ちょっと原作三話の部分で難航していますので挟みます。
神社の一件が刻んだ溝は大きかったらしく、なのはは俺を避けるようになっていた。
学校などではアリサ達に気づかれないように振舞っているが、そうでなければ話しかけても逃げられる。
もっともアリサやすずかは、何かあったのではないか、と気がついているが、相談してくれるのを待っているのだ、とこっそりと原因なのではないかと睨んでいる俺に教えてくれた。
そんなある日。
「プール?」
なのはの様子がおかしかったからアリサに確認してみると、放課後プールに行くのだという。
「そそ、バス通りに新しいプールができたって話があったでしょ? そこに行くことになってるのよ。あんたも誘ってたと思ったけど?」
「誘って?」
アリサの疑問に、俺も心当たりがなく首を傾げる。
「心当たりがないんだが?」
「おっかしいわね・・・・・・まぁいいわ。あんたも来なさいよ! どうせ暇でしょ!」
「ところがどっこい、残念ながら俺はパス」
何でよ! と騒ぐアリサをどうどうと宥めつつ説明、
「あたしは馬か!」
「そこに喰いつくのか!?」
気を取り直して説明。
「ちょっと調べなきゃならないことがあって、それに時間を割かなきゃいけないんだよ。ちょっと急ぎだから、後回しもできないし」
「それなら、まぁしょうがないわね」
渋々ながら納得したアリサは別の場所で喋っていたらしいなのはとすずかに合流しに行った。
「どうだったの、アリサちゃん?」
「駄目よ、すずか。そもそも、あいつ今日はじめてプールの事知ったみたいだったし。もう予定があるみたいだけど、こっちのミスかもしれないから無理は言えないわ」
「そっか・・・・・・残念だね」
すずかは残念そうに言うと、こっちに手を振ってきた。
こっちからも手を振り替えしてやると、こちらを見るなのはと眼があった。
なのはも残念そうにはしているが、僅かに喜色が覗いている。
それに気がついた、アリサとすずかから何をしたのか、という視線が向けられるが、応えるわけにも行かず肩をすくめるのみ。
ただ、なのはの様子に、自分の選択の結果でありながら、ため息をつかずにはいられなかった。
sideなのは
「雄一と何かあったの?」
放課後、すずかちゃんの家のメイドさん、ノエルさんの運転する車で私達はプールへ向かっていた。
そのとき、アリサちゃんに言われた事に私は不覚にも身体を硬くしてしまった。
それでも、
「な、何もないよ? 気のせいじゃない、かな?」
どもっちゃった気もするけど、言い切る。
大丈夫だからアリサちゃん達に心配をかけちゃいけない。
その思いが通じたのか、アリサちゃんは「そっか・・・・・・」とだけ言うと、
「それよりもプールよ、プール! ああ、早くつかないかしら?」
別の話題に移ってくれた。
「楽しみだね」
「うん!」
すずかちゃんも頷いていて、私も楽しもうと意気込んでいた。
だから、
「・・・・・・なのはの馬鹿。ちゃんと相談くらい、しなさいよ」
アリサちゃんが言っていた事は耳に届かなかった。
sideout
『よかったのか? おぬしさえよければ遊びに行ってもよかったのじゃぞ?』
「そうはいっても、最悪の場合なのはだけじゃなく、<クフ・リーン>のいってた敵も相手にしなくちゃいけないんだ。精霊が何を操れるのか、何ができるのか、カナメのサポートするこっちの魔法がどういうものか、確かめておかないと」
今日プールを断ったのにはそういう理由もあった。
精霊の能力も一部しか使えていないしこっちの魔法に至っては封印以外、バリアジャケットという衣装すら使っていない。
『まあよかろ。それで、どこでやるのじゃ?』
「できるだけ広くて人目の無い所、か? そういう場所あったかな?」
心当たりを探していく。
その最中、ふとカナメは呟いた。
『いちいち探さんでも、結界を張ってそこを切り取れば簡単にできると思うぞ?』
「それを先に言え!」
場所を移して郊外の山の中。
「さすがに此処なら広さも十分だろ?」
『うむ。なら始めるぞ、「結界」展開!』
カナメの言葉に魔方陣が展開し、溢れた光に触れたものが『止まった』。
「これは、止まってるのか?」
『この辺りを切り取った。これで、この中で何をしても悟られぬ。ただ結界を探知される可能性はあるが』
「なのはに要らん誤解をさせる前に何とかするか」
『そうじゃな。なら、能力と魔導のどちらから始めようかの?』
―――まず、能力でいいだろ。こっちは特に消耗するものも無いし―――
『それもそうじゃな』
―――ただ、バリアジャケットは使っとけ。俺も見てみたいし―――
「お前、実はそっちが本音なんじゃないか?」
―――・・・・・・―――
さっと視線を逸らすように横を向いた影をジトッと睨む。
「・・・・・・まあいい。それでカナメ、そのバリアジャケットを使うにはどうすればいいんだ?何か呪文みたいなものを唱えるとか」
『いや、おぬしへの認証は既に済まされているから必要ない。ただ、セットアップといえば済む』
「はいよ。カナメ、『セットアップ』!」
宣言すると、服が切り替わった。
聖祥の白い制服から変わったのは、上質な光沢のある生地が使われたであろうスラックス、ノリの利いたパリッとしたシャツと、腰の辺りで裾が二つに分かれて延びている黒いジャケット。
「・・・・・・って執事服じゃないか、コレ!?」
『うむ、まごう事なき執事服じゃな』
―――あはっははは! ヒィーヒヒヒヒ! は、腹、腹痛ぇ! アハハハハ!―――
「うるせえぞ、<クフ・リーン>!」
ゲラゲラ笑う<クフ・リーン>に怒鳴ると、改めて己の格好を見る。
執事服だけでなく、両手には白い手袋が嵌っている。
さらに、
「刀、か?」
手に提げた鉄の塊を持ち上げる。
カナメが変化したものらしい、その刀は怜悧な雰囲気を隠すことなく晒していた。
柄頭から短い鎖が伸びており、懐中時計が下がっている。
「まさか、杖じゃなくて刀になるとは」
『この世界の魔導は必ずしも杖とは限らぬ。むしろ武器の形状が多いの』
「へえ。それじゃ、バリアジャケットも着たことだし、本題の能力の方に移ろうぜ」
―――いいぜ。なら、相棒。教えた能力は覚えているか?―――
問われ、確認もこめて口にしていく。
「まず、<クフ・リーン>は影を操れるんだよな。ただし、制約として能力を使うときは足を止めなければいけない」
―――間違いじゃないが一つ訂正だ。正しくは、「足を止める」んじゃなくて「足の位置を固定」するんだ―――
「どう違うんだ?」
―――お前が足を止めてても、お前が乗り物に乗っている場合、電車や車、飛行機のなかでは使えないってことだ―――
「以外に使い勝手が悪いな。それで、<バーラ・ルー>は視界に映った物を灰に変える広域破壊系の能力。<ルー・グー>は遠距離砲撃か?」
―――そうとも限らねえよ。<ルー・グー>は斥力と引力を操っている。だから、遠くの物を引き付けることもできるし、遠距離砲撃もできるってことだ。ただし、制約でどちらか一つの力しか使えない。斥力を使っている間は引力が使えない、みたいにな。<バーラ・ルー>はそれで間違っていないんだが、人探しにも役立つ。元が赫鷲っていう鳥だからか、制約として「夜間は能力が作動しにくい」―――
「・・・・・・鳥目ってことか?」
まさか、と思って聞くが、
―――たぶんな。あとは?―――
「え、っと。<デル・ドーレ>は身体能力強化。<沙波>は壁抜け。<ハヌ・マーン>は心を読む能力だったか?」
―――ん、<デル・ドーレ>は正しくは血液を変性させているんだ。それが作用して、頑強になっているだけだ。唯の強化で腕がくっつくかよ。<沙波>は間違っている。正しくは「液状化」だ。一度形をばらしているからああいう真似が出来るってこと。<ハヌ・マーン>だが・・・・・・こいつについては一応言っておく。使いすぎるなよ―――
「わかってる。心を読むことに慣れるなってことだろ」
だが、<クフ・リーン>は首を横に振った。
―――違う。<ハヌ・マーン>の本領はそこじゃない。こいつは思考を読むだけじゃなく、思考を操れる―――
「は? つまり、止まれってしたら本当に相手は止まるってことか?」
―――そうだ。もちろん、「死ね」って命じたら「死ぬ」。そういう力だ―――
「な、なんだよそれ・・・・・・。そんなのがあるのかよ」
自分の中に思わぬ能力があることに今さらながら血の気が引いていく。
まかり間違えて、その能力がなのはやアリサ、すずかや真一などの近しい人に作用したら・・・・・・。
『安心せよ。そうならんために私と<クフ・リーン>がおる』
―――俺達がそれぞれでリミッターとして機能するから、安心しろ―――
二人も言葉に、落ち着きを取り戻し、話を戻す。
「それで、あとは<アルス・マグナ>と・・・・・・あとは?」
『待て。忘れてやるな、哀れだから』
―――<憑黄泉>だな。こいつは姿を消すことができる。一切の痕跡を残さないから隠密作業に便利だな―――
「あ・・・・・・」
そういえばいたな、そういうの。
―――まあいいが一度やってみろ。一度使ってみれば忘れないだろ―――
「そうだな。まずは」
そして、<憑黄泉>を使ってみるのだった。