リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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ギャグ回ですかね。
サウンドステージ部分です。
では本編どうぞ。


第六十六話 情報共有と料理再び

「<そうか・・・・・・見つからない、か>」

「<ああ>」

 

リビングに場所を移して。

シグナムとテレビを見る振りをしながら念話で知らせる。

はやては夕飯の準備のためキッチンに行き、ヴィータがついていった。

シャマルははやての手伝いをすると息巻いていたので、要望通りはやてに相手を任せている。

ザフィーラは犬モードで同じ話を聞いている。

シグナムは僅かに考えると、毅然とした表情で口を開いた。

 

「<例えそうでも、まだ現れていないページにあるのだろう。そう、私は信じるつもりだ>」

「<そうか。今後どうするか、方針を尋ねるつもりだったけど、いらなかったか。さすがはヴォルッケンリッターの将といったところか?>」

「<からかうな。それで、次はどのあたりで見せればいい?>」

 

からかったつもりはなかったのだが。

ムッ、と顔をしかめたシグナムを宥めつつ、考えた数字を告げる。

 

「<話が早くて助かるよ>」

「<我らは魔法についてはからきしだ。シャマルがそういう解析は得意としているが、闇の書の解析となると、冷静ではいられまい>」

「<そこで、第三者的な達位置にいる俺の出番、と。なら、今度は五百、いや五百五十頁になったら見せてくれ>」

「<承知した。残り百頁ほどなら現れてもおかしくはないだろう>」

「<・・・・・・そうだな>」

 

シグナムはそう言うが、俺は少々疑いつつある。

闇の書の性質を考えると、明らかに持ち主が破滅する仕組みが見て取れる。

完成させたときに何かが起きる可能性はゼロではないだろう。

 

(だけど、それをシグナム達に伝えるべきか?現状、こいつらにとって唯一の希望を砕くだけの根拠が俺にある、と言えるか?)

「<他に何か気になる点はなかったか?>」

「<っ>」

 

シグナムに問われ、すぐに我に返るが、シグナムは訝しげに見つめた。

 

「<どうかしたのか?>」

「<いや、何でもな・・・・・・いや、そうだな・・・・・・。これを聞くかどうかは悩むんだが、この際だから聞いておく。もしかして、シグナム達は闇の書が完成したらどうなるか、知らないのか?>」

「<・・・・・・それは>」

 

問われ、シグナムは僅かに表情を歪めた。

 

「<どうなんだ?>」

「<・・・・・・雄一の言うとおりだ。さらに言えば、我々は闇の書の完成に立ち会った記憶がない>」

「<何?>」

 

シグナムの言葉に、眉をひそめる。

闇の書の完成のために手足となる彼女たちが完成をみたことがない。

それが指すのは、完成したことがないか、完成と共に何かがあるのか。

前者で考えつくのは、例えばシグナム達が打ち倒され、闇の書の主が拿捕されるか殺される場合。後者なら、まだ解析されていない部分に眠っているかもしれない術式が害をなすか、守護騎士プログラムは完成と同時に終了する場合、といったところか。いずれにしろ現状を壊すような何かがあるのだろう。

それが、何か。

思いつくのは、あの仮面の男達。

そう言えば、ここしばらくあいつらの視線を感じていないような。

闇の書の完成を望むようなことを言っていたが、こちらの持っていない情報をやつらは持っているのか。

だとしたら、

 

(次に姿を見せたら、確実に吐かせるまでだ)

 

仮面の男達に改めて敵意を再燃させる。

すると、

 

「ふぅ、仕込みはオッケーや!」

 

元気のいい声に振り返ると、鍋に蓋を被せて汗を拭うはやて。

今更ながらに、漂ういい匂いに気がつき鼻を鳴らすと、出汁の香りが鼻を抜けた。

 

「はやて、メニューは?」

「おでんや! 美味しいから楽しみにしとってな!」

「それは楽しみだ」

 

はやての楽しそうな様子に期待が高まる。

秋も深まってきていることだし、さぞ旨いことだろう。

 

「はぁ、いい匂い~。はやて~、お腹減った~」

 

ふやけた声に、視線を向けると机に突っ伏したヴィータが顔を向けて鼻を動かしている。

 

「まだまだ。このまま置いといて、お風呂入って出てきたくらいが食べ頃や」

「うぅ、待ち遠しい・・・・・・」

 

はやてが苦笑しながらいうと、ヴィータは再び突っ伏した。

そこに、シャマルが小鉢に入った何かを差し出した。

 

「ヴィータちゃんとシグナムと雄一君はこれでも食べて繋いでてね。はい」

 

同じく、小鉢が俺達の前にも。

 

「・・・・・・これは?」

「私が作った和え物よ。タコとワカメのゴマ酢和え」

「「「・・・・・・」」」

 

もしや、と思いつつシグナムがした問いに返された無情な言葉。

思わず黙り込み、その小鉢を鋭く睨む。

見た目は問題なさそうだが。

 

「・・・・・・大丈夫?」

「大丈夫って!?」

 

ヴィータが思わずこぼすと、シャマルが勢いよく振り返る。

だが無理もあるまい。

何しろシャマルの料理は、

 

「お前の料理はたまに暴発というか、深刻な失敗の危険が」

「見た目に騙されんだよな」

「一応今回は、それほど複雑な工程も味付けもないと思うけど、な」

 

シグナムとヴィータがこぼした評価に、俺も苦笑しながら肯定する。

だって、その暴発を体験した身としては、正直避けたい。

そう思っていると、ふと安全性を示す一番の根拠に気がついた。

 

「いや。待て、シグナム、ヴィータ! 今回は安全だと断言できる!」

「なんだって!?」

「それはどういうことだ、ユウ!?」

 

驚く二人に答えず、その『根拠』を指さした。

その先には、

 

「え? ザフィーラがどうしたの?」

 

分からずシャマルが首を傾げる。

だが、

 

「あ!?」

「まさか、そういうことなのか!?」

 

それに気がついた二人が息をのんだ。

そう、その理由は、

 

「それは、ザフィーラが毒に当たらずこうして無事にいるからだ!!」

「「な、なんだって!?」」

「・・・・・・何故そうなる?」

 

大げさに驚く二人も含め、ザフィーラが白い目を向ける。

その視線の白さに、目を泳がせる。

 

「いや・・・・・・深い意味はないんだが、こういう話を知っているか? 炭坑で働く人は、一緒に、カナリアを連れていたらしい。炭鉱にはガスが溜まっていることがあってな。体の小さいカナリアに異常があればすぐに逃げられるように、って話だ。より体の大きい人間なら逃げられるということらしい。つまり、いつも毒見役をさせられるザフィーラが無事なら、それは安全だといえる、んじゃ、ない、かなぁ、と」

 

何となく視線を逸らしながらいうと、ザフィーラの視線の圧力が強まるのを感じた。

その圧力に冷や汗を流していると、救いの女神が現れた。

 

「シャマルの料理もだいぶ上達してるし、平気やよ。さっきウチも味見したから」

 

はやてが洗った手を拭きながらリビングに戻ってきた。

 

「なら安心です」

「いっただっきまーす!」

 

はやてのお墨付きにあっさり箸を伸ばす二人。

 

「あ、俺も」

 

俺も箸に手を伸ばそうとして、その腕を掴まれた。

その腕を辿ると、人間形態になったザフィーラが。

 

「お前はこっちでゆっくりと話そうか」

「ちょ、ちょっと待とうか!? さっきのはあくまで客観的事実を述べただけであって、決して悪意あるわけではなくて」

「ああそうだな。シャマルとも話をしなければいけないか。二人ともちょっと来てもらうぞ」

 

もう一方の腕でシャマルを捕まえながら淡々と言うザフィーラ。

その抑揚の無さに反して、その拘束はびくともしない。

 

「え、何? 何をするつもりなの!?」

「なに、少し話をするだけだ」

「その『話』が別の字に聞こえるのは俺だけか!?」

「さぁ、逝こうか」

「「やっぱり、字がおかしい!!」」

 

 

「・・・・・・」

「なんで箸を置くんだ、シグナム?」

「いや・・・・・・あれを聞きながらではさすがに食欲が・・・・・・」

「・・・・・・それもそうだな」

 

戻って来たときに聞いたら、二人は黙って手を合わせていたらしい。

それより、助けてくれよ。

 




・ジェノバ=ジェノワーズ(女)
 ヴァレンシュタイン家医師兼庭師。顔の半分を仮面で覆い、残る半分には道化のメイクを施している少女。夏場などにはそのメイクが崩れ地獄絵図のようになることから、『週間契約者』という雑誌で行われたランキングの一つ『一緒に歩きたくない契約者』で堂々の一位を獲得した。若くして、博士号を獲得した才女だが、若き日にミスを犯し、そのショックで<デル・ドーレ>に取り憑かれた。対価の影響で、極度の対人恐怖症となるが、契約者相手には、恐怖心を抱かずかつてマルクと行動を共にしたこともあった。その際、些細な擦れ違いで別れたが、ロックウォールで再会し、紆余曲折をへて屋敷へ。
 能力は「血を変性させる」ことで得られる身体能力と回復力。それを利用して重量武器を振り回す。しかし、その対価は「普通の食事を受け付けない」こと。料理はもちろん水でさえ彼女の体は受け付けない。そんな彼女が唯一口にできるのは血液のみ。そのため、「吸血姫」と呼ばれるようになる。彼女からは人は、壊れやすいのに食欲を刺激されるものであるため、遠ざけるようになった。「契約書」の影響で食事ができるようになるが、味覚異常を起こすようになり、アイシャの作る暗黒物質を美味と感じられる。
 屋敷で唯一、オウマの存在に気がつける人物でもある。

・オウマ(男)
 ヴァレンシュタイン家従僕。ジェノバと共に屋敷にやって来た。カナメと同郷。儀式に向かったカナメを追って洞窟に入ったが、儀式に失敗し実体を失ったカナメを、カナメと気づかず斬ってしまい、そのショックで<憑黄泉>と契約した。能力は<姿を消すこと>で姿を消すと<クフ・リーン>でも捉えられない。対価は<認識>で、出来事を記憶することができない。そのため、刀を巡り対立したカナメを、そうとは気づかず再び斬ってしまい、マルク達と敵対した。
 屋敷に来た彼は、「契約書」の影響で極端に影が薄い。それは、屋敷の住人でも普段は存在を忘れ、電話越しでもすぐには気がつけないほど。ドミニクでさえ、薄っすらとしか気がつけない。ただし、その影の薄さゆえに、相手の情報にも掛からず、懐刀と勝手に相手が勘違いする。
 武器は、鞭剣という連結刃。<憑黄泉>と合わせると、何処から刃が飛んでくるか分からず、強力な武器になる。また、中に仕込まれているワイヤーを調整することで、槍のようにも使える。ただし、その機巧の複雑さから壊れると修理が大変でもある。
唯一自分に気がついてくれるジェノバに恋心を抱いている。
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