リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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オリジナル設定回です。
これを使っておかないと、後々のプロットが無駄になってしまうので。
では本編どうぞ。


第七十八話 休みと事故

翌日。

雄一は、手に持っていた皿の汚れを落としていた。

ただし、その手つきは驚くほど悪い。

 

「なあ、雄君。やっぱ、私が手伝おか?」

「い、いやいい。はやては休んでいろ」

「そ、そうだ、な。雄一の、言う、とおりだって!」

 

心配そうにキッチンを覗き込むはやてに答えつつ、ゆっくりと皿から泡を落として流しの横に積んでおく。

その横で、手を震わせながら包丁を持つヴィータ。

 

「せやけど、」

「いいって。今日ははやてには休んでもらおうってことで、一致したろ?」

 

なおもゴネるはやてに、今朝のやりとりを思い出して突きつけた。

 

 

 

朝食が済んだとき、シャマルがふと思い出したようにはやてに言った。

 

「はやてちゃん。昨日、石田先生から明日の検査の連絡がありましたよ」

「検査? あれ、定期検診はこの前しなかったっけ?」

「それが、明日は定期検診とは別に、特殊な機械を使う診察らしくて。機材の予約の都合でそうなったらしいわ」

 

雄一の疑問に、シャマルが答える横で、肝心のはやてが手を打っていた。

 

「あー、せやせや! 明日やったな! カレンダーに印をつけてたのに、忘れるところやった!」

「もう、はやてちゃんたら・・・・・・石田先生には明日お礼を言わないと」

「明日、か」

 

シャマルが苦笑していると、雄一は何かを思いついたようだった。

 

「雄一君? 何か気になるの?」

「なあ、一つ提案だけど。今日一日、はやてを休ませて皆で家事を代わらないか?」

「? どういうことだ?」

 

要領を得ないシグナム達に、雄一はより詳しく説明をする。

今日一日、はやては体を休めて明日の検査に備えて、家事は雄一とヴォルケンリッターの面々が引き受ける。

どうしても、必要ならはやての手も借りること。

 

「・・・・・・という感じでどうだろうか?」

「私は賛成だ! たまにははやてにもゆっくりしてもらいたいしな!」

 

雄一が問うと、真っ先にヴィータが賛成した。

シグナム達も反対はないらしい。

問題は、

 

「えー。なんや、私だけ仲間外れみたいやん」

 

はやては唇を尖らせる。

 

「そういうつもりはないよ。ただ、はやてに普段してもらっていることを返そうと思っただけ。いい口実もあったことだし、いい機会だと思ったんだよ・・・・・・あ゛」

「自分、思い切り口実って言いよったな・・・・・・」

 

思わず口を滑らせた雄一を、はやては、しょうがないとでもいうような笑みを浮かべながら見やった。

そこへ、シグナム達からの援護も入った。

 

「主はやて。ここは雄一の言うとおりかと」

「シグナム?」

「日頃我らは主から暖かな場所を与えてもらうばかりでした。よろしければ、日頃の雑事は我らに任せ、ゆっくりお休みなさればよいかと」

「ザフィーラ・・・・・・」

「はやてちゃん、私達もはやてちゃんといられる今が好きなの。だから、それが一方通行じゃないって事を示させて。私達にも恩を返させてくれないかしら?」

「シャマルも・・・・・・分かった。そうまで言われたらあかんなんて言えへんよ。それなら、私は部屋で本でも読んでるから、何かあったらいつでも来いや?」

 

そういって、はやてはひょいと肩をすくめ降参を示した。

 

「それじゃ、役割を決めようか」

「シグナムはお風呂場をお願いしようかしら?」

「そうだな。ザフィーラはどこか希望はあるか?」

「ならば、庭の掃除をしておこう」

「シャマルは台所以外で」

「「「「賛成」」」」

「ひどい!?」

 

わいわい騒ぎながら役割を決めていく。

その際、

 

「それと、雄一とヴィータには昨日のバツも含めて、自分達の苦手な場所をやってもらおうか」

「「え!?」」

 

と、シグナムが提案し、反対する間もなく可決されてしまう、という騒動もあった。

結果として、雄一は食器を洗い、ヴィータがキッチンに立っているのだが。

この二人が何故それぞれの作業を苦手としているか。

ヴィータ達守護騎士は、その来歴ゆえ料理をしたことが無く、ヴィータも進んで手を出そうとはしていなかった。

また、はやてらを手伝うにしても食器を出したり程度で料理には関わらずにいた。

雄一は家事の経験自体はあるのだが、肉体の出力の調整が上手くいかない、簡単にいうと手加減が利かないのだ。

戦闘などではそれこそ手加減の必要がないため意識しないのだが、こういった細かい作業になると集中力を切らした途端暴発しかねない。

今もうっかり力を込めすぎると、

パリンッ!

 

「あ」

 

まずいと思った瞬間、ガラスコップが雄一の手の内で砕けた。

 

「ユウ、大丈夫か!?」

「つ、ああ。大した事はない」

 

包丁を止めて振り返ったヴィータに答えるように手を振る。

手の平はガラスで幾筋か切れて血を滲ませている。

だが、ヴィータは気がつかなかったのか、ため息を漏らす。

 

「ああ、よかった・・・・・・じゃねえ! まったく、気をつけろよな!?」

「すまない。心配を掛けたな」

「別に心配なんてしてねえ! とにかく、気をつけ」

 

ストン。

 

「てっ!?」

「ヴィータ!?」

 

振り返っていて目測が狂っていたのか、下ろした包丁が僅かにヴィータの指を切っていた。

雄一は破片を一点に纏めるとヴィータに駆け寄って手を取った。

 

「なっ!?」

「ん、ちょっと深いか。ヴィータ、心臓より高い位置に上げとけ。救急箱を取ってくるから」

「い、いらねえ! こんなの唾でもつけときゃ治るだろうが!」

「駄目だ。傷がすぐに塞がるわけじゃなし、料理する以上、怪我の対応も重要だぞ?」

 

ヴィータの拒否を受け流し、救急箱を取ってくる。

雄一は消毒液と、絆創膏を取り出すとヴィータを促した。

 

「ほら、手を出しな」

「あ、ああ。って、ちょっと待ちやがれ」

 

顔を紅くしながら大人しく手を差し出そうとしたヴィータの目が、雄一の手を見た途端険しくなった。

 

「何が大した事ない、だ!? 十分大した事あるじゃねえか!」

「・・・・・・こんなの唾つけとけば治るって」

「ほーう? それはさっき私が言ったことだと思うんだけどなぁ?」

 

強烈な笑みで詰め寄るヴィータから雄一はそっと目を逸らした。

その態度に、ヴィータが爆発した。

 

「このぉおお!!」

「うわ、落ち着けヴィータ!?」

 

拳を振り回すヴィータを慌てて止めようと手を伸ばす雄一。

このとき、雄一は一つミスをしてしまった。

怪我を負った手でヴィータの手、それも怪我をした手を掴んでしまった。

 

「痛っ!?」

「あ、すまないヴィータ! 大丈夫か!?」

「だ、大丈夫だってこのくら、い?」

「あ、れ・・・・・・?」

 

ヴィータが傷のあるはずの手に眉をひそめた瞬間、雄一の体を酷い倦怠感が襲い、抵抗する間もなく倒れた。

 

 

 

「ん・・・・・・」

「気がついたか?」

 

雄一が目を覚ますと、ヴィータが顔を覗きこんでいた。

状況が分からず、雄一は身を起こしながら顔をしかめる。

雄一が寝かされていたのは雄一の部屋だった。

おそらくシグナムかザフィーラが騒ぎに気づいて運んだのだろう。

 

「ヴィータ? 一体何が?」

「分からねえ。ただ、あの時ついたはずの傷が無くなったと思ったら、ユウが倒れたんだ」

 

ヴィータの言うとおり、さっぱり原因が分からない。

二人して首を傾げた。

すると、

 

『私から説明しよう』

「エルミナ? 一体何が起きたのか、お前は分かっているのか?」

 

声に、サイドテーブルの上に置かれていたエルミナを振り返る。

 

『ヴィータ。マスターの背中を確認してくれないか?』

 

エルミナは問いに答えず、ヴィータにそんな頼みをした。

ヴィータも突然の頼みに眉をひそめたが、不要なことは言わず雄一を上半身裸にし、見た。

そこには、「空白の契約書」が記されているはずだが。

 

「・・・・・・? あれ? 何でここに、私の名前があるんだ?」

「は? なんだと?」

 

信じられないことに、雄一が聞き直すと、ヴィータはよりはっきりと言った。

 

「だから、お前の背中の『契約書』だっけ? その、<フェル・ディア>の横に私の名前があるんだよ!!」

「・・・・・・エルミナ、説明」

 

痛む頭を押さえながら、唯一事情を知る彼女を促す。

そのエルミナが告げたのは、新たな問題だった。

 

『血を交わしたことで、「契約書」が発動した』

「「はぁ!?」」

 

 

 

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