リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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今回から、クロス原作のキャラの説明を入れていきます。
後書きに書いてあるのでそちらもよければご覧ください。


第六十二話 釈明と立ち位置

「それで?」

 

八神家に戻った俺達は、はやての作ってくれたシチューに舌鼓を打ち、はやての寝静まった頃、再びリビングに集まった。

 

「あの魔導師からどれだけ蒐集した?」

「途中邪魔が入ったけど、十四頁稼げたわ。代償もあったけど」

 

そういってシャマルは己の左腕に視線を向けた。

<クフ・リーン>に折られた腕は彼女の回復魔法で治療されていたが、まだ完調とはいかずその動きは僅かにぎごちない。

 

「妨害って、あのとき何があったんだ?」

 

現場を見ていなかったヴィータが首を傾げる。

だが、問われたシャマルも首を横に振った。

 

「それが、私にも何が起こったのか分からないの。ただ、接続を切られる直前に、原因らしき物を見たんだけど・・・・・・」

 

そこで、シャマルは僅かに口ごもり、シグナム達は彼女を怪訝そうに見つめた。

シャマルはしばし言い淀んで口にした。

 

「影の犬にやられた、んだと思うわ」

「影の」

「犬ー?」

 

シグナムとヴィータが眉をひそめる。

無理もないか、と思いつつ雄一は、

 

「ちょっといいか?」

 

割り言った。

 

「その犬なんだが、自分に心当たりがあったりする」

 

雄一に言葉にシグナム達の視線が集まる。

その視線に顔をひきつらせながら、視線をあらぬ方へ飛ばしつつ言った。

 

「実は、あれ、俺がやったことだったり?」

「「「「は?」」」」

 

四人は、聞き逃せない台詞に視線を鋭くした。

四人の説明しろ、という視線に慌てて答える。

 

「実は、この体になる直前になのはとフェイトにそれぞれ俺の相棒が預けてあって・・・・・・それで、なのはに預けたのがその影の犬の精霊だったり」

「それで、何でその精霊が蒐集の妨害をしたのだ?」

「実はそのときに、『二人を守れ』って命令をしていたんだよ。まさか、あのひねくれ者が律儀に守るとは思ってなかったんだけど」

 

こんな事に、というとシグナム達は何とも言えないような複雑な目で雄一を見つめた。

その視線に雄一の背を冷たい汗が伝う。

 

「ん? ちょっと待て。ユウ、お前あいつらの事知ってやがったのか!?」

「ああ。知っている、というか一応友人だ」

 

ヴィータの詰問に頷く。

その答えに、事情を先に知っていたシグナムとシャマルは複雑そうに表情を歪め、初耳のザフィーラは目を見開いた。

ただ、冷静でないヴィータは違った。

 

「じゃあ、テメエは私らに協力する振りをして何をするつもりだったんだ!?」

 

ヴィータは雄一を睨みつけると、問い質した。

ヴィータは雄一が管理局の回し者ではないか、と考えているらしく、その目には敵意が浮かんでいる。

デバイスを起動すると、雄一に突きつける。

外野となったシグナム達も止める気はないらしく、雄一の真意を探る姿勢だ。

そのなか、雄一はゆっくりと口を開いた。

 

「何もしない。そもそも、俺はどっちの立場につくかさえ決めかねているんだから」

「あぁ? どういうことだよ?」

 

とりあえず、話を聞く気はあるのか、一先ずデバイスを収めるヴィータ。

 

「俺は確かにあいつらを知っているし、四月の件であいつらと共闘もした。けど、いま俺の身にかかっている契約ははやてと交わしたものだ。どちらにも、守りたいやつがいるから、お前達に海鳴での蒐集はさせたくなかったんだ」

「けど、だったらなんであいつらから隠れるような真似してんだよ? わざわざ偽名を使ってこそこそしなくても、堂々と向こうにつくことができたんじゃねえのか?」

 

ヴィータの指摘ももっともだろう。

改めて、以前エルミナと話し合った問題を、シグナム達に教える。

その問題にシグナム達は、顔をしかめる。

 

「将来有望な者をサーチャーで観察、ですか」

「ああ。おかげで、俺が榊雄一を名乗っても信用されない可能性が高い。それに、俺の体は向こうにあるわけだし、なおさらだろう」

「それなら、お前はどうするのだ?」

 

改めて、リンディさん達への恨み言を口にすると、いままで黙って事の成り行きを聞いていたザフィーラが言葉を発した。

 

「ザフィーラ?」

「我らの所為とはいえ、我らは管理局と袂を分けた。このままどっちの陣営にもつかずとはいかん」

 

ザフィーラの意見は、厳しいようだが正しいだろう。

蝙蝠のようにふらふら彷徨うものを信用できまい。

 

「分かっている」

「そうか・・・・・・。なら、お前はどちらにつくのだ?」

 

ザフィーラの問いに、シグナム達が注視する中、雄一は考え込み、やがて一方を選んだ。

 

 

 

 

sideシグナム

 

 

「良かったのか?」

 

話し合ったあと、部屋へ戻っていった雄一・ヴィータ・シャマルを見送ると、ザフィーラが問いかけた。

 

「何がだ?」

「雄一を引き入れたことだ」

「ザフィーラ。お前の憂いも分からなくはないが」

 

ザフィーラの言うように、雄一はこちらを選んだ。

ヴィータやシャマルは喜んだが、私はヴォルケンリッターの将としてそうはいかん。

その理由を求めた。

雄一は、下心がないことを示すためか、すぐさま答えた。

雄一が挙げた理由は二点。

一つは彼もいう契約。

主はやての『家族との時間を守って欲しい』という言葉を契約としているらしい。

契約者は契約を破らないのだと彼はいった。

酷くあやふやで根拠にはならないと思われたが、『契約者も契約で力を得たのだから、契約を絶対とする』、と説明されその場は納得した。

もう一つは彼の危機管理からだろう。

曰く、『今回の事件の中心は間違いなく此処、というか闇の書だろ? なら、闇の書やはやてに何か起きたとき、こっちについていたほうが対応しやすい』とのことだった。

 

「だが、雄一がこちらを選んでくれたのは助かった。主のことはおそらく管理局に話しはしなかっただろうが、テスタロッサやヴィータが追い詰めたあの白い砲撃魔導師など有望な者がいる中で雄一と戦うのは、厄介だろうからな」

「・・・・・・珍しく弱気だな」

「雄一は強い。それは疑いのないことだからな。あいつは、力を制限して我らを圧倒したのだから、それを認めないわけにはいくまい」

「・・・・・・そうだな」

「ここからは、管理局の目に留まらぬよう、さらに遠方の世界に行く必要もあるだろう。戦力は一人でも多いほうがいい」

「・・・・・・そうだな」

「それに・・・・・・もしあいつが出て行くとなれば、主はやては悲しんだことだろう」

 

主はやては雄一にも心を開いていらっしゃる。

それは普段を見ていても明白で、雄一も含めて家族としていらっしゃる。

その家族が姿を消した、となれば主はどう思われるか。

その御心を痛められることだろう。

 

「主の笑顔を曇らせるようなことは避けたい。その意味でも、雄一の選択には救われたな」

「そうだな。そして、その選択を喜ぶのは主だけではない」

「ヴィータのことか?」

 

心当たりを口にすると、ザフィーラはコクリと頷き、彼には珍しいことに笑みに唇を歪めた。

 

「ヴィータも雄一のことは憎からず思っているようだ。先代の主までのヴィータが、今代の主の下でああなったのだから、巡り会わせとは奇異なものだ」

「違いない」

 

ザフィーラの言い様に思わず失笑が漏れる。

以前までのヴィータは手当たり次第破壊して苛立ちを紛らわせるような行動があった。

それが、いまでは見た目相応の子供のようではないか。

リビングに、静かに二つの笑いが響いた。

一頻り笑うと、シグナムは座っていたソファから立ち上がり、ドアへと足を向けた。

 

「管理局の目もある。明日は様子を見るとしよう」

「心得た。お前も怪我の治療に努めるといい」

 

ザフィーラの指摘に、胸部の下に走った傷を押さえる。

今日の戦闘中にテスタロッサの一撃が入った場所だ。

 

「ああ、そうしよう。おやすみ」

「ああ」

 

リビングで体を丸めるザフィーラを残し、私は既に眠っているだろうシャマルを起こさないように部屋へ戻るのだった。




・マルク=マルドゥーク(男)
 主人公。<クフ・リーン>の契約者。父親の事業の失敗や片棒を担いでいた詐欺師の逮捕など、波乱に富んだ人生を送っていたところ、<クフ・リーン>に影を食われ契約を結んだ。ギャングであるディーノファミリー首領アルバ・ディーノからヴァレンシュタイン家当主であるエルミナを暗殺するよう契約したが、エルミナが気づかぬ内に<アルス・マグナ>の防衛能力に敗れた。<黒衣>の二つ名を持ち四強と呼ばれる最強格の契約者に列せられる実力を持つ。本人も能力に自信があっただけに、あっさりと撃退され呆然としていたところ、ヴァレンシュタイン家執事として雇われた。
 掃除など、執事としての能力は高く、彼のいれる紅茶は屋敷では好評。
 <クフ・リーン>と契約することで『影を操ること』ができる。その代わり、「日光を浴びると火傷する」ようになる。<黒衣>の呼び名は、彼が日光を避けるために着ていた黒いコートから来ている。能力の制約として、「足の位置の固定」が必要だが、夜になるとその制約は外れる。投げナイフに影を纏わせて、その軌道上の影を破壊する<魔槍>を必殺技とする。彼が影で括った物は基本的に破壊できない。
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