リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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このシーンはこの作品を書き始めたときから書きたかったシーンの導入です。
やっと此処まで来た!
では本編どうぞ!


第七十九話 契約書と出会い

さらに翌日。

リビングのソファに腰掛けていた雄一は読んでいた本を閉じると、グルリとあたりを見渡した。

雄一は八神家で一人留守番になっていた。

はやては予定どおり検査のため海鳴大学病院に。

シャマルとヴィータがはやてに同行して、シグナムとザフィーラは蒐集に出ている。

本当なら、雄一もどちらかに同行するつもりだったのだが、

はやてには、「雄君は倒れたんやから休まなあかん」と同行を却下され、シグナム達には、「連日蒐集に出ていたのだから休め」とこちらも却下。

仕方なく留守番となっているのだ。

ちなみに、騒ぎの片割れであるヴィータも、契約のことを説明した上で大事をとって、蒐集を休んではやてについている。

 

「まあ、倒れたのは事実だからあまり文句も言えないけど・・・・・・それで、エルミナ」

 

雄一はエルミナに話しかけた。

問うのは昨日の出来事。

 

「一体どういうことなんだ? ヴィータと契約が繋がったっていうのは。いや、そもそも、『空白の契約書』っていうのは何なんだ?」

『そうだな・・・・・・それを説明するなら、順番に説明していくとしよう。

 まず、「空白の契約書」とは、先代の精杯の姫が妹を取り戻すための力を得る為に作り出したものだ。それは、模造した対価を餌に契約者を集め、契約書に己の血をもって署名した契約者の能力と繋がりを作ることで、その能力をある程度使えるようにするものだった。マスターの背中にもある、刺青はその本体のようなものだ』

「こいつが、本体? だけど、ヴィータは契約書に署名したわけじゃないだろ?」

『署名することが問題ではない。「その契約者の血をもって」という部分が重要なのだ。契約書の持ち主と血を交えることで契約は成立する』

「・・・・・・」

 

雄一は納得すると共に、以前<クフ・リーン>がフェイトの治療を止めた理由がようやく腑に落ちるのを感じた。

ただ、気になる点はまだある。

 

「だけど、おかしくないか? 『空白の契約書』は、『模造した対価』に『何か』をもとに、『契約者』と『契約書の持ち主』が交わすものなんだろ? だけど、俺は対価に失ったものがないから模造した対価はないし、ヴィータにいたっては契約者じゃない。なんで、『契約書』が発動したんだ?」

『・・・・・・ここからは推論になるが、おそらく、マスターに、いやこの世界の魔法に合わせて「空白の契約書」が変化したのではないだろうか?』

「変化?」

『マスターの言うとおり、ヴィータは契約者じゃない。だが、魔導師という異能を使う者であることに違いはない。それこそ契約者が、時代が違えば「そう」呼ばれていたように』

「そういえばそんな話もあったな」

『そして、この変化はマスターの昏倒と無関係ではないだろう』

「どういうことだ?」

 

さらに波紋を広げる問題に、雄一は眉をひそめる。

 

『おそらく『契約書』で結ばれる契約は、マスターの側から魔力を供給して契約した者の魔力をブーストするものだろう。連日の疲労とその魔力の吸い上げがとどめとなって、マスターは昏倒することになったのだ』

「それってカートリッジと同じじゃないのか?」

『そうでもない。効果はカートリッジより大きく、装填の手間はない。さらに、その魔力を回復に回すこともできるようだね』

「・・・・・・ああ、だから」

 

思い出すのは、昨夜ヴィータの指についた傷。

掴んだとき痛がっていたのに、次の瞬間には消えていたのはそういうことか。

 

「随分と至れり尽くせりだな」

『もちろんデメリットはある。使うためには条件があるようだ』

「条件って?」

『・・・・・・すまない。調べられたのは此処までだ。調べきるにはもう少し時間がかかる』

「そうか・・・・・・それで、俺にはどんなメリットが?」

 

契約の形を取っている以上、こちらにも旨味はあるはずだが。

 

『それなんだが・・・・・・マスター、<フェル・ディア>を使ってみてくれ』

「? ああ、<フェル・ディア>」

 

<フェル・ディア>を使うが実態がないものであるため、特に変わったようには思えない。

 

『・・・・・・なら、私を起動して、使ってみてくれ』

「? <フェル・ディア>は触れることで発動するんじゃないのか?」

『いいから、やってみてくれ』

「? ああ」

 

エルミナに促され、とりあえず杖の形で起動する。

すると、

 

「んん? 何か、違和感があるんだが」

『なら今から障壁を張るから、私で破壊してくれ』

 

言うと、エルミナは障壁を展開した。

彼女に言われるまま、エルミナを振るって障壁に叩きつける。

すると、障壁はあっさりとひび割れ砕け散った。

 

「え゛・・・・・・こんなにあっさり?」

『おそらく、能力が変化することがメリットなのだろう。ヴィータの場合は、<フェル・ディア>の範囲が広がったといったところか』

「リーチが広がったのはありがたいけど・・・・・・なんか地味だな」

 

エルミナを待機状態に戻しながらこぼす雄一。

すると、

 

「・・・・・・ふぁ」

『マスター?』

「あ、ああ。妙だな、急に・・・・・・」

 

雄一は急に襲ってきた睡魔に抗おうと立ち上がろうとしたが、意思に反して足に力は入らず、雄一の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

「・・・・・・ん、ここは?」

 

雄一が気がつくと、光景は一変していた。

周囲の光景はどこかの戦場らしく、甲冑を纏った者達が何者かと戦っている。

だが、この戦場は地球のものではないことに雄一は気がついた。

 

「こいつら・・・・・・魔導師か?」

 

彼らの手にあるのはデバイス、それも形状を見るにアームドデバイス。

おそらく、ベルカの戦場だろう。

だが、一体何が起こったのだろうか?

 

(夢か? 俺が知るはずのない光景だから、ないだろう。考えつくのは、<アルス・マグナ>の揺り籠だが・・・・・・兆候のひび割れるような音は無かったし、こっちの体に<アルス・マグナ>はないはず。タイムスリップなんてあるとは思えないし・・・・・・駄目だ、さっぱり分からない)

『ハァアア!!』

「あれ? あの声は・・・・・・シグナムか?」

 

とりあえず、周囲を探索しようとした雄一の耳に、聞き覚えのある声が届いた。

そちらへと足を進めると、ふと周囲の様子に気がついた。

 

(やっぱり、こいつらは俺に注意を向けない。それどころか、素通りしていくって事はやっぱりただの映像か何かか? それにしても、こいつらは何を見ているんだ?)

 

騎士達は一点を注視している。

そちらを凝視すると、二人の鎧騎士が斬り結んでいる。

どちらも大した腕前のようだが、

 

(あっちの騎士の持っている剣、見た覚えがあるような?)

 

日頃いつも見ているはずなのだが、雄一は思い出せず首を捻る。

すると、その騎士が相手の騎士を切り伏せた。

 

『き、貴様! 何者!』

『名乗るものではない。約束どおり、闇の書の糧となれ!』

「って、今の声に闇の書って!?」

 

倒れた騎士の胸から現れたリンカーコアを蒐集した騎士の顔が露わになる。

現れたのはシグナムだった。

だが、

 

(なんだこれ・・・・・・随分物々しいが、まさか此処は)

 

見ると、シャマルやザフィーラ、ヴィータもそれぞれに武器を振り回している。

彼女達も今のものよりはるかに物々しい甲冑を纏っている。

それを見て、雄一は自分の予想が正しいことを悟った。

 

(やっぱり、これは闇の書の記憶か! おそらく、ベルカの人間が闇の書を所有したときのものだろうが・・・・・・なんで俺がこれを見ているんだ?)

 

闇の書のマスターであるはやてなら話は分かるのだが・・・・・・。

考える内に場面は次々に変化していく。

持ち主だろう女性の仕打ち、彼女達への待遇。

その酷さに、以前シグナム達が言葉を濁らせた理由を悟った雄一は、はやてに聞かせなかった対応に感謝すると共に、かつての持ち主達に嫌悪を覚えた。

ほとんどの持ち主が、彼女達を厄介者として扱っていた。

その上で彼女たちがどうなったのか、その記録がないのが気になるが、碌な終焉を迎えなかっただろう事は想像に難くない。

 

『――――――、――――、――――』

『――、――――。――――』

「ん?」

 

ふと、話し声が聞こえることに気がついた雄一はそちらに歩いていく。

歩いていった先。

そこにいたのは、女性が一人。

銀の長い髪の女性は涙を流しながら膝をつき、一心に何かを祈っている。

 

「何処の誰でもいい、どんな手段でもいい、この絶望の輪廻を断ち切ってはくれないか。あの優しい主と、一途な騎士達を救ってはもらえないか。私がどうなったとしても。どうか・・・・・・あの子達を救ってくれ・・・・・・」

 

真摯な祈り、その内容に雄一は息を呑んだ。

主に騎士達、そう言われて思い浮かぶのは・・・・・・。

 

「っ!? 誰だ!」

 

気配に気がついたのだろう、女性は立ち上がると共に拳を構え雄一のいる先を睨んだ。

 

「・・・・・・色々聞きたいことはあるけど、まずこれは聞かせてくれ。いろいろ知っていそうなあんたは何者だ?」

 

女性の前に姿を現すと、雄一は彼女を問い詰めた。

 

 

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