リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第七十二話 包囲と迎撃

リンディは突然の知らせに目を鋭くし、回線を開いた。

 

「都市部上空にて、捜索指定の対象二名を捕捉しました! 現在表層結界内部で対峙中です!」

「相手は強敵よ! 交戦は避けて外部から結界の強化と維持を!」

「はっ!」

「現地には執務官を向かわせます!」

 

局員の報告にこちらが切れる最大のカードを切る。

なのは達のデバイスは今日修理が完了したばかりだ。

クロノだけで上手くいくとは思っていないが、

 

「それでも、そうあってほしいと思うのは止められないわね」

 

 

 

 

「管理局か・・・・・・」

「でも、チャラいよこいつら」

「身も蓋もねえな。フォローする気もないけど」

 

三人で背中合わせになり、周囲の管理局員を牽制しながら、軽口を交わす。

ヴィータのいうとおり、クロノ達のような一騎当千ではなく数を頼りにするような奴らが相手なら、不味い状況ではない。

ただ気になるのは、

 

(そんなことは管理局側も分かっているはずだよな?)

 

あの強かなリンディさんがそれを分からないはずはない。

だったら、この包囲の裏にはなにが隠されている?

 

「こんなやつら、さっさと返り討ちだ!」

 

ヴィータがアイゼンを構える傍で、俺もエルミナを構えて管理局員の顔を見渡し、

 

「っ!?」

「あ?」

「上だ!!」

 

違和感と感じた強力な魔力に、上空を振り仰ぐと同時に、管理局員が距離をとった。

突然退がった局員に戸惑うヴィータに、ザフィーラが注意を促したその上空、杖を振り上げ周囲に魔力で作った剣を大量に従えたクロノの姿があった。

局員達が陽動であったことに気がついたときにはもう遅い。

 

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」

 

クロノが杖を振り下ろすと、剣は切っ先をこちらに向け一気に降り注いだ。

大規模の魔法に、顔を引きつらせると、グイ、と体を引っ張られた。

代わりに前に飛び出したザフィーラが障壁を展開し、剣雨を受け止めんとする。

剣雨は、降り注ぎ魔力を一気に破裂させた。

爆発の影響で広がった黒煙が視界を遮る。

煙が晴れてすぐに、ザフィーラに安否を問うた。

 

「ザフィーラ!!」

「ザフィーラ、無事か!?」

 

ザフィーラの左腕には何本か魔力剣が突き立っている。

だが、ザフィーラは表情を変えずに応えた。

 

「気にするな。この程度でどうにかなるほど・・・・・・柔じゃない!」

 

ザフィーラが気合いを込めると、砕け散る魔力剣。

彼の健在に改めて、管理強への戦意を練り上げる。

 

「上等!!」

「けど、向こうもこの程度で終わるとは思っていないだろう。何が来るか分からないんだから、警戒はしておけよ、二人とも!」

「はっ、言われるまでもねえ!」

 

ザフィーラに応じて獰猛な笑みを浮かべるヴィータに釘を刺しながら、次弾に警戒を巡らせる。

 

「っ、この魔力・・・・・・転移か!?」

 

その矢先、関知した魔力の先に視線を向ける。

ビルの屋上、そこにいつの間にか立っていた二人。

なのはとフェイトがこちらを見上げていた。

 

「あいつらっ!」

 

ヴィータが視線を鋭くする前で、二人がデバイスを構える。

 

「レイジングハート・・・・・・」

「バルディッシュ・・・・・・」

「「セット、アップ!!」」

 

二人がバリアジャケットを纏うためキーを口にする。

だが、デバイスの展開は、今回はいつもと違った。

 

「レイジングハート・エクセリオン!!」

「バルディッシュ・アサルト!」

<<Drive Ignition>

 

二人のデバイスが展開する。

その形状は今までのものから変わり、しかもケラ首にあるあの機構は、

 

(カートリッジシステム・・・・・・)

「あいつらのデバイス!? あれってまさか!?」

「デバイスを改良してきたか」

 

同じく気がついた二人も顔を険しくする。

もちろん、負けるとは思っていないだろうが、カートリッジシステムの有無による有利はなくなった。

もちろん普通ならば、新しい機構を実戦でいきなり使いこなせるはずはないのだが、

 

(あいつらなら、やりかねんよな)

 

二人の魔法の才能を思い出し痛む頭を押さえる。

すると、バリアジャケットの展開を終えた二人はビルに降り立つと、デバイスを構えず問いを投げた。

 

「えっと、ペインさん、ですよね?」

「・・・・・・そうだ」

 

なのはの問いに、ペインと名乗っていたことを忘れかけていた俺はすぐに取り繕って答えた。

二人はそれに気がつかなかったのか話を続ける。

 

「貴方は何故、闇の書を完成させようとしているんですか?」

「・・・・・・助けると誓った人がいる。そのために必要だと言うのなら、俺はそうするまでだ」

「だったら、私達は手助けできるはずなの!」

 

なのはの言葉にフェイトも同意する。

 

「その人を助けるお手伝いができるはずです。私達は貴方達と戦いに来たわけじゃない」

「あのさ、ベルカの諺にこういうのがあんだよ。『和平の使者なら槍は持たない』」

 

フェイトの説得に、ヴィータは腕を組んで見下ろしながら言った。

言われたことの意図が分からず、首を傾げる二人。

だが、無理もないだろう。

というか、ヴィータさん?

それって、諺というには直接的過ぎませんか?

 

「その心は?」

「話し合いをしようってのに、武器を持ってくるやつがいるか馬鹿、って意味だよ! バーカ!!」

「い、いきなり有無を言わさず襲い掛かってきた子がそれを言う!?」

 

いきなりの馬鹿呼ばわりになのはが言い返す。

というか、初戦の発端はヴィータの奇襲か。

騎士道は何処へ行った?

 

「それに、それは諺ではなく、小噺のオチだ」

 

しかも、諺ですらなかった!?

思わず、白い目でヴィータを見ると、ヴィータは顔を背けた。

空気が一気に緩んでしまった。

その隙をついて脱出できないか、と考えた矢先、轟音を立てて一条の雷が落ちた。

五人の視線が集まる中、立ち上がったのはシグナムだった。

彼女の登場で役者は揃ったという事だろう、

 

「クロノ君、ユーノ君! 手を出さないでね! 私、あの娘と一対一だから!」

「っ、上等だ! 私もお前に勝って、証明してやるからな!?」

「何のこと!?」

 

ギャアギャア言い合う二人はさておき、

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

大して、フェイトの視線はシグナムに向けられていた。

シグナムもそれに応じるように静かに見返している。

 

「あたしも野郎にちょいと話がある」

「・・・・・・」

 

鋭い視線でザフィーラを見上げるアルフ。

ザフィーラも僅かに表情を動かして、彼女を見下ろした。

 

「だったら、俺はそこの二人とやるか」

「くっ!?」

「二対一で勝てると思っているのか!?」

 

別のビルの屋上にいた二人、クロノとユーノを相手取ることに。

何か策を練っていたのだろう、ユーノは顔を険しくし、クロノは威勢よく啖呵を切る。

だが、

 

「逆に聞くが、お前達で捕まえられると思っているのか? 狂い咲け、<ダー・ナーン>!!」

 

地面に手を触れ、命ずる。

その命令に呼応し、足元のコンクリートを破って生え出した蔓が二人に向けて振るわれた。

 

「プロテクション!」

「スティンガー!」

 

だが、ユーノの張った障壁に防がれ、同時にクロノのスティンガースナイプがこちらに牙を剥いた。

 

「<キー・アーン>!」

 

それを鳥型の爆弾で迎え撃つ。

ぶつかる直前鳥を破裂させ、爆風で魔力弾をかき消していく。

撃ち合いながら、俺は一点に足を止めないように縦横無尽に動き回る。

止まれば狙い撃ちになるのが分かっているからだ。

だからこそ、二人の手の動きと視線に集中するあまりそれに気がつくのが遅れた。

次の一歩を踏み込んだ矢先、足を何かが絡めとった。

 

「なっ!?」

「今だ、ユーノ!」

「うん! チェーンバインド!!」

 

間髪いれず、緑色の魔力光を放つチェーンバインドが絡みついた。

 

「やった!」

「さて、お前達の目的は何かは知らないが、捜索指定ロストロギアの所持・管理局員への攻撃で逮捕させてもらうぞ」

 

喜ぶユーノに構わず、油断なくデバイスを向けながら言うクロノ。

だが、

「甘い!蝕め、<フェル・ディア>!」

「くっ!? ブレイズキャノン!」

異変を察したクロノが砲撃を撃つが遅い。

<フェル・ディア>でバインドを劣化させて自由になった手で、すぐに障壁を張って受け止めた。

 

「やったと思ったのに・・・・・・」

「くそっ! これだから契約者ってのは! チートも大概にしろ!!」

「酷い言われようだが・・・・・・さて、仕切りなおしといこうじゃないか」

 

クロノの言い様に苦笑しつつ、俺は再びエルミナを構えると、二人に振り下ろした。

 

 




いくつか用語の説明も。

・空白の契約書
 エルミナ=ヴァレンシュタインが妹、エミリオ=ヴァレンシュタインを救うために作り出したもの。血液を交わすことで成立し、契約した者は模造の対価を返還される代わりに、エルミナの命令に絶対服従となる。その代わり、劣化した能力を使用できるようになり、複数同時の起動も可能である。
 <アルス・マグナ>戦で役目を全うし、<アルス・マグナ>を道連れに失われた。

・<アルス・マグナ>
 かつて、錬金術師が生み出した奇跡といわれたもの。その正体は、信仰のもと膨れ上がった強大な契約精霊。ヴァレンシュタイン家は、オルダー教の祖の血統であり、オルダー教を揺るがせかねないため、その存在を狙われる精杯の姫を守るために揺り籠を展開した。「眠り姫」は、<アルス・マグナ>が契約者を幸せに過ごさせようとして、考え出したもの。
 因果律に干渉することができるが、その強大な力を自ら振るった例は少ない。
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