リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第四十七話 一撃と贈り物

下着売場から戻ったはやてと合流して、八神家に一度戻る。

そして、ヴィータの剣幕を受け流しつつ、皆に着替えてもらって、今度はそろって図書館へ向かう。

騎士甲冑のアイデアを小説やマンガなどから探してみることになったのだが、

 

「んー・・・・・・なんや、しっくりこおへんな」

 

はやてがため息をつきながら読んでいた本を棚に戻す。

だが、はやての言うように、選んだものはどうにも不評だった。

確かに、と思いながら手近な本を手にとってパラパラとめくる。

手にとったのは、まさに騎士もののラノベだったが、キャラクターの纏っている鎧をヴォルケンリッターに重ねようとすると、どうしても違和感があってしっくり来ない。

 

「なんなんだろうな、この違和感?」

「んー、多分やけど、この格好はこのキャラって考えてまうからやないかなぁ?」

「あー。なるほど」

 

新たな本を取り出しながらのはやての分析に、納得する。

確かに、鎧を着たキャラクターを彼女達に重ねようとすると、『鎧のキャラのコスプレ』をしているような感じに見えたのはそれでか。

 

「だったらどうする? 正直、その認識を今すぐ変えるのは無理だぞ?」

 

意識してしまったからなおさらだ。

はやては難しい顔でウンウン唸って考え込み、

 

「せや! ええこと思いついたで!!」

 

なにやら妙案を思いついたらしく表情をぱっと明るくした。

 

「それで、今度はどんな案?」

「ええから、雄君は皆を呼んできてくれへん? まずは図書館を出るから」

 

外?

まあいいけど、

 

「それなら、はやてが念話を使えばいい。シグナムさん達ならすぐに飛んでくるはずだから」

「念話?」

「<こんな感じの、一種のテレパシーだな>」

「うわ!?」

 

突然の念話に驚いたらしいはやてが大声を上げてしまい、周囲の視線が集まった。

周囲に頭を下げて、なんでもないことをアピールして、はやてが落ち着いたところで再度念話を繋ぐ。

 

「<そんなに驚くなって。要は声に出さずにするコミュニケーションとでも思えばいい>」

「驚くなって、そら無理やろ。というか、どうやればええん?」

「<心の中で伝えたいことを多少強く思えばいい。場合によっては繋がらないこともあるから携帯の方が確実だけど>」

「心の中・・・・・・<こんな感じでええん?>」

「<そうそう。(まさか、あっさり覚えるとは思ってなかったけど)>」

「<聞こえとんで。まったく・・・・・・。シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ! 一旦集まって!>」

「<分かりました>」

「<はいよー>」

「<はーい>」

「<御意>」

 

すぐに四通りの答えが帰ってきた。

念話が通じるってことはそれほど遠くじゃない・・・・・・。

 

「<あれ? なんではやて、思念通話、使えてるの?>」

「<・・・・・・>」

 

なんだろう、なんかヴィータに気がつかれちゃいけないことに気がつかれた気が・・・・・・?

慌ててはやてに口止めしようと振り返って、

 

「<いま、雄君から教えてもろたんよ。雄君は念話っていってたけど、皆は思念通話って呼んでるんやね!>」

 

時すでに遅く、はやてはヴィータに答えてしまっていた。

 

「<・・・・・・はやて。あいつ、まさか傍にいるの?>」

「<おるよ? さっきから本を取ってくれたりとか、大助かりや>」

「<・・・・・・そっか。ちょっと待ってて。すぐに行くから>」

 

雄君でかいからなー、と暢気に言うはやてが、平坦な調子で語られた宣言と共に念話が切られてきょとんとする隣で、俺は途端に流れ出した冷や汗を感じていた。

気がつけば予感は音量を最大にして警鐘を鳴らしている。

 

「はやて! 入り口の傍で待っていよう! そこなら向こうからも見つけやすいだろうから!」

「ちょ、雄君!? 突然どないしたん!? シグナム達を待たへんといかんよ!?」

 

突然のことに驚くはやてをよそに、俺は逃げることで頭が一杯になっていて。

後から思えば間違いだった。

 

「はやてに何してやがる!」

「ごはあっ!?」

 

突然の怒声と共に脇腹から強烈な衝撃が走り、視界が横に吹き飛ぶ。

見れば、拳をプラプラと揺らしながら舌打つヴィータの姿。

なるほど、殴られて吹き飛んだらしい。

だが、まったく気がつけなかった。

 

「それで? なんか言い分はあんのか?」

 

こちらを見下ろすヴィータに問われ、ダメージに意識を持っていかれそうになりながら必死に口を動かして、心のうちにある思いを伝える。

 

「・・・・・・小さくて・・・・・・視界に入らなかった」

「・・・・・・」

 

ヴィータは何を言われたのか分からず、はやてを振り返る。

そのはやては『あちゃあ』とばかりに額を手で覆って天を仰いでいる。

もう一度こちらに視線を戻し、今度こそじわじわと理解したらしく、フルフルと体を震わせ、

 

「・・・・・・って、ケンカ売ってんのか、お前!」

「ヴィ、ヴィータ! 暴れたらあかん! 落ち着き!!」

「はやて、放して!! こいつを殴らなきゃ気が済まない!!」

「さすが・・・・・・小さな・・・・・・巨人」

「ウガーー!!」

「雄君も煽ったらあかん!!」

 

意識を失う直前、辛うじて見えたのは、駆けつけたシグナムさん達によって押さえ込まれながらも暴れるヴィータの姿だった。

 

 

 

俺が意識を取り戻してから歩くことしばし、ようやくはやてのアイデアの場所に到着した。

そこは、

 

「玩具屋?」

 

大手の玩具屋だった。

 

「そや。こういうのからアイデアがあるかもしれんやろ?」

「そうかもしれんな」

 

棚に並んだ人形を見ながらはやてに同意する。

確かにこういうのなら、立体的だからイメージもしやすいか。

 

「それで、どういったのを探してみる?」

「やっぱり、余り物々しくないやつやね。騎士っぽい服、がテーマやから」

「騎士っぽくない・・・・・・か」

 

言いながら、一つ一つ見ていく。

すると、ヴィータの姿が見えないことに気がついた。

 

「ん?」

「どないしたん?」

「いや、ヴィータの姿が」

 

言いながら周囲を見渡し、

熱心に棚の一転を見つめる姿を見つけた。

 

「ヴィータちゃん、行くわよー」

「っ、あいよー!!」

 

同じくヴィータの不在に気がついたらしいシャマルに呼ばれて、後ろ髪を引かれながら戻ってくるヴィータ。

はやてに一言断ってさっきまでヴィータが見ていた場所を見てみると、

 

「これ、か?」

棚の奥に一体のウサギのぬいぐるみが置かれていた。

値段は、安くなっているらしく二千円強といったところだった。

 

「ふむ・・・・・・<はやて、ちょっといいか?>」

 

一つ考えると、はやてに念話を繋いだ。

 

「<ええけど、どないしたん?>」

「<実は――>」

 

 

 

sideはやて

 

 

「<――ということなんだ>」

「<なるほどなー>」

 

答えながら顔が緩んでしまって、シグナムに不思議に思われてしもた。

雄君から突然念話が繋がってびっくりしたけど、いざ話を聞いてみれば微笑ましい思いつきやった。

聞いてあげてもええんやけど、なんやおもろないし。

 

「<どうだ?>」

「<せやなー。ちょっと話し変わるけど、雄君ってお菓子作れる?>」

「<突然なんだ?>」

「<ええから、ええから>」

 

さあ、どないや?

 

「<できなくはないけど、それがどうかしたか?>」

「(よっしゃ!)<それなら、今度作ってもらおっかな?それが条件や>」

「<よく分からんが・・・・・・クッキーでいいか?>」

「<ええよ。ほな、ちょっと待っとって>」

 

念話を切ると、ちょっと引き返して雄君を探す。

幸い、雄君はあっさり見つかった。

雄君に用意しておいたそれを渡すと、雄君は中身を少し見ると通路を戻っていった。

 

「主はやて、今のは?」

「大丈夫や。悪いようにはせえへんよ」

「はあ」

 

状況が分からず首を傾げるシグナムに少し笑い、散策に戻った。

 

 

時間が経ち、アイデアが纏まったところで店を出た。

店を出たところで、小さめの紙袋を持った雄君が合流した。

 

「はやて、遅かったな」

「雄君、ずっと外で待ってたん? 暑かったやろ? 店に戻っとったらよかったのに」

「会計を済まして店をうろつくのも不審かな、と思ってね。そっちはどうだった? 騎士甲冑のアイデアは」

「オッケーや! かっこええの考えたらんとな!」

「そっか。じゃ、これ」

 

雄君は笑いながら、ひょいと膝の上に持っとった紙袋を置いた。

どういうことや?

見上げると、意図を察した雄君は顔を苦笑に変えた。

 

「俺が渡したら裏が疑われそうだからな。はやてからだったら、耳を傾けるだろ」

「けど、こういうのは自分で渡さなあかんと思うよ?」

「けど、今回ははやての金だからね」

 

じゃ、頼んだ、とシグナムと話に離れていく雄君。

やれやれと思いながら、

 

「ヴィータ、ちょっと来て」

「何、はやて?」

 

玩具屋を振り返っていたヴィータが、駆け寄ってくる。

傍に来たヴィータに、紙袋をあげる。

 

「はやて?これ何?」

「ええから、開けてみ?」

「うん?」

 

首を捻るヴィータを促す。

ヴィータは、紙袋を空けて中身を取り出し、

 

「わあ・・・・・・!」

 

現れたウサギのぬいぐるみに、パアっと顔を輝かせた。

あのぬいぐるみは、雄君が言うには、ヴィータが離れたとき、熱心に見ていたものらしい。

さすがに今日はからかい過ぎただろうからお詫びに買ってやりたいが、所持金がないから頼ったらしい。

 

「はやて、ありがとう!!」

「ええよ。けど、お礼は雄君にも言うとき」

「あいつにも?」

 

理由が分からずヴィータが首を傾げる。

けど、口止めされてへんし教えても構わへんやろ。

 

「せや。『今日はからかい過ぎただろうから、仲直りに』って雄君が買うたんやから」

「・・・・・・そっか。ふぅん・・・・・・」

 

ヴィータは顔を背けてしもた。

けど、私は見たで。

向こう向いたヴィータの顔が赤くなってんのと嬉しいのを隠しきれず顔が緩んでんのが。

 

 

sideout

 

 

「おい」

 

八神家に着いたところで、ヴィータに呼び止められた。

既にはやて達は家に入っている。

首を傾げながら、用を尋ねた。

 

「どうかしたのか?」

「・・・・・・これ」

 

そう言ってヴィータが示したのはウサギのぬいぐるみ。

 

「・・・・・・はやてが教えてくれた。仲直りの印にお前が買ってくれたって」

「・・・・・・」

 

あっさりばらすとは、あのちび狸め。

とにかく、あれがはやてにお金を借りてのものであることを説明し

 

「その・・・・・・だから」

「ヴィータ、あれはな」

「ありがとう・・・・・・ユウ」

「はやてから・・・・・・ん?」

 

あれ、今?

 

「だ、だから、今日のことは水に流してやる! 感謝しろよ!! そ、それだけだ! 私は先にいってるからな!!」

首を傾げた俺に、勢いよくまくし立てると脱兎の勢いで駆けていくヴィータを呆然と見送りながら、先ほど言われた言葉を反芻する。

聞き間違いでなければ、

 

「いま・・・・・・名前で呼ばれた?」

 

だとしたら、少しは信用してくれた、と思っていいのかな。

今日の収穫に足取りを軽くしながら、俺も八神家の門をくぐった。

 

 

 

「あ、手合わせはもちろんやるからな!」

「・・・・・・さいですか」

 

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