日頃の御愛顧、真にありがとうございます!
今後も、拙作と宜しく御付き合いください!
では、本編どうぞ!
「風呂の温度設定を間違えた?」
「えぇ~」
ヴィータの呆れたような声を聞きながら、浴室へ向かい、浴槽に手を入れてみると確かに冷たい。
リビングに戻ってそれを伝えると、皆は一様にため息をついた。
「・・・・・・沸かし直しか」
「そやけど、このお風呂の追い炊き、時間かかるからなぁ」
シグナムが腕を組んで言うと、はやてが否定材料を挙げる。
「あ、そうだ!」
すると、ヴィータが名案とばかりに言った。
「シグナムさ、レヴァンティン燃やして水に突っ込めばすぐに沸くんじゃ」
「断る」
「・・・・・・即答かよ」
ヴィータの迷言を斬り捨てるシグナム。
それはそうだろう。
自分の相棒を風呂炊き棒にしろなんて言ったら、断られない方がどうかと思うぞ?
はやてを見ると、はやても苦笑している。
ふと、見られていることに気がついたのか、はやてと目があった。
その視線をどう勘違いしたのか、腕を組んで唸るはやて。
「うーん、闇の書のマスターらしく、私が魔法でなんとかできればええんやけど」
「炎熱系なら私だが、微妙な調整は難しいな」
「火事とか起こしたら洒落にならねえし」
同じく、シグナムとヴィータが唸っていると、はやては何かを思いついたのか目を輝かせた。
「せや! 雄君、確か鳥の形をした火を出せたやろ? あれ風呂に突っ込ませたら温まるんやないかな?」
・・・・・・はやて。発想がヴィータのものと同レベル・・・・・・。
気を取り直して、はやての案を却下する。
「無理。あれって見た目炎だけど、一応爆弾だからな。湯が吹き飛ぶだけならまだいいけど、最悪風呂場が吹き飛ぶぞ?」
もちろん嘘だ。
<キー・アーン>はそこまで使い勝手は良くなく、破裂させるまで僅かにタイムラグがあり、破裂するまではただの炎の固まりでしかない。
なら、はやての言うような使い方もできるかもしれないが、蒐集の影響で魔力がない今は試すことはできない。
それに、蒐集を禁じているはやてにそのことを気づかれるわけにはいかないので、もっともらしい理由をでっち上げるのだ。
思惑通り、はやては案を引っ込めた。
「それはかなわんな~。それやったら、もう一つの案や! シャマル!」
「はい?」
「ポストにあったチラシの束、とっといてあるか?」
「? はい。今週の分だけですけど」
「ちょう持ってきて」
はやての意図するところが分からず、首を傾げながらシャマルはチラシを取りに行き、すぐにチラシを持って戻ってきた。
それを受け取り、はやてはチラシをあらためると、目的のものが見つかったのか、笑顔で差し出した。
それは、
「海鳴スパラクーア、新装開店?」
「記念大サービス?」
首を傾げるシグナム達に、スパとは何か、そして、この施設の設備を説明する。
説明するにつれて、特にヴィータやシャマルの目が輝いていく。
「スパに皆で行こうってことか?」
「そうや、そんでここ見て」
「新装開店で割り引き、団体客はさらに割り引き? 剛毅なものだね」
「これはもう行っとけ、いうことやないか! なぁ皆!」
「「はーい!!」」
はやてに乗せられて、ヴィータとシャマルが手を挙げるが、シグナムは苦笑、ザフィーラは黙然としている。
「? 我が家で一番のお風呂好きが、なんや反応悪いな?」
「い、いえ、その」
はやてに問われ、僅かに目を逸らすシグナム。
はやても怪訝に思ったようだが、ヴィータやシャマルに施設について質問を受け、そちらに対応している。
「ザフィーラも雄君も行こ! ザフィーラは人間態で普通の服を着ればええし、雄君も一人やなくなるからええやろ?」
男勢のことも考えてくれたはやてには悪いが。
視線をザフィーラに向けると、彼は首を横に振った。
「お誘い誠にありがたいのですが、私は留守を預からせていただきたく」
「え?」
断られるとは思っていなかったのだろうはやてがきょとんとする。
「夕餉の見張りもございますゆえ」
「ていうか、ザフィーラはお風呂苦手だもんな」
「・・・・・・」
「という訳で、俺も留守番かな」
ヴィータの補足にザフィーラは再び口を閉ざした。
それに乗じる形で、俺も断る。
「ん・・・・・・それやったら、ザフィーラ一人残してくのも可哀想やし、雄君連れてっても、男湯で一人になってまうしな?」
「そうだな。さすがに一人男湯にいって、皆があがってくるのを待っているのは辛いものがあるし」
「そうか? それなら、しゃあないかな。ほんなら、留守番頼むな?」
「御意に」
「ああ、のんびり本でも読んで待ってるさ」
すまなそうなはやてに応えると、はやても気持ちを切り替えたのか、皆に指示を出していく。
「ほんなら皆、着替えとタオルを持ってお出かけの準備や!」
「「おー!!」」
「シャマル、私の分も頼む」
張り切って荷支度に向かうはやて達を見送り、リビングに戻る。
すると、
「なぜ、お前も残った?」
「シグナム?」
シャマルに用意を任せて残っていたシグナムがいぶかしげな目を向けていた。
「先ほどの理由は嘘ではないだろうが、全てではあるまい? 一体どういうつもりだ?」
それを聞くために残ったのか。
「そんな大した理由じゃない。今の俺は魔力がないから戦闘じゃ足手まといだ。もし、はやてを連れた状態で管理局と戦闘になったとき、はやてを守って俺も守られるようなことになったら不味い」
「・・・・・・そうか。すまない、お前を疑ってしまったな」
嘘がないことを悟ったのかあっさり警戒を解くシグナムに肩をすくめる。
「しょうがないさ」
<フィン・ターン>の能力は既に、皆に話してある。
そのときは、予想に反して強い拒否を示すものはいなかったが、シグナムやザフィーラは僅かに懸念しているらしい。
「実際、密通を疑うには十分な代物だからな、これ」
「ああ・・・・・・もちろん、お前はそんなやつではない、と分かってはいるんだが」
顔をしかめるシグナムだったが、正直その警戒がありがたい。
いつ、仮面の男がまた暗躍するか分からないのだ。
警戒をしていて損はないだろう。
『シグナムー、準備できたわよ!!』
「ああ、すぐ行く! では、あとは任せた」
シャマルの声に答え、立ち上がるシグナムが手を差し出したので、応えて手を伸ばす。
お互いの手を固く握った。
「ああ、ゆっくり楽しんでくるといい」
「ああ。ザフィーラ、今夜の蒐集は深夜だ。お前も少し寝ておくといい」
「心得た」
「そうだ。それなら、それまで闇の書を貸してくれないか? 今のうちにもう少し調べてみる」
「分かった。シャマルに伝えておく」
そう言ってリビングを出て行くシグナムについていき、玄関で皆を送り出し、リビングに戻る。
戻ったとき、丁度テーブルの上に闇の書が転移してきた。
「いいタイミングだな。さて」
『どうするつもりなのかね?』
手にとり、パラパラとページを捲ると、エルミナが尋ねた。
そうだな・・・・・・。
「エルミナ、取り込んだページの解析はどれくらい進んでいる?」
『およそ七割、といったところか。それがどうした?』
「なら、その処理を一時停止。今度は闇の書自体の解析をしてくれ」
闇の書は持ち主に利を齎す類の魔具じゃない。
俺の予想が正しければ、闇の書にはさらに大きな爆弾が眠っている気がする。
それを早く見つけなければならない。
「解決法が見つかったときには手遅れなんてごめんこうむる。できれば、こっちを優先してくれ」
『了解した。ただし、少々時間がかかると思うが、構わないかね?』
「ああ。その間の暇つぶしはあるから」
『? そういうが手にはほんの一冊も握られていないようだが?』
エルミナの言うとおり、何か道具を持ってきたわけではない。
「ちょっと、戦術を変えようと思ってな。もっと、こっちの魔法を使えるようにしなきゃならない」
『ほう? どういう心境の変化かね?』
「前から思っていた。はやて達の側につくということはなのは達に武器を向けることになる。そのとき、非殺生設定のない精霊を使ったらどうなるか。考えるまでもないし、それは避けなきゃならない」
『だが、それではいざというとき、すぐには動けないと思うが?』
エルミナの懸念ももっともだろう。
だが、
「大丈夫。何も、精霊を絶対に使わなくする、ってわけじゃない。精霊を使うことで状況を打開できるなら躊躇うことなく使うさ」
それに、魔力がない今では実践することができないのだから、現状の感覚が薄れる心配は机上のものでしかないだろう。
『・・・・・・そうかね。なら、私から言うことはない』
それっきり、口を閉ざすエルミナ。
見れば、ザフィーラも寝息を立てている。
俺はザフィーラに毛布をかけると、なのは達の魔法を思い返し、使えそうなものをピックアップし始めた。
・ヨシュア=ヴィルヘルム[男]
ラチナス神聖国オルダー教枢機卿。エルミナの婚約者であり、その婚約を拒否しようとやってきたエルミナに婚約を迫ったことで、マルク達と敵対した。<ブーリ・クリウ>を使った予知能力で枢機卿まで上り詰めた。能力は戦闘向きではないが、指揮官としては逸材で、初戦ではリーン・アッシュを指揮してマルクを圧倒した。
元は、貴族と庶民の合いの子で、異母弟グラハム=ヴィルヘルムの使用人として育ったが、とある事件を利用し、グラハムとして入れ替わった。その真実を知るジェノバを殺そうとし、マルクと戦ったが敗北。秘密がばれ失脚した後、追われているところをエルミナに小間使いとして屋敷に匿われることに。手段はともかく、エルミナを思う気持ちに偽りはなく、その後、エルミナを助けるために力を振るった。
予知能力と勘違いしているが実際は『選択した未来の先を見る』ものであり、見える未来はリカルドのもののように不可避のものではない。
対価は不明。エピローグでは、エミリオの従者となっていた。
・リーン[女]
ヴィルヘルムの護衛の一人。能力に戦闘能力がないため、攻撃には銃を使っていた。<フィン・ターン>と契約し様々な人物に擬態できるため、ヴィルヘルムの影武者をしていたが、肉体が変わるだけなので服装は着替えなければならない。対価は「性別の意識」。対価のせいか、エルミナへの婚約に執心するヴィルヘルムが理解できない。自分の特技は演じることであるとし、本人も演劇の道を志す。その擬態は<アルス・マグナ>が騙されるほどで、一見して気づくことはほぼ不可能。ただし、それは偏に彼女の観察力によるものか?
彼女の素性は、ヨシュアの義理の兄妹であることが作中で明らかになっているくらいだ。
エピローグでは見事舞台の主役を射止めたそうだ。
・アッシュ=ハザード[男]
ヴィルヘルムの護衛の一人。ハゲ。ヴィルヘルムを探るために潜入してきたマルクと交戦した。その際、マルクは女装していたため、女と思いこみ求婚するが、男と暴露してもなおも求婚する筋金入り。
近接型で、武器に手甲を用いる。精霊<フェル・ディア>の「触れたものを劣化させる」能力を併用した格闘戦は相手の防御をはぎ取る厄介なもので、精霊にもダメージを与えられる強力な相手のはずが作中では噛ませ犬ポジションの哀れな男。ヴィルヘルムの逃亡を幇助し安否不明。
対価は「発汗」で体温調節ができないため、戦闘などで体温が上がったときには水を被って冷却していた。