俺が着てたようなもので・・・・・・見せた方が早いな、エルミナ」

『分かった<Balier Jacket,Setup>』

 

エルミナに頼むと、すぐにバリアジャケットを展開してくれ、俺の格好は昨日の、目下まで覆う覆面と薄手のコートにスラックスという姿に変わった。

 

「これがバリアジャケット。薄手に見えるけど、結構防御力は高いよ」

「ほへー、そういえば雄君もその魔導師、やったんやね・・・・・・それやったら、服でええかな! 騎士らしい服!!」

 

バリアジャケットに感心していたはやては妙案を思いついたのか表情を明るくしてシグナムさん達に言った。

シグナムさん達も否はないらしく頷いている。

 

「そんなら、資料探してかっこええの考えたらんとな!」

「さて、方針は決まったけど、一つ問題が」

 

水を差した俺に非難が集まるがこれは何とかしないと。

 

「シグナムさん達の格好を何とかしないと・・・・・・」

「あー。せやな、外歩くなら今の格好はちょっとまずいか」

 

思い至ったはやては僅かに視線をさまよわせ、

 

「そや! ちょう待っとって!!」

 

何を思いついたか、自室へと急いでいった。

シグナムさんが手伝いに追いかけていったのを見送り待つことしばらく。

戻ってきたはやては手にメジャーを持ってきていた。

 

「はやて、何する気?」

「なにって、皆の服買うてこなあかんやろ? そのために皆のサイズ測らせてもらおうと」

 

メジャー片手に言いながら、何故かその目はシグナムとシャマルさんの・・・・・・胸か?に向けられて、手を怪しく動かしている。

 

「はやて・・・・・・もう一度聞くが、サイズ測るだけだよな?」

「・・・・・・そうやよ?」

 

間を空けながら、目を逸らして答えるはやて。

はやてに白い目を向けるが、先にこっちが折れることにした。

 

「まあいい。一応言っておくけど、ほどほどにな」

「わ、分かっとるよ?」

「・・・・・・それじゃあ、俺は部屋を出てるよ。ついでにザフィーラさんのも測っておくか?」

 

たぶんはやてが暴走するだろうし、男性の目が無い方がいいか、と思って提案するが、

 

「うーん、そう言ってくれるのはありがたいんやけど、メジャーはこの一つしかないんよ」

 

とはやては断ろうとする。

けど、それならそれでやりようはあるんだよ。

 

「メジャーがないなら糸を借りていいか。それを使うから」

「それなら、あそこの棚に入っとるよ」

 

何に使うのか分かったらしいはやてが指す棚を開けて、糸を取り出すとザフィーラさんを連れ立って部屋を出る。

 

「それじゃ、測りますからザフィーラさん人間モードになってもらえます」

「心得た」

 

ザフィーラさんは頷くと目を閉じた。

足元に魔方陣が展開すると、その姿が人型に変わった。

 

「それでどうするのだ?」

「それじゃ、まずは腕を」

 

伸ばされた腕に沿って糸を張りその長さで印を入れる。

その後も胴の長さや脚の長さなど、必要な長さを測るのに大した時間もかからず、中からはやてに呼ばれるまで二人して暇を持て余すことになるのだった。

 

 

はやてに若干の暴走はあったが、必要な情報は取り終えたので、いざ買い物にとなったとき、新たな問題が起こった。

それは、

 

「だから、私達も行くって!」

「それじゃ、測った意味ないだろ」

 

シグナムさんとヴィータが買い物に俺達二人で行くのは危険だから守護騎士も同伴すると言い出したのだ。

もちろん危険なのははやてであって、要は俺が何か企むのでは、ということらしい。

失礼な。

 

「だから、俺ははやてに危害を加える気なんて更々ないというに」

「そんなの信じられっか!!」

「確かに、お前がそういう奴ではない、と我らも思っているが、物事に絶対はないだろう」

 

やれやれと反論すると、ガアッ!! と吼えんばかりの勢いのヴィータと淡々としたシグナムさん達の反論を受ける。

見ればシャマルさんとザフィーラさんの二人は、シグナムさん達ほど忌避感はないらしく場の判断に従うらしい。

 

「あー、もう! だったらこれでいいだろ!」

 

いい加減じれったく思っていた俺は、待機状態に戻したエルミナ(ロケットだった。写真は入っていない)をヴィータに預けようとして、シャマルさんに手渡した。

 

「じゃ、シャマルさん。これ頼みますね」

「え、ええ・・・・・・それはいいんだけど」

 

エルミナを受け取りながら、何故か言いよどみながらチラチラとある方向に視線を向けるシャマルさん。

見ればその先には拳を握り締めて震えるヴィータの姿が。

 

「? どうかしました?」

「・・・・・・おめえ、いまなんでシャマルに渡しやがった・・・・・・」

 

低く這うような声に首を傾げながら、はて、なんでだろう? と記憶を探り、

 

「ああ、それは」

「それは?」

「なんかヴィータさんに渡すとまずいことになる、って何かが囁いたんですよ」

「・・・・・・」

 

何を思ったか、震えが大きくなったヴィータはネックレスを取り出し手の平に握りこみ、

 

「吼えろ、グラーフアイゼン!!」

<Jawhol!>

 

いきなりデバイスを抜き放った。

 

「ヴィータちゃん!?」

「お、落ち着かぬか馬鹿者!!」

「放せえ!! 私はあの馬鹿を殴るだけだ!!」

「それじゃ、行こっかはやて?」

「ゆ、雄君・・・・・・ええの? 放っといて、あれ?」

 

背後の喧騒を気にかけずに振り返る俺に顔を引きつらせるはやて。

いいのいいの。

それじゃ、行こう。

 

「ま、待ちやがれ!! はやてに騎士甲冑を用意してもらったら、すぐに叩きのめして、グラーフアイゼンの頑固な汚れにしてやるからな!!」

 

 

 

 

「からかいすぎたかな?」

「あかんよ、雄君。あれは、ちょうやりすぎやと思うで?」

「反省しておきます」

「ん、ええよ。ほんなら行こか」

 

はやてに叱られながら、車椅子を押して歩いていく。

目的地を俺は知らないのではやての指示を仰いだ。

 

「何処に行くんだ?」

「こっちやよ」

 

はやてに連れられた店でヴォルケンリッターの服と一緒に俺の服も買わせてもらう。

金はいずれ返す、というが、ええよ、と聞かぬはやて。

その押しの強さにはやれやれと思いつつ、服と当分世話になることを改めて、はやてに感謝しておいた。

 

 

女性下着売り場に連れ込まれそうになったけどな!!

嫌がらせか!!

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