リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第五十四話 蠢き出す何かと影

仮面の男が姿を現すと共に、魔力が広がっていった。

 

「っ」

「そう警戒するな。ただ結界を張っただけだ」

 

周囲を見渡すと、仮面の男はからかうように言った。

だが、結界を張った以上、人目に付きたくない何かをするつもりなのだろう。

十中八九、荒事になるはず。

買い物袋を傍のベンチに置き、仮面の男の一挙手一動を注視する。

すると、男の方から問いかけてきた。

 

「何者だと聞いたが、むしろ、お前こそ何なのだ?」

「あぁ?」

 

こちらの誰何に答えずに、構わず聞いてくる仮面の男に青筋が浮く。

警戒を忘れて殴りかかりそうになるが、そんなこちらの様子に構わず男が続けた言葉に頭を冷やす。

 

「今まで、闇の書の守護騎士にお前のようなものはいなかった。ただのイレギュラーかと思えば、お前は闇の書とリンクが繋がっている。ならば守護騎士プログラムが機能を拡張して生まれた新たな守護騎士なのか、と考えたが、その正体はさっぱり分からない」

「・・・・・・随分と訳知りなんだな」

「そうでもない。正体が分からないものが今目の前にいるからな。もう一度聞くぞ、お前は何だ?」

「答える必要はねえな」

 

先ほど男が言ったものと同じ台詞で返すと、男の気配が苛立ちゆえか僅かに揺らいだ。

だが、すぐに立ち直り鷹揚に頷いた。

 

「だろうな。むしろこう言いに来たんだ。闇の書に関わるな」

 

こいつの狙いは闇の書か。

確かにシグナムは闇の書を完成させることで力が手に入る、と言っていたが。

それとは何か違う気がするな。

 

「これは警告だ」

「断る」

「だったら排除するまでだ!」

お互いに譲らず、戦闘の火蓋が切って落とされた。

 

 

side第三者

 

 

拒否と同時に、仮面の男は雄一めがけて魔力弾を放つが、それを予想していた雄一は地面に片手を触れさせる。

 

「遮れ、<ダー・ナーン>!!」

 

触れた先の地面から太い木の根が突きだして魔力弾を貫く。

 

「ちっ、なら!」

 

仮面の男は防がれたことに舌打つと、再び魔力弾を生成する。

魔力弾の生成を見て雄一は反撃に炎の小鳥を複数撃ちだした。

 

「同じ手が通じるとでも思っているのか!」

 

撃ちだされた小鳥達は、仮面の男めがけて飛びかかる。

仮面の男は、魔力弾を迎撃に使おうとしたが、どの鳥を撃ち落とすかに迷って動きが止まってしまい、その至近で破裂した。

爆風が仮面の男を吹き飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

「追加で喰らっとけ!」

 

吹き飛んだ仮面の男に、雄一は追撃を撃とうと足を踏み出すが、

ガチッ!

 

「な、バインド!?」

 

踏み出した足をバインドに絡めとられた。

 

「やれやれ、なかなか痛かったぞ?」

 

吹き飛ばされた仮面の男が何事もなかったように立ち上がる。

吹き飛んだのはわざとだったのだろう、ダメージは残っていないようだ。

吹き飛ばされたときに付いたのだろう土埃を払うと、

 

「だが・・・・・・これで形勢逆転だな」

 

勝ち誇るようにいった。

見せつけるようにゆっくりと掲げた手に先ほど以上の魔力が集まっていく。

 

「コレで消し飛ばす。本当ならお前の魔力も使いたかったが、危険すぎる」

「・・・・・・」

 

男の手に集まる魔力に、雄一は顔を俯ける。

観念したか、と男は収束させた魔力を放とうと、

 

「この程度で勝ち誇るな、間抜け。蝕め、<フェル・ディア>!」

 

雄一が顔を上げると同時に素早くバインドに触れると、バインドに虫食いの様に穴が広がりバインドが弾けとんだ。

瞬間、雄一は射線から身を逃す。

男は驚いて射線を修正しようとしたが、時既に遅く、魔法が撃ち出され雄一の傍を砲撃が抜けた。

 

「お、お前!?」

「これで止めだ!」

 

無防備になった男の腹部に<ダー・グッザ>の副作用で強化された拳を叩き込む。

拳に骨を負った感触が伝わり、男の体を吹き飛ばした。

 

「がぁあああああ!!」

 

吹き飛んだ男は数メートル空を飛び、数回地面に叩きつけられて止まった。

男は呻くばかりで立ち上がれないようで、雄一はエルミナを銃に変えると油断なく狙いながら近づいていく。

 

「う、ああ・・・・・・」

「(やりすぎたな・・・・・・これじゃあ話は聞けそうにないな)とりあえず、その顔拝ませてもらおうか」

 

銃口を額に向けたまま、男の仮面を外そうと手を伸ばして、

 

「!?」

『マスター!!』

 

エルミナが警告を発すると同時に、男の視線の先めがけて振り向き様に拳を放つ。

 

「ちぃ!」

「くっ!?」

 

放った拳はもう一人の仮面の男の蹴りで受け止められた。

不利な体勢であったこともあって、押し切られ、男達と距離を空けられた。

 

「くっ!?」

 

体勢を整えて銃口を向けると、男達も体勢を整え雄一に敵意を向けた。

先ほどまでの男は腹部に手をあてて負荷を抑え、乱入してきた方が拳を構えて盾になっている。

その姿は仮面まで同じものだった。

 

「答えろ。なんで、闇の書を狙う?」

「お前に言う必要はない!」

 

乱入してきた方にも問うが、男は回答を拒否して間合いを詰め、雄一の顔めがけて拳を振るう。

 

「せっ!」

 

迫る拳を雄一は僅かに首を動かすことで避け、カウンターを腹めがけて打ち込んだ。

だがその寸前、男は拳を引き横に大きく避ける。

 

「なっ!?」

 

拳を避けられ、雄一の体勢が崩れる。

その隙を、もう一方の男が放った魔力刃が突いた。

 

「喰らえ!!」

「こ、のっ!!」

 

咄嗟に、雄一は引きかけていた拳を振り抜き、魔力刃に叩きつけた。

拳で魔力刃を打ち抜いていくが、

 

「つぅ!?」

 

当然、雄一も無事では済まず、右腕に次々と傷が刻まれていった。

男達はその様を鼻で笑う。

 

「ほう? 随分と思い切ったことをするな」

「だが、そんな怪我を負って我々に勝てると思っているのか?」

「ああ。これで終わりだ」

 

言って雄一は腕を無造作に振るった。

振るった腕から血が数滴飛び、内一滴が腹部を押さえていた男の足に付いた。

男達には、雄一の行動は意味不明なものでしかなく、もう終わりという言葉もブラフとしか思っていなかった。

しかし、すぐにその顔を青褪めさせることになる。

雄一は腕を突き出すと、

 

「圧搾しろ、<ダー・グッザ>!!」

 

ぐっと拳を握り締めた。

瞬間、

ブン! と不可思議な音を立てて、男の足に黒い花が咲いた。

 

「ギ、ガギャァアアアアアア!!」

「なっ!?」

 

骨も筋肉も何もかもを拉げさせた男が絶叫し、もう一方はその惨状に血の気が下がった。

その隙を見逃すはずはない。

 

「しっ!」

 

エルミナを銃からグローブに変える。

あの模擬戦の後に知ったことだが、この手袋は肉弾戦時の拳の防御のためのものではなく、攻撃のためのギミックが仕込まれていたものらしい。

グローブから数条の銀線を引き伸ばし勢いよく振るう。

銀線の正体は鋼糸であり、これ自体に殺傷力はない。

だが、この武器は能力の一つと驚くほど相性がよかった。

 

「掻き鳴らせ、<クーア・ルンゲ>!」

 

鋼糸に振動を伝える。

鋼糸は振動でその身を凶器に変えて、男達に牙を剥いた。

無事な男が迎撃のために拳を構え

 

 

 

 

「逃げられたか」

 

砂煙で閉ざされていた視界が戻ると、既に仮面の二人の姿はなかった。

男の放った拳は鋼糸ではなく地面を打ち、多量の土砂を巻き上げた。

視界が閉ざされた隙に逃げ出したらしく、結界も既に解除されている。

 

雄一は仕留め損ねたことに顔をしかめると、此処で立ち尽くしていても何もないと割り切り、置いておいた買い物袋を振り返って、戦闘の余波か滅茶苦茶になったベンチが目に入った。

慌てて駆け寄り、中身を検める。

幸いほとんどは無事だったが、卵などの脆いものは全滅だった。

 

(台無しだな・・・・・・しょうがない、買いなおすか)

 

思わぬ出費に頭を痛めながら、先ほどの二人組みについて考える。

 

(問い詰め損ねたけど、やつらは闇の書の何かを狙っているのは間違いない。一応、帰ったらシグナム達にそれとなく伝えておこう)

 

そう結論をつけると、雄一は再びスーパーへ引き返していった。

このとき、雄一は事態には猶予があると思っていた。

だが、火種はすぐそこまで迫っていたのだった。

 




作中で説明できなかったので~。
<フェル・ディア>・・・・・・触れたものを劣化させることのできる精霊。クロス原作では精霊にもダメージを与えられるその能力は脅威だった。
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