リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第六十四話 蒐集と考察

なのは達とヴィータ達の初戦の翌日。

朝食の後、はやてがザフィーラの散歩ついでに図書館に出ている間に、俺はシグナム達にある提案をしていた。

 

「済まない、雄一。もう一度言ってもらえないか?」

「俺のリンカーコアを蒐集してくれ」

「ちょっと待て! なんでそんなことしなきゃいけねえんだよ!?」

「いいのか?」

 

もう一度同じ事を言うと、ヴィータが反対したが、シグナム達はすまなそうな顔をしながら闇の書を取り出す。

 

「ああ。管理局に目を付けられた以上、長々と収集に時間をかけるわけにはいかないだろ? それにもう一人蒐集しているんだ。それが一人増えても罪状は変わらん」

 

もちろん否やもあるわけがなく、だからやれ、と俺は頷いて促す。

 

「・・・・・・すまない」

 

シグナムは一度目を瞑ると、そう言って闇の書を起動させた。

 

<Sammlung>

「ぐぅっ!?」

 

闇の書の起動に合わせ、胸から光の玉が浮かび上がり、光の玉が収縮を始めた。

それにつれて、体が虚脱感に襲われ、呻きが漏れる。

だが、

 

「凄い・・・・・・あの魔導師以上よ」

 

シャマルの声に、顔を上げて闇の書を視界に入れる。

そこには次々に頁を代えていく闇の書があった。

白紙の頁に次々と文字が現れ、埋まっては次の白紙に文字が刻まれていく。

その勢いはまだ収まらずにいる。

やがて、その勢いが収まり始め、

 

「・・・・・・くっ、はぁはぁ・・・・・・」

 

光の玉が薄れ闇の書が閉じると同時に、膝が折れた。

四つん這いになって荒くなった息を整えようと深呼吸を繰り返す。

 

「ユ、ユウ! 大丈夫か!?」

 

ヴィータが駆け寄って顔を覗き込んできた。

その顔には心配の色が浮かんでいる。

まだ息は整っていないが、彼女を安心させようと体を起こした。

 

「・・・・・・大丈夫だ。ただ、魔力を吸われるのがこんなにキツいなんて、な・・・・・・」

「ホントに大丈夫なのかよ?」

「本当だって。それより、何頁集まった?」

 

なおも心配するヴィータを、頭を撫でることで宥めながら、シグナム達に問う。

シグナムが闇の書の頁を数える。

 

「三十七頁・・・・・・大したものだ。あの魔導師の分と併せて、三百六十五頁まできたな」

「本当か! おっし、半分は超えたな! とっとと残りの半分も蒐集しちまおう!」

「そのことだが」

 

意気込むヴィータをシグナムが押しとどめた。

 

「何だよ、シグナム!?」

「今日は蒐集は休み、管理局の様子をみるつもりだ」

「はぁ!? どうしてそうなるんだよ!?」

「落ち着け。それを今から説明する」

 

シグナムに言われ、矛を収めるヴィータ。

だが、その目は納得いかないとばかりにシグナムを睨んでいる。

 

「管理局は我らの行方を血眼になって探していることだろう。そして、それをかいくぐって蒐集に出ることになるが、より遠方の世界に出向く必要があるし、戻ってくる際に戦闘になるやもしれん。そのためにも万全な状態で出る必要がある。ヴィータ、お前も昨日の戦闘でカートリッジの消費やグラーフアイゼンのダメージがあるだろう?」

「う・・・・・・それは、」

 

シグナムが指摘したように、ヴィータの残っているカートリッジは二発。

心許ないのは事実だろう。

ヴィータもそれが分かっているだけに、否定しきれず目を泳がせた。

シグナムがさらに追いつめていく。

 

「どのみち、休息も必要だ。あまり家を空けて主に不審を抱かれても困る。ならば、この機会に色々果たしてしまおうと思うのだ」

「あん? 色々って何だよ?」

「前に雄一が提案していた件だ。闇の書の収集が一定の頁に達したら見せて欲しい、と言っていただろう」

「だから、今日一日俺が闇の書を見せてもらっている間、皆は休んでいたらどうか、って話だ」

「ああ、なるほど! けどよ、一体何をしようってんだ?」

 

雄一がシグナムの言葉を継いで説明すると、ひとまず納得をしたのか、雄一に問うヴィータ。

 

「前に言ったけど、俺は闇の書に書かれている文章が呪文として機能すると考えている」

「けど、それって確かドイツ語だったか? で書かれてるんだろ? ユウ、それを読めんのかよ?」

 

俺はそれに応えず、一冊の本を取り出した。

 

「何だこれ?」

「ドイツ語の辞書。はやてに、ドイツ語の本を読むからって借りてきてもらったんだ」

「おいおい、いくら何でも一日で読める量じゃねえだろ。さすがに何日も蒐集は休めねえぞ?」

 

ヴィータの心配はもっともなため雄一は頷く。

 

「大丈夫だ、そのためにも・・・・・・ああ、これとか、な」

「ん?」

 

それを説明するため雄一は適当なページを開いて見せた。

そこには付箋が貼られている。

 

「何だよ、これ?」

「簡単に言うと、今回は特定の単語を探し出すのが目的だから、それほど時間はかけないつもりなんだ」

 

俺が意図しているのは『箱の中からブロックを取り出すパズル』のようなもの。

今回なら、鉄の箱の中から積み木を取り出す。

振ってみれば音はするから何かが入っているのは間違いないが、どんな形の積み木かは分からない。

外からは中が見れず、箱自体を開けることはできない。

では、その箱に穴を開けられたなら?

「この形はたぶんあるだろう」という形の穴を開けてしまう、という方法。

誰もがイメージする、丸や三角などの形を開けてしまうのだ。

試しに穴を開けてみて、その形のブロックが入っていれば落ちてくる。

「予想できない何か」を受動的に見つけることは不可能だが、「予測できる何か」をとりあえず見つけることは可能なはずだ。

 

「今回なら、魔力を蝕み続けた主に、蒐集した魔力を使わせるために、その体を回復させる機能があるはずなんだ。それを見つけられれば、希望がはっきり見えるだろ?」

「本当か!? だったら、早くやって見せてくれ!!」

「どわっ!? ヴィータ、揺らすな!! 文字が揺れて見えん!!」

 

目を輝かせたヴィータに体を揺らされて、文字を見れずに悲鳴を上げる。

結局、ヴィータがシグナム達に取り押さえられながら我に返った時には、俺の三半規管に甚大なダメージをくれていた。

 

「えっと・・・・・・ユウ、ごめん」

「・・・・・・ああ」

 

なんともいえない気分で、ヴィータの謝罪を受け入れていると。

 

「皆、集まって何してるん?」

 

はやてが戻ってきていた。

そのあとに、人間形態のザフィーラが続く。

 

「ん? ああ、ちょっとな」

「って、雄君ぐったりして、どないしたん!?」

 

ソファにぐったりと凭れて天井を見上げているとはやてがその惨状に仰天した。

ただ、正直に告げるわけにはいかないので、

 

「ヴィータにアイス強請られて、からかったら脳を揺さぶられた」

「ユウ!?」

 

えっ!? とヴィータが振り返るがもう遅い。

 

「もう、あかんでヴィータ? アイスはほどほどにしとかな」

「え、あ、その・・・・・・はい」

 

ヴィータもまさか真実を言うわけにもいかず、頷くと恨めしげな視線を向けてきた。

すまん、と手刀を切っておく。

今度、アイスを作ってやらんと・・・・・・。

 

「とりあえず気分が悪いから部屋に戻るよ」

「大丈夫か? 辛かったら、私が添い寝したろか?」

「アホ。顔赤くしながら何言ってやがる」

 

頬を染めながら、ニヤニヤ笑うはやての頭に軽く拳を落として部屋に戻る。

もちろん、気分が悪いというのは方便であるため、ベッドではなく机に向かう。

 

「んじゃ、始めるか。エルミナ、念のため全頁のコピーと解析を頼む」

『了解した。だが、それなら最初から私がすればいいのではないか?』

「そうもいかない。ある程度、内容を把握できるし、重要かどうかは俺とお前で違うだろ? 複数の視点で見たほうがいいと思う」

『分かった。その意思を尊重する』

「頼んだ」

 

エルミナに再度頼むと、一頁目に手をかけた。

 




・カナメ=ヒラサカ(女)
 ヴァレンシュタイン家裁縫師。東方の島国キョクトの出身。村の神宝である刀<暗乃守>を祭る巫女として崇められていたが、儀式に失敗し刀を依り代としていた精霊<沙波>に取り憑かれた。
 村を離れて旅をする内、能力を使いこなすようになったが、契約者を狙う契約者狩りとして活動するようになった。そのなか、オルダー教の特務機関<宣教師>の一員であるヨハエルに雇われる形でロックウォールを訪れた。その後、マルクに誘われ、屋敷で働くことに。
 「触れたものを液状化させること」ができるが、対価である「体の液状化」により実体を失っている。そのため、体を物が通過するのだが、体はそのことを認識できず傷を負ってしまうため、ちょっとしたことが大怪我に繋がる。己の髪を編みこんで作った<呪布>で体を覆っていた。
 マルク、アイシャ同様<四強>の一人だが目下最強とされている。通称<東方不敗>。
・アーロン(男)
 ヴァレンシュタイン家庭師。ヨハエル・カナメと共に屋敷を襲撃したが、カナメと同じく使用人に。人並み外れた体躯とフクロウのお面が特徴。かつては、珍獣を追うハンターだったが、森に入っている間に村を流行り病が襲い、家族を喪った(と思い込んでいただけで、実際は家族は避難していただけ)ショックで洋白猿の精霊<ハヌ・マーン>に取り憑かれた。
 庭師として、仕事熱心であり庭園を荒らすものには容赦しない、荒々しい面も有するが基本的に温厚な性質で屋敷での信用も篤い。
 能力は「思考を読むこと」だが、お面がセーフティになっているようで外すと「思考を操ること」ができる。その力は、「死ね」と命じれば相手の精神を「殺す」ことができる代物。対価に「痛覚や温度覚を喪失」している。本人曰く、「凍傷になりかけたが、気がつかず死に掛けた」とのこと。
 能力を使わずとも十分に強く、先代の<四強>の一角。その力はカナメと打ち合えるほどである。
 ロックウォールの街に娘がいるのだが・・・・・・?
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