リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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ギリギリ、セーフ!!
やばかったです!
今回は基本のんびり回です。
ではどうぞ!


第五十七話 口は災いの元と思わぬ再会

竜の巣を強襲して(間違いとはいえないし)幾日か経ったある日。

勝負?

三対二でこっちの勝ちでシグナムは悔しがってたよ。

それはさておき。

 

「ただいまー」

「あ、雄一君。ちょうどよかったわ」

「ん?」

 

蒐集ではなく散策に出ていて八神家に戻った俺を出迎えたシャマルの言葉に首を傾げた。

 

「何かあったのか?」

「実は、ヴィータちゃんとザフィーラが大物を見つけたんだけど、数が多いらしくて。それで、シグナムと一緒に応援に行こうとしたんだけど、はやてちゃん今日は図書館に行ってるの。そろそろ迎えにいかなくちゃいかないの」

「それなら俺がシグナムと応援に出ればいいんじゃないのか?」

 

そっちの方が攻撃力は高いし、と思いつつ提案するがシャマルは首を横に振った。

 

「雄一君、最近ずっと蒐集に出ているでしょ?はやてちゃん、寂しがってたわよ」

「・・・・・・そういうことか」

 

そう言われてはこれ以上我を通すことはできない。

大人しく両手を挙げて降参を示す。

 

「お願いね? あと、迎えに行くときについでに買い物にも行くらしいから買い物袋も忘れないでね」

「了解した。それにしても、食料品の買い出しも大変だな」

 

はやては年相応だが、シグナムとヴィータは健啖な方だし。

女性の方が多いとはいえ、買い物の量は多い。

シャマルもしみじみと頷いて

 

「そうね・・・・・・これもやっぱり」

「ああ、やっぱり」

 

二人でしみじみと呟いた。

 

「シャマルのポイズン☆クッキングで消費するからだな」

「家族としての悩みだから、って何それ!? 私はそんな変なのじゃないわ!」

 

思わず頷こうとしたシャマルが慌てて否定する。

だが、

 

「シャマルの料理って見た目がまともっぽいのに、暴発というか命の危険があるんだよ。それこそ、最初に食べたときはちょっととはいえ意識が飛んでたしな。軒並み屍になってたし」

 

ちなみに被害率はザフィーラがもっとも多い。

ザフィーラ・・・・・・寡黙なのは個性だけど、すっぱり断ろうぜ。

 

「うっ!? ・・・・・・うぅ、それはそうだけど・・・・・・何もそこまで言わなくても・・・・・・」

 

言葉が胸に刺さったのか、シャマルは胸を押さえると、うずくまって床に「の」の字を書き始めた。

さすがに苛めすぎたか、と思ってフォローを入れる。

 

「まぁ、最近は味付けが複雑じゃないものはましになってきたな」

「っ、雄一君・・・・・・」

 

フォローにシャマルは目を潤ませながら顔を上げて、

 

「味がましなものが出てくるようになったからか皆の警戒が下がって、暴発したときのダメージが上がったけど」

「雄一君のバカー!! うわぁあああん!!」

「あ」

 

上げて落としてしまったことに気が付いた時には、シャマルはすでに涙を決壊させていた。

 

 

 

泣いているシャマルを何とか宥めて、むくれるシャマルと、騒がしさに様子を見に来て目にした惨状に首を傾げるシグナムを送り出すと、一人図書館へ向かう。

海鳴の街を一人歩きながら、うっとうしい視線に僅かに顔をしかめる。

どうやら、あの仮面の男がまだ懲りずに張っているらしい。

ただ、以前のように仕掛けてくる様子はないのが気になる。

こちらから仕掛けてもいいが、おそらく逃げるだろうし・・・・・・。

 

(正直、あまり目立ちたくないんだよなぁ)

 

それというのも・・・・・・。

仮面の男達とは別に感じる視線に眉間のしわが深くなる。

視線の主は通行人達。

大小様々な傷が走った体はさぞ目立つことだろう。

一度、警察に職質をかけられたときは焦ったものだ。

一緒にいたはやてが無罪を証明してくれて助かったが、それも含めて目立つのは好ましくない。

極力視線を意識から外すと、図書館へと足を急がせた。

 

 

 

急いだからか、シャマルから聞いていた時間よりも早く着いてしまった。

入り口で待っていてもいいんだが、

 

(あいつらがいる以上、傍にいた方が安心か)

 

考え直して、館内を探していく。

といっても、目星はついている。

はやてと出会ったときにいた本棚から、付近を探していけばいいだろう、と当たりをつけると、外国の物語が並んでいる棚を目指して歩いていく。

 

「――――」

「――、――――」

「ん?」

 

目的の棚が近づくにつれ、棚の向こう側にある談話スペースから声が漏れ聞こえてきた。

もちろん、図書館のマナーを守っている音量で辛うじて聞こえる程度だが、聞こえた声は確かに探し人のものだったからそっちへ足を向ける。

ただ、

 

(もう一人の声も何か聞き覚えがあるような・・・・・・?)

 

はて、と首を傾げながら、談話スペースに顔を向け、

 

「!?」

 

慌てて、顔を引っ込めた。

 

(な、なんで、)

 

確かに、はやてはいた。

それはいい、そっちは問題ないのだ。

だが、

 

(なんですずかがここに?)

「<落ち着きたまえ>」

 

パニックになりかけた思考に冷静な声が突き刺さった。

釣られるように僅かに落ち着きを取り戻すと、胸元のロケットに目を落とした。

 

「<エルミナ? わ、悪い、助かった>」

「<頭が冷えたようで何よりだ。それで、彼女がいることは何も不思議でない。彼女は読書家だったと記憶しているしな>」

「<あ、ああ、そうだった、な>」

 

エルミナに言われて思い出した。

そう言えば、四月にもそんな会話があったな。

ただ、何でこいつが知っているんだろう?

 

「<とにかく現状は、今うっかりはやて達の前に出ると、はやて絶対俺の名前言うよな>」

「<だろうな。彼女は礼儀を重んじる人物だ。親しい人物にはお互いを紹介するだろう。だが、それが困るなら、念話でもして言い含めておけばよいのではないかね?>」

エルミナの意見が的確なんだけど、

「<なにか、偽名の案ないか?>」

「<・・・・・・そうだな・・・・・・ペイン、とでも名乗ればいい>」

「<ペイン?>」

「<誰かは気にするな。とにかく、それでいいだろう>」

 

エルミナは言いたいことは言ったとばかりにそれ以後は沈黙に入ってしまった。

その反応に首を傾げつつ、はやてに念話を繋ぐ。

 

「<はやて、聞こえるか?>」

『<うわぁ!? びっくりしたなぁ! 突然どないしたん、雄君?>』

 

念話に驚いたはやてだったが、いい加減慣れたものですぐに平静を取り戻して、不思議そうなすずかに対応しつつ問うてくる。

 

「<シャマルの代わりに俺が迎えに来たんだ。それよりも、実はちょっと頼みがあるんだ。今からそっちに行くけど、俺のことはペインで通してほしいんだ>」

『<ん? よう分からへんけど・・・・・・雄君には意味があるんやな? 分かった、やったる>』

 

はやての了承を得て、はやて達のもとへと向かう。

 

「はやて!」

「あ、雄・・・・・・やなかった、ペインさん」

 

ま、まあ、いきなりだからしょうがないか。

言葉を呑み下して、すずかに視線を向ける。

 

「え、っと、はやてちゃんの知り合い?」

「え? うん、そうやねん! 家で一緒に暮らしてる雄、じゃなくてペインさんゆう人で見た目こんなんやけど、そんな恐ないから安心してな!」

「ほほう? 一体どういう見た目と思っているのか、是非聞いてみたいなあ?」

「い、嫌やな。冗談やって」

 

冗談で低い声で言うと、はやては冷や汗をかきながら首を横に振った。

そこまで恐がらなくても・・・・・・。

少々へこみながら、固まってしまっているすずかに手を差し出す。

 

「ペインだ。はやてと仲良くしてくれてありがとう」

「あ・・・・・・月村すずかです」

 

おずおずと伸ばされたすずかの手を優しく握る。

 

「あっ」

「ん、すまない、痛かったか?」

「い、いえ、そんなことは・・・・・・」

 

顔を紅くしながら、顔を俯けるすずかの姿に首を傾げ

 

「って、いつまでそうしてんねん!」

「きゃ!?」

「おっと、」

 

ていると、頬を膨らませたはやてが割り込んだ。

バランスを崩したすずかを支え、はやてを振り返る。

 

「どうした、はや、て?」

 

振り返って見たものに、目が点になった。

目の前にはにこやかでいながら威圧感を放つはやての姿が。

 

「ペインさん? すずかちゃんに何をしたんや?」

「い、いや、何もしてない、ぞ?」

「何でそないに自信なさげなんや! それに、説得力あらへん! 見てみぃ!」

 

はやてが指差す先、すずかが顔を紅くしながら僅かに息が乱していた。

慌てて、顔を覗きこむ。

 

「すずか? どこか具合でも悪いのか?」

「い、いえ! そんなことないです!! それよりも、そのお聞きしたいんですけど」

「ん、なんだ?」

「ペインさんこそ・・・・・・どこかお怪我されていませんか?」

「? ああ、大丈夫。かすり傷一つないよ」

 

こちらの怪我を案じたのだろうと考えて安心させるように頷いた。

だが、すずかの様子は変わらない。

 

「そうですか? 何か・・・・・・いい匂いが」

 

すずかは顔を胸元に寄せて、って!?

 

「す、すずか!?」

「ちょ、すずかちゃん! なにしとるん!?」

「え? ・・・・・・あ、あれ? 私、何を?」

 

突然のことに、俺以上に驚きを示したはやての声に我に返ったらしいすずかは夢から醒めたように瞬きすると、現状を認識したのか悲鳴を上げて飛び退いた。

 

「ご、ごめんなさい!」

「い、いや。気にしないで。それより、俺達はもう帰るけど、すずかちゃんはどうするの?」

 

気まずい空気になる前に強引に話を変える。

すずかもその考えは同じなのかすぐに乗ってきた。

 

「わ、私も家の人が迎えに来てくれるまで待っています! はやてちゃん、それじゃまたね!!」

 

そう言うと、すずかは慌しく走って行ってしまった。

まあ、なのはほど運動神経は悪くない、どころか格段にいいから転ぶ心配はないと思うけど。

慌てようから、なんとなく心配して見ていると、袖を小さく引かれた。

見ると、はやてが物いいたげに見つめていた。

 

「どうした?」

「雄君、実はすずかちゃんと知り合いやろ?」

「・・・・・・御明察」

「さすがにあの状況やったら、それ以外に考えられへんて」

 

苦笑するはやてに同じく苦笑すると、はやては真剣な表情で問うてきた。

 

「何で、言わへんかったん?」

「すずかはこっちの事情を知らないからね。わざわざ巻き込もうとは思わないよ」

「ふーん?」

 

はやては尚も何かを言いたげに見つめていたが、俺はその視線に気づかぬふりをしながら車椅子を押す。

 

「それじゃ、買い物に行くか。今日は何が安いかな?」

「・・・・・・せやな。雄君は何が食べたいん?」

「そうだな・・・・・・美味しいものなら」

「それ、一番困る答えやん」

「はやての料理には心配してないよ」

「さよか。それなら、スーパー目指してゴーや!」

「はいはい」

 

夕暮れの中、この穏やかな時間を噛み締めるように、俺達は喋りながらのんびりと家路を辿るのだった。

 

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