リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第七十三話 横槍と作戦

「デカブツ、あんたも誰かの使い魔か!?」

「・・・・・・ベルカでは、騎士に仕える獣を使い魔とは呼ばぬ!」

「あぁ?」

 

アルフの拳がザフィーラの張った障壁と火花を散らす中、ザフィーラの言葉の意を問うアルフ。

 

「主の牙、そして盾・・・・・・守護獣だ!!」

「同じような、もんじゃんかよ!!」

 

力を増したアルフの拳に弾かれ、下がるザフィーラ。

その頭上を飛び去る二つの影を見やると、ザフィーラはシャマルに念話を繋いだ。

 

「<状況はあまり良くないな。シグナムやヴィータが負けるとは思わんが、ここは退くべきだろう。シャマル、なんとかできるか?>」

『<なんとかしたいけど、局員が外から結界を維持しているの。私の魔力じゃ破れない>』

 

無常にも、帰ってきたのは不可能という回答。

一人一人の魔力なら、シャマルには遠く及ばない局員達だが、結集して張られた眼前の結界はシャマルの干渉力ではビクともしない。

これを破壊できるほどの干渉力で、シャマルに思いつくのは二つだけだ。

 

『<これを破れるとしたら、シグナムのファルケンかヴィータのギガント級の魔力を出せなきゃ>』

「<二人とも、手が放せそうにない。已むを得ん。あれを使うしか>」

『<分かってるけど・・・・・・っ!?>』

「<? シャマル? どうした、シャマル?>」

 

途切れた念話に、ザフィーラは何度か問う。

さては何かあったのか、と思った矢先、

 

『<・・・・・・ザフィーラ>』

 

シャマルから応答があった。

ザフィーラは安堵するが、ふと、その声が緊張に強ばっていることに気がついた。

 

「<シャマル、何があった?>」

『<例の仮面の男が現れたわ>』

「<っ!?>」

 

 

 

 

『<っ!?>』

 

念話の向こうで息を呑むザフィーラに、シャマルは無理もないと思いつつ振り返って仮面の男を睨んだ。

背後に突然現れた仮面の男は害意が無いように手を揺らがせた。

 

「安心しろ。俺は、この状況を打破する方法を教えにきただけだ」

「・・・・・・信じられません」

 

男の挙動に注意しながら、シャマルは気づかれないように周囲の気配を探る。

雄一の証言では、仮面の男は二人組なのだという。

もう一人が潜んでいるかもしれない。

 

「いいのか? 急がねば、仲間のピンチを防げないぞ?」

「・・・・・・どうしろというの?」

 

下手に拒否し続けて、仮面の男が参戦するという厄介を呼び込むことは避けるべきと判断して、シャマルは仮面の男の言葉を促した。

 

「闇の書の魔力を使って結界を破壊しろ」

「っ、そんなこと!」

 

男が言うのは、収集した魔力を魔力爆撃に変換して、結界に負荷をかけるということ。

そのためにどれだけのページを失うのか、それが少なくない枚数であることが分かるシャマルは強く男を睨む。

だが、男は肩をすくめる。

 

「使用して減った頁はまた集めればいい。さあ、どうする?」

 

男が再度促すと、シャマルは顔を俯け表情を隠した。

仮面の男は、上手くいったと仮面の下でほくそ笑み、

 

「なら・・・・・・逃げます」

「・・・・・・なんだと?」

 

シャマルの宣言に、凍り付いた。

シャマルは、その姿に笑うと転移魔法を展開し何処かへと飛び去った。

残された仮面の男は、仲間をおいて姿を消したシャマルの行動に理解が追いつかずにいた。

再起動を果たすと、すぐに後を追おうとしたが、

 

「そこの怪しいの! ここで何をしている!」

 

デバイスを構えたクロノが行く手を遮った。

仮面の男は、クロノに構っている暇はない、とその傍を抜けようと、身を翻そうとしたその時、

轟音と共に吹き上がった魔力が結界を打ち破った。

 

「っ!!」

「なっ、しまった!?」

 

結界の破壊にクロノが気を取られた隙を突き、一気にその場を離脱する仮面の男。

 

「待て!」

『クロノ君、待った待った!!』

 

怪しい男を追いかけようとしたクロノは、エイミィに呼び止められて足を止めた。

 

「エイミィ!だけど、いまの仮面の男を捕まえなきゃ」

『結界が抜かれちゃったんだから、一刻の猶予もないの! あっちは今回はイレギュラーだったんだから、守護騎士達の方で何か収穫を手に入れて!』

「くっ・・・・・・ああ、分かったよ!!」

 

エイミィの言い分に一応、文句を呑み込み身を翻すクロノ。

その時、三つの魔力反応がそれぞれ散っていった。

 

「しまった!」

『急いで!あと一人だよ!』

「分かってる!!」

 

エイミィに怒鳴るように答えながら、クロノは急いで戻っていった。

 

 

 

 

時間を少し遡り。

仮面の男と対峙していたシャマルは念のために、と雄一に確認を取っていた。

 

『<やっぱり、間違いないのね?>』

「ああ、青い、髪に白、い仮面の怪し、い男、って特徴は押さえてる。そんな、のが何人もいる、とは思えない、から間違いないだろ>」

『<大丈夫?>』

 

心配げなシャマルに、途切れ途切れになりながらも念話を繋ぎ、雄一は気にせず話を続ける。

 

「チェーンバインド!」

「スティンガー!」

「ええい、鬱陶しい!! <ああ、とりあえず、ヴィータのそのギガントってのがアイゼンを巨大化させるやつだっていうなら、さっき使ったばかりだから、連続使用はさせるべきじゃないだろう。シグナムに任せようと思う>」

『<だが、シグナムも手は離せぬだろう。どうするつもりだ?>』

 

そう、シグナムもヴィータもそれぞれの相手と戦っているはず。

二対一をよしとするはずもなく、理由もなく相手を代わるだろうか?

クロノ達を<キー・アーン>で起こした爆風で吹き飛ばしながら、応じる。

 

「<それが作戦なら、シグナムも納得するだろう。それで肝心の内容だけど、俺が一度、二人のマークを切ってシグナムにつく。その時に、管理局が結界の有用性を信じているなら、向こうは結界の外にいるシャマルを押さえようとする筈だ。その隙に俺がフェイ、じゃなくてあの黒い魔導師を>」

『<名前で呼んでいいと思うわよ?>』

「<・・・・・・フェイトを抑えている間にシグナムがそのファルケンを使えるはずだ。一応確認するが、それで結界は破れるんだな?>」

『<あら? 雄一君はシグナムの腕が信じられない?>』

「<分かった。なら、問題ない>」

 

シャマルが少々悪戯心を出すと、あっさり雄一は降参した。

 

「<なら、他に問題はないか?結界が破れたら各自撤退しろよ>」

『<私はどうすればいいかしら? 局員はともかく、この男から逃げるのは骨よ?>』

「<よく言う。一番サポート特化なのに。それも一応考えてあるから、安心しろ>あー、二人とも」

 

必要なことは伝えた、と判断して念話を切り、クロノ達に言葉を投げる。

 

「何だ!?」

 

苛立ちを隠そうともせずに怒鳴るクロノに、乱れた息を少しでも整えようとするユーノ。

 

「二人も気がついているだろうが、俺達の手に闇の書はない」

「ああ。だから、闇の書を持っているやつを探し出して闇の書を押さえるつもりだったんだが・・・・・・なんだ、教えてくれるって言うのか?」

「それはサービスをしすぎだ。ただ、『何故此処に闇の書がないのか』その意図は教えてやろうと思ってな」

「・・・・・・」

 

顔色の変わるクロノ。

ユーノも状況を見届けることを選んだようで、油断なく様子を見ながら、話に耳を傾けている。

 

「リンカーコアの摘出。これは本来なら、ある程度近づく必要があるなど、いくつかの制約が存在する。そうだな・・・・・・直接触れて干渉する、とかな。なら、その制約を無効にできるやつはどうすると思う?例えば、直接触れる必要がない、とか」

「あ!?」

「まさか!?」

 

あくどい笑みでシャマルの存在を仄めかすと、二人の顔色が悪くなった。

クロノ達の脳裏に、先日のなのはのように倒れるフェイト達の姿が浮かんだ。

雄一は、二人に駄目押しを加える。

 

「俺に構っていると、また守れないぞ?」

「「ッ!?」」

 

とどめの一言に、二人とも結界の外にいるはずのシャマルを探しに飛び出した。

完全にマークが外れたが、二人に申し訳なく思い、しかし頭を下げるわけにもいかず、雄一は覆面のうちで唇を僅かに動かした。

 

「すまない・・・・・・」

 

雄一は、仮面の男は管理局の誰か、と睨んでいた。

そうでなければ、この戦いに介入してくるタイミングが良すぎる。

おそらく、かなり中心にいて事情に詳しい存在。

それが何者であれ、ハッキリするまでは管理局と関わるつもりはなかった。

雄一は、内心の悶々とした気持ちを僅かにため息に込めて吐き出すと、頭を切り替えてシャマルに念話を繋いだ。

 

「<シャマル、いまそっちにクロノ達を送った。頃合を見て脱出して、仮面の男にクロノを擦り付けろ。こっちはこっちで脱出するから、心配は要らない>」

 

 

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