昨夜は書いている途中で寝落ちしてしまいました・・・・・・。
では本編どうぞ。
sideフェイト
バルディッシュを突きつけながら、目の前の男性を観察する。
目元まで覆われているから分かりにくいけど、たぶん二十歳くらいだと思う。
引き締まった体をしていて、一方の手にはさっき結界を破壊した銃が握られている。
おそらく、デバイスだと思うのだが、
(あれは、知らない魔法だった)
そもそも、魔法だったのかさえ怪しい。
そして、私達はそういうものに心当たりがあった。
契約者。
その単語が頭に過ぎった。
確かに雄一という例がいたのだから、どこかに他の契約者がいてもおかしくない。
だが、だとしたら厄介だった。
契約者の異能は、効果は一つだが、様々な応用が利く。
さらに、非殺生設定がかけられないらしく、直撃しようものなら命に関わるだろう。
そもそも、相手の能力が何か分からないと警戒しきれない。
「<フェイト、どうするんだい?>」
アルフも同じ考えなのか、男性を警戒しつつ念話で指示を求めてきた。
私は少し考える。
ふと、男性の背後のビル、その屋上にいるなのはの姿が目に入った。
意識がないらしく、ぐったりとした様子で壁に凭れている。
なのはがこうなった原因にこの人は関わっているはず。
私は無意識に強くなった視線を男性に向ける。
「<アルフ・・・・・・この人を絶対に捕まえるよ。それで、知っていること、全部教えてもらう!>」
「<よし来た! そんじゃあ、あたしが先陣を切って抑えるからフェイトがバインドで>」
『<そこまでじゃ、戯け共!!>』
「「!?」」
勢いに水を差すように、突然加わった念話にアルフと目を見合わせると、その出所に目を向けた。
「<カナメ? どういうことだい? 相手はたった一人じゃないか! フェイトとあたしがいるんだから大丈夫だって>」
『<だから、止さんか! あやつには、おぬしらでは歯がたたん! おとなしく、退け!>』
「<だから、それがなんでだって聞いてんだよ!!>」
カナメとアルフの言い合いを聞きながら、私は驚いていた。
あの日、雄一に託されたカナメは、いつでも余裕を持った喋り方をするデバイスだった。
だが、そのカナメが警戒している。
私は思わず尋ねていた。
「<カナメ。カナメは、あの人のことを知っているの?>」
『<・・・・・・ああ、知っておる。あやつの名はペイン。おぬしらも気づいておるだろうが、あやつも契約者じゃ。ただし、主殿とは比べ物にならぬほど強い>』
「<雄一以上だって!? けど、雄一だって複数の精霊と契約しているはずじゃないのかい!?>」
複数の精霊と契約した、複数の異能による手数の多さ。
雄一の異能について、カナメは以前そう説明していた。
だが、カナメはその強みをあっさりと否定した。
『<今回の場合は別じゃ。あやつの能力、<ダー・グッザ>は「握りつぶすこと」が能力じゃ>』
「<『握りつぶす』?>」
『<左様。やつが己の血を付けた場所に、強力な重力場を発生させて押し潰すのがあやつの異能じゃ。その能力には、一切の防御が意味を成さぬ>』
うげ、と顔をしかめるアルフ。
私も同意しつつ、対策を尋ねる。
だが、
『<こやつは異能の錬度が段違いじゃ。主殿と違って、こやつは己の異能を使いこなしておる。「使える者」と「使いこなす者」。そのどちらが厄介なのかなど、わざわざ言うまでもなかろう。正直、私の知る中でも上位の能力の持ち主じゃ。とにかく、やつの血に触れてはならぬ。それくらいしか、有効な助言はできぬじゃろう>』
「<そんな・・・・・・>」
「<って、ちょっと待ちなよ。あいつの血に触れるなって、あたしやフェイトみたいな接近戦型には無理な話なんじゃないのかい?>」
『<だから、そう言っておるじゃろ。とにかく、隙を見つけてやつから逃げるのが一番じゃろ>』
「方針は決まったか?」
「「『!!?』」」
突然かけられた声に慌てて振り返った先、ペインも油断なくこちらの隙を窺っていたらしく、重心が前に動いている。
それに気がついたときには、バルディッシュを起動させ、
「バルディッシュ! ランサー、セット!!」
<Photon Lancer>
進路を塞ぐようにフォトンランサーを放っていた。
さらに、追加で左右にもランサーを走らせる。
これで左右のどちらに逃げても後続のランサーが貫く。
そのはずだった。
ペインは素早く腕を振るった。
その腕から紅い雫が数滴散るのが見え、それが血であることに気がついた瞬間、
ブブブブンっ!! とまるで羽虫の羽音のような音を立てて世界に黒い花が咲いた。
「なっ!?」
「なんなんだい、これは!?」
花に飲み込まれたランサーが圧し折られながら消えていくのを目にした私達は息を呑んだ。
それが隙になってしまった。
『いかん! フェイト、アルフ、早う動かんか!』
「もう遅い。誘え、<ニーア・ブー>」
驚きで固まってしまった私達にカナメの叱責が届いたそのとき。
ペインが、エルミナを振り上げて何かを告げた瞬間、
ニィアアア、と何かの鳴き声のような音が響いた瞬間、ペインの姿が消えた。
「なっ!?」
「き、消えた!?」
驚きに目を見開きながら、転移魔法の痕跡を探ろうと彼がいた場所に近づく。
だが、
『これはあやつの・・・・・・フェイト、周囲を探せ! あやつはまだ近くにおるはずじゃ!!』
「え?ほ、本当ですか?」
思わぬ言葉にカナメを問い詰めようとしたそのとき、タッタッタ、と走るような音がかすかに耳に届いた。
「この音!」
「あ、フェイト!?」
アルフが止める間もなく音の方へ飛び出した。
どれほど飛んだか、どこかの路地のような細い道が伸びていた。
「どこ?」
もう一度耳を澄まし、
「っ、そこ!!」
傍から聞こえた音めがけてバルディッシュを突きつけた。
すると、
「うわ!?」
近くまで来ていた影が突き出されたバルディッシュにたたらを踏んだ。
「此処までです!あなたを拘束し、ま、す?」
隙ができたと思って、バインドを展開しようとして、街頭の明かりで見えたその人の顔に勢いがなくなった。
その人は、きょとんとした顔をした赤い髪の、私達より少し年上くらいの人でした。
デバイスを展開していないのか、杖も持たず素手で、武装局員のような服を、大きいのか裾と袖を折り曲げてきていた。
「あ、あの?」
「あ!? し、失礼しました! てっきり、」
じっと見ていたからか、声をかけられて慌ててバルディッシュを下げた。
理由を説明しようとして、言葉にならずにいると、
「もしかして、あいつらの件ですか?」
「あいつら、ってシグナム達のことですか!?」
彼の方から口にした件に勢いよく食い付く。
彼は神妙に頷き、彼の経緯を説明してくれた。
「自分は、アガット・ガスパーです。この街で調査を命じられていたのですが、守護騎士を名乗る者達に襲われて・・・・・・それで本隊に合流しようとしていたら、こちらから妙な音が聞こえたから来たのですよ」
「そうですか・・・・・・。あ、あのアガットさん、こっちに顔を目元までマスクで隠した顔に傷のある男の人を見ませんでしたか?」
「見ましたよ。彼はあっちに向かいました」
もしかしたら、と思って聞くと、彼はとある方向を指差した。
「!? あ、ありがとうございます!! 気をつけて帰ってくださいね!」
それを聞いて私は礼もそこそこにそちらへ急いだ。
背後でアガットが唇を歪めている事には気がつかず。
sideアガット?
行ったか。
再び路地に飛び込み、今度は飛行魔法で足音を立てずに移動しながら一息つく。
『どうやら上手くいったようだね』
手袋についた宝石が発した声に苦笑しながら頷く。
「ああ。あそこでアルフがいたら、こうは上手くいかなかっただろう。とりあえず。踊れ、<フィン・ターン>」
一度足を止め、異能を使う。
「・・・・・・こんなものか」
近くの店のガラスを鏡に映った姿は、最近見慣れた傷のある顔立ちである、ペインのものだった。
<フィン・ターン>。
この精霊は<ブーリ・クリウ>と同様攻撃能力はない。
その能力は擬態、『演じること』だった。
様々な者の姿を取ることができるため、潜入などには重宝するだろう。
だが、
『しかし、不便なものだね。服の大きさは変わらないのだから』
「まったくだ」
エルミナの指摘に、同意する。
この能力、一見便利に見えるが、この能力で姿を変えると、服までは大きさが変わらないため、極端な場合、裾や袖を引きずるか、逆に小さすぎて着れなくなるのだ。
さっきまでは、裾と袖を折り曲げる程度で済んだが。
それにしても、
「引っかかってくれて助かった。軍服っぽい格好を武装局員のものと勘違いしてくれて」
これは綱渡りだった。
<ニーア・ブー>だけでは心もとない、と打った手だったが、さっきも言ったようにアルフがいたら、匂いでばれていただろう。
フェイトだけで、かつ彼女が武装局員に馴染みが薄かったからできた手だ。
『ばれる前に急いで撤退しようではないか?』
「っと、そうだな」
エルミナに同意しつつ、八神家へ足を向ける。
だが、
(それにしても、<憑黄泉>のありがたさを知るなぁ)
<憑黄泉>のステルスなら、もっと楽に撤退できただろう。
異能のタイミングの、痒い所に手の届かない状態に、人知れずため息を溢すのだった。