リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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すみません。
また寝落ちです・・・・・・。
レポート提出が、ケツに火がついた状態です。
ちょっと短めですが、お楽しみください。


第六十五話 考察と雑話

「・・・・・・ん」

 

ふと我に返った俺は、いつの間にか曲がってきていた背をぐっと伸ばす。

伸ばした拍子にポキポキ、と背骨が鳴るのを聞きながら、固まっていた体をゆっくりと解していると、エルミナが呆れたような声をかけてきた。

 

『ああ、マスター。ようやく戻ってきたようだね』

「ああ。ずいぶんのめり込んでいたようだな?」

 

どれほど集中していたのか、まだ昇り始めたくらいだったはずの太陽が部屋の中を赤く染めている。

机の上に置かれていたエルミナの声に苦笑するとエルミナも苦笑で返してきた。

 

『それはもう、鬼気迫るものだった。途中様子を見に来たはやてやヴィータが諦めるほどだった』

「・・・・・・そんなにか」

『ああ。それで首尾はどうだったかね?その様子では芳しくなかったようだが』

 

エルミナの指摘に顔を撫でてみると、確かに眉間に皺が寄っている。

俺はため息をつくと、闇の書を指した。

 

「芳しくないどころか、収穫はゼロだ。まだ頁が半分とはいえ、一切回復関係の単語が出ないのはどういうことだよ」

 

文字群の中には見受けられなかった。

希望論を挙げるなら、残りの頁に出てくると考えられるが。

むしろ、これはドイツ語の文法、という仮説は撤廃する必要があるだろうか?

 

「そっちの方はどうなんだ、エルミナ?」

『進捗率52%といったところだ。何しろ、古代ベルカ式の術式は衰退している技術だ。それを再確認していくのはなかなかに骨だね』

「そうか・・・・・・。一応今まで分かっていることを説明してくれ。何か糸口が掴めるかもしれない」

『承知した。それでは・・・・・・』

 

エルミナの説明を聞いていく。

闇の書は通称旅する魔導書ともいわれる。

主が死ぬと、次の主のもとへ転移するらしい。

だが、それでは

 

(なんで、主を呪うんだ? いや、そもそも何のために作られた魔導書なんだ?)

 

持ち主を害する魔導書など本末転倒だろう。

かといって、本来が呪い殺すための呪具だったとしたら、シグナム達守護騎士プログラムは不要だし・・・・・・。

 

「分からないな」

『そうだね。まるで筋が通っていない。なら、それにどういった筋が通せると思う?』

「そうだな・・・・・・」

 

エルミナの問いに考え込む。

本来不要なはずの機能。主を亡くしても残り続ける魔導書。

 

(本来備わっていたものじゃない、とかか?)

 

思いついた仮説。

だが、それならシグナム達自身がそれを知らないはずはないだろう。

それに、

 

(シグナム達は、闇の書を完成させた、その先を知っているはずだよな?)

 

闇の書にもっとも近しい彼女達なら、より詳しい情報を持っているはず。

これは、彼女達を問い詰める必要がありそうだ。

考えを纏めていると、

 

「雄一君? ちょっといいかしら?」

 

ドアがノックされると共に、シャマルが顔を覗かせた。

 

「シャマル? どうした?」

「ずっと篭っているようだけど、そろそろ一区切りついてないかな、と思って。そろそろ夕飯の準備をするから良かったら手伝ってくれないかしら?」

「よし! すぐに行くぞ! さあ逝くぞ!」

 

シャマルの言葉が終わる前に跳ねるように椅子から立ち上がりドアに急ぐ。

 

「待って!? 何か字がおかしかった気がするんだけど!?」

 

お前に限れば、何もおかしくない!

そういう間も惜しんでキッチンに急ぐ。

シャマルを一人でキッチンに立たせるわけにはいくまい。

前にも言ったが、シャマルは料理が不得手だ。

はやてや俺が傍にいてすぐにリカバリーできるなら被弾率は下がるのだが、一人でやると工程が複雑になればそれだけ確率は上がっていく。

と、ああそうだ!

 

「はやては!?」

「ヴィータちゃんとシグナムと一緒に買出しに出ているわ。もうすぐ帰ってくると思うけど?」

 

どうしたの? と首を傾げるシャマルに

 

「じゃ、ほい」

 

闇の書を渡した。

 

「え? もういいの?」

「ああ、とりあえずの確認は済んだんだけど・・・・・・なあ、シャマル。聞いていいか?」

「? 何かしら?」

「闇の書ってこうして頁が埋まっているけど、はやてにはなんでばれていないんだ?」

 

前々から気になっていた。

シグナム達が蒐集に使う以外は、闇の書は基本的にはやての目にもとまる可能性があるはず。

問うと、

 

「偽装スキンを掛けているから大丈夫よ」

「偽装スキン?」

 

さらりと告げられた新たな事実に、すぐに掘り下げていく。

 

「知ってのとおり、はやてちゃんには蒐集を禁じられているでしょ? そこで、蒐集した頁に偽装を施すことで、はやてちゃんには闇の書を白紙の本に見せているの」

「なるほど。なら、ついでにもう一つ聞かせてくれ」

 

本題を聞こうと、息を吸い込む。

 

「シャマル達は」

 

闇の書を完成させたあとを知らないのか。

そう聞こうとした時、

 

『ただいまー』

 

玄関から、はやての声が聞こえてきた。

すぐにヴィータとシグナムの口喧嘩も耳に届く。

 

「あ!? はやてちゃん達、戻ってきたみたいね!」

「ああ・・・・・・シャマル、シグナムにタオルを持っていってくれ。車椅子を拭かなきゃいけないから」

 

頭を切り替えてシャマルに指示すると、シャマルはいそいそと玄関へ向かっていった。

 

『聞きそびれてしまったね。どうするんだい?』

「・・・・・・また別の機会を待つしかないだろ。はやてのいるところで聞くわけにもいかないし」

 

エルミナに答えつつ、僅かに自分を落ち着かせる。

そう、まだ焦る必要はないはず。

だから、いま感じつつある焦燥は気にする必要はないはずだ。

そう考えつつ、俺も玄関に向かうのだった。

 

 

「あ、雄君や!ただいま!」

「ただいまー!」

「ただいま」

 

玄関へ向かった俺が見たのは、車椅子の車輪を拭くヴィータと、はやてを抱き上げたシャマル、買い物籠を手に提げたシグナムだった。

抱き上げられながらこちらに気がついたはやてが帰宅を告げると、ヴィータやシグナムもそれに続いたから、皆に応じてやる。

 

「おう、お帰り。荷物は俺が片付けておくから、コートを置いてくるといい」

「ん? なに、気にすることは」

 

ない、と続けようとしたのだろうシグナムの手に触れ、念話を流し込む。

 

「まあいいから。こっちに任せるといい<こっちの用件は終わったから、その報告をしたい>」

「っ。そう、か。なら、お言葉に甘えるとしよう<っ!? 分かった、詳しい話を聞かせてくれ>」

 

念話の内容に表情を変えたシグナムはすぐに、偽装会話にあわせると部屋へ戻っていった。

 

「はぁ~、シグナムが任せるなんて、雄君凄いんやな。私が手出そうとすると、我らにお任せください、ってやらせてくれへんのに」

「それは・・・・・・無理もないんじゃないか」

「なんでや?」

「子供と大人ってのもあるけど、はやてには料理とか家事で世話になっているから力仕事で挽回しときたいんだろ」

「そういうもんかな?」

 

ある程度言葉を選びつつ、それっぽい理由を告げると、はやては納得したのかシャマルに連れられてリビングに。

俺も、買い物籠を掴みなおすとキッチンへ向かった。

 




・セリア=アルコーネ(女)
 マルクの天敵の女性。かつて、アルバにマルクと共に雇われていたが、度々マルクと交戦することになる。引力と斥力を操る精霊<ルー・グー>と契約しており、能力を使った狙撃で<魔弾の射手>と呼ばれる。
 アーロンの娘だが、赤毛以外の共通点はない。彼が行方不明になっていた頃、方々を旅していた際、人買いに浚われた。しかし、気性の荒さと当時得意にしていた体術で人買いを(男として)再起不能にし、同じく捕まっていたリオと活動を共にするようになった。リオと共に旅をするうち、彼に心を開いていくが、彼の目的のために訪れた鉱山で落盤に巻き込まれて彼を喪い、契約者になった。
 対価は「声を失う」ことだったが、アーロンに誘われる形で、屋敷の料理人になり声を取り戻した。
(マルク以外には)優しい人柄なため、特にアイシャが懐いている。セリア自身も、ある理由でアイシャを気に入っているため両者の仲はいい。


・リオ=マンチェスター(男)
 クルクルと巻いた癖毛に大きな瞳。美しい容姿で、ふんだんにフリルで飾ったドレスを着る・・・・・・男。俗に言う男の娘。その容姿に、セリアが戯れに着せたところ、予想以上に似合っていたため、度々着せるようになった。もちろん、本人は抵抗するが、彼はセリアに恋心を抱いていたため、逆らえずその格好をしていた。
 物語にあるような英雄を目指していたため、力を求めるなか、耳にした精霊の器を求めていた。セリアとそれが眠るという炭鉱へ向かうが、<鉄人>という契約者の起こした落盤に巻き込まれ、半身を失った。そのときに<ニーア・ブー>に憑かれたのだろう、「音を聞いたものの認識を止めること」ができるようになるが、対価で「85分の出来事しか記憶できなく」なった。その対価のため、多数のメモで記憶を補完していたが、それを悪用した<鉄人>に度々利用されていた。
 彼の家は処刑人の家系で、処刑人の技を伝える正義のある家、としていた。その教育のためか、正義であれ、という思考があり、恩返しを絶対としていたことも仇となった。<鉄人>は何食わぬ顔で、義肢を用意し、その恩を着せていた。
 彼の武器は大鎌。カナメ並みの体術で鎌を振るう強者だった。
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