リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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更新、遅くなってすみません。
サウンドステージ編です。
では、本編どうぞ!


第七十六話 はやての帰宅

リビングの扉の開く音にソファに座って目を閉じていたシグナムは振り返ると、目を丸くした。

 

「どうした、随分調子が悪そうだが」

「あー・・・・・・おはよう?」

 

寝ぼけながら挨拶しようとして欠伸を噛み殺す雄一。

 

「いや、昨夜妙な夢を見てな。やたらはっきりとした夢だったから頭が休まなかったらしくて」

「そうか・・・・・・主はやてが戻られるまでまだ時間がある。もう一眠りしておいたらどうだ?」

 

シグナムの提案に首を横に振る雄一。

 

「魅力的だけどいいや。いつもこの時間には起きてるし、朝食を作らないといけないし」

「それくらいは我らで」

「シャマルが作るのか?」

 

雄一に指摘され、シグナムが顔をしかめる。

休ませてくれようという意志より、シャマルが料理する危機感の方が大きいらしい。

 

「心配しなくても、はやてを出迎えたら、少し休むって」

「ならいいが・・・・・・無理をするなよ」

「おはよう、シグナム。はやてちゃんはもうじき、帰ってくるそうよ、って雄一君もおはよう」

 

分かってる、と雄一が応えたとき、ドアを開けてシャマルが入ってきた。

 

「おはようシャマル。今日はシャマルも朝が早いな」

「はやてちゃんを出迎えなきゃいけないもの。それよりシグナム、ヴィータちゃんは? まだ?」

「ああ。かなり遠くまで行っているらしい。夕方には戻るそうだ」

「そうなのか? なら、後で様子を見に」

「待て。お前は休むはずだろう。昨日の戦闘でも殿を務めたんだ。我らの中でも、お前が一番消耗しているはずだ」

「シグナム、それは貴女もよ」

「ぅ・・・・・・」

 

シャマルに指摘されて言葉を詰まらせるシグナム。

 

「貴女も昨日の戦闘で、だいぶ魔力を消耗しているみたいだから。回復できてないんだから、無理はしちゃだめよ」

「シャマル、お前達の将はそれほど軟弱にできていない。大丈夫だ」

「なら、俺が行っても問題ないだろ?」

 

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら言うシグナムに、雄一が反論を突きつける。

シグナムは咄嗟に反論しようとしたが、先ほど自分も同様のことを言われているだけに、納得させるだけの材料が思いつかなかった。

 

「いや、だが・・・・・・」

「実際、今後俺が戦闘に出ることは減るだろうし」

 

そう。

昨日の戦闘で手の内が割れていることを、皆に打ち明け話あった。

そこで、雄一が管理局と戦うことは避けるべきだ、と昨日結論が出た。

原因となったのはやはり、彼の手の内を全て知っているだろう、カナメの存在。

『契約』で得る異能は、強力な反面対価や制約から切り崩されやすい面も持っている。

だから、雄一は仮面の男達を警戒するために、シャマル同様はやてにつく事が総意となった。

それが分かっているから、シグナムも、それ以上の反対を飲み込んだ。

 

「それよりも、シグナムも随分変わったわね」

「ん?」

「どういうことだ、シャマル?」

 

唐突なシャマルの言葉に、当のシグナム共々首を傾げる。

 

「ごめんなさい。けど、今までのシグナムなら、そんな風には笑わなかったから」

「・・・・・・そうだったか?」

「貴女だけじゃない。私達全員、随分変わったわ。それは」

 

シャマルの視線が雄一に向けられ、シグナムの目を向ける。

二人に見られ、落ち着かない様子の雄一に、シャマルは穏やかな笑みを浮かべた。

 

「それは皆、はやてちゃんが私達のマスターになって、雄一君が私達の仲間になったときからよ」

「・・・・・・そうだな」

「勘弁してくれ・・・・・・」

 

 

 

話している内に、家の前で車が止まった。

おそらくはやてが送ってもらってきたのだろう。

 

(運転してきたってことは忍さん、はないか。ノエルさんだな)

『ただいまー!』

『失礼します』

 

玄関から予想通りの声が聞こえてきた。

玄関に向かって二人を出迎える。

 

「お帰り、はやて。それと、そちらは?」

「初めまして。月村家でメイドをしておりますノエルと申します」

 

知っているが、知らぬ振りをしておく雄一。

 

「雄君、怪我とかはしてへんか?」

「って、はやて? 何をしている?」

 

車椅子から必死に手を伸ばして体を触っているはやてに問う。

 

「昨日の電話で絡まれた言うてたやろ? だから、どっか怪我してるんちゃうかと・・・・・・どこが新しい怪我か分からへん!」

「まあ、古傷が多いからな」

 

苦笑しながら、はやての言葉に同意する雄一。

ペインの体は、回復力が高いらしく小さい傷ならすぐに回復できる。

だが、<デル・ドーレ>ほどではないため傷によっては痕が残る。

結果古傷だらけであるわけだ。

騒ぎあう雄一達を微笑ましそうに見ていたノエルは、やがて辞去しようと一礼した。

 

「お二人とも、そろそろ私はこれで失礼します」

「あ、家まで送ってくれてありがとうございます」

「はい。はやて様、すずか様と仲良くしてあげてくださいね」

 

ノエルの言葉にはやてが頷くと、ノエルは車で去っていった。

車を見送ると、はやてを連れて家に戻る。

 

「はぁ、落ち着いたー」

「お疲れ様です、主はやて」

 

家に着いて、思わずこぼれたはやての言葉に出迎えに来ていたシグナムが応じた。

独り言だったのだろう、すぐにはやてはフォローを入れる。

 

「お友達の家に遊びに行っといて『お疲れ』いうんもあれやけど」

「シグナム、はやてを頼む。リビングまで運んでくれ。俺は車椅子を拭いていくから。シャマル、タオル頼む」

「分かった」

「分かったわ」

「じゃあはやて、ちょっと失礼するぞ」

 

シャマルがタオルを取りに行き、雄一は車椅子からはやてを抱き上げると、シグナムに渡した。

 

「そういえばシグナム。昨夜とか、何も不自由なかったか?」

「いいえ、何一つ。夕食も美味しく戴きました」

「そかそか。雄君、グッジョブやったんやね!」

「え、ええ・・・・・・」

 

リビングに向かう二人の会話を何とはなしに聞いていると、シャマルが濡れタオルを持ってきた。

 

「雄一君、はいコレ」

「ありがと。シャマルもリビングに行くといい。はやての話し相手になってやって」

「はいはい。雄一君も早くね。はやてちゃん、待ってると思うから」

 

昨日の騒動の話を聞きたいのだろうと、はやてが待っている意図を考えた雄一はシャマルに曖昧に返し車椅子の掃除に掛かった。

といっても車輪やフレームを拭いていくだけだ。

それほど時間をかけずリビングに向かう。

雄一が入ると、丁度

 

「ふぁ・・・・・・あ」

 

はやてが欠伸するところだった。

気がついたはやては慌てて顔を背けた。

 

「え、と、雄君? もしかしなくとも、今のは?」

「・・・・・・大きな欠伸だったな」

「うぅ、忘れて・・・・・・」

 

口を開けているところを見られ、顔を紅くするはやてに苦笑しながら雄一はソファに腰掛けた。

 

「寝不足か?」

「・・・・・・うん、昨日ちょっと睡眠時間が足りてなくて。すずかちゃんの家のベッド、ごっつうフカフカでなんや緊張したし」

 

顔を赤らめながら、眼を擦るはやて。

 

「昨日、夜更かしするな、って言ったはずだけど、友達の家でテンション上がってただろうし、しょうがないか」

「ごめんなー」

「気にするな。シグナム」

「ああ。さ、主はやて、お部屋まで運びますので」

「うぅ、ご飯の仕度時に眠なって、皆がお腹空かせたらあかんし、ちょう休ませてもらうな」

 

シグナムに運ばれていくはやてを見送ると、雄一も立ち上がった。

 

「それじゃ、俺はヴィータを迎えに行ってくる。闇の書は持っていくか?」

「闇の書が必要になったら転移するから大丈夫。ヴィータちゃんをよろしくね。たぶん無茶しているから」

「了解。そんじゃ、行ってきます。エルミナ」

『ああ』

 

エルミナに転移魔法を展開させると、雄一はヴィータのいるであろう場所めがけて飛んでいった。

 

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