リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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これも偏に日頃御愛顧戴いている読者の皆様のおかげです!
今後とも拙作をどうぞ宜しくお願いいたします!
では本編どうぞ。


第五十六話 蒐集の一幕

 

「揺さぶれ、<クーア・ルンゲ>!!」

杖型にしたエルミナを、今相手取っている、巨大な亀のような生物の頭部に叩きつける。

叩きつけたエルミナから伝わった振動は、亀の頭部を揺さぶり意識を刈り取った。

 

――・・・・・・ォォ!!――

亀は呻き声を上げると、その巨体で地面を大きく揺らしながら倒れる。

 

「えっと・・・・・・この辺かな?」

甲羅の一角に下りて、エルミナを突きつけるとそこから小さな光る玉が現れた。

 

「リンカーコア発見、と。シグナム」

「ああ、闇の書よ」

 

上空に控えてもらっていたシグナムに声をかけると、彼女も心得たもので闇の書を構える。

 

<Sammlung>

 

闇の書が起動し、リンカーコアが縮むと共に開かれた闇の書の空白だったページに文字が書き込まれていく。

その文字は次々と書き込まれ、四ページ目に入ったところで記入が止まった。

 

「どうだった?」

「三ページだ。しかし、雄一の使うその振動魔法は使い勝手がいいな」

 

シグナムが目を怪しく輝かせながら言う。

見ていて戦いたくなったか、この戦闘狂。

だが甘い。

 

「これ、見た目ほど使い勝手はよくないぞ。やってることって振動を叩き込んで脳震盪を誘発させているんだけど、加減が難しいんだぞ? 弱かったら利かないし、強すぎたらあっさり殺しちゃうし」

「・・・・・・ちなみに、強すぎたらどうなるんだ?」

「たぶん、挽き肉・・・・・・いや、たしか脳ってほとんど水分だって聞いた事あるからグチャグチャのゼリーができるだろうな」

「うっ!?」

 

あまりの表現にシグナムが顔をしかめる。

その様子に空気を呼んで、話を変える。

 

「それにしても、先は長いな。全部で六百六十六頁を埋めなきゃいけないんだっけ?」

「ああ。全六百六十六頁を完成させることで、闇の書の主は真の覚醒を果たし力を得る。その力があれば主はやても助かるはずだ」

 

力強く頷くシグナム。

その姿にちょっと申し訳なくなり、頭を下げる。

 

「だったらごめん。色々と条件をつけちゃって」

「構わない。私も考えていた条件だ。むしろ感謝しているくらいだ」

「そう言ってもらえるとありがたいね」

 

蒐集に当たってシグナム達に俺はいくつか条件を呑んでもらっていた。

一つは海鳴で蒐集を行わないこと。

これははやてに累が及ぶことを防ぐと共に、シグナム達がいざなのは達に手を出して、管理局側かシグナム側か選ぶ必要がある自体を防ぐため、という目的もある。

次に、魔導師から蒐集をしないこと。

これは言わずもがななのは達に手を出させないためだ。

これにはヴィータが難色を示したが、魔導師を襲って管理局に目を付けられるデメリットとはやてが主とばれたとき罪が重くなることを説いたら諦めてくれた。

最後に、極力はやてと過ごすこと。

全員で八神家を空けるのは好ましくない。

特に、この前の二人組みの仮面の男の存在がある。

夜はヴィータがはやてと一緒に寝ているため、彼女以外が蒐集に出ても問題はないが日中は誰か戦える者が残る必要がある。

シグナム達もこれには異論がなく、シグナム・シャマルかヴィータ・ザフィーラの最低でも二人がつくことになっている。

俺は残ったり残らなかったりでいる。

俺が残る時には、残っているシグナムかヴィータにも蒐集に出てもらっている。

その状態で、しかも管理局に察知されないようにと遠方の無人世界で蒐集しているため、蒐集のペースは早いとは言えない。

その生活が始まってしばらく。

俺は一つシグナムに頼みをしていた。

 

「ところで、シグナム。今何ページまで来た?」

「・・・・・・二百十三頁だ。三百頁まできたら一度見せればいいんだったな?」

 

闇の書の記述を検めることを頼んでいた。

ヴォルケンリッターのデバイスを見ていて、気がついたことがあった。

彼女達のデバイスの設定言語は雄一の記憶違いでなければドイツ語と同様だ。

なら、同じく古代ベルカの遺産である闇の書の記述もドイツ語で読むことができるのではないか。

また、その記述が全頁を完成させた際の『真の覚醒』時に儀式として作用する呪文なのでは、と推察していた。

なら、その記述を読めば何か闇の書について掴めるのではないか、と考えていたのだ。

 

「頼んだ」

「心得た。だが、やはり、もっとペースを上げたいところだな」

「だな。<シャマル、どこか魔法生物が群れを作っているところってないか?>」

 

別地点で回収をしているだろうシャマルに念話を繋ぐ。

 

『<あ、雄一君? 丁度良かったわ。そこから、東に一キロくらい言った先に大型の反応が複数あるわ。それを蒐集できたらページが稼げると思うからお願い>』

「<りょーかい>。だそうだ」

 

聞こえたか、と振り返ると既にレヴァンティンを構えた臨戦態勢のシグナムが。

 

「先ほどは雄一に任せっきりだったのでな。このままでは剣が鈍ってしまう」

「そんな辻斬りみたいな・・・・・・。まあいいや。んじゃ、行きますか」

 

 

 

シグナムが転移を起動し、東へ二人して向かう。

その先、シャマルが魔力反応を確認した場所にいたのは、

 

――グルルル・・・・・・――

「どう見てもドラゴン、だな」

「ああ。どうやら、此処はやつらの巣のようだ」

 

突然巣に現れた侵入者を睨むドラゴンを、呆れながら見上げる。

シグナムは竜の足元に転がる骨に目を向けての言葉だった。

こちらを睨む竜は五体。

 

「何体やる?」

「私が三、お前が二でどうだ?」

「抜かせ。俺が四、シグナムが一でもいいんだぞ」

「ほう?」

 

竜の殺意をそっちのけで、シグナムと獰猛な笑みを交わす。

 

「面白い。ならばどちらが多く狩るか勝負としようか」

「上等だ。カートリッジの使用は?」

「有りだ。出し惜しみ無しでいこうか」

「承知した」

――ゴオォアアアアアア!!!――

 

殺気をぶつけても歯牙にもかけられず、怒りが頂点に達したらしい竜が、雄たけびと共に炎の吐息を撒き散らす。

その炎を合図に俺達は左右に散ってそれぞれ獲物を見定めた。

シグナムは端から順に狩るつもりらしい。

俺が選んだのは、

 

「テメエだぁ!!」

――グルオォアアアア!!――

 

鱗に多数の傷を刻んだ、一回り体の大きい竜。

おそらく、この巣のボスだろうやつが雄たけびと共に迎え撃つ。

吐き出される炎を、噛み殺さんと迫る牙を避けて近づく。

やがて、

 

「まずは、これだ! <キー・アーン>!!」

 

生み出された竜に比べて矮小な炎の鳥は、竜の頭めがけて鋭く飛びかかる。

竜は鳥を脅威と思わず悠然と受け止め、

 

「弾けろ!!」

 

受け止める瞬間、大きく弾けた衝撃が竜の頭を揺らした。

 

――ゴアアアアア!!――

 

強靭な鱗に守られた竜に生半可な攻撃は利かないと判断した雄一はいつものように衝撃を伝える方針で戦っている。

当然、竜の鱗に<キー・アーン>の爆発程度の火力ではびくともしまい。

だが、爆発の衝撃ならどうか。

それも、胴体などに比べてはるかに衝撃に弱い頭部なら。

と、思ったのだが。

 

「なんだか、火に油を注いじゃったかな?」

 

目を血走らせ、口から湯気を吐き出す姿に口元を引きつらせる。

竜は怒りのままに爪牙を振るう。

振るわれる爪牙を後ろに飛びのくことでかわし、

追撃に振るわれた尻尾に目を見開いた。

 

(あ、あれは避けれないな)

 

妙にスローに感じる視界の中、迫る尻尾を睨み、

 

ダァン!!

――ギャアアアア!!――

 

轟音と悲鳴が重なった。

 

「間一髪だったな、二つの意味で」

 

硝煙を上げる銃口をふっと息で払い、先ほどの光景に今さら背筋を寒くする。

遅れて、エルミナからカラン、と空薬莢が排出された。

迫る尻尾にギリギリで、銃形態にしたエルミナの弾丸を叩き込み<ダー・グッザ>の能力で切断したのだ。

ただし、通常の<ダー・グッザ>では削り切れない恐れがあったので、カートリッジを使用して範囲を広げていた分時間がかかり、切られた尻尾が投げ出されるその勢いでできた本体と尻尾の隙間が、雄一の体がぎりぎり通る程度の隙間しか空かなかった。

それらの賭けに勝った喜びを噛み締めて地に伏せた竜を見下ろす。

一方、尻尾を落とされた竜はさらに怒りに体を焦がしながら立ち上がろうとし、

 

「させねえよ! 貫け、<ダー・ナーン>!!」

 

鈍い音を立てて、地に伏せた竜の体を鋭い幹を持った植物が貫き、縫い止めた。

 

――ギャアアアアア・・・・・・――

 

全身を串刺しにされた竜はその大きさから致命傷にはならずとも、意識を失い倒れこんだ。

 

「よし!」

 

戦果を上げたことを喜び、シグナムを振り返ると、あちらも一体地に沈めたところだった。

数の上では同じ。

こうしてはいられない、と主を失って統制を失った残りの竜に飛びかかったのだった。

 

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