リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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アースラサイドです。
長くなったので前後に割りました。
ではお楽しみください!


間話 残された者達への説明 前

sideクロノ

 

「・・・・・・ふう」

 

書類を完成させて、固まった体を解すように軽く動かしながら一息つく。

そうしていると、扉がノックされた。

 

「っと、誰だ?」

「私です、クロノちょっといいですか?」

「母さん? どうぞ」

 

思わぬ来客に、すぐに入室の許可を出すと、母さんが部屋に入ってきた。

 

(って、ん?)

 

ふと、違和感を覚えて時計に目を向けると、まだ昼前。

この時間はまだ母さんは執務室に詰めていなければいけないはずなんだけど。

 

「母さ、じゃなくて艦長。まだ仕事中のはずですけど?」

「書類自体はもう終わらせてあるし、私に判断を仰ぐ必要があれば通信が入るから大丈夫よ。クロノこそ、何をしているのかしら?」

 

母さんが先ほどの書類に目を向ける。

 

「フェイトとプレシアの裁判に関する書類です。追加の証拠の申請の」

 

答えると、母さんの目の色が変わった。

 

「ということは、裏付けは取れたの?」

「ええ。プレシアにも確認をとったところ、シフ技術長官で間違いないそうです。そして、カーツ大将と繋がりがあったことも確認されました。ただ、現物の確保はやはりミッドチルダに戻らないことには」

「そう・・・・・・。それは大きな材料になるでしょうけど・・・・・・それにしても、あのメールの送り主はいったい何者なのかしら?」

 

プレシア・テスタロッサは雄一が助け出したが、それで終わりとは行かなかった。

アースラや管理局員への攻撃、ロストロギアの不正使用。

これらを覆すことはできず、プレシアは法の裁きを受けることになってしまう。

当然何とかしようとしたが、自分達も管理局法に従う身だ。

なかなか、穴が見つからぬまま時間が過ぎていく中、そのメールが届いていた。

送り主は匿名、その上、多数のポートを転送していたらしく、転送元の特定ができなかった。

その怪しいメールを拓いた中にあったのは、現状を覆す鍵だったのだが、

 

「分かりません。エイミィの追跡の結果あの世界から転送されたものということは分かったんですけど・・・・・・何者かは分かりませんでした」

「そう・・・・・・けど、事情を知っているはずの雄一君は」

「ええ・・・・・・けど」

 

雄一がメッセージを送れるわけがない。

それが分かっている母さんは、彼の体が安置されている医務室の方へ目を向ける。

僕もそちらへ目を向けながら、一月前、雄一が倒れた後の騒ぎを思い出した。

 

 

「雄一君!?」

「雄一!?」

『近づくな!』

 

倒れた雄一に駆け寄ろうとしたなのはとフェイトを、彼のデバイス、カナメが発した一喝が留めた。

フェイトの持つデバイスに視線が集まる中、カナメは鋭い口調で繰り返した。

『近づくでない。今の主に迂闊に触れるな』

「どういうことだ?」

『説明は後回しじゃ。それよりも主殿を運ばねばならん。リンディ、というたか?』

「は、はい? なんですか?」

『医務室のベッドの一つを占有してしまうが構わぬだろうか? おそらく、主殿のこの状態は長くなるじゃろう』

「どういうことかしら?」

『説明は後回しじゃ。まずは主をベッドに運ぶぞ。誰か浮遊魔法を使えるものはおるか?』

「あ、僕が」

 

スクライアが手を挙げる。

 

「よし、ではそこのイタチは私達が<アルス・マグナ>の干渉を解いたらすぐに主の体をベッドへ運べ」

「分かった、ってイタチって僕のこと!?」

「お主以外にはおらんじゃろ。<クフ・リーン>よ、<沙波>を」

 

騒ぐスクライアを無視して、何かに呼びかけるカナメ。

事情を知らぬプレシアヤアリシアは首を傾げたが、<クフ・リーン>が雄一の契約精霊だと気が付いた者はなのはの足下の影に目を向けた。

なのはの足下、影が犬の形を取り、首を傾げている。

 

「えっと、<クフ・リーン>さんが、『それは構わないが、どうする気だ? <沙波>は誰にも使えないだろ?』って言ってます」

 

なのはが通訳したことにも驚いたが、内容はそれどころではなかった。

だが、その心配は無用だった。

 

『そう心配せんでも<沙波>なら私でも使えよう。では、始めるぞ。フェイトよ、私を主に向けて構えよ』

「え、う、うん」

 

フェイトは言われるまま、カナメを雄一に向ける。

その隣、なのはの影から一つの影が離れた。

 

(緑色の魚・・・・・・いや、あれは鯱、か?)

 

鯱はしばらくなのはの足下をさまようと、波紋を立てながら、フェイトの足下に移った。

鯱はそのままクルクルと、フェイトの足元を周回しだす。

 

『よし。では、私が合図をしたら、浮遊魔法を』

「分かったよ」

『ならば・・・・・・<沙波>!!』

 

カナメの命令に鯱は滑るように雄一へ奔った。

鯱はそのまま雄一の影に触れ、パシャン、と波紋を大きく広げた。

 

『今だ、やれ!』

「っ!!」

 

合図に、スクライアが雄一の体を浮かせてベッドに横たえた。

 

「・・・・・・終わりか?」

『ああ、感謝するぞ、イタチよ』

「だから僕はイタチじゃ・・・・・・いや、それより、説明してもらってもいい?」

 

ユーノの言葉に皆の視線が二人に集まる。

 

「いったい雄一はどうしちゃったのか、それよりも雄一は何をしたのか?」

『・・・・・・そうじゃの。話しておかねば危険もあろう。まずは主殿の現状じゃ。主殿は揺り籠に捕らわれておる』

「揺り籠?」

『揺り籠は、<アルス・マグナ>を宿した者がいつか捕らわれることになるもの。<アルス・マグナ>は<クフ・リーン>や<沙波>と同じ契約精霊じゃが、その能力は比べものにならんほどに強力じゃ。主殿が契約者について説明したとき、対価について説明したのを覚えておるか?』

 

なのはやフェイト達がうなずく。

その後ろで事情がわからずにいたプレシア達に以前雄一から聞いた話を説明しておく。

 

『主殿は、例外的にだが、能力を振るうことに確かに対価を背負ってはおらなんだ。しかし、<アルス・マグナ>だけは別じゃ。その強すぎる力の鎖も兼ねて対価が残されておった。その対価こそ、「一切の生命活動」。命以外に捧げられる、最大の対価を払っているからこそ振るえる能力なのじゃ』

「な!?」

 

なんだそれは。

そんな対価を支払うなら、手に入れたとしても使うことはできないのではないか?

だが、それを問う前にカナメは言葉を続けていく。

 

『もちろん、それでも一度や二度程度では捕らわれることはない。しかし、主殿は四回、それも、この二ヶ月ほどという短い期間で<アルス・マグナ>を揺り起こしておる』

「四回?」

 

二回はおそらくアリシアの蘇生とプレシアの体調に関して、おそらく回復させた分だろう。

では、あと二回は?

 

「「あ・・・・・・」」

 

そのとき、なのはとフェイトは何かに思い至ったように、その顔から血の気が引いていく。

 

「二人とも、どうかしたのか?」

 

顔色の悪い二人に声をかけるが、二人は聞こえていないように目を見開くばかり。

遅れて、スクライアとアルフが「「あ!?」」と顔を見合わせた。

二人の不安を悟ったらしいカナメは、それを肯定する。

 

『左様。残る二回、一回目は大樹が海鳴を襲ったあのサッカーの日、もう一つは町中で次元震が発生しかけたとき。主殿は被害を抑えるためにその能力を振るった』

「そ、それじゃあ・・・・・・雄一君がこうなっちゃったのは私のせいなの?」

 

なのはの脳裏には、あの時感じた後悔が首を擡げていた。

あの時、キーパーの少年が持っていたジュエルシードを、見間違いと切り捨てずに封印していたなら、こんなことにはならなかったのではないか。

一方、フェイトも悔やんでいた。

自分に、ジュエルシードの暴走を抑え込めるだけの力があったなら、雄一に迷惑をかけることもなかったのではないか。

無力感に二人の目に涙が浮かんだ。

だが、

 

『それはなかろう』

 

カナメはあっさりと否定した。

 

「「え・・・・・・?」」

 

あっさりと否定された二人やユーノ達も思わず呆けてカナメを見つめた。

カナメは優しげな声で二人に説いた。

 

『主殿にはリスクについて再散に渡って説明しておった。今日の使用についても一度なら、と私からも言っておったのじゃ。だが、新たに発覚したアリシアの存在に、プレシアとアリシアを天秤にかけなければならなくなった』

「っ、それは」

 

なんて残酷な選択だろう。

どっちを選んでも、フェイトから母親か姉を奪うことになる。

 

『幸か不幸か、主殿にはそれを救える力があった。だが、両方救えば自身が破滅する。それらを秤にかけて、契約を守ることを選んだ。要は主殿の責であり、二人には何の咎もないのじゃ』

「けどっ」

『それに』

 

それでも納得がいかずにいたなのはを、一転して厳しくなったカナメの声が抑えた。

 

『主殿がこうなった責を問うより、今の主殿が如何に危険かを説かねばならん』

 

 

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