リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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レポート完成!!
どうせ、すぐ次のレポートがくるんだろうけど、それまでは羽を伸ばすぞー!!
では本編、どうぞ!


第七十一話 連携と急転する事態

「でぇりゃあああ!!」

 

轟音をたてて、ヴィータが振るったハンマーが亀の甲羅に打ちつけられる。

だが、甲羅は持ち前の堅さで、その威力に耐えきった。

激しい音を立てて、ハンマーが弾かれヴィータの体勢が崩れる。

 

「ちっ!?」

 

衝撃にタタラを踏んだヴィータが舌打ちした、その隙をつくようにマンティコアの一匹が飛びかかった。

だが、その爪がヴィータを捉える寸前、

 

「せぃっ!!」

 

頭上から振り落とされた踵が、マンティコアの脳天を打ちつけた。

もんどりうったマンティコアはそのまま墜落していく。

もっとも下は海だから、墜落死はないだろう。

獣の頭部を蹴り抜いたザフィーラの傍、雄一は戦果を確認せず次の獲物めがけて肉薄した。

 

「せぇりゃあ!!」

 

迂回しようと側面を見せた一頭の腹に肘打ちが突き刺さる。

獅子の強靱な筋肉を、<ダー・グッザ>で強化した筋力で貫く。

打ち抜かれたマンティコアは、苦鳴を漏らしつつ、やはり墜落していく。

だが、

 

「やっぱり減らねえな」

 

眼下の亀の甲羅から新たに這い出てくるマンティコアの姿にいい加減辟易とした様子で雄一が吐き捨てる。

初めは大漁を喜んでいたヴィータも顔をしかめている。

 

「おかしいだろ・・・・・・何匹隠れてんだよ?」

「さあな。けど、本体を狙おうにもあの図体だし、な!」

 

瞬間、一気にトップスピードに持っていくと、亀の頭部めがけてエルミナを振り下ろす。

いつものように、<クーア・ルンゲ>で脳震盪を起こすのが狙いだった。

だが、亀は体の鈍重さに反してその頭部で雄一を捕捉してみせた。

飛び回る羽虫を噛み殺さんと、顎が迫る。

 

「ちっ!」

 

雄一は間一髪、頭部をよけると、エルミナを銃に変えて首に撃ち込む。

着弾した場所に黒い花が咲き、周囲に肉を引きちぎった。

亀が悲鳴を上げ、血が飛び散るのを舌打ちながら睨む。

 

(駄目だな。<ダー・グッザ>じゃ殺しちまう。けど、他のじゃ、あの甲羅を撃ち抜けない、か)

 

撃ち抜いた所であの巨体だ、そうそう命を落とすことはないはずだ。

駄賃とばかりに、周囲を飛び回るマンティコアを数匹撃ち抜いて溜飲を下げる。

しかし、甲羅から這い出てくる新たなマンティコアを目にすると、苛立ちよりも、困惑が先立った。

 

「それにしても、数がおかしい気がするけど・・・・・・何か妙だな? バインド!!」

 

飛びかかってきたマンティコアの翼と足をバインドで縛り上げる。

どちらで空を飛んでいたか知らないが、飛ぶ力を失い落ちていくそれを見ていた雄一は、妙なことに気がついた。

視界の違和感に、もう一度確認する。

 

(・・・・・・おかしい。俺達はもちろんザフィーラも結構な数をやっているはず・・・・・・それなのに、海に浮いている個体が少ない?)

 

浮いているマンティコアが明らかに減っていた。

力尽きて沈んだのか、と思っていると、先ほど落としたマンティコアの姿が崩れた。

崩れたマンティコアはそのまま水に溶けて消えていった。

すると、甲羅の隙間から新たなマンティコアが這い出てきた。

 

「そういうことか!」

 

それを見て、ようやく雄一はカラクリを理解した。

すぐに、ヴィータ達に念話を繋ぐ。

 

「<ヴィータ、ザフィーラ!! あいつらのほとんどは水を使った偽物だ!>」

「!? なるほど、どうりで手応えがねえわけだ」

 

やっと違和感がしっくりきて笑みを浮かべるヴィータ。

だが、ザフィーラは疑問を示す。

 

「しかし、先ほど倒した個体はコアを摘出できていた。偽物なら、こやつらにはコアがないはずではないのか?」

「おそらく、さっきまで外をうろついていたのは本物だったんだろ。この亀が動いたのをきっかけに甲羅の中に引っ込んで、偽物を作り続けてるんだと思う」

「それならば、先ほどから奴らの数が減らないことにも筋は通るな・・・・・・なら、こいつらを一掃するとして、この中からそいつらを識別する方法はあるか?」

「・・・・・・ちょっと思いつかないな」

 

先ほどからの様子から察するに、こいつらの本体はあの甲羅の中から動いていないはず。

この場にいるのは、全て偽物と考えていいだろう。

それを伝えると、ザフィーラは手甲を構えた。

 

「ならば、纏めて薙ぎ払おう。お前達は本体を叩け」

「けど、あの甲羅を打ち抜くものがあるのか?」

 

問うと、ヴィータが不満そうに鼻を鳴らした。

 

「鉄槌の騎士を甘く見るんじゃねえ。あの程度の堅さなら、しっかりとぶち抜いてやる」

「分かった。止めは任せろ」

 

作戦は固まった。

ザフィーラが両手の手甲を交差させる。

 

「盾の守護獣の力、括目して見るがいい! 鋼の軛!!」

 

ザフィーラの魔力が膨れ上がり、海面から延びた白い杭がマンティコアと亀の四肢を貫いた。

苦鳴が木霊するなか、ヴィータはカートリッジをロードする。

 

「いくぞ、グラーフアイゼン!!」

<Explosion! Gigant Form!>

 

膨れ上がった魔力に、グラーフアイゼンのヘッドが巨大化していく。

巨大化したグラーフアイゼンを、ヴィータは振り上げ、

 

「轟天爆砕! ギガント・シュラーク!!」

 

一気呵成に振り下ろした。

亀は四肢を踏ん張り、再び受け止めんとする。

グラーフアイゼンと甲羅がぶつかり、一気に甲羅を打ち砕いた。

自慢の鎧を破壊された亀が、悲鳴を上げんと頭部を伸ばす。

それに先んじて、杖を構えた雄一がその軌道に飛び込んだ。

伸びてきた頭部にエルミナを叩きつける。

 

「これで止めだ。沈めろ、<クーア・ルンゲ>!!」

 

叩きつけたエルミナを伝った振動に脳を揺さぶられ、亀の体が硬直し崩れ落ちた。

轟音をあげて、その体に押し退けられた水が大波を作る中、その崩れた甲羅の内から、生き残っていたマンティコアが這々の体で出てきた。

マンティコアが体制を整える前に、その首に、手袋に姿を変えたエルミナから伸びた鋼糸が絡みついた。

 

「お前らも逃がさねえよ。<魔琴>を奏でろ、<クーア・ルンゲ>!」

 

能力で生み出された振動が、手袋から伸びた鋼糸を鳴らした。

糸を鳴らす振動は糸を伝うほどにどんどん膨れ上がっていき、その振動はマンティコアの意識を刈り取った。

ちなみに、この<魔琴>は本来、その振動する鋼糸で、相手を切り刻む技のはずだが・・・・・・。

 

(こっちの方が手加減が効くって・・・・・・)

 

勝ったはずなのに露わになった頭の痛い結果に、額を手で覆いながらため息をつく。

そのため息に、甲羅の無事な部分に腰掛けようとしていたヴィータが振り返る。

 

「何だよ、ユウ。ため息なんかついて」

「いや・・・・・・現実ってのはままならないな、と思って」

「なんだそりゃ?」

 

首を傾げるヴィータ。

その顔には先ほどまでの苛立ちは見て取れないが。

 

「なあ、ヴィータ。さっきは何であんなに怒っていたんだ?」

「ぅ・・・・・・いや、その・・・・・・ええい! こっちの話だ! 気にしてんじゃねえ!!」

「いや、そんな理不尽な!?」

「そもそも、お前の契約ははやてを守ることだろ! そのことだけ考えてればいいんだよ!」

「いや、はやてとの契約内容的に、はやてだけじゃない。ヴィータ達だって(守護対象として)大切なんだから」

「~~~~っ!? お、お前、い、いま、今の!?」

「? ヴィータ、どうした!? 顔赤いぞ!?」

「るせぇ!! 私らは守られるようなやつらじゃねえ! そうだよ、あんな奴ら、私とグラーフアイゼンの敵じゃねえことをお前に見せてやるからな!! 覚悟しておけ!!」

「・・・・・・うん?」

 

なぜ、なのは達に話題が波及したのか分からず、首を傾げる雄一に、赤い顔のままそっぽを向くヴィータ。

 

「何をやっているんだ、あの二人は・・・・・・」

 

両者を見ながら闇の書に亀とマンティコアのコアを蒐集させつつ、ザフィーラは呆れたように呟いた。

 

 

 

 

蒐集できた量が苦労に見合わず少ないことに文句を言うヴィータを宥め、海鳴への転移魔法を起動させる。

魔法が展開しきるまで、雑談に花を咲かせることに。

 

「そういえば、今日の夕飯ははやてが鍋を作るそうだぞ?」

「本当か!? よぉし、すぐに帰んぞお前ら!!」

「ヴィータ、落ち着け。戻るのは足跡を消すために辺りを経由してからだ」

 

献立に目を輝かせるヴィータを呆れながら押し留めるザフィーラ。

両者の遣り取りに苦笑しつつ、今回は練習も兼ねて、雄一が起動させ、

 

転移が完了した矢先、多数のデバイスの矛先がこちらに向けられた。

 

「「「・・・・・・は?」」」

 




なのは達を気にする雄一に、こちらも見て欲しくて頑なな態度を取るヴィータ。
はてさて、どうなることやら。


契約者じゃないけど載せておきます。

・ドミニク=ハーケンス(男)
 ヴァレンシュタイン家家令兼元エルミナとエミリオの教育係。ハーケンス家は元々暗殺者の家系で、その中でも最高傑作とされていた。殺すことに関して、類稀な才を発揮した天才だったが、リカルド襲撃をペインに阻まれ、その身柄をヴァレンシュタイン家に預けられることとなった。その後、執事見習いとして生活するが、度々リカルドを殺そうとして失敗した。
 その最中、ヴィオラに「命を大事にしなければいけない」と言われ、自分の今までに疑問を抱くようになっていった。ある日、彼女の頼みで、先代の精杯の姫である彼女の母親に会うため、教会の施設に侵入した際、影から付いて来ていたペインの企みを打ち明けられるが、彼を破り、彼の代わりに執事となった。
 <アルス・マグナ>の暴走の際には屋敷を離れており、慌てて引き返した彼が見たのは焼け落ちた屋敷と人形と化したエルミナだった。彼女を連れ、財産を処分し、フロアティナへと移るときアイシャを拾って移住したのが始まり。
 それ以来、彼女たちを見守り続けていたが、マルクを始め、様々な使用人が集まるにつれ、過去を清算しようとラチナスに渡ろうとした。その矢先、ペインが来ている事を知り、戻るが事態はすでに終わっており、彼からヴィオラの遺書を受け取った彼は過去に決着をつける。
 <アルス・マグナ>戦後、いつの間にか姿を消していた。
 ただの人でありながら契約者を圧倒できるほど高い戦闘能力を持て、冷静な判断と早撃ちの鋭さは他者の追随を許さない。また、かつて宣教師を、メンバーを一切殺さずに壊滅まで追い込んだ張本人でもある。彼の存在は当時のメンバーにトラウマとして刻まれた。
 ヨハエルの使う鋼糸の技は、かつて宣教師襲撃のとき、グレリオが盗み教えたもの。

・クリス=マルドゥーク(男)
 本名クリストファ=マルドゥーク。マルクの兄であり、かつては彼が憧れていた人物だった。世の全ての女性の笑顔を見ることを生きがいとしており、それが女であれば、たとえ死に行く老婆でも、生まれたばかりの赤子でも全てに愛を注ぐ人物。ただ、その信念は苛烈で「その女性が溢れるほどの財で満たされていて心からの笑顔を浮かべられないなら、その財を全て奪い、または苦しみ続ける体で死の間際にしか笑顔を浮かべられないなら、喜んで銃弾を撃ち込む」というほど。
 女性の心理を理解するためと言って、紅いドレスに身を包み、化粧を施しているため、マルクは兄弟と知られることを避けていた。
 洋菓子を作ることもできるなど、そちらの能力も高いが、彼が得意としているのは、マスケット銃を使った跳弾撃ちだ。ペインをして、「能力者であれば『魔弾の射手』の名は彼のものだっただろう」と言わしめるほどである。しかし、その腕を維持するために行われるのは、「ドミニクへの狙撃」である。ドミニクからしてもクリスは、勘を鈍らせない相手であるため、終わるとよく反省会と称してお茶を飲む仲である。
 宣教師のメンバーであるが、その実は多角スパイであり、様々な立場から狙われる身でもある。
 奇抜な言動だが、その裏にはマルクを守ろうとする意思もある人物。

・アルバ=ディーノ(男)
 ギャングである『ディーノファミリー』の首領。クーランであるが、かつて氏族の村を焼かれた際、片腕と家族を失った。その後復讐するために裏社会に入り、復讐を成功させるが、そこからさらに駆け上がり組織を持つほどになった。
 カリスマのある人物で、彼の傘下にはクーラン・フロアティナを問わず様々な人物がいる。
 かつて、マルクとセリアを雇い、<アルス・マグナ>を狙ってエルミナを襲ったが失敗。その後、エルミナから、<アルス・マグナ>の正体を聞き、一番の協力者と言っていいほどになった。
 氏族の秘宝である、ヴァルチャス<ヌー・アッド>の宿るラピスラズリを持っており、その異能を開放することで、契約者の異能を消し去ることもできる。
 かつて喪った妹を取り戻すために<アルス・マグナ>を求めていたが、その必要がないことを知り、ラピスラズリをセリアに報酬として渡そうとしたが突き返された。
 本名は、アルバ=ウィード。
 セリアとの仲が囁かれるが、その後どうなったかは不明。
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